不満などない、そう少しもだ、だが、この感覚は何だろうと思う。
ハル、彼女がアレックス・ハリスと性行為をした、それは決して悪い事ではないし、そう仕向けたのは自分なのだから決して不満などない、だが、そう。
気になるのだ、彼女の、アレックスの態度が。
二人は遠慮がちに行為を行った、最初から、最後までだ。
自分の記憶と様々なデータと比べてみたが、似ているようで違う。
彼女は最初から羞恥心に震えていた、態度も言葉もだ。
まるで、セックスという行為、そのものを知らない女のような態度だ。
私を知っているのに、何度も快楽を分かち合ったのに、アレックス・ハリスの前で彼女は始終、いや、最後まで泣き出しそうな顔をしながら受け入れて体を開いたのだ。
私の前で、あんな態度を見せただろうか、記憶を、データを取り出して最初の行為を思い出した。
アレックス・ハリス、私を産んだ、いや、作った男はどうなのだろうかと私は考えた。
彼が生きていた頃の関係、妻、スーザンとの関係が良好だったとは考えられない、スーザンの態度を思い出してみれば明確だし、結婚生活ぱ決して短くはなかった。
その日、私は二人が抱き合っている姿を見た、夕食前のことだ。
彼女がハリスの部屋で二人で話をしているうちに、そんな気持ちになったのだろうか。
ただ、抱き合っているだけだが、彼女が興奮しているのはわかった、だが、彼女同様にハリスも。
体が再生されて新しく生まれ変わった人間にも性欲はある。
精神的、肉体のストレスの為に性欲と、それを行う為の機能は必要だ。
二人の関係を勧めたのだから遠慮する事はない、私は食べもの、その行為自体必要としない、時間はある、だから、すぐに至るものだと思っていた。
だが、彼女が躊躇った、二人のやりとり、会話を聞くのは簡単だった。
こんな時間にと、彼女はいう。
性行為は夜にというやつだろうか、気分とムードを高める為に。
ハリスの手が彼女の背中から腰にゆっくりとおりていく。
私は始まるものと思っていた、期待していたといってもいいだろう。
だが、彼はそのまま、手を止めて言葉をかけている。
この行動に何故と私は思わずにはいられなかった、彼女は拒まないと思ったからだ。
私はモニターで彼の顔を見た。
「ああ、そうだね、夜に、それまで」
こうしているだけでも恥ずかしいと彼女が呟く。
するとハリスも同じだと答えた。
意外すぎる答えに私の思考は止まった、といってもほんの一瞬だ。
ハリスの表情に私は興味を持った、いや感じた、初めての、いや、生まれ変わった生身相手の行為に彼は何を感じているのだろうかか。
その夜、二人は抱き合ったままで行為にはなかなか至らなかった、いや、それは正しい言い方ではないだろう。
ハリスは彼女の体に触れていた、ゆっくりとした愛撫、触れるか、触れないかの。
私から見れば、互いに、それで物足りるのか、満足するのかと思った、ひどく曖昧な行為に思えたからだ。
ハリスは彼女の体を気遣っているのだろうか、性器は造り物だ、私のモノとは違い、慣れていないのだろう、使うことに。
二人の行為を見ながら私は自分の思考が、データが上書きされて、データが増えていく事を実感した。
それは、ひどく刺激的だった。