こんな衝動的に書いた作品をここまで読んで注目して頂いて恐縮極まりないですが
本当にありがとうございます!
では後編をどうぞ。
“バシャン!”
「んぐぅっ!?」
深い眠りについていたあたしに突然冷たい感覚と激しい音が襲った。
水か何かを掛けられたのか、どっちにしても行き成りの出来事に直ぐに目を覚ましたあたしは纏わり着く液をブルブルと横に振う、けど。
「ん?」
動かせたのは顔だけで腕と足の部分が全く動かす事が出来ない。
首だけを動かしよく見るとあたしは小田とセックスした時の即ち裸のまま椅子に座り、手首と肘部分は肘掛けに足首は前脚にロープで縛られ固定されている。
周りには十数個のロウソクでこの部屋を薄暗く照らし、更にさっきから喋れなかったのもあたしの口はロープを咥えられた状態で結ばれており、ここまで来たら何が起こったのかをあたしは嫌でも思い知らされた…“誘拐”されたんだって。
「んー!んぅー!んー!」
「んん!んぅうう!?」
動揺を隠せないあたしだったけど横から別の人のうめき声が聞こえそちらの方に向けると、そこにはあたしと同じ素っ裸の状態で椅子に縛られてる小田の姿が眼に映る。
この異常な状況を察してパニックに陥る小田は抜け出そうと暴れてる。
あたしは「小田!大丈夫!?」と言えないのに思わずそう言った、けれど伝わらないとは言え妙な事に小田の視線は真っ直ぐに別の方に向けていたのであたしは恐る恐る小田と同じ方向に向けた、そこには。
『………』
右手に小型のバケツを持ちながらこっちの方に向けてる謎の人物。
パーカー付の黒いジャケットとジーンズを身に纏い黒い革のグローブを着け…そして極めつけは細い目と薄っすらと笑みを浮かべた唇に白い肌をしたお面、“能面”をソイツは顔に着けていた。
「んぅ…!」
十中八九目の前の人物があたし達を誘拐した奴だと瞬時に理解した、けど同時にその格好だけでもこいつは“危ない奴”だとあたしの本能が警戒し思わず悲鳴を漏らしてしまう。
『…お前は一体何者なのか?何故自分らがここに居るのか?何をされるのか?…大方考えてるとすればそれ位だろう』
能面を着けたソイツはまるであたし達の心情を見抜いてるかのように言い当てた、その声は低く機械的に聞こえるから恐らく推理ドラマ等でよく犯人が使う声を変換するボイスチェンジャーだ。
『…呼ばれる名称など意味も無ければ何の興味もない、未来永劫死ぬまでやる事はただ一つ』
そう言いながら仮面の奴は持っていたバケツを乱暴に放り投げると。
『貴様らの“未来”を…奪う事だ』
右腕を後ろ腰に回して何かを取り出しあたし達の前に出した…ロウソクの火でキラリと鋭く光ったそれは紛れもなくナイフだった。
かなり大きく見えて俗に言うサバイバルナイフって奴かもしれない。
「(ま、まさか…冗談よね!?)」
あたしは言われたことが信じられず思わず目を見開く、ソイツは“未来”を奪うと言った…そんな事を言われたらこれから何をされるか直ぐに思い付く…“殺される”って。
『………』
「ふぐぅううう!?んー!んぐぅー!」
ソイツは無言のまま足を踏み出し抜け出そうと暴れる小田の前で歩みを止めた。
目の前で惨劇が起きようとしてる…なのにあたしは恐怖の余り現実逃避な考えを
「(そ…そうよ、これは何かのドッキリよ!凄く
だってそうじゃない!こんな如何にも絵の描いた展開何て個人で出来る筈ないわよ、テレビでやってるドッキリ企画の様にあたし達を笑い者にしようとしてるんだ…まさかショウが噛んでるのかな?
でもそんな事をする様な性格じゃないし…もしかして、あたし達の関係を前もって知ったからその仕返しに?
