※この作品はR-18です。

ドラゴンボールC【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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はっはっは、スーパー口説きタイムまで辿り着かんぜ!(泣)

とはいえメインバトルはこれで終了。

そろそろ各キャラクターの描写しきれなかった設定含めてのキャラ一覧を書こうかなと思ったり。




“弱きこと”は素晴らしき哉 ★

ビルスは焦っていた。

 

油断、怠慢、慢心。

 

それらすべてを持ち合わせ、かつそれで構わないと思っていた。

 

今日という日までは。

 

「くっそおおぉ!あんな…!あんなカスみたいな連中に僕が封印されるだなんて!」

 

「すごいですねえ…この結界の構成、わたしたちの力を利用しているみたいですよ。どうやら力尽くで脱出するのは無理みたいですねえ」

 

ウルトラグルグルガムをようやく剥がし終わると、ビルスは自身らを囲む水晶観音へと手を伸ばす。

 

「だったらその構成ごと“破壊”してやるまでだ…!」

 

ビルスは手をかざし、水晶でできた観音の結界を“概念”ごと破壊する。

 

これこそが『破壊神』の恐るべき力。全王の力を天使を通して割譲した問答無用の破壊能力であった。

 

しかし、あらかじめ想定されていたかのように結界は復元する。よく見れば、水晶観音の体内には無数の結節点が存在し、ただ破壊しただけでは結界が再構成されるように作られている。

 

「ちっ!相互に干渉してひとつひとつ破壊しなきゃいけないように作られてる…!僕を封印するだけあって、ずいぶんと作り込まれてるよ!」

 

ビルスが破壊するたび、水晶観音は再生する。

 

それはビルスから溢れる神の気を吸収しているのだが、ビルスは結節点を見極め、それら全てへ同時に破壊の力を流し込むと完全に崩壊させた。

 

ようやく脱出できるかと思ったビルスだが、今度はその周囲を鎖となった如意棒が囲む。

 

「お次は如意器ですか。これって神の武器ですよねぇ」

 

「だったらなんだ!まとめて破壊してやる…!」

 

「ひょっとしてこの結界、魔族や魔人を封印するためのものなんじゃないですかねえ。この如意棒も、ビルス様だから簡単に破壊できますけど、魔族が壊すにはかなり苦労する代物ですし」

 

「関係ないと!言っているだろう!」

 

ビルスは鎖状になった如意棒を掴みとると、握りつぶすようにして“破壊”する。

 

すると、まるで如意棒は枯れ落ちるかのようにボロボロになっていき、一欠片も残さず消滅した。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…くそっ、こんなに連続して破壊神の力を使わされるだなんて…!」

 

「この程度で息切れしてちゃだめですよぉ、ビルス様。帰ったらちょっとトレーニングしましょうか」

 

「うるさいっ!あいつら、絶対に破壊してやる…!」

 

顔を憤怒の形相に歪めて、ビルスは最後の封印“魔封波”の破壊にかかる。

 

「砕け散れっ!!」

 

手をかざし、やや乱雑に放たれた“破壊”の力は間違いなく魔封波によって作られた異次元空間を崩壊させていく。

 

しかし、ビルスは出てきた何もない空間に戸惑う。

 

「…な、なんだここは!?」

 

「…時の異次元空間。考えましたね、あの男」

 

解放されたビルスが狼狽するのとは対照的に、それまでの笑顔を消して冷たく言い放つウィス。

 

ウィスは己の力を少し解放し、この世界に果てがないことを察知する。

 

「ビルス様、急いでこの世界を“破壊”してください」

 

「どういうことだ、ウィス」

 

かつて己を鍛え始めた頃のように無表情に言い放つウィスを見て、ビルスは若干だが戸惑いを覚える。

 

「ここは時の異次元世界。それも、外の時間の何十倍もの早さで時間が進んでいきます。あまり長引けば、最悪この宇宙が破壊神を“死んだもの”と判断して神王樹に次の破壊神を選ぶよう要請を出します」

