まだまだ明かされていない謎。出したかった設定など、もろもろ存在します。
ですが、それらを無理にすべて出すよりも、物語としての区切りを大切にするためにここで最終話とさせていただきました。
今後も外伝扱いですが、悟空と妻たちの性活。原作よりも遥かに強くなった仲間たちのその後など、書いていくつもりです。
更新は不定期になりますが(苦笑)
今回はオリジナル設定がてんこもりですが、どうぞお楽しみください。
***side 悟空***
「こいつは…」
俺は動揺から涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにするサタンことマークを落ち着かせながら、彼の妻であるミゲルが入院する病院へとやってきていた。
ミゲルが突然倒れたのは数時間前。パーティに向かう準備をしている矢先の出来事だったそうだ。
ちなみに彼らの娘であるビーデルは、今はブルマたちに預けてある。
俺は高熱に喘ぐミゲルを見下ろしながら、その症状を診察して顔をしかめる。
「…ピッコロ。お前はどう見る」
「…恐らくお前と同じ結論だ。彼女の魂を“魔”が蝕んでおる」
一見すれば単なる高熱に喘いでいるだけの彼女だが、その実態は違った。
遠視能力を進化させ魂の様子すら見ることができる俺と、肉体に現れる様子や気の状態から判断したピッコロは、同じ結論に至っていた。
「くそっ…!このままじゃ間違いなく彼女は死ぬぞ…!」
目の前で再び“魔”に命が奪われることが我慢ならず、無力さに忸怩たる思いを抱きながら俺はある決意をする。
「魂に宿った“魔”がある以上、それに引きずられる形で消耗していく肉体はいくら回復したところで時間稼ぎにしかならん。悟空、どうするつもりだ」
「ドラゴンボールを使おう」
俺が告げた言葉に、ピッコロは静かにうなずく。
「…そうか。それがお前の覚悟なら、私からは何も言わん」
今彼女の魂には、魔族の魂が無理矢理宿っている状況だ。
闘争本能の高い存在ならそれは突然変異となり、高い戦闘力と残虐さを併せ持つ存在へと変貌しただろう。
だがミゲルは人間だ。それも善良な。
相反する魂が同居した場合、より弱い魂は侵食されてしまう。
ましてや弱い人間の肉体だ。魔族の器となるには脆すぎる。結果として、魔族の魂による侵食を受けて彼女は衰弱していた。
どんな優秀な医者でもわけがわからなくなるはずだ。魂の診断など、少なくとも俺が『伝説の超(スーパー)サイヤ人』のころでさえ一部の星系でしか成しえなかった出来事なのだから。
───だが、解せないことがひとつある。
彼女はすでに成人した人間だ。普通魔族の魂は、ヒトの魂が転生する最も未成熟な瞬間を狙い取り憑く。魂というのは基本的に脆弱であり、本来“原初の七柱”などの特殊な魂を持つ存在でもなければ、なにもすることはできない状態なのである。
バーダックがどれだけとんでもないことをしでかしたかわかっただろうか。
であるからこそ、神としては下位の強さしか持たない各宇宙の閻魔大王が地獄を管理できるのであり、『樹皇神』とリンクした“スピリットロンダリング装置”などという冗談みたいな機械が有効に働くのだ。
…そう、それこそフリーザのように“意図的”に魂を宿らせたのでなければ、すでに器に宿った魂へ魔族の魂を宿すなど、いったい“誰なら”できるというのか。
「クソ野郎、なにを企んでやがる」
俺はそれが可能である、さきほどほんのわずかに“俺たちを見に来た”と笑って去っていった相手を思い浮かべて歯を食い縛る。
───ここで、“魔族”と“原初の七柱”いうものを説明しておこう。
魔族とは、かつてすべての宇宙の礎を作り上げた“原初の七柱”のひとり『創造神』の力が生んだ“淀み”───世界を生んだ反作用『マイナスエネルギー』そのものだ。
この宇宙そのものを誕生させた彼女の膨大な力は、それに応じた反作用を生んだ。
“淀み”であるマイナスエネルギーはやがて形を成し、自我を確立させると自らを『魔族』と呼び暴れ始まった。
自分達とは違う存在を、世界すべてを否定するために。
“原初の七柱”のひとつであった俺は、当時やつらとの戦いを幾度となく繰り返した。
幾万年…幾億年と…