だとしたらこれはやり過ぎよ!いくら幼馴染で仲が良かったからってやって良い事と悪い事が。
『…極刑…執行…』
あたしはショウに対して思い付いた憶測を立てて怒りに震えてると、仮面の奴が静かに呟きながら小田の右耳を引っ張りナイフを当て構え…そして。
“ギチュ…ゴリュ…グリュ…”
「んぐぅうぅぅぅううううぅぅうぅうう!!!」
「(う、嘘!?コイツ本気で耳を!?)」
何の躊躇もなく仮面の奴はナイフを前後に押しながら小田の耳を切り落とし始めた。
肉が切られ千切れていく生々しい音が嫌でも耳の中へと念入りに入り、塞ごうにも今の状態じゃ塞げる事が出来なかった。
そして
「ふぐぅぅううぅぐぐうぐごううううぅぅ!!!」
痛みから来てるんだろう小田の呻き声は身も気もよだち、もう耐え切れなくなったあたしは目を瞑って顔を逸らした。
「(なによ、何なのよこれ!?どうしてなの!?どうしてあたし達がこんな目に!)」
狙われる理由が全く見当つかないあたしにとって悪夢や理不尽でしかなく、こんな目に遭う事への運命や現実に対して恨みがましく心の中で呟く…すると。
“ピチャ”
頬に何か生暖かい感触が伝わり、バカな事にあたしは思わず目を見開き…そして目の当たりにした。
「(ひっ!)」
仮面のソイツは切り取った小田の左耳をあたしの頬に当て見せ付けると。
『これでもまだ冗談だ、ドッキリだと…思えるか?』
心の中で思った事を言い当てたソイツは、切り落とした右耳同様に一斗缶の中にポイッと呆気なく捨てた…途端にあたしの中で必死に保ってた“何か”が“プチン”と音をたててキレた。
「(いやぁああああ!怖い怖い怖い!嫌だいやだいやだあああああ!)」
今度はあたしもこんな風にされる…瞬時に本能で察した途端もう無様に泣きながら小田と同じ様に暴れまくった。
抜け出せないと言う事実なんて頭の中には既に無く只々助かりたいと言う生存本能があたしを問答無用で突き動かしていた。
『…“傷口に塩を塗る”と言うことわざを知ってるか?』
二人で暴れるあたし達にソイツは突然訪ねたので拍子抜けになり思わず止まってしまう、するとソイツはこの部屋に元から置いてあったのかテーブルの上に置かれてる物を手に取りあたし達に見せた。
ビニール製の透明な袋に入った白い物、そしてその袋に書かれてある中身の名は…“塩”。
『只でさえ最悪な事を身に味わった後に更に別の最悪な事が重なり起こる事…“踏んだり蹴ったり”や“泣きっ面に鞭”も同じ意味の部類に入るだろう…そして今から』
バカにしてるのか勉強の先生の様にあたし達にそう教え説いたソイツは、持っていたナイフで袋の口を開き後ろ腰にしまうと両手を突っ込み入れて少し流れこぼれる程の塩を鷲掴む、そして小田の方へと向かい。
『そのことわざを、言葉通りに実行する』
あたし達にそう宣言すると耳を切られ血を流す小田の耳部分に塩をなすりつけた。
「ぐぉぐごごおぐぐううううぐぉうごうごうぐごごぐぐぅぅうううう!!!」
袋が“塩”と名付けられてるだけで中身は別…そんな考えは小田の呻き苦しむ声によって瞬時に取り消された。
「(あああああああああ!誰か!誰か助けて!死にたくない、死にたくないよぉおおおお!!!
お母さああああん!お父さああああん!ショオオオオウ!)」
目の前の仮面の奴は狂ってる、こんな事をするのは人間じゃ…いや、姿形が人間の様に見えて本当はマンガの様な化け物に違いない。
でもどっちにしたってあたしもこんな人間以下の扱いを小田に続いて受けてしまう筈…そう思うと両親と大切な友達の事を想わずにはいられなかった、ご都合主義でも何でもいいから助けに来てほしいと。
でもそんなあたしの想いが都合良く叶う筈も無くグリグリと中へ入れるかの様に仮面の奴が擦り付けてると、小田の呻き声が止んでしまった。
ピクリと動く様子が無くよく見ると痛みの余りだろうか白目を向けていて、もしかして死んだのではと思ったけれど、その直後に。
“バシッ!” “バシッ!”