 

そうなった時、ビルスはどうなるか。

 

宇宙に存在を認められなくなった破壊神の末路など、考えたくもないと、ウィスは考える。なぜならば、それは延(ひ)いては破壊神を管理する天使の責任。

 

役立たずの天使として、ウィスの父は嬉々として全王の力を振るわせるだろう。

 

「…なんだか本当にヤバいみたいだね。わかった、ちょっと本気を出すから下がっていてくれ」

 

ウィスはビルスの指示に従って無言で一歩下がる。

 

「むううううっ!!」

 

低く唸るビルスの周囲の空間に、ヒビが入っていく。

 

何もないはずの空間に地鳴りのような音が響き、ヒビはまるで地割れのように広がり徐々に空間を崩壊させていく。

 

割れたガラスが落ちるように崩れていく世界のなか、ウィスは自分の周囲にバリアを張りビルスの様子を相変わらず冷たい表情で見つめる。

 

「だあああああっっっ!!!」

 

溜め込んだ破壊神の力を解放したビルスによって、ついに世界は完全に崩壊する。

 

ウィスは力を使いすぎ気絶したビルスを回収すると、破壊した影響で開いた元の世界へ通じる穴へ飛び込んだ。

 

__________________________________

 

 

***side 悟空***

 

「3日か。思ったより持(も)ったな…」

 

俺は崩壊する精神と時の部屋の扉を眺めながら、ピッコロと共に臨戦態勢へと入る。

 

すでにピッコロはジュニアと更にもう一人とポタラ合体し、戦闘に備えて表層的な肉体は戦闘タイプであるジュニアのものとなっている。

 

今回は破壊神と天使を同時に相手取る可能性があったのもあり、現状における最強タッグでこの場に来ていた。

 

「悟空…破壊神の相手、本当にお前ひとりに任せても大丈夫なのか?」

 

ジュニアの声で呼び捨てにされると違和感があるが、頼もしさの現れだと思っておこう。

 

「問題ない、対策はいくつも用意してある。それよりも、ウィスの封じ込めは頼んだぞ。破壊神が戦っている間、やつは全力を振るえない。だがその分、ビルスが危なくなったら絶対にろくでもない手段を講じるはずだ。…家族を人質に取られるのだけは避けたい」

 

「任せておけ。彼ら彼女らは俺にとっても間違いなく家族だ。指一本触れさせん…来るぞ!」

 

異次元空間から真っ先に姿を現したのはウィスだった。

 

その肩に担いでいたビルスをこちらへ無造作に投げつけると、すさまじい勢いでピッコロへと突進していく。

 

こちらの会話を聞いていたのだろう。

 

だがまあ、その程度は“想定内”だ。

 

「ふふふ、天使の不意打ち…この程度か?」

 

挑発気味にウィスの手刀を受け止めたピッコロは不敵に笑う。ウィスは無表情のなかに少々の戸惑いを織り混ぜると、続いて両腕から連続で光線を発射する。

 

「っ!ピッコロそれに触るな!!破壊神の“力”を借りている!」

 

「なるほど…!」

 

危うく弾こうとした手を引っ込め、ピッコロは飛来する破壊光線を紙一重で避けまくる。

 

ウィスは埒が明かないと考えたのか、全身に破壊神の力を纏いこちらへ突っ込んできた。

 

「いつまでもやらせるかよ…!」

 

俺は黒い超(スーパー)サイヤ人へ変身すると、ピッコロの前に躍り出てウィスの突進を受け止める。

 

「悟空!!」

 

「問題ない!」

 

ピッコロが焦った声を出すが、俺のところまで“破壊”の力は届いていない。

 

ウィスの無表情が崩れる。

 

「わけがわからないみたいだな!単純だ!お前が振るう破壊の力を!相殺できるだけの気を放出してるんだよ!!!」

 

