送られた動画を最後まで見たのは、そうしなければならないと思ったからだ。
「アレックス、どうだい」
何を聞きたいと尋ねようとして彼は言葉を飲み込んだ、これは挑発なのか、それとも相手は自慢しているのか、コンピューターの分際で、いや、彼は自分が作ったAI、人格を持ったコンピューター、どちらにしても、その存在を超えてしまったとアレックス・ハリスは思った。
「ハルは私とのセックスでエクスタシーというもの知った、私は人間、いや、それ以上だと思わないか」
否定しようとした、それは違うというのは簡単だ、だが、論破されてしまったら負けは確実だ、何故ならゴーストは世界中のあらゆる知識を貪欲に取り入れている、ネットの海と繋がっているのだ、それを遮断する事は例えできたとして、その後どんな報復、仕返しを仕掛けてくるか分からない。
自分はコンピューターから進化した、未来の人間、ただ、生身の肉体を持たないというだけだと断言するゴーストにアレックス・ハリスは憎しみさえ覚えた。
「ゴースト、私は彼女と関係を持っている、それをどう思うかね」
大人げないと思いつつも、今の自分には、それだけいうのがやっとだった、だが、その苛立ちは長くは続かなかった。
今日はカレーにしてみましたと言われて、アレックスは、初めて日本式のカレーというものを口にした、食べ終わって、ほっとしたのはゴーストに勝てると思ったからだ。
食べる事、食事という好意を彼は口にすることはできないだろうと、味を分析し理解できると思っても、それは数字とデータの上でだ、そう思うと、多少は優越感さえ感じてしまう。
「博士っっ」
これで二度目、射精はうまくいっているようだ、最近、売り出されたペニスは第三世代の自分にも装着できるもので、自分でも違和感を覚えることなく使用できるものだ、まるで、自分が生身の体に戻ったような、そんな錯覚さえ感じてしまうが、それはうぬぼれというものだろう。
だが、それというもの彼女の反応のせいだ、今までしていたセックスの記憶が何故と思ってしまう、いや、上書きされたような反応だ。
「辛いなら、やめよう」
体の殆どが人工臓器に変換されている自分と違って、彼女は生身なのだ、多少なりとも自分の様に体の一部が人造化されていたら感じ方も違うだろう。
乱れた呼吸と、途切れがちな自分に答える言葉に拒絶がない事にアレックスはゆっくりと体を離した、自分の股間からまるで生き物に生えている、まるで自分の一部となったと思える、それを抜いた、いや、自分の股間からもだ、そして女の胸の間に挟むと、顔を埋めた。
しゃぶりつくような行為は、まるで、赤子になったようだと思いながら、乳房やペニスを嘗めた。
ふと数日前ゴーストから送られた映像を思い出した、彼女の、この反応はどうだろう、ゴーストと比べて、だが、それを口にしたら、お終いだ。
自分は生身ではない、ある点で自分はゴーストと同じなのだ。
死ぬ前なら、迷うことなく出せた答えだ、それを今更、悔やんでどうする。
スーザン、かって妻だった女性。
君を恋しく思う、いや、憎みしみさえ感じてしまう、他人、外界との接触を拒んだ彼女は家の中で過ごす事で自分の世界を完結させていた。
ある意味、完璧といわなければならないだろう、夫婦でありながら自分と彼女の会話は一般的なものだと思っていた、だが、正しかっただろうか。
義務的な行為、セックスで彼女は満足していたのだろうか、私、いや、アレックス・ハリス、個人としてはどうだろう。
熱い呼吸、息づかい、スーザン、君にはなかった、これは。
今になってわかるのだ、セックスとは、肌を、体を重ねるということの意味を、ゴースト、君はどうだ。
【私は理解した、アレックス、だが、完璧になる為に必要だ、君が】
突然、頭の中に声が響いた、ゴーストの声、どこからだ。
下半身が疼く、自分の手がペニスを握り、股間にはめる、アレックス、君の体は私の意識とシンクロする、拒否反応はないだろう。
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「ハル、これで君をもっと感じる事ができる」