「う、うぐぅううう…」
『誰が寝て良いと言ったんだ?』
ソイツはさっき言ったことわざの一つ“泣きっ面に蜂”の如く平手打ちを放つと小田は苦しむ様な声を出しながら目を覚ました、どうやら痛みの余り気絶してたらしい。
そして弱ったところを見計らったのかソイツは小田の口に銜えられたロープを外した。
「や、やめてくれ…もう…」
『……』
あれだけの拷問をされたから小田はすっかり衰弱しきっている。
けれど小田の言葉を全く聞き入れる素振りを見せないソイツは、ナイフを再び抜き出しゆっくりと頭上高く振り上げた。
今度こそトドメを刺すのでは…そう思ったあたしの脳裏にグロテスクな惨劇が映り込み再び目を閉じ顔を背ける。
そして小田自身もこれから何をされるのかを直ぐに理解し溢れんばかりの叫び声を上げた。
「うあああああ嫌だあああああああ!止めてくれぇ!助けてくれよぉおおおお!!
何で俺がこんなめにぃいいい!死にたくねぇ!死にたくねぇよおおおおおおおお!
何だってするから!何でもするから命だけは助けてくれぇ!殺さないでくれぇええええ!!!」
見栄も意地もかなぐり捨てて死にもの狂いに
あたしだってそう言いたいけれど未だロープを咥えられてる状態じゃ喋れないし…なによりこんな頭のネジが取れた様な
そう思った矢先に。
『…ならば、こちらの要望を聞け』
何故かそいつはそんな事を言いだしあたしは思わず目を開けた、するとソイツはあたしの方にナイフを向けたので「お前の手で女を殺せ」なんて言うんじゃと一瞬思った。
けれどソイツの語った要求はあたしの予想した物とは全く異なっていた。
『この女と付き合いに至るまでどんな経緯を送ったか…包み隠さず正直に吐け、そうすればこれから与える地獄の苦しみから解放させてやる』
「は?…そ、それだけで本当に俺を助けてもらえ」
『だが』
場違いとも言える様な要求に小田だけでなくあたしも同様に唖然とするが、ソイツのナイフは再び小田の方に向ける。
『隠そうとする意思があると此方で判断したら…即座に執行する、いいな?』
「う…わ、わかった…言えば良いんだろ言えば」
バツの悪そうな態度をしながらも絶対的な主導権を持つソイツに逆らえる筈も無く、小田はあたし達の馴れ初めを語り始める。
「と、戸上って言うこの女の幼馴染が居てよ…そいつの親父が俺の親父が作った会社に勤めてて、そんでミスを犯したのを聞いたんでよ…だ、だからそれをネタにして言ったんだ…こっちの頼みを聞かなきゃ親父にチクって戸上の親父がクビになるかもしんないぞって…」
かなり大雑把で省略した部分が多いけど
『つまりは“脅し”による付き合い…という事か』
「だ、だったら何だってんだよ!?今となっちゃ真弓の方から俺の恋人になっても良いて言ったんだぞ!」
『……ところで、貴様の親が作ったと言う会社はこれの事だな?』
開き直る様に吠える小田を余所にソイツはポケットに空いた手を突っ込み何かを取り出した、それは小田が持参してた筈のスマホでその画面には○×会社と書かれたあの画面が映されていた。
「そ…そうだよ、親父はその会社の社長で俺はその息子だ…だから如何したってんだよ!」
仮面の奴の行動が理解できない故の怒りか恐れか小田は大声を出す。
確かにこの男と付き合う切っ掛けは最悪でしかないけれど、もう過ぎた事だし小田の言う様にあたしは恋人になるって決めたんだもの。
そうすればショウに対して暴力は振らないしショウのお父さんもクビにならずに済むし、何よりコイツとのセックスが毎日出来る上であの快感を思う存分味わえる事が出来るんだからこっちとしては願ったり叶ったりよね。
それに性格は乱暴だけどあたしが時間掛けて直してやれば少しはマシになるだろうし、だから今更そんな過去の事を掘り返されたってお互い困るのよね…正直もうどうでも。
『今から貴様の親に身代金を要求する…一億円だ』
「は、はぁ!?一億だって!?」
『何を驚いている、大手ではないがこの会社は中小企業でそれなりの収入に加え社員は少なくても百人は超えてる。
そしてお前は社長の息子だ…会社の金で事足りるだろうし、無理だとしても社員一人一人から五十か百万づつ掻き集めればギリギリ何とかなるだろう』
「そ、そんな無茶苦茶な」
『貴様の様な奴でも親からすればたった一人の息子、純粋に息子の為だろうが会社の面子や世間体の為だろうがどちらにせよ払わざる終えない』
仮面の奴はそんな事を述べると小田のスマホを使い電話を掛けようとしたのか弄り始める。