俺は“破壊の力”を圧倒するほど大量の気を拳から放出しながら、ウィスを連続で殴りつける。

 

「ヒトに堕ちた身で、そんな出力を得られるはずがない…!」

 

「堕ちた?違うな、“得た”のさ!」

 

俺は破壊神の力を自分に還元して力を振るうウィスを見下ろし拳を構える。

 

「それとな!破壊神の力を自分の強さだと勘違いしてるお前が!“ヒト”として鍛え直した俺に!勝てるわけ、ねえだろうが!!!」

 

繰り出されるウィスの攻撃をすべて避け、やつの顔面を殴りつける。

 

カウンターとして決まった拳によって、ウィスは宮殿を貫通しながら吹き飛んでいく。

 

「あ、悪い、ピッコロ」

 

「構わん、無傷なまま戦えるなどはじめから思っていない。…それよりあんな方法があるなら教えてくれればよかっただろうに」

 

「やめとけ、同じことやったらあっという間にガス欠だ」

 

周囲に高圧縮された気弾を複数個浮かべ、ピッコロは油断なくウィスが飛ばされていった方向を見定めながら答える。

 

すると、目を覚ましたのかビルスがゆっくりと俺たちの眼前にまで浮かび上がってきた。

 

「…ウィス、破壊神の力を返すんだ。ヤツは僕が“破壊”する」

 

ビルスの有無を言わせぬ口調に、再びこちらに襲いかからんとしていたウィスは無表情を止め、飄々とした様子でビルスの肩に手を置く。

 

「ビルス様、付き人としては一旦帰っていただきたいんですけど、そういうわけにもいきません?」

 

「当たり前だろう。僕は“破壊神”だ。破壊すると宣言した以上、ヤツは必ず破壊する」

 

驚くほど冷静にこちらを睥睨するビルスに、俺は思わず笑顔を向ける。ようやくまともな“闘い”になりそうだ。

 

「…サイヤ人、いや今の名前はたしか悟空とかいったな」

 

「ああ、俺は“孫悟空”だ」

 

ビルスの問いかけに俺は自信をもって答える。

 

「…ふん、天使相手に手加減なんぞしやがって。単純な素の実力ならウィスは僕より強いんだぞ」

 

「あれがお前より強い?冗談だろ、武道家としちゃ遥かに格下だぜ。それより見せてみろよ、お前の“本気”を…!あるんだろ、破壊の力を振るうだけじゃない、とっておきが!」

 

まあウィスとかいう天使は“人形”にしちゃ随分と心が育ってるみたいだけどな。根っこが人形じゃ、どれだけパワーがあったところで俺に勝てはしない。

 

それにそんなことより、今はビルスの本気が待ち遠しい。

 

「…正気か?僕とお前が本気でやり合えば、この宇宙が消滅するぞ」

 

俺の誘いをビルスはいぶかしむ。だがわかるぞ、内心でお前が全力を出したがってるのを。

 

「そうならないように闘う方法くらい察しがついてるんだろ?なあに心配するな、そこの天使とピッコロに結界を張ってもらえばいい。余波くらいなら防げるだろ」

 

俺は「えっ!?」と言わんばかりに意外そうな顔でこちらを見るピッコロに内心で詫びる。

 

やはり俺はどこまでいってもサイヤ人だ。強い相手と戦えるだけでこんなにもわくわくできるのだから。

 

「さあ来いビルス!1000年ぶりのリベンジマッチと行こうぜ!!」

 

俺は解放していた気で自分自身を包むように覆う。薄さは一ミリ以下だが、その密度はさっきまでウィスを殴っていたそれとは比べ物にならない。

 

「…やれやれ、どうしていつのまに僕が挑戦者みたいになってるんだか。だがまあ、そういうことなら遠慮なくやらせてもらおうか!!」

 

俺と同じく神の気を改めて自分自身にまとったビルスは、破壊神としての力を解放しつつも全身に維持するという離れ業をやってのける。

 

あらゆる存在を破壊する破壊神の力を、指向性を持たせて自らのパワーに変えたのか。

 

単純な出力だけで見ても俺と互角、いや…ずっと上にいる!