“原初の七柱”はまだ宇宙ができる前、精神と時の部屋にも似た真っ白い空間で生まれた。
あらゆる存在を創り出す最初の神『創造神』。
創造神の足りぬ部分を補い、必要なモノを造り出す『造物神』。
時間や空間の概念を生み出し、無限の世界を旅し続ける『時空神』。
世界に魔法を生み出し、異なる原則による法則を定めた『魔法神』。
命の循環を司り、神も人もすべての魂を見守る『樹皇神』。
命の多様性を司り、数多の種族が生まれる魁(さきがけ)となった『精霊神』。
すべての“闘い”の頂点にして生まれた時より最強無敵を与えられた『闘争神』。
創造神が宇宙を生み、造物神があまねく星々を造りだし、魔法神と精霊神がそこに暮らす命を作り出した。
時空神が時間や空間の概念を作りだし、樹皇神は命が終わった後の魂を見守る存在として神王樹となった。
そして闘争神こと俺は、創造神が作り出した宇宙の淀みである魔族と闘いそのことごとくを打ち倒した。
いったいどれだけの時間を戦いに費やしたのか、もはや磨耗した記憶から読み取ることはできない。
だが、そのとき俺は確実に飽いていた。
戦うことに。生きることに。神であることに。
そんなあるとき、ひとりの魔族が戦うのではなく話がしたいと言ってきた。
魔族にあっても特殊な不死身の特性を持つそいつとは何度も戦ったが、何度も戦ううちに次第に妙な友情関係が芽生えてきたのを覚えている。…いい加減倒すのが面倒だったのもあるが。
なにを話したのかなんて覚えちゃいないが、たぶん大した話をしたわけじゃなかったんだと思う。
それでも当時戦うことしか知らなかった俺には新鮮だったし、やつへ好意じみたものを感じたのも事実だった。
そんなある日、やつはイラつく俺にある提案をもたらした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『もっと闘争を楽しみたくはない?』
ピンク色の肌に、羽織る程度の上着。サルエルパンツを履いた“女”の魔人ビイが俺に向かってそう語りかけてくる。
愚問。あまりにわかりきった質問に、俺は本来であれば打ち倒すべき目の前の女を相手に笑みすら浮かべて答える。
『当然だ』
するとやつはニタリと笑い、魔法神の生んだ“多様性の法則”を宿した体をくねらせ俺にしなだれかかってくる。
この魔法と呼ばれる法則を魔人であるこいつが取得してからは殆ど戦っていないが、実際かなり厄介な相手であることは間違いない。
だがそれだけだ。
どんなに複雑怪奇な技を身に付けたところで、俺の前には敵などいない。
あらゆる敵が、一撃で粉砕され死ぬ。
俺に抱きつき笑みを浮かべる女『魔人ビイ』は不死身だからこそ死んでいないが、所詮それだけだ。一種の腐れ縁であるためある程度お互いの気心は知れているが、結局俺とこいつはいつか殺し合う仲なのだから。
『ねえ、一度死んでみるってのはどうだい?』
『なに?』
とんでもないことをさらりと口にした魔人ビイに向かって、俺はいよいよ死にたくなったかと殺気を漏らす。
『ちょっとちょっと、別にあんたと今戦おうってんじゃないよ。あたいが言ってるのは、今よりほんの少し弱くなってみない?っていう相談さ』
魔人ビイの説明を聞けば、どうやら樹皇神のシステムは魔族にも有効らしく、すでに前世の記憶をもって転生した魔族もいるのだそうだ。
倒したのを覚えてもいないそいつはどうやら今では“人間”として生きているらしく、記憶を持っていてもかつてのように暴れまわろうとはしていないのだという。
魔族の、魔人としての本能をも変質させてしまう“転生”という暴挙。
すなわちそれを使うことで俺を今とはまるで違う存在にすることが、魔人ビイの思惑であり、強さの根元を魂に持つ“原初の七柱”である俺を今の闘争神としての神の体ではなくすことが、俺の願う“血沸き肉踊る闘い”への道だと言うのだ。
かつて俺は、下界の星々で起きた実に低次元な争いを見てから、闘うことになにかを見いだそうとしていた。
自分よりも遥かに弱い存在が少しでも強くなろうとあがき、もがく姿。
その姿に俺がいつしか魅せられていることを、どうやらこの女は気づいていたらしい。
『…いいだろう。お前の企みに乗ってやる』
『あは♪やったね、それじゃ次に出会えるのを、あたいは楽しみに待ってるよ…』
