気が付いたら犬夜叉に憑依していた件についてだれか説明を求む 作:nenenene
村はずれの樫の木。その内の一本の枝。そこに結羅は腰かけていた。両足で木の枝を挟み込むようにした座り方。そんな結羅は小刻みに両足を動かす。足を動かすたび、彼女の露出過剰の服から伸びる生足が枝にこすられ、感覚神経が脳へと快感を伝える。
要するに、自慰だ。結羅は気持ち良くなっていた。上体をずらす。すると、それにより、股間に当たる枝の感触が変化。結羅の性感帯を刺激する。
「うんん」
結羅の唇が可愛らしい嬌声を漏らす。その白石の頬は上気している。少女は自身の股間へと視線を落とす。そこは大いに濡れていた。ヌラリとした白い粘液がミニスカ部分を濡らし、木の枝を湿らせている。さらに粘液、そこから木の幹を伝って地面へと向かっている。
「うふふふ」
粘液を見ながら、結羅は股間へと腕を伸ばす。
「あん」
ネチャリと、みだらな音。結羅の右手、その人差し指が陰核の周囲をやさしく撫でる。
「気持ちいいわあ」
でも、それだけでは足りない。少女は愛部程度では満足しなかった。結羅はよりおおきな刺激を求める。手ごろな大きさの枝を一本おると、スカートをたくし上げる。そして自らの膣の中へと枝を入れる。
「ああん」
性器から送られてくる快感が、またも少女に嬌声を上げさせる。だが、もっと。更なる刺激を求めた少女は、枝を激しくスライドさせようとする。
だが、
「おめえ、そこで何やってんだ?」
邪魔が入った。
結羅は邪魔者をにらみ付ける。相手は人間の男。年齢は20代中ほどか。着ているのは、人間の貧民が着ている粗末な服。所々破れており、つぎはぎの痕も見える。中肉中背。身長は高くも低くもない。日々の農作業によってか、男の身体は中々引き締まっている。
そんな男を観察しながら、結羅の視線がある一点にとまる。男の股間。そこは大いに膨らんでいたのだ。
「何、あんた? 女の前で勃起するなんて、いやらしい男」
結羅は怒りの混じった声を上げる。それもそのはず。結羅は激怒していた。人間如きの下等生物が、自分に性欲を抱いているのだ。これで怒らないどおりが無かった。
もっとも、男には男の言い分がある。彼はふくを脱ぎ、素っ裸になると、こう言い放った。
「恥ずかしがることはないよ、君。これから早速やろう。君のような美少女ならいつでも歓迎さ」
そして両腕を広げると、少女へと優しく(明らかに性欲が混じってはいたが、精いっぱい優しい声音を出そうという努力だけは感じられた)声を掛ける。
それは的外れな台詞だった。結羅は半眼になる。彼女には、人間のように劣った存在と性交する意思など全くないからだ。
「ふざけないでちょうだい。あんたなんていらないわ」
結羅には目の前の男が信じられなかった。何でこんな糞虫があたしを誘ってくるの? 身の程知らずにもほどがあるわ! 殺意のこもった声で、結羅は反論する。
「何言ってるんだい? 男に飢えてるんだろ? その格好からして」
だが、男の方はどこ吹く風だ。そんな男の視線。それは結羅の方を真っ直ぐ向いていた。否。
正確には違う。結羅は考え直す。男の見ているもの。それはあたしの胸と、太もも。それ
に、太ももの間から流れ出ている愛蜜だ。
「っ!」
そこで結羅は気付く。要するにこの男。あたしの自慰を見ていたのだ。余りの醜態に耳まで真っ赤に染まるのを自覚する。自慰を見られるなんて! 普段なら侵さないような失策だ。
どうやら銀髪を見つけた興奮で、我を忘れてしまっていたらしい。そのことに気付いた結羅は気持ちを引き締める。これからその銀髪を手に入れるのだ。手抜かりは許されない。
でも、まずはこの男から。あたしの自慰を見た男だ。万死に値する。
「死ね!」
結羅の怒号。同時に、指に巻き付けている髪をあや取りの様に操作。結羅の命令に従い髪が一本、高速で移動。男の首をチョンと撥ねる。
「え?」
男の間抜けな声。自分が死んだことも理解できていないのだろう。阿呆のようにポカンと口を開けた男の首が胴体から切り離され、鮮血が舞う。
コロコロコロ。
気の抜けた音。男の首が地面を転がっている音だ。残された胴体は暫く何事もなかったかのように突っ立っていたが、やがて地面に転倒。自分自身の血で作った水たまりで全身を濡らす。
「女の自慰を盗み見た罰よ」
少女は男の死体へと冷酷な視線を向ける。それは八つ当たりに近かった。実際には、男は盗み見などしていない。ただ、森にかれ枝を集めに来ていただけ。結羅の自慰を目撃したのは単なる偶然だった。
「さてと、残りの連中も片付けないと」
少女は呟くと、両手の指に絡まっている無数の髪を操る。反応はすぐにきた。何万本という髪が蠢きだし、村へと襲撃を掛ける。