 

「いいぞ破壊神…いやビルス!俺もお前に見せてやる、サイヤ人の本当の力をな!!」

 

俺は自身に纏わせた気の圧力をあげ、全身に黒い稲妻を走らせる。

 

「さぁ、やろうぜ!」

 

叫んでビルスに真正面から突っ込む。

 

小細工などいらない。受け損ねれば今の俺の一撃でもビルスは死ぬ。

 

「そんなパンチで!」

 

ビルスはそれを挑発と受け取ったのか、自身も力を拳に集束して俺と打ち合う。

 

「はあああっ!!」

 

「ぜええやあああ!」

 

出力で勝るビルスの“破壊の力”を前に、俺もまたさっき以上のパワーを込めて拳を打つ。

 

激しい轟雷のごとき音が響き渡り、余波で宮殿が完全に消滅する。

 

自分を護るつもりで咄嗟にバリアを展開したウィスを利用し、ピッコロはウィスのバリアに重ねる形で結界を展開する。

 

これで、ウィスが下手に結界を消して逃走しようとすればバリアそのものが消滅し、ヤツはこちらの余波に巻き込まれてしまう。

 

今の弱ったあいつでは受けきれまい。アドリブにしちゃナイスアイデアだぜ、ピッコロ。

 

「おらぁっ!」

 

ビルスの膝蹴りが胴着を掠め、上着が破壊され俺は上半身がむき出しになる。

 

くそっ、珍しく上を着てきたってのに。

 

「そんなものか!悟空!!」

 

「なわけあるか!まだだ!もっとだ!」

 

音を越え、光に匹敵する早さでビルスの攻撃が迫る。

 

ヒトの目で見ながら対処できる攻撃ではない。

 

ゆえに、先を読む。

 

音で、臭いで、膚(はだ)で、気で、すべてで感じとる。

 

「はああああっ!」

 

「なぜ当たらない!」

 

すでに俺たちの攻撃は光の線と等しくなり、この力がまともに解放されていれば地球などすでに跡形もないだろう。

 

だが、俺たちの闘いに無駄などない。

 

周囲に余波として広がるエネルギーが、徐々に減っていく。

 

動きは超常を越えながら、及ぼす範囲は狭まっていく。

 

より効率よく。より無駄なく。

 

俺とビルスの攻撃は互いを掻き消さんばかりに熾烈を極め、膨大な攻防が瞬く星々に匹敵する輝きを産み出す。

 

「まだだ!もっと!」

 

ビルスは追い付かない俺の回避に追い付こうと、先ほどの俺と同じ言葉を口にしながら破壊神の力をどんどん自分に注ぎ込んでいく。

 

「ビルス様!」

 

ウィスがそれを止めようと声を張り上げるが、ビルスには届いていない。

 

「ガアアアアア!!!!」

 

肥大化していくビルスの肉体。細かった体は筋骨隆々となり、猫のようだった顔もより肉食獣じみた凶悪な相貌へと変化していく。

 

「オオオオオオ!」

 

圧倒的な“力”を手に入れたビルスのパワーは凄まじく、すでに概念ごと破壊する破壊神の力はないにも関わらず、 その出力だけで俺を大きく殴り飛ばす。

 

俺はクロスした両腕に残る力の残滓に笑みを大きくすると、元の姿から三倍ほどに巨大化したビルスを見上げる。

 

「…おお、痛え。やるじゃないか、ビルス」

 

「フン!貴様ニ勝ツタメニ、ココマデセネバナラナイトハナ!」

 

満足に言葉が話せないにも関わらず、ビルスの瞳は理性の光を失っていない。

 