それが、ヤツと交わした最後の会話になった。
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罠であっても、食い破るつもりでいた。それは俺の“驕り”そのものだったのだろう。
魂だけとはいえ、魔人程度に俺をどうこうできるとは思っていなかった。
だがまるでそうなることを見越していたかのように、俺を捉えた造物神は俺の魂に全ての宇宙から集めた膨大なマイナスエネルギーを注入した。
結果として、“魔族”の神である『魔神』となった俺が転生した。
意識はあった。だが、膨大なマイナスエネルギーから生まれた魔族としての本能には抗えず、俺は破壊と暴虐の限りを尽くし、暴れまわった。
今になればわかるが、恐らく造物神は魂を消滅させる力を俺に得させることで魔族を文字通り滅ぼそうとしたのだろう。
奴の思惑は半分うまくいった。事実、魔神として転生した俺は魔人をはじめとした魔族を悉(ことごと)く滅ぼした。
…俺を止めようとした魔人ビイでさえも。
その後は死後の世界においてはスピリットロンダリング装置を、生前の世界においては“願い玉”によってマイナスエネルギーを管理するようになった影響もあり、宇宙における自前の体を持つ魔族はいなくなった。
生き残りの魔族らはかつて獲得した自我を希釈し、マイナスエネルギーそのものとして宇宙を漂うことでわずかばかりの反抗を残していった。
しかし、造物神にとって誤算があったとするならば、『魔神』となった俺を止められる者がいなかったことだ。
めぼしい魔人や魔族を滅ぼした俺は、次第に宇宙そのものへ牙を向くようになっていった。
抗うことのできない破壊欲求に従い、俺はいくつもの宇宙を滅ぼした。
このままでは、やがてすべての宇宙が滅びる。事実そうなるのも、時間の問題だっただろう。
しかし事実として、そうはならなかった。
これまで事態を知らないようにされていた創造神は、宇宙が消えていくのに気づき嘆いた。
彼女は『魔神』と化した俺を止めるために、自ら俺の前に現れた。制止しようとする魔法神、精霊神、造物神を振り払って。
天地開闢に匹敵する戦いは、数万年に渡り続いた。やがて俺に勝てないと悟った彼女は自らの命を賭して俺から力を奪い、自身にとって不可逆存在である『破壊神』を生み出し死んだ。
そうして生まれた子供のような姿の『破壊神』は魔神となった俺を殺したが、死ぬ前に俺が放った一撃によって破壊神もまた殺された。
…それからのことは俺が転生するたびに得た記憶であるためぶつ切りだ。
だが、造物神は再び俺が蘇ることを警戒したのだろう。
死んだ破壊神の肉体を再構築し、バラバラに散った破壊神の力をそこに納めた。
不完全ながら“あらゆる存在を消滅させる”力を得た子供のような破壊神擬きは『全王』と呼ばれた。
その後造物神は大神官を名乗り、『天使』という自らの力の端末を使って各宇宙に存在する強者を選抜。宇宙の管理者として『樹皇神』と共に造り出した『界王神』の命と繋げた『劣化破壊神』を生み出した。
やがて造物神が危惧したように、魔神である俺はおよそ1000年周期で蘇り、その都度力を“思い出す”前に劣化破壊神によって破壊された。
そうして何度も何度も殺されていくなかで、あるとき死後の俺に語りかけてくる存在がいた。『樹皇神』だ。
もはや概念のみとなった彼女は造物神がもたらした混沌を嫌っていた。
自らが創造神の代理であると言わんばかりの行いが、彼女の逆鱗に触れていたのだ。
『樹皇神』は俺を“ヒト”として転生させると言ってくれた。すでに半ば概念化し、意識をほとんど持たない存在となりかけていた樹皇神にとってそれは賭けであったと言ってもいい。
だが彼女は、創造神が産み出した魂の産物である“人間”の可能性に賭けると言ってくれた。
その生まれ変わりが、原種サイヤ人の突然変異。すなわち『伝説の超(スーパー)サイヤ人』だ。
魔神としての転生では無くなったことで前世の記憶と力の大半を失ってしまったが、それは間違いなく俺にとってのキッカケとなった。
だが俺はかつてと同じく過ちを犯し、自分の子供さえも殺した。
そのときの後悔は今も胸に宿り続けている。