他人の身内や家族の事まで馬鹿にする様な冷淡極まりない態度に、あたしは此処に来て仮面の奴に対し初めて怒りの感情が湧き上がり始めた、その直後。
「や、やめろよテメェこのヤロウ!そんなバカみてぇな大金家にある訳ねぇだろう!!!」
『…何故だ?』
「な、何故って…その」
仮面の奴の問い返しに小田の様子が変化しどこかソワソワしてて落ち着きがない、こんな状態でそんな事を言われれば冷静じゃいられないのは当然だと思う。
でもあたしの中の感が告げている…“何か引っかかる”と。
「か、会社の経営が最近下がってるって親父が」
『だとしても直ぐには潰れる事も無い、それに戸上と言う他人の親が勤めてる以上社員に給料を払う余裕が無いとも思えんが?』
「そ、その…段々そうなってきて」
『…何故そんなに払わせたくない態度をとる、金を払って貰うだけでお前は助かるんだぞ?』
「だ、だから…う、家にそんな大金は」
次から次へと来る仮面の奴の質問攻めに小田は言葉を繋げようと必死になるが、あたしから見ても
そんな小田に対し仮面の奴はスマホをしまうと顔を覗き込むようにグイッと近づいた、小さく笑ってる様な能面にロウソクで部屋全体を薄暗く照らされてる事が相まって有無を言わせない威圧感と不気味さが醸し出されていた。
『…貴様には確かに言ったぞ』
静かにしかしハッキリとした口調で言いながら、ソイツは小田の右人差し指を包み込むように握り…そして。
『
“ボキャッ!”
「いぎゃああああああああああああああああ!!!」
生々しい音と共に、小田の人差し指が正反対の方へ折り曲げられる。
更に追い打ちをかける様に右へ左へと無理矢理にそして何度も方向を変えて動かし、それはさながらこのままねじ切ろうとする様な勢いだった。
「あぎゃがあがぎぐぎぎひぃぐぐぃぎぃひいいいいいい!!!」
『此方の言った要望から背けたと判断した…貴様の指を解剖する』
もがき苦しむ小田の声に何も感じないのか一方的に仮面の奴はそう言いながら、人差し指を真っ直ぐに戻すとナイフを爪部分に当てグサッと刺すとなぞる様に動かし。
“ベリッ!”
「ぎぇえええええええええええあああああああああああ!!!」
正確にそして強引に爪を剥ぎ取ってしまい、出血と激痛に小田は再び悲鳴を上げる。
「(またこんな、もうやめて!やめてよ!)」
地獄絵図となっている光景にあたしはただ黙って見る事しかできず拷問を必死に止める様に願うも、喋る事の出来ないこの状態では届く筈も無かった。
そして今度は切り落とす心算なのか、爪が剥がれ血を流す人差し指近くにナイフを立てに突き刺し固定した。
「あ、あぁ…ああぁあああ」
このまま倒せば確実に切断される…訪れる絶望の光景を想像した小田は口を開け恐怖と絶望が混じった震え上がる声と表情を出していた。
そして仮面の奴の手に力が入るのを感じたあたしは再び目を閉じ顔を背き、来るであろう惨劇と小田の壮絶な悲鳴に身を構えた…そして。
「あああああああああああ!!!嘘だったんだよぉおおおおおお!!!」
「(……え?)」
予想した通りに小田の悲鳴がこだましたが、口走ったその内容にあたしは拍子抜けてしまった。
目を見開いて小田の方を見ると指は切り落とされてなく健在であったが、それでも小田は更に叫んだ。
「家の親父が会社を建てたのも!社長だって事も!俺がその息子だって事も!全部嘘っぱちなんだよ!チクショオオオオオオオ!!!」
『………』
吐き捨てる様に言う小田に対し仮面の奴はナイフを無言で抜くと、今度は鼻の先数センチ近くまで突き向けた。
「ひぃいいいっ!」
『…二度目は無い』
一言そう呟くとナイフをしまって腕組みを作る。
しっかりと聴く態勢を整えた仮面の奴だけど、あたしは頭が真っ白になり呆然と只見つめるだけで…そんな中で小田は歯軋りし震えながら語りだし始める。
「…ああそうだよ、社長の息子何てみんな嘘だ…全てはコイツを俺の
『何故わざわざ戸上と言う男の事を利用したんだ?』
「つ、使い易いと思ったからさ…戸上とこの真弓は
『ならさっきのスマホに載ってるホームページは貴様が?』
「俺がんな細かいこと出来る訳ねぇだろう…パ、パソコン部の奴らにたの…ち…力づくで作らせたのさ、言うこと聞かなけりゃ痛い目に遭わすぞって何発かぶん殴って…」
『そうまでしてコイツを自分の
「…無茶苦茶腹が立つんだよ!俺より強くて勝気な性格は気に入らないけど、こんなエロくて上玉な体した女があの弱っちくてナヨナヨした戸上のくそゴミ野郎と仲良くしてる事自体がなぁ!