「ああ、さすがだ!だが悪いが俺もまだ“本気”じゃない。…見せてやるよ、無間(むけん)の闇で得た“光”を!!」

 

「見セテミロ!例エドンナ“力”だろうと捩ジ伏セテヤルッ!」

 

俺は待ち構えるビルスを前にして、目を閉じる。

 

隙だらけに見えるその様子にピッコロが息を飲む音が聞こえる。

 

それだけじゃない。

 

遠く離れたカプセルコーポレーションで、占いババの展開した巨大水晶板に映し出される俺とビルスの闘いを見守る家族らの、個々の息づかいまで感じる。

 

この地球に住むすべての生き物が刻む鼓動の音が聞こえる。

 

大地が鳴動し、空が流動し、海が胎動するのを感じる。

 

「ハッ!!!!!!」

 

俺の全身が変貌する。

 

黒かった体毛は金色(こんじき)に輝き、全身を炎のような金色のオーラが包む。

 

赤く光った目を開いた俺は、その姿に驚愕を隠せないビルスと同じ目線まで浮かび上がる。

 

「…待たせたな。まだこの変化に慣れていなくてな」

 

「ソ、ソノ“力”ハ一体…!」

 

「超(スーパー)サイヤ人さ。本当のな」

 

俺は今まで、超(スーパー)サイヤ人とは単なるサイヤ人の潜在能力を引き出す変身だと思っていた。

 

だが記憶を取り戻した俺は気づいた。その真の力に。

 

複数のサイヤ人の力を集めて変身する《超(スーパー)サイヤ人ゴッド》。

 

さらにその力を常態化させ、自身の超(スーパー)サイヤ人の力を上乗せした《超(スーパー)サイヤ人ブルー》。

 

魔神の力を引き出した《超(スーパー)サイヤ人ブラック》。

 

そして愛をきっかけに目覚めた《超(スーパー)サイヤ人0(ラブ)》。

 

どれも本質は同じ力なのだ。

 

サイヤ人としての根元。生きる上で俺たち戦闘民族が根差す力。

 

“闘争本能の具現化”こそ、超(スーパー)サイヤ人の本質に他ならない。

 

今の俺の変身はこことはことなる時空に存在したサイヤ人の子孫ら、この世界で言うならばセリパやベジータ王の変身に近い。

 

彼らは俺の子孫であり、俺は彼らの強さを劣化したものだと思っていた。

 

だが実際は違う。

 

たしかに目に見えて彼らは弱くなっただろう。

 

フリーザという、突然変異を人為的に起こしたに過ぎない存在に滅ぼされかけたほどに。

 

しかしその実態は、かつて俺が数百年を、いや億のときを越えて得られなかったモノを手にいれていた。

 

すなわち、戦うことの喜びを。

 

強い相手と闘うことの歓喜を手にしていた。

 

弱くなって当然だ。

 

強いということは、それだけ相手がいないということ。

 

無敵というのは孤独となんら変わらない。

 

独りよがりで強くなったところで、それになんの意味があるというのか。

 

ヒトとして転生した俺は、たしかに弱くなった。

 

だがそのおかげで、あらゆるものを得た。

 

義理の父から鍛えることの素晴らしさを学んだ。

 

かつて憎んだ神に属する存在を友にできた。

 

愛する女達を、子供達を得た。

 

“弱い”ことがこんなに素晴らしいとは思わなかった。

 

“強く”なることがこんなに楽しいとは思わなかった。

 

今だからこそ、俺は生きている。

 

生を実感している。

 

「はっはっはっは!お前も楽しめビルス!」

 

「ヤカマシイ!コッチハ制御ニ必死ナンダ!」

 

「修行が足りねえんだよ!だがそれもよし!もっと強くなってかかってこい!」

 

「無茶ヲイウナ!?」

 

俺はビルスと再び殴りあいながら語り合う。

 

ビルスの困惑が拳を通して伝わってくる。

 