そして俺を蘇らせた者が何者であるのか…それは未だにわからない。
だがその相手の思惑がなんであれ、俺はそいつに感謝するとしよう。
そのことによって俺は“生きる”ことができているのだから。
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「出でよ神龍!そして願いを叶えたまえ!」
俺の言葉に応じて、復元された天界の広場にて神龍が召喚されようとしている。
空には黒雲が渦巻き、稲光が周囲を激しく瞬かせる。
7つのドラゴンボールが激しく輝いたかと思うと、光が巨大な竜を象り溢れだしてくる。
「なんという巨大さだ…!」
天津飯が思わずといった体で叫ぶ。無理はないだろう。
光と共に飛び出した神龍の巨体はいまだに出続け空を覆っていく。
巨大な体が空でとぐろを巻き、視界を埋め尽くす。
時間にして数分。一同が見上げる中、その全身は空を埋め尽くし地球を半球分覆ってしまうほどだった。
少し離れた場所から地球を見れば、如何に神龍が巨大かわかろうというものだ。
『…さあ、願いを言うがいい…!…どんな願いも“みっつ”だけ叶えてやろう…!』
ドラゴンボール。それは対となる宇宙それぞれに存在する生前の世界のマイナスエネルギー収集装置である。
“願い玉”と呼ばれる、星ひとつほどある大きさのものがこの宇宙と隣の宇宙である第六宇宙にも存在している。今使われているドラゴンボールは、そのオリジナルの願い玉の欠片から作られた一種の模造品である。
ドラゴンボールが願いを叶えられるのは、ふたつの宇宙より集められたマイナスエネルギーを糧に、文字通り神の力を行使可能とするからだ。
それはヒトの欲をつき、理不尽な願いを叶えれば叶えるほどにマイナスエネルギーを溜め込んでいく性質を持つ。
かつてあった宇宙のいくつかが消滅した原因は、この願い玉にあると言ってもいい。
世界を滅ぼすほどの魔族───龍魔族───を倒すために、造物神が全王を使ったからだ。
“災厄の宝珠”。それが神龍の、ひいてはドラゴンボールの正体である。
『…さあ、願いを言え…!!』
神龍の言葉に静まり返る一同。
ここにいる人間には、ドラゴンボールが持つ本来の役割と意味を説明してある。
破壊神であるビルスはさすがにそのことを知っていた。
彼の破壊の力は龍魔族といえど警戒に足るものだが、神龍は一切怯んだ様子を見せない。
むしろビルスの方が気圧されているようにすら感じる様子に、俺は緊張感を高めざるを得かった。
だが、覚悟はできている。この程度で願いを唱えるのを止めるわけにはいかない。
「まずひとつ目だ。今ひとりの女が死にかけている。彼女の魂に取りついた魔族の魂を取り除いて欲しい」
『…たやすいことだ…!』
俺のイメージから対象者を特定した神龍の赤い目が光り、超常の力が振るわれる。同時に消耗したプラスエネルギーを補填するように、すさまじい速度で神龍の内側にマイナスエネルギーが溜まっていく。
とはいえひとまず願いは叶ったようだ。
「あなた!ミゲルさんの容態が安定したって!」
電話を繋いでいたブルマが報せてくれる。さすが究極の神龍、仕事が早い。
ついでだ、他の用件も済ませてしまおう。
「よし!…ふたつ目だ。魔人ブウの魂に囚われた界王神らを復活させてほしい」
『…ふむ、たやすいことだ…!』
「み、みんなが帰ってくるのですか…!」
神龍の言葉を受けて嬉しそうな顔を隠せないのは界王神であるシンだ。いや、他の界王神が帰ってくれば東の界王神に戻るのか。本名を名乗ればいいのに、面倒なやつだ。
…記憶はすでにないようだが、あれが元魔人だとは誰も思わないだろうな。
そうこうしている内に神龍の瞳が一際強く輝くと、あらかじめ俺の前に用意しておいた封印の壺が動き始める。
蓋を開けてやると、そこから勢いよく復活した界王神らが飛び出してきた。
「う…こ、ここはいったい?」
最初に目を覚ましたのは大柄な南の界王神。…なるほど、大した実力の持ち主だな。まともに戦えば今のベジータ王でも苦戦するだろう。
「わたしは…魔人ブウに吸収されたのでは…」
やや虚ろな表情で現状をいぶかしんでいるのは西の界王神。モヒカンヘアーだが、なかなかの美人だ。後で声をかけてみるとしよう。
