さっさとストーリー進めていきます。
朝早くに自宅の高級マンションを出たシンジは幼馴染みのアスカ、悪友のトウジやケンスケと一緒にネルフ学園へと元気に登校する。
シンジの通うネルフ学園は都内でも有数のマンモス校である。中高一貫で普通科・国際科・芸術科・体育科などがあり、入学の際には何やら学校運営に関わっているらしいユイやゲンドウの企みもあって多少は他の生徒達より優遇してもらっている。
……例えば幼馴染みのアスカと毎回クラスが一緒で席も隣接しているのも、それが影響しているとかどうとか。定かではないが。
「おはようアスカ!」
「おはよーシンジくん!」
「ああ、おはよう」
シンジ達が2年A組の教室に入って行くと、クラスの人気者なアスカやシンジの周りに同級生が集まってくる。
シンジ達仲良しグループの机は全員わりと近い距離に集まっている。まず教卓から近い真ん中の席にはシンジ、その両隣は今のところ“何故か”一つずつ空いており、アスカはその空席の右側隣、そして窓際の席にトウジとケンスケが二人前後で座っている。
シンジは歩み寄るクラスメート達に適当な挨拶を交わし、自分の机にスクールバッグを置いてからふと後ろの席を一瞥した。
「あっ、雪風さんも……お、おはよう」
「………」
雪風ミカサ──彼女はちょうどシンジの後ろの席に座る女子生徒だ。無口で大人しい地味なタイプだが、やたら長過ぎる黒い前髪を完全に下ろしたその陰湿な髪型から、通称“貞子さん”の渾名で知られているクラスのちょっとした有名人である。
噂では自宅にも帰らずにこのネルフ学園のどこかに独りで住み着いているらしく、毎日必ず朝早く教室に一番乗りで姿を現す謎の生徒だ。
入学式の頃から只の一度も言葉を発した事がなく、これまで多くの教師陣や生徒が一声でも聞きたいと興味を抱き、あらゆる手を尽くして彼女とコミュニケーションを取ろうとしたが、未だにその薄暗い髪型に隠れた本当の素顔や声を確認できた者は誰一人いない。
2年生に進級した今となっては薄気味悪い奴というレッテルを貼られ、クラスの誰もが彼女の存在を無視するようになった。そんな少女──ミカサに毎朝しっかり声を掛けるシンジ。
本音を言うと関わりたくない気持ちでいっぱいだったが、母親のユイから言わせれば、恐らく人との付き合い方が苦手な女の子なのだろうという事だ。だからと言ってシンジがこうして一方的に話し掛けてやる必要性は無いのだが、2年A組担任教師の葛城ミサトからも雪風ミカサの面倒を見てやって欲しいと頼まれてしまっている為、なかなか蔑ろにできないのが現状だったりする。
「シンジもさ、いい加減“幽霊さん”なんて放っておけばいいのに……」
相変わらず一言も喋らない不気味なミカサの隣の席に座るアスカは頬杖を突いて呟く。するとミカサは一瞬だけ隣のアスカをチラリと一瞥した後、再びシンジの方に向き直ってジーっとその様子を凝視し始めた。
「あっ、そうそう。幽霊と言えば……みんな、こんな話は知ってる?」
そう言ってミリタリーオタク兼オカルトオタクでもあるケンスケは何やら眼鏡を怪しく光らせて語り出す。
「ゼーレの予言──“それは善良なる人類への遺産。131400時間後に天を支える28の柱は崩壊し、それはやがて光の槍となって地上に降り注ぐ。リリンは来るべき日に備え、使徒の鍵を手に入れよ”──今から15年前、マスコミに公開されて一時期ブームになった世界終末説の一つさ」
「はぁ? 何やそれ? 何とかの大予言とかのパクりちゃうん? んでどーせ当たらへんのもパクりやろ。アホらし」
「……トウジ、それを言うなら“ノストラダムスの大予言”ね。でもさケンスケ、もし本当に地上に何か降って来るとしても、それは隕石とか流星群じゃない? 28の柱に光の槍なんて現実にあり得っこないし」
ケンスケの話を聞いてシンジもトウジも胡散臭い感想を抱く。しかしケンスケは指先でクイッと眼鏡を押し上げると、改めて話し出す。
「いやいや。実はこれを予言したのが“ゼーレ”と言って、何百年も人類を陰で支配してきた謎の秘密組織なんだ。碇の両親は人工進化研究所で働いているだろ? ゼーレについて何か聞かされてない?」
「な、何かって言われても……だいたい、人工進化研究所が研究してるのは遺伝子の研究だろ? ヒトゲノムの解析が主な仕事だって母さん言ってたし。そんなゼーレや世界がどうこうっていうのはちょっと……」