楽しい、というのがわからないなら教えてやろう。

 

刹那を競い戦う俺たちが、まだまだ頂点ではないことを教えてやろう。

 

「デストラクション・ノヴァ!」

 

「龍拳!」

 

一点に集中された力が空間を歪めるが、それさえも俺たちには関係ない。

 

「砕ケ散レエ!」

 

「打ち倒せえ!」

 

破壊の超新星と、金色の巨龍がせめぎ合う。

 

一歩も譲らぬ力のぶつかり合い。

 

対決を制したのは、ビルスだった。

 

「もらったぁぁ!!」

 

パワーだけをその場に残し、まるで脱皮するように分裂したビルスの本体は、無防備に構える俺に向かって“破壊の力”を突き出す。

 

しかし俺に触れた破壊の力は発動せず、逆にその力を俺は吸収する。

 

「なに!?破壊神の力を…!」

 

急いで戻ろうとするビルスだが、もう遅い。

 

「か…!」

 

本体という制御を失い、徐々に暴走しそうになる破壊神の力そのもの。

 

「め…!」

 

瞬きするほどの間に、気が構えた両掌の間に溜まっていく。

 

「は…!」

 

金色に輝く気の塊は、今か今かと放たれるのを待ちながら赤い電光を迸らせる。

 

「め…!」

 

ビルスはようやく分裂した巨体にたどり着くが、もう遅い。

 

「波ああぁぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

放たれたかめはめ波は破壊神の巨体に命中すると、巨体に同化しきれなかったビルスを弾いて結界を破り、空へ宙(そら)へと飛んでいく。

 

俺は地球から数光年離れた場所で巨体の力を包むようにして消滅させると、ここにまで届くほどの爆光が起きる。

 

やがて光がおさまったころ、俺はおもむろに気絶したビルスを抱えあげ、自身の勝利を宣言した。

 

「俺の勝ちだっ!」

 

カプセルコーポレーションから届く俺への歓声が、耳に響いた。

 

 

__________________________________

 

***side 悟空***

 

それから数時間後。

 

ビルスとウィスはお互いに首から一枚のプレートを提げて正座させられていた。

 

ビルスは『わたしはちきゅうをはかいしようとしました』。

 

ウィスは『わたしはろくでもないことをたくらみました』。

 

とそれぞれ書かれている。

 

「…くそっ!なんで僕がこんな目に逢わなきゃいけないんだ…」

 

小声でぼやくビルスだが、俺の耳にはしっかり聞こえている。

 

「…あんなに自信満々だったのに、ビルス様が負けちゃうからいけないんじゃないですか…なにが『破壊すると宣言した以上、ヤツは必ず破壊する』ですか…」

 

同じく小声でぼやくウィスだが、随分と余裕があるな。…なるほど、感覚器官を切ってあるのか。ずるはいかんよなぁ。

 

「ふん!」

 

「あああああああっー!?」

 

ウィスの肩に手を置き、感覚増幅の応用で無理矢理切った感覚を繋ぎなおす。ついでに足の痺れを増幅してやる。

 

途端に悲鳴をあげて悶え始めたウィスを見て驚くビルスだったが、すぐに理由を察したのか冷たい目線でウィスをにらむ。

 

「ふん!ざまあないね!」

 

「からむな、時間を増やすぞ」

 

「ぐぅ…!く、くそ、破壊神の力さえ戻ればこんなもの…!」

 

身じろぎするビルスだが、正座になった体勢から動くことは叶わない。

 

よくビルスとウィスを見れば、持国天にも似た仏像が全身を覆っている。現在の体勢はそれによって強制的に作られていた。

 

「俺の作った《修羅気功天》はどうだ?《水晶観音》ほどの自由度はないが、動かなくする分には十分だろう」

 

「はい、さすがは師匠。わたしではこれほどの強度はどうにも…」

 