「シン!お前が我々を復活させてくれたのか!」
歓喜の声をあげたのは北の界王神。嬉しそうに東の界王神であるシンの両肩を掴んでいる。
「…大界王神様はどこですか?」
疑問の声をあげたのは西の界王神だ。たしかに、彼の魂だけは魔人ブウに残ったままだ。
『…その者は復活を拒否した…!…自分は魔人ブウと同化すると言っている…!』
「なんだとっ!」
神龍が告げた内容に驚いたのは南の界王神だ。俺もてっきり復活してくるだろうと思っていただけに、意外な結果に驚いている。
『…真実だ…!…待て、今直接言葉を聞かせよう…!』
神龍がそう言うと、光が集まりうっすらと透けた大界王神が現れる。サービスがいいな。
『…みんな、ひさしぶりだね。シンも、随分と苦労をかけたね』
「大界王神様…!」
東の界王神、シンは涙を流しながら透けたままの大界王神に近づく。
『神龍の言うことに間違いはないよ。それに、僕ははじめからそうするつもりだったからね』
「おい大界王神!君は僕に借りがあるだろう!それを返しもせず、このままいなくなるだなんて許さないぞ!」
自分は消滅するとわかっているのか、穏やかな表情を終始崩さない様子の大界王神の本気に焦ったビルスが駆け寄ってくる。
『おやおや、久しぶりだねビルス。はは、じゃあ悪いけど僕の借り逃げだね。ついでになんだけど、僕と同化した魔人の面倒を頼めるかな?なんでか今の君は破壊神じゃないみたいだし、暇ならちょうどいいだろ』
「…借りを返すどころか面倒ばかり残しやがって。“次”に生まれ変わったときは覚えてろよ」
それは決して果たされることのない約束にも聞こえた。だがいつか、数万年後か、数億年後か。魔人ブウが死んだ後ならば、いずれは会うこともできるかもしれない。
まさか今すぐ殺して転生させるのは、さすがのビルスも躊躇うだろうし。
『…はは、それは気の長い話だね。でも覚えておこう。いつか来世で…また逢おうね。…みんなも、元気で』
「「「「大界王神様!」」」」
東西南北の界王神が叫ぶが、大界王神は笑顔を浮かべて消えていった。
するとそれまで不安定な煙だった魔人ブウが安定し、まるまると太った体型の大界王神によく似た容姿の魔人が現れる。
気を失っているようだが…ん?気配がもうひとつあるぞ。
「下がれ皆の者!何者かが魔人ブウに宿っておる!」
ピッコロの警告に従い、戦士らが俺の妻らを庇うために前へ出る。その姿に俺は笑みがこぼれるのを抑えられない。魔人ブウであっても臆せず前に出る人間の姿に、界王神らが驚いた表情で見ていた。
やがて魔人ブウに宿ったもうひとつの気配はブウの頭にある穴から煙となって這い出てくると、時間をかけてヒトの形をとっていく。
「師匠!四重魔封波を仕掛けます!」
チャパ王の言葉に俺は頷こうとして、姿を現した魔人を見て思わず周囲の者を止める。
「待て!アイツは…うお!?」
姿を現した魔人はまっすぐ俺に突っ込んでくると、俺の胸元に抱きつき顔を埋める。
「師匠!」
ナムの緊迫した言葉にベジータ王が動こうとするが、俺の表情が敵対者に対するものではないことに気づいたピッコロがそれを止める。
「会いたかったよ!あんた!」
俺の胸元に飛び込んできたのはかつての腐れ縁。最初の不死者であり、異質な魔人。『魔人ビイ』だった。
「お前、いったいどうやって…!」
驚く俺にすがりつき顔をぐりぐりと胸板に押し付けるビイをどうしたものか扱いかねていると、ビイはそのまま口づけしようとしてきたので───とりあえず頭をひっぱたいて迎撃する。
「ふぎゃっ!ちょっとひどいじゃないさ!数億年ぶりに再会した恋人に対して!」
ちょいと力を入れすぎて頭に手形を残したビイを辟易として見つめながら、俺は頬をかきつつ答える。
「いや、なんていうか、つい。…というかちょい待て、いつお前が恋人に「つい!?ついであんたはヒトの頭なら砕けるような張り手をお見舞いするのかい!」あー、悪かったよ…」
顔をぐいぐい近づけてくるビイの迫力と言うか、意外と整った顔を直視しきれずに目をそらして降参すると、にやりと笑ったビイが俺の腕にしなだれかかってくる。あ、見た目より胸あるな。
「いいや、ダメだね。罰として…んっ!ほら、ね?これからあたしとしっぽりヤってもらうよ…!」