でもコイツは戸上の幼馴染だけじゃなくお熱だから女のクセにこの俺様をボコりやがって!
だからその仕返しにコイツを俺様好みにしてあのヘタレカス野郎から寝取ってやったんだ!
リア充爆破しろって奴さ、尤も戸上とコイツは別に付き合ってる仲じゃねぇんだからどうこう言われる筋合いなんかねえし~それに今頃はこの俺様達の関係を知って泣き喚きながら無様にオナってんだろうがよ~!キヒヒヒヒヒヒヒ!」
…開き直って調子に乗りながら気持ち悪い笑みと笑い声を上げショウを罵倒している…ずっと騙されていた…目の前の男は人の皮を被った鬼畜の
体中から沸々と湧き上がるのは鬼畜に対する怒りと憎悪。
そんなあたしの心情を見抜いたのか、質問しながら聞いていた仮面の奴はあたしに近づきタイミングを見計らう様に口に巻かれていたロープを外し解いてくれた。
その瞬間あたしは隣の鬼畜を殺す様な勢いで問い叫んだ。
「小田ぁ!…あんた、それだけの為にショウを使ってあたしを騙してたのね!?」
「あぁ?だったら何だってんだ!騙されてたテメェがアホなだけだろうが!
まぁあん時同姓同名なだけなんじゃって言われてビビったけどハッタリ噛まして大正解だったぜ!テメェが間抜けなおかげで、まんまと俺様の言う事を聞いたんだからよ~ケケケ!」
「っざけんじゃないわよこのクズ野郎!よくも今まで散々あたしの事を!!」
もう歯止めが効かない…いや、止める心算なんて更々ない!
思い付くありったけの言葉を暴れる激情と共にぶちまけてやろうとした、けど。
「ハン!テメェに俺様の事をどうこう言っていられる暇なんかねぇぜ、今頃は戸上の野郎の所に俺様達の関係を知る事になるんだからよ~テメェの手でなぁ!」
「…え?」
たったその一言であれだけ湧き上がっていた感情と頭に上ってた血が一気に冷め始めた。
「あたしの手でって…どういう事よ!?」
「覚えてねぇ様だなぁ、テメェが俺様達のプレイを直取りした後に戸上の野郎に送ったのを」
「う、うそ…そんなの嘘よ!どうせそれもアンタの出鱈目で!」
『…ならば己の目で確かめるんだな』
あたし達の間に横やりを入れた仮面の奴はジーンズのポケットに手を入れて何かを取り出す。
それは本体が黄色で小さなストラップを着けた、見間違う事が無いあたしのスマホ。
それを奴は許可なく勝手に弄ると送信履歴の項目を見せ付けて、あたしは目を見開く。
鬼畜の小田とセックスしながら直取し数十分ほど経過した後にショウにメールを送っていた…動画と共に。
「そ…そんな…それじゃ…」
「ケヘヘヘ、今頃あの野郎は絶望の余りさぞかし無様に転げ回ってるだろうぜぇ~。
大事な大事な幼馴染が暴力振るった男によって淫らにされてんだからよぉ~」
「あ…ああ…」
「しかも俺様と恋人になるって堂々と言っちまったんだぞ?もう二度とテメェに見向きすらしないだろうぜぇ」
立場がすっかり逆転し追い詰める筈が逆に追い詰められてる。
あたしは言い返そうにもそれが出来なかった…あたしの脳裏に。
“アンタと恋人になっても良いからぁ!もっとズボズボ入れて!!”