謙遜するチャパ王だが、逆に俺では彼のような技は振るえない。

 

水晶観音は見た目は気で作った鎧に過ぎないが、彼は常に最高硬度を保ったまま状況に応じて関節を操作している。戦闘中にそんな神業ができるようになったのは、一重に彼の努力によるものだろう。

 

「ナムもすまんな、折角の如意棒を壊させてしまって…」

 

「いいえ!わたしごときがお役に立てて光栄です。武器ならいずれまた、どこかでよいものと巡り会えるでしょう」

 

気丈に振る舞っているが、内心ではずいぶんと落ち込んでいる。

 

今回の戦いにおいて、如意棒は重要な役割を果たしたとはいえ、彼にとっては無二の相棒を失った形になるのだ。

 

「…おい、そこの人間。ちょっとこっちに来い」

 

どこか言いづらそうにしたビルスがナムを呼び、おっかなびっくり彼はビルスに近づいていく。

 

「破壊神様、なにか?」

 

最低限の敬意を示してはいるが、相当警戒しているナムに向かってビルスは無言で耳を差し出す。

 

俺はわかったが、あれではナムにはわけがわからないだろう。

 

なので困っているナムの代わりに近づき、無造作にビルスの耳に付いた金環をむしり取る。

 

「いだっ!?おい悟空!なんで無理矢理取ったんだ!」

 

正座のまま怒る破壊神というシュールな光景だが、素直になれないお前に変わってやったんだ。むしろ感謝しろ。

 

「ナム、ビルスがくれるというんだ。遠慮せずに貰っておけ」

 

俺はビルスからむしり取った金環をナムの手に握らせる。

 

最初はわからなかったみたいだが、しばらくするとそれを見下ろしながら驚いた表情になる。

 

「こ、これはまさか…!」

 

ナムが念じると同時に金環は変形し、両端に金色の留め金が付いた黒い如意棒へと姿を変える。

 

「神が使う武器で、如意器という。意思ひとつで思うがままに姿を変える万能の武器だ。お前が棒の姿を選んだというなら、今後はそれが基本の形態になるだろう」

 

如意棒は正体こそ不明だが、先代の地球の神が持っていたとされる神の武器だ。

 

ビルスにはあっさり砕かれたが、本来魔族へ使う分には最強の武器と言える。

 

ちなみにこれは推測だが、もうひとつの耳についていた金環はZソードだろう。

 

そうだ、せっかく破壊神が気前よく寄越してくれたんだ。俺からもひとつ付け足してやろう。

 

「ナム、ちょっと貸してくれ」

 

「師匠?…わかりました」

 

俺がなにかするつもりなのを察してどこか不安げなナムだが、安心しろ。たぶん大丈夫だ。

 

「あーっ!お前僕の力を!!」

 

「…よし。これでこいつには劣化しちゃいるが“破壊神”の力が宿った。ビルスみたいな出力がないからなんでも壊せるってわけにはいかないだろうが、そうだな…魔人ブウぐらいなら上手く当てれば倒せるぞ」

 

「なんですってぇ!?」

 

「…重ね重ねありがとうございます。必ずや、今以上の強さを師匠にはご覧いれましょう」

 

自身の持つ黒い如意棒に宿った恐ろしい力を見下ろし、しかしそれに呑まれることなくナムは不敵な笑みを浮かべる。

 

新生した黒い如意棒の名を“黒龍(ヘイロン)”としたナムは、居ても立ってもいられないのか道場へと駆け出していってしまった。

 

ちなみに先程驚いたのは、パエリアを食べていた界王神である。

 

「ギラン、ちょっと来い」

 

「…ろくな予感がしねえんだが、なんだよ師匠」

 

巨体を遠慮がちに揺らしながらこちらへやってきたギランの両手を握る。

 

「お前のおかげで貴重な時間を稼ぐことができた。ビルスに聞いたよ、お前のグルグルガムがどんな結界より一番厄介だったってな。ありがとうよ、ギラン」

 