「み・な・ご・ろ・し」
少女は不吉な宣告を口にする。その内容とは裏腹に、少女は楽しそう。何の混じりけもない、可愛らしい笑みを浮かべている。
「うふふふふ。あたしみたいな美少女に殺されるなんて……なんて幸運な人間達なのかしら」
少女が口にするのは余りにも勝手な言い分。だが、この世界は弱肉強食。弱い者は殺され、喰われ、玩具にされるのがこの世界の習わし。ひ弱な人間達が強者である少女に嬲られるのは当然。世界の真なることわりだった。
髪の毛たちは瞬く間に村へと殺到。村を蹂躙する。
**********
楓はそのとき自室にいた。彼女にはこの村の巫女として様々な仕事があるのだ。急に家に帰ってしまったかごめのことを案じながらも、自身の務めを放棄することも出来ない。犬夜叉が後を追ったようだし、多分危険はないだろう。
そう考えながら野草の調合をしているとき、それは起こった。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「そんな! あなたあああああああああああああ!!」
「いあだ! じみたぐないいいいいい!!」
「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「ダデカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! たずけで!」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
急に外が騒がしくなる。否。騒がしいですむような程度ではない。明らかに村は混乱状態になっていた。盗賊の襲撃にでもあっているのだろうか?
「何事じゃ!」
事態を収めるべく、楓は屋根裏に隠してあった薙刀を手にすると、家の外へと飛び出る。そして、
「なっ!?」
絶句する。
村では阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。親しかった隣の三太の首が、宙を舞う。それを見た彼の嫁が「ヒイッ!」と悲鳴を上げて腰を抜かす。そんな嫁にも惨劇が襲う。何か光るものが嫁の首に巻き付いたかと思うと、その首も宙を舞う。哀れな嫁を、夫と同じあの世へと強制連行したのだ。
「なんじゃ?!」
楓は状況を見極めようと、霊力を目に集中する。すると、見えてきた。無数の糸のような何か。常人には見えない不可視のその糸が村人たちを襲い、その首をチョンチョンと斬り落としていることに。
いや。首だけではない。どうやら糸の中には、手当たり次第に周囲の人間を攻撃しているものがあるようだ。腕や足を切り落とされる者や、腹を裂かれて内臓を引きずりながらよたよた歩く者の姿もある。
「バカな!?」
これは恐らくモノノケの力によるもの。だが、桔梗姉さまの霊力に守られたこの村を襲撃するなど出来ないはずだった。
と、一本の髪が楓へと向かう。
「ッ!」
慌てて地面を転がり、その髪を回避する楓。だが、その回避行動が髪を操るモノノケの興味を引くこととなった。
更なる攻撃。今度は三本。老骨に鞭打ち、その髪も回避する楓。地面をゴロゴロと大急ぎで転がっていく。
「ええい! 一体だれが!」
楓が悪態をつく。姿の見えない敵からの一方的な攻撃。これでは嬲り殺しだ。周囲にいる村人たちを見やる。彼らは最早全滅。一人残らず、物言わぬ骸と化していた。
「何と言うことじゃ……」
村を守る巫女として忸怩たる思いがこみ上げてくる。と、そこで気づく。髪の動きが止まっていることに。
「なんじゃ? 髪どもが動きを止めた?」
知らず、疑問が口をつく。と、
「ふうん。あんた見えるんだ? あたしの髪」
女の声が頭上から降ってきた。
「何やつ!?」
楓は、慌てて振り返る。声の主はすぐに見つかった。別に逃げ隠れしていなかったからだ。空中に張られた一本の髪。その上に起用に立った少女が傲然と見下ろしていた。
楓は少女を観察する。その指に張られた髪。それは周囲に張ってある、村人たちを虐殺した髪と同じもの。この少女が犯人と見て間違いなかろう。そう、推察する。
「あたし? あたしは逆髪の結羅。覚えなくてもいいよ。あんた、ここで死ぬんだから」
少女が名乗る。不吉な宣告と共に。だが、それとは関係なしに、楓は少女の格好を見てあきれ果てる。
「しかし……何と破廉恥な……」
思わず呟きを漏らす。それもそのはず。少女は露出過剰で貞操観念の欠片もない服装をしていたからだ。