あの忌まわしい光景が次々と映り込み始めたから…。
「いや…やめてぇ…」
「それどころか腹いせにテメェの親にチクるかもしんねぇぜ?そうなったら勘当もんだよなぁ~」
“見せちゃう、ショウにも見せちゃうぅうううう!!!”
「やめて…もうやめてよぉ…」
「俺様が悪いってんならテメェも同罪だぜぇこのアバズレビッチが!俺様の極太チンポによがってアヘッてるテメェに親も戸上の野郎も寄り付きたくねぇだろうよ!」
“小田の太いチンポのぉっ!トリコになっちゃたのぉ!”
「いや…いや…」
「どんだけ泣き叫んで否定しても、テメェが俺様とヤッた事実は変わらねぇぜ~?
堪んなかったろぅ、この俺様のテクに?」
“いい!ぶちまけてぇえええ!あああああん!またイックぅううううううううう!”
「いやぁあああああああああああああああああああああああ!!!」
その瞬間…あたしの中で何かが音を立てて粉々に崩れて行くのを感じた。
「ア~ヒャヒャヒャハハハハァ~!テメェも戸上の野郎も二人揃ってざまぁねぇな!
大体雌犬の分際でこの俺様に楯突いた事が許せねぇんだよ!
黙っていりゃ良いのにクソ生意気な性格しやがって!そんで見せ付ける様に……」
ソイツはぶちまける様にあたしを罵倒するけど…途中から何も聞こえなくなってしまった。
でもソイツの言葉に耳を貸すどころか言い争う気力すら全く無かった。
俯くあたしの中で只々湧き上がるのは…ハッタリだと見破れず…ずっと騙され取り返しのつかない事をした…救い様の無いバカなあたしに対する自己嫌悪感。
そうだ…この鬼畜に体を捧げた切っ掛けはショウ達を守る為の行いだった、クビにされ路頭に迷った挙げ句…ショウと別れるのを阻止する為に。
それは只幼馴染で仲が良いからだけじゃない…あたしはショウの事が好きだった…それなのに…それなのにぃ…っ!
“こいつと恋人にぃん!なっちゃうけれど!”
“ショウとはずっと!おおん!友達…だからぁあああああん!”
あの時の
「…っ!…ん~…!……!」
『…地獄…解放……一言……』
隣で何かやり取りをやっている…鬼畜はまたロープを咥えられてるのかモゴモゴとした声を出し、仮面の奴は何か言ってる様だけど今更見ようなんて思わない…と言うより顔を上げる気力すらもう無い。
これから何をされても…それこそ殺されたって構わないとさえ思ってる…寧ろ殺して欲しいと望むくらいに。
…それから少しだけ時間が経ったような気がしその間あたしは隣を見向きもせず只々自己嫌悪に浸り続けていた。
『…次は貴様の番だ』
そんなあたしに仮面の奴はそう言うとあたしに再びロープを咥えさせ巻き付けたけど…もう抵抗する気力も無かった。
「うぅ…ふぐぅ…うぐぅ…」
巻き付けられた拍子に顔を上げ自然と鬼畜の姿が眼に映る…手や足…薄汚い股間部分…そして目と耳部分を包帯でグルグル巻きにされ血が滲み出し、小さく呻き声を出す痛々しくも哀れな姿。
騙されて散々弄ばれたのに…“ざまぁみろ”…何て普通は思う筈が不思議な事に何も感じなかった…爽快感どころか自分もこんな目に遭うかもしれないと言う恐怖心すらも…。
『…最後の見納めだ、しっかりと刻むが良い』
何も考えず鬼畜を眺めているあたしに仮面の奴はそう言うと、この部屋に置いてあったのか移動式テーブルをあたしの前に設置しその上に何かを立て掛けた。
「(…あ)」
それはあたしのスマホであり…その画面には初めてスマホを購入した際、直取りを試そうと思ってショウと一緒に撮った写真が映し出されていた…。
「(…ショウ…)」
ぎこちない笑顔でピースする姿が今となってはとても愛しい…そう言えば一緒にプールに行こうって誘ってくれたけどあたしは一度も受けなかったね…ゴメンね…一緒に行けれなくて…ずっと騙し続けて…。