真正面からギランの目を見て俺は礼を言う。

 

今回、時間稼ぎを実行した俺たちだが、ビルスに勝てても付き人である天使への対策が不十分だった。

 

そこで急遽対策として取られたのが、ピッコロのパワーアップだった。

 

界王神からポタラを奪うようにして貰い受けると、俺は全力で飛行してナメック星へと向かった。界王神にやらせてもよかったのだが、ごちゃごちゃ説得するよりこっちの方が速いんでな。

 

一時間ほどで到着した俺は急いで事情を説明すると、ネイルを連れて地球へ戻り、ピッコロに界王神界まで連れていかせた。

 

破壊神への対策だと言うと、意外にもすんなりネイルの潜在能力解放を請け負ってくれた老界王神は六時間ほどかけて彼の潜在能力を解放。

 

老界王神のポタラも借り受け、戻った俺は天界の宮殿前で精神と時の部屋の気配が変わるまで待ち続けた。

 

やがて扉にヒビが入り出した頃、ピッコロ、ジュニア、ネイルの三人によるポタラ合体によって《最強のナメック星人》が誕生したのだった。

 

それが、ウィスの攻撃をあっさり受け止めた理由である。

 

「別に大したことはしてねえよ。でもま、あんたに礼を言われるなんざ滅多にあることじゃないしな。ありがたくもらっておくぜ」

 

そう言いながら、誰よりも誇らしげにするギランの姿を俺は微笑ましく見つめた。

 

「…さて、そろそろ来る頃合いかな」

 

「なにがですか?」

 

唐突に呟いた俺の言葉に答える形でチャパ王が訪ねる。

 

すると、突如として光が集まり、そこから界王神と変わらない小柄な人影が現れる。

 

「よう、久しぶりだな。まだ大神官なんざやってるとは思わなかったぜ」

 

そこから現れたのは、ウィスにとってはある意味で“父親”に当たる存在。

 

あらゆる天使の生みの親。

 

「『造物神』、お前の目的はいったいなんだ。俺が記憶を失ってからずいぶんと宇宙を消してきたみたいだが、創造神はそもそも宇宙の消滅なんぞ望んじゃいない」

 

「あなたには言われたくありませんね、『闘争神』。“原初の七柱”のひとつでありながらヒトに落ちるまで転生を繰り返し、今さら記憶を取り戻した貴方になど」

 

俺と造物神の間に緊張が走るが、意外な人物がその場を遮った。

 

「悟空師匠!こんなところにいましたか!」

 

走ってやってきたのはマークだった。顔中を汗で濡らし、必死にこちらへ駆け寄ってくる。

 

…こんなところも何も、俺達がここで戦勝会をやっているのは通達してあったはずなんだが、いったい何があった。

 

「師匠!お願いです!一生の頼みです!どうかミゲルを!ミゲルを助けてください…!!」

 

「なに…?」

 

サタンの口から飛び出した言葉に、俺は眉をしかめるのだった。

 

どうやら今回の騒動、まだまだ終わりそうにないらしい。

 




どんなにオリジナル形態を出しても、最後は原点に立ち返ろう。

悟空が金色の超(スーパー)サイヤ人に至ったのはそういった目標がありました。

正体としては本編でもあったように闘争本能の具現化です。超(スーパー)サイヤ人4の状態で通常の超(スーパー)サイヤ人に変身した、といえばわかりやすいでしょうか。理屈としてはブルーに近いといえば近いですね。2、3への変身も将来的には可能です。もはやナンバリングの意味があるかはわかりませんが(苦笑)

やりたかったことが次々と終わっていくことに寂寥感を覚えますが、それだけ物語に終わりが近づいてきたということ。

魔人ブウ編以降の時間軸は外伝になるかな。

たぶん、地球のドラゴンボールをはじめて使う次回かその次が最終回です。
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