こればかりは息子のシンジも初耳だった。確かにユイやゲンドウが人工進化研究所で働く責任者である事は事前に二人から聞かされている。しかしゼーレという謎の秘密組織の存在やその大予言などについては一切知らされていなかった。
「……そうか。やっぱり碇も知らないのか……それはあくまで表向きの話さ。あそこでは実はとんでもない計画が進められているんだ」
その名も“人類補完計画”──ケンスケが口にしたその単語にシンジが、そして素顔を隠す前髪の隙間から虚空を眺めていたミカサが反応を示す。
「その計画を裏で支えてるのがゼーレで、15年前に世界終末説を唱えたのもゼーレ──そのゼーレが言う“約束の日”がちょうど今年に当たるんだ! な? すごいだろ? まだ詳しい事はわからないけど、こいつはきっと人類の運命を左右するような──」
ケンスケは興奮した面持ちでシンジやトウジ達に熱く呼び掛けるが、それを黙って聞いていたアスカは相変わらず頬杖を突いたまま呆れた口調で“3バカトリオ”に向かって口を開いた。
「あんたバカぁ? ウチのママやシンジのおばさまがそんな訳のわからない計画を進めてるっていうわけ?」
アスカも昔からオカルトなど非現実的だと考えている為かやはり否定的だ。尤も“シンジのハーレム計画”なら今まさにユイ主導のもと、こっそり進めている段階であるとは、当事者であるアスカもさすがに言えなかったが。
「えっ、いや、別にそういう意味で言った訳じゃ──」
「はぁ~アホらし。どうせまたくだらんオカルト雑誌からでも仕入れて来たんやろ? それでなくても変人やのにこれ以上グレードアップしてどないすんねん」
「そ、そこまで言わなくても……」
「………」
しかしその隣で黙々と3バカ達の会話内容を聞いていたらしいミカサは、だらんと机に垂れ下げた貞子ヘアに覆い隠された下で人知れず違った反応を見せる。
(なるほど……“あの旧い老人方”が
実を言うと人工進化研究所の副所長であるユイ博士から指示され、ネルフ学園での極秘任務に就いているミカサ──その主な仕事内容はシンジとアスカの護衛及び監査であり、いずれ自分と同じ
そうでなければ、ホラー映画の某怨霊ヒロイン宛らのような陰気臭い髪型に仕立てた自慢のウィッグを被って変装する必要もないし、無口で大人しい地味な女子生徒を演じる必要もなかったはずだ。
ミカサは自他共に認める変装と隠密の名人である事から、今までにこの正体が関係者以外にバレた事はない。訳あって担任のミサト先生には予め事情を伝えて知らせているが……
そうしている間にも朝礼のチャイムが鳴り、ミサトが学校の教師らしくスーツ姿で教室に入って来る。
「よぉ~。相変わらず3バカは朝から元気で結構結構!」
「「「あっ、ミサト先生! おはよーございます!」」」
「よぉ~し、それじゃあ出席を取るわよ! まずは──」
時は進み──放課後。
今朝の天気予報通りに曇天の空からは次第に雨が降り始め、瞬く間に強くなって降り注ぐ。
2年A組の教室では傘を忘れたという生徒が何人かいたようだが、アスカは事前に自宅のテレビニュースを見て忘れずに折り畳み傘をスクールバッグに2本持ち込んでいた。
机の上に置かれた赤い折り畳み傘はアスカ本人のだが、もう片方の青い折り畳み傘はシンジの為に用意してきたものだ。
(どうせ……忘れてるわよね)
溜息混じりに内心呟くアスカ。元々この折り畳み傘はアスカの自宅に長らく置き去りにされたものであり、幼稚園の頃からキョウコが帰れず独りになりがちなアスカの面倒を見ている、雇われお手伝いさんのおばさんに持って行ってあげるようにと頼まれていたものだったりする。
そういう事情もあってアスカはシンジと一緒に帰ろうと何度か視線を送って合図を出したりするのだが、生憎とシンジはトウジやケンスケと楽しく談笑中でアスカの気になる視線には全く気付いていない。
「……ふふっ」
するとアスカの隣の席に座っていたミカサが突然立ち上がり、アスカにしか聞こえないほどの本当に小さな声量で笑い声を出したではないか。
「えっ……?(いま、この幽霊女……笑った?)」
ハッとしてアスカが急いで振り向くも、既にミカサは亡霊のように教室から音もなく姿を消した後だった。
──その後、校舎一階に位置する昇降口前でトウジやケンスケと別れたシンジは、アスカがやって来るのを下駄箱の傍で待っていた。