そうよ…小さい頃からショウが大好きだった…気弱だけど優しくて一緒に遊んでもつまらない事なんて一度も無かった…遊園地でメリ-ゴーランドに乗ってはしゃいで、あとお化け屋敷に入った時はショウったら怖がってたよね…そう言えば観覧車とジェットコースターだけ唯一乗れなかったっけ…。
それから魚釣りで大きな魚を一緒に引っ張って釣ったり、虫取りでカッコイイ昆虫を捕まえて逃げられた際は喧嘩して凄く酷い事を言ったっけ…でもそれからある事が切っ掛けで仲直りもしたっけ。
それにあたしは知っている…ショウは本当は強い男の子だって事を…それを目の当たりにしたのが切っ掛けで好きになった事を…あれは…。
「…ひっぐ…うぅ…っ!」
あぁ…あたしは本当に汚い女だ…隣の鬼畜と何ら変わりはしない…一時でもこの状況をショウが作ったのではと身勝手に思い込んでしまって…ショウじゃ満足できないなんて馬鹿な事を考えて…挙句に自分のスマホであんな光景を映して…そして…。
『貴様が送ったのかそうで無いかの真相など最早何の意味も無い…“淫らな己を自分の意志で映した”と言う事実の前ではな』
…その通りだ…意図的なのか無意識だったのかなんてそれこそ今更よね。
“プツッ”
「んぐ…っ!」
突然あたしの目の部分に何か鋭い痛みが襲う…片方の目で見ると仮面の奴は注射器を手にし何かを注入し始めていた。
『どれだけ温もりを与えても…どれだけ想い人を愛していようと…性欲と言う本能の前では弱く脆い物だ』
そう言いながら今度はもう片方の目の辺りに注射を差し込み、その間にも語り続けた。
『そして貴様等は性の快楽に溺れ…最後には自らの手で育んだ愛を欺き…温もりを捨て…繋がりを断ち…思い出を壊し…嘘偽りへと変えてしまう』
「………」
『そんな貴様等の
…そうね…全くもってその通りだ…一度でもあたしはショウへの想いを自分から捨てた…セックスの快楽を優先してそれを味わい続ける為に。
こんな心も体も穢れきったあたしなんて生きてる資格は無い…親不孝者で大好きな人を裏切ったこのあたしなんて…。
『光が射す事の無い暗闇の中で…羽を捥がれた虫や鳥の如く…醜く無様にもがき続けるがいい』
涙を流す両目の辺りが痺れるのを感じ、タイミング良く仮面の奴は背後に回り左手であたしの肩を掴み固定しながら、右手に持つナイフをあたしの左目に移した。
恐怖何て微塵も湧かなかった…寧ろこれから来るのが何であろうと全て甘んじて受け入れる…そんな
『これが…穢れた貴様への罰だ』
思った事を口にしてくれた仮面の奴はナイフを横一線に引き…その瞬間あたしの見る世界は真っ黒で塗り潰されてしまった…。
「…これが、あいつに誘拐されてから起こった全ての出来事です」
あたしは包み隠さず身に起こった全てをその場にいる全員に話し終えた…静まり返る部屋の中で聴こえたのは皆の鼻息や誰かがツバを飲む音だった。
「…ねぇ翔五くん…あたしこんなに体も心も汚くなったんだ…こんなどうしようもない女と関わってしまって後悔したよね?…凄く迷惑してるよね?…心底軽蔑してるよね?」
「………」
問い掛けるあたしに彼は答えてくれなかった…。
一時は何時ものようにショウと呼んだけれど…語る度に彼への罪悪感が湧き上がりもう“ショウ”と呼べる事が出来なくなった…彼の心を踏み躙ったあたしが今更呼んでた名を言えるなんて虫が良すぎる…。
どんな表情をしてるんだろうか…軽蔑の眼差し?…ただ何も思い浮かばず呆然とした眼差し?…でもそれすら分からない…あたしの目は二度と映る所か光りさえ射さないんだから…。
「お母さん…怒ってるよね?…謝っても謝りきれない事をあたしはしちゃったんだ…引っ叩いても良い…親子の縁を切っても良い…あたしを」
“あたしを好きにしていい”…そう言おうとした瞬間あたしの体がグイッと引っ張られ強く抱きしめられた。