ヤってもらうの字を想像して興奮してしまった。
ビイは自分の股間に混乱から抜け出せない俺の手を招くと、本能的に動いた指が湿った音を鳴らし、そこが“準備万端”であることを知らせてくる。
思わず反応してしまう俺だが、さすがに今はまずい。具体的にはシリアスが台無しである。
「悟空。とりあえず界王神らの視線が痛い。説明しろ」
ピッコロの言う言葉に振り向けば、そこには俺を警戒して睨む界王神らの姿。ビルスも一緒に睨んでいるが、その目は笑っている。西の界王神は俺の股間を見て顔を赤くしているが…なるほど、逸物が完全体になっている。
「…すげえ面倒だから雑に説明するが、こいつは俺が闘争神だった頃に戦ってた不死の魔人ビイだ」
「…シン、どういうことか、説明してもらえるか」
俺の言葉を一ミリも信用していない様子の西の界王神だが、その視線はチラチラと股間に向けられている。
試しに上下に動かすと顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。ほほう。
「なにしてんのよ!」
「あだっ」
ふざけすぎてブルマにはたかれてしまった。
仕方ないので魔人ビイが掴まるのとは反対の手で彼女を捕まえる。ついでに乳を揉んでおこう。
「えっと、わたしもついさっき知ったばかりではっきりと断言できるものではないのですが…彼『孫悟空』さんは1000年前の“伝説の超(スーパー)サイヤ人”であり、かつて天地開闢より存在したと言われる原初の七柱の一柱『闘争神』です」
「伝説の超(スーパー)サイヤ人に、闘争神様だとぉ…!?馬鹿な、どちらも死んだはずだ!」
シンの言葉に動揺したのは北の界王神だ。なるほど、俺を知っているのか。ならば奴は知恵の界王神にあたる存在だな。
「まあ、死んだと言えば死んだな。“どこまで”を知っているかは知らないが、かつて『魔神』に転生して悪逆の限りを尽くし、滅びを体現せしめたのがこの俺だ」
俺は試すつもりで黒い超(スーパー)サイヤ人の力をわずかに解放しプレッシャーとして放ってやる。すろと、面白いくらいに界王神全員が動くこともできずに固まる。
南の界王神だけはどうにか体勢を整えているが、他はひどいものだ。お、西の界王神もどうにか耐えているな。なるほど、実力はともあれ彼女も力の界王神か。だが腰が引けている辺り、トラウマでも刺激したかな。
「いいね!そんな気配も出せるようになったんだな!」
「お前にほめられても嬉しくねえよ」
「あはっ♪相変わらず素直じゃないんだから!」
雰囲気を壊すように俺の背中をバシバシ叩いてくるビイに促される形で俺はプレッシャーを納める。
「…ウサス殿。彼の力は我々界王神を上回り、ビルス様をも凌駕するものです。彼の言う闘争神の話が本当かはともかく、敵対するべきではありません」
南の界王神───ウサスは冷や汗を流しながらシンに諫められて悔しげに俺を睨む。俺に向かってこようとしたみたいだが、シンが察して止めに入ってくれたようだな。
少々ブルマの乳をこねるのに夢中になりすぎたようだ。
「…ドラゴンボールを使い我々を蘇らせてくれたことには礼を言うが、彼の力は危険すぎるぞ」
ウサスの言うことも尤もだろう。もし仮に俺が暴れれば、たぶん全王が対応する前に全宇宙の半分は破壊できる。今はビルスから奪った力もあるしな。
「まあ、仮にも宇宙を管理する界王神としてはそうだろうな。だが誓ってやってもいい。俺はもう、無意味な破壊はしない。…それが魔族だろうと、神だろうとな」
ろくなことをしない魔族も、偉そうにしているだけの神々も、ことごとく滅ぼしてやりたい気持ちがなくなったわけじゃない。
「…ようやく気づいたんだよ。創造神は、あいつは初めからそんなこと望んじゃいなかったのさ…」
かつて彼女を守るために戦い、やがて彼女を殺してどれだけの時が過ぎたのだろうか。
造物神ならばそういったところは正確に把握しているだろうし、時空神ならばやつの能力で知ることもできるだろうが、戦うしか能のない俺にはそれらを推し量ることはできない。
…だがいずれにせよ、造物神がなにかを企んでいるというならば、それを止めるのは俺の役目だ。