(アスカのやつ、遅いな……)
いつもなら一緒に下校するのだが、今日に限ってはなかなか一階に降りて来ない。もしかするとアスカは一人で先に帰ってしまったのか……いやしかしそれはあり得ない。
念の為に2年A組の下駄箱も確認して見たが、アスカの靴はまだあった。となるとおおよそミサト先生から用事でも頼まれてしまい遅れているのか……
(今日は雨だしなぁ……さてどうするか)
アスカを待って一緒に帰るか、アスカを置いて先に帰ってしまうか……シンジとしてもこれから自宅に帰って夕食の料理を作ったり、溜まった衣服などを洗濯しなければならない家庭的な用事があるのだ。
「うーん……」
「……帰しませんよ……?」
どうするか暫く思考を巡らせていると、下駄箱に背を向ける立ち位置にいるシンジの背後から、ボソッという感じのか細い声が聞こえてきた。
宛ら女の怨念とでも言おうか。男への復讐に燃える女の恐ろしい執念というか、そういう暗く冷たい悪の波動のような邪念が伝わってきそうだ。
「ふぇ?」
シンジも何事かとばかりに後ろへと振り返ると、そこにはこの世に満ちたありとあらゆる怨念の集合体──のように不気味な容姿をした女子生徒がそこに立っていた。
「う、うわああああああっ!?」
身の毛も弥立つほどに感じたいきなりの幽霊少女の声にビクッとして跳び上がるシンジ。
彼女のだらんと前に伸び切った長いストレートの黒髪の隙間から覗かせる眼鏡らしきレンズの光が、シンジにはまるで殺意剥き出しの鋭い眼光のように見えたのかもしれない。
とは言え相手を怖がらせる意図は全くなかった為、ミカサはもう少し声量を大きくしてシンジに喋り掛けた。
「……あの……驚かせてすみません。私です……雪風ミカサです」
「って……あれ? 雪風さん? えっ、うそ……いま喋った……?」
……そう、喋ったのだ。今までこの学校で只の一度も言葉を発した事のない、一部のネタでは“ネルフ学園の七不思議”の一つに数えられている謎多き噂の女の子がごく普通にあっさりと。
「……はい、喋りましたが」
そう言うと彼女は黒い前髪を前方に下げたままの格好で自然に話し始めた。まるで今までもそうやって普通に他人と言葉を交わしていたかのように流暢に。
「えっ、いや待って──何で急に?」
予想外の展開に理解の追い付かないシンジは一先ず落ち着こうとするが、それを無視してミカサが再び口を開く。
「……碇シンジ様、あなたに伝えたい事があります。私と一緒に来て頂けますか?」
先程の怨念とはまるで違う、何とも美しく綺麗な天使の声色だった。アニメ声が実に明るく可愛らしいアスカなど、他の中学生の女の子と比べても彼女の雰囲気はどこか大人びており、クールで落ち着いた感じがその唇を通して伝わってくる。
「……わかったよ。何があるのかは知らないけど、そこに案内してよ」
シンジは頭の中で一瞬アスカの顔を思い浮かべたものの、目の前の彼女から感じる得体の知れない何かに少しばかり興味を抱き、大人しく彼女に従って様子を見る事に決めた。
……実はこの時、シンジのズボンのポケットに入っていた例の赤い玉が何かに呼応するかのように真っ赤な閃光を放っていたのだが、それにシンジが気付く事はなかった……
【次回予告】
シンジは学校に通う。
だが、それはすべての始まりに過ぎなかった。
ミカサを追いかけるシンジ、雨の中待ち続ける一人の少女。
ずぶ濡れの男女が出会う中、ミカサは拾った玉を渡せとシンジに迫る。
次回、『雨、降り出した後』
今後、ヒロインたちとのエロ回がかなり増える予定です。そこで少しでもキャライメージをしやすいようにAIを使った挿絵を導入しようか迷ってます。アンケート結果によって採用するかしないか決めるので、もしよければ皆さんお答えください。
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AI挿絵が欲しい
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AI挿絵は要らない
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原作キャラの挿絵だけ欲しい
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オリキャラの挿絵だけ欲しい