少女が着ているのは、黒い着物。くノ一風の衣装だ。ただし、そのくノ一服、露出がとんでもないことになっている。くノ一服は、おへそが見えるほどに大きく胸元が開かれ、着物から零れ落ちそうなほど大きな二つの果実を見せつけてくる。また、その着物には袖がなく、脇下も大きくえぐれているため、正面の谷間だけでなく横乳もその存在感を主張している。さらに、この少女の服はかなり薄く出来ているらしい。乳首がピンと立っているのが服越しにも分かる。
そのうえ下半身。少女の着物は、あまりに丈が短く太ももがほとんど露出し絶望的なまでに面積不足。さらにいうと、深いスリットが入っているせいで、太ももがが露出してしまっている。
いや、それだけではない。少女が高所からこちらを見下ろしているせいで、その太ももの先。股間部分に茂る生えかけの陰毛と、性器が丸見えだった。
スイカのように巨大な胸に、雪のように白い肌、そしてくりっとした紅い大きな瞳。文句なしの美少女だ。そんな美少女が、己の肉体を見せつけるような露出の高い服装をしている。まるで売女か何かのような格好だ。否。それ以上だ。いくら売女でも、性器を露出したまま公然と外を出歩いたりはしない。
「どこ見てるの? 厭らしいババア。この村には碌な奴がいないのね」
そう言って少女は、自身の股間をおさえる。
「ふむ。羞恥心がない訳ではないようじゃな」
楓は安堵のため息を漏らす。
「ない訳ないでしょ。馬鹿なの? 死ぬの?」
「なら何でそんな格好をしておる?」
楓は当然の疑問を口にする。だが、
「!?」
少女が目に見えて狼狽する。どうやら痛いところを付いたようだ。シメタ、と内心ほくそ笑む。このままこの点を追求し、少女の動揺を誘えば、起死回生の一手が打てるやも知れぬ。
「ほれほれ? 何を黙っておる? 言えぬ訳でもあるのか?」
少女を挑発する。安い挑発だが、傲慢な小娘妖怪にはこれが一番。人間など歯牙にもかけていないこいつらは、簡単に引っかかる。
「うるさいわね! あんたには関係ないことよ!」
「何をそんなにムキになって……ははあ、そなた」
「な、なによ!」
「鬼だな?」
「ッ!?」
少女の狼狽が手に取るようにわかる。その顔は真っ青だ。
「鬼族は実力本位だからな。どんなに胸が大きかろうと、どんなに可憐な女だろうと、強くなければ見向きもされない。強い女しか子を産めぬ社会じゃ。そして……」
楓はそこで言葉を切る。ためを作ることで劇的な効果を狙ったのだ。
「子供を産めぬ女は、負け犬の奴隷として扱われる。おぬし、鬼のオスには見向きもされなかったんじゃろう? それで、奴隷になりたくなくて、何が何でも子をなそうとして男を誘っておるんじゃな?」
「う、うるさい!! 死ね!! 今すぐ死ね!! あんたに何が分かるのよ!!」
どうやら図星だったようだ。少女が癇癪を起したかのように喚き散らす。その癇癪に合わせて、無数の髪が乱舞。楓へと殺到する。
だが、当たらない。それもそのはずだ。無茶苦茶に振るわれる攻撃。無駄が多く、まるで狙いが取れていないのだ。その上、結羅は隙だらけ。それは逆襲のチャンスだった。
「死ぬのはおぬしじゃ! みなの仇、取らせてもらうぞ!」
楓は薙刀を大きく振りかぶると、少女に投擲。狙いは心臓。無駄に巨大な少女の胸の膨らみの間にあるそれを攻撃する。
ヒュン! ブスッ!
狙い違わず、薙刀は少女の心臓を突き刺した。
「え?」
茫然とした様子の少女。何が起こっているのか分からないといった顔で、自分の胸に突き刺さった薙刀を見つめている。
「うそ?」
少女の呟きが聞こえる。その可愛らしい口から、血が漏れる。
「嘘ではない。現実じゃ、バカもの」
そう応じながらも、楓の背筋を嫌な汗が流れる。この女、なぜ死なない? 確かに心臓を貫通しているはずじゃ。確かに鬼は頑丈な妖怪だ。だがいくら何でも、心臓を潰されて平気ということはない。
「ウソよ! こんなの! このあたしが人間に傷つけられるなんて!」
少女は目から涙をこぼす。だが、その涙は痛みによるものではない。憤怒だ。少女の美しい顔が憤怒に歪む。
「ゆるさないゆるさないゆるさない! 絶対に! ゆるさないんだから!」
少女の怒りが爆発した。数十本の髪が、目にもとまらぬ神速で楓へと向かう。そして、楓の両手足を切断する。
「グアア!!」
余りの激痛に楓は悲鳴を上げる。両手足を失いミノムシの様に地面に這いつくばる。
「よくもあたしの身体に傷を……」
そう言って結羅は薙刀を体から引き抜くと、地上に降りて来る。
「死ね!」
結羅は手に持った薙刀を一閃。ナメクジのように地面に這いつくばる事しかできない老婆の首を跳ねる。コロコロコロ。乾いた音。生首が地面を転がる。残された楓の体からは鮮血が噴出。地面を彩る。
この日、一つの村が滅んだ。