「バカな事を言わないで…!」
「おかあ…さん?」
「…ゴメンね…気付いてあげられなくて…ひぐっ…辛かったよね…苦しかったよね…守ってあげられなくて…ゴメンね…っ!」
声も体も凄く震えてた…それでもあたしを抱きしめる事を止めず寧ろ強まるのを感じた。
「何でお母さんが謝るの…悪いのは…バカなあたしなのにぃ…ぜんぶ…ひっぐ…あたしが…うぅ…うぅううっ!」
そうだよ…騙された事に気付けなくてセックスに没頭した…あたしが悪いのに…お母さんもショウも何も悪くない…全部…ぜんぶ…。
お母さんに強く抱きしめられ人肌の温もりを感じながら…あたしは静かに泣き続けた…心の中で何度も謝りながら…御免なさい…御免なさいって…。
「…翔五くん、同行に協力して感謝…いや…謝るべきなのかもな」
「……」
「彼女にもそしてキミにも辛く苦しい思いをさせてしまった…だからと言う訳ではないが、彼女の語った事を決して無駄にはしない…全力を尽くしてアルフを必ず逮捕してみせるよ…その前に容疑が浮上した彼を先にではあるが…」
「……」
真弓の身に起こった事を本人に聴いてある程度時間が経過した後、僕は悟堂刑事に家へ送ってもらう様に病院を後にしようとしていた…そして病院の自動ドアを抜け刑事さんからそんな事を言われた僕は…もう我慢の限界を達した。
「…刑事さん、お願いがあります」
「ん、なんだい?」
「僕を…逮捕してください」
「…は?」
こんな事を言って間の抜けた声を出すのも無理はないのは分かってる…それでも僕は止める事が出来なかった。
「逮捕しなくても良いです、僕を殴ってください!蹴ってください!」
「しょ、翔五くん!?キミは何を言って!」
刑事さんの両肩を掴んで縋り、必死に願いを乞う僕に刑事さんは抵抗するけど…もう限界だった…湧き上がる気持ちを抑えきれない。
「僕の…僕のせいなんです、真弓が…真弓があんな風になったのは!
あの時、真弓も狙われるかもって言った事が本当になって…その原因が僕にあったなんてぇ!
それだけじゃない!プールに誘った時だって何時もと変だって思ったけどそれ以上踏み込まなかった…僕のせいで真弓がセックスをさせられてるなんてこれっぽっちも思ってなかった!」
「……」
「結局僕はあの時と同じだ…守って助けるどころか…逆に無茶苦茶にして…!」
“おとうさん…あの小鳥さんは?”
“…お父さんあの後見に言ったけど何所にも居なかった…あの小鳥は他の鳥か野良猫にもう…”
“そ…そんな…”
思い出した…思い出してしまった…僕が小学校に入る前…真弓に出会う前に体験したあの辛い出来事を。
「…キミは自分の事を客観的に見られる子だ…だから」
「分かってます!分かってますよ!…こんな風に考えたって、自分を責めたって何にも意味が無いんだって…自分勝手な自己満足だって事も…でも!…でもぉ…うぅ…あぐぅ…っ!」
刑事さんの言う事は分かっている…それでも僕は…自分を責めずには入られなかった。
僕と仲良くしてたばかりに真弓は小田に狙われ…その結果一生見る事の出来ない目に変えられて…そうなるまで僕は何一つ気付く事も出来ず…なにより気付いた所で僕は止める事が出来たのか?
…僕自身でさえ答えは分かっていた…“怖くて何も出来ない”って…。
「うわぁあああああああああああああああああああああ!!!」
何もかもが遅すぎて…そして気付いた所で止める勇気を出せない自分の余りの弱さを再確認し…僕はただ泣き叫ぶしかなかった……真弓ぃ…ゴメンね…ごめんなさい…。
つづく。
今回の拷問がキツイか浅いかは人其々によりますね。
私としては実の所もっと過激な方法を考えてますが、取りあえずここまで
と言う形にしておきました。
また見て頂けたらありがたいです、それでは。