まあなんにせよ、ここですべてを説明することはできない。情報を伝えていい相手と伝えてはいけない相手が混在しすぎている。…どうやらすべての界王神が味方ではないようだからな。
「神龍!!最後の願いだ!殺されたジンジャータウンの人間を、殺されたときの記憶を消して甦らせてくれ!!」
『…よかろう、たやすいことだ…!』
俺は流れを誤魔化すかのように叫ぶと、再び眼を赤く輝かせた神龍の力によりジンジャータウンの様子が変わる。
人の存在しないゴーストタウンだった街に、混乱しながらも生き返ったことを理解した人々の歓声が聞こえてくる。
何人かは上空の神龍に気づいたのか、指をさして驚愕している。
『…願いは叶えたぞ…!…さらばだ…!!』
役割を終えた神龍は再び輝くと、まるで散るようにして宇宙へと輝きを霧散させて消えていった。
目の前には、ややヒビの入ったドラゴンボールが石となって落ちてきたのでそれを俺は気で受け止める。
…これで次に使えば、このドラゴンボールからは間違いなく龍魔族が甦る。
天変地異を併発し、あらゆるそんざいを否定する災厄の魔族が。
ドラゴンボールを使わないのがベストなのだろうが、どうやらそうも言ってられない事態がいつ起こるかわからない。
これまでも俺は、いくつも予め備えることで事態に対処してきた。
後悔しないために。
失わないために。
守るために。
これからもそれは変わらない。変えることはない。
記憶を取り戻したところで、今の俺はまだ弱い。かつて闘争神だった頃から比べれば一パーセントに満たない力しか振るえないだろう。
だがそれでいい。弱いということは強くなれるということなのだから。
そして今度こそ家族を守る。
もう誰かを泣かせたりはしない。
そのためなら、どんな辛苦も耐えて見せよう。
俺は、“孫悟空”なのだから。
ひとまず本編を最終話とさせていただきます。
これは一重に、自分自身にかかるプレッシャーからの解放という意味合いが強いです。
なので、まだ回収しきれていない伏線や設定など、今後の外伝で明かしていくつもりですのでよろしければお付き合いください。
では恒例の補足★説明
魔人ビイ
女性型の魔人。原初の魔族といってもよく、はじめて不死となった存在。肌はピンク。
闘争神であった主人公をたぶらかし、転生させて恋人になるつもりでしたが目論見を造物神に見抜かれて失敗。彼によって封印され、魂だけとなった闘争神が魔神へと変貌するのを見ていることしかできませんでした。
その後魔神となった主人公に挑みますが敗北。肉体を消滅させられましたが、その魂は無意識に主人公が消さないように配慮したため無事でした。
その後は魂だけの状態で数億年の間宇宙を漂っていましたが、正体は気づかれなかったものの造物神に見つかり捕まってしまい、ミゲルに移植され悟空に無理矢理ドラゴンボールを使わせるきっかけとさせられてしまいました。
ところが宿った相手が悟空の知人だったこともあり、彼女が死なないよう尽力し(本来なら彼女が宿った時点で死んでいる)、神龍による超常の力で魂を剥がされると近場の魔人ブウ(純粋)の肉体を奪い取って復活しました。
目覚めて速攻で悟空に言い寄ったのは、申し訳なさと欲情と永年の想いがスパークした結果です。
戦闘力においてはかつて闘争神であった悟空をして“厄介”と言わしめるもの。
不死身である特性と魔法神の作った多様性の法則(要するに魔法)を宿したことが武器であり、気の出力では遥かに劣りながらも殺し合いなら絶対的な優位にたつことができます。
【能力】
・不死身。全身を気化されようと復活可能。自身を構成するマイナスエネルギーそのものを等量のプラスエネルギーで吹き飛ばされない限り復活できる。
・魔法。蘇生に匹敵する治癒能力。変化能力など多岐に渡る。ドラゴンボールには一歩及ばないものの、大半の願いなら彼女が肩代わりできる。ただしあまりに大規模なものを行使するには気が足りないため、他から借りてくる必要がある。
・東西南北の界王神
彼らの名前はそれぞれ英語の東西南北をアナグラム的に入れ換えただけ。シンは変更すると分かりにくいので、原作そのまま。
ウサスが南の界王神。ノスが北の界王神。エストゥが西の界王神。
・願い玉を作ったのって龍神ザラマじゃないの?
アニメでも名前しか出てきてないので、この作品だと別名を名乗った造物神ということにしてあります。または彼の配下でも有り。
・大界王神が魔人ブウと同化することを選んだ理由。
完全に魂が癒着してしまっているため、剥がすと死んでしまうというのがひとつ(神龍は剥がして死んだ後に復活させるつもりだった)。大神官である造物神のある企みに気づいており、それが魔人ブウを界王神界に送り込まれたきっかけだと気づいているため。またそれに対する贖罪と意趣返し。
・原初の七柱
唐突に前回から出てきた最初の神々。元々はオリジナル小説の設定。実は最初から出すのを決めてあったのだけど、これを出すのにこんなにかかるとは思わなかった。
創造神
女性。他の原初の七柱のお母さん的存在。あらゆる存在を創造した最初の神でもある。とはいえ生きていくために必要な環境作りをうっかり忘れてしまう天然さんでもあったりする。他の六柱すべてから愛されていたが、マイナスエネルギーという反作用を消滅させようと動いた造物神によって遅れて闘争神の変貌を知る。
戦闘力という面においては直接的な攻撃手段は持たないものの、相手を即座に消滅する宇宙に閉じ込めてもろともに崩壊させるという結構えげつない技が使えたりする。
魔神との戦いで披露したが、崩壊前に脱出し続け徐々にその速度をあげていく魔神相手に敗北を悟り、変貌した恋人である魔神から闘争神としての“破壊の力”を奪い、自らの肉体を糧に破壊神を創りだし死亡する。
造物神
男性。大神官を名乗り、すべての宇宙を管理する存在。うっかり者の姉をサポートする有能な弟ポジションのキャラ。シスコン。姉の愛情を一身に受けている(と勘違いして)闘争神を妬み、彼が無責任に神の肉体を捨てた隙をついてマイナスエネルギーの結晶である魔人を消滅させる存在としてアンチマイナスエネルギーとも言える魔神を造り出す。
当初すべての魔人を消滅させた後は、創造神と協力して破壊しても無限ループを繰り返すだけの小宇宙に魔神を捉えようとしたが、創造神にその歪んだ愛情からの行動がばれてしまい彼にとっては最悪の悲劇を生む。
今の彼にとって大切なのは姉の忘れ形見であり自分の作品でもある全王であり、他の存在は所詮使い捨てに過ぎない。
マイナスエネルギーを管理するシステムを樹皇神と協力して作り上げた。
時空神
男性。時間や空間の概念を作り出した存在。本人はすでに概念と化しているものの、その能力は本編未登場のあるキャラクターに受け継がれている。
魔法神
女性。様々な魔法を法則として作り出した存在。すでに概念化。ドラゴンボールのオリジナルである願い玉が扱う超常の力や、界王や界王神が使う魔法はすべて彼女が生み出したもの。
樹皇神
女性。肉体という器を無くした存在を清め、新たな命として送り出す役割を選んだ存在。もっとも早く概念と化したため、彼女のことは造物神でさえ性格を把握できていない。
闘争神の妹のような立場にあり、魔神と化した彼を最後の意思でヒトへと転生させた。
精霊神
女性。うっかり者の姉に変わって、魂だけだったあらゆる存在に肉の器を与えた神。喧しい。まだ概念化していないが、その本体は造物神によるある目的のため、どこかの宇宙に封印されてしまっている。
闘争神
主人公、孫悟空のオリジン。生まれたときより最強無敵の力を与えられたため、億兆単位で繰り返されるマイナスエネルギーの処理に飽きてしまい、仕事を放棄したとも言える事件を起こした。
創造神とは特に仲睦まじく、恋人のような関係だった。
他の神々にとっては父親のような存在。
以上です。
さ、しばらく時間を置いたらエロを書きますかね。
お付き合い、ありがとうございました。