※この作品はR-18です。

シンジになってハーレム計画   作:聖夜竜

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大変長らくお待たせしました。最新話です。

一度はこの小説の設定や下書きなどを保存してたデータが消失したり、持病の悪化などで執筆作業が進みませんでしたが、今年に入ってようやく復旧作業を終えて何とか更新再開できそうなので、また頑張って書き進めます。

第3章に入って本来予定していたストーリーとだいぶ路線変更してしまいましたが、これは自分なりに完結済みの原作『碇シンジ育成計画』の解明されてない様々な謎や、作中で明らかに存在していると思われるエヴァ要素などを色々考察した結果、一番納得がいく『育成計画』の世界観に仕上げたのが理由です。

とはいえ、基本的なストーリーやエロ要素はちゃんと『碇シンジ育成計画』をベースにこれからも進めて行きますのでご期待ください。


負けず嫌いのアスカ

 

「──という訳で今から転校生を紹介する! みんな仲良くするよーに! 野郎ども喜べ! 女子だぞ女子ーーっ!」

 

 教卓に立った黄色いスーツ姿のミサト先生が開口一番にクラスを見渡しテンション高めに言い放つ。

 

 湧き上がる歓声や口笛に興奮と期待を隠せない男子達。その一方で教室の真ん中に居座るアスカのテンションは朝からだだ下がりだった。

 

(……バカばっか)

 

 それは今から遡ること1時間前の話──

 

 

 

 

 

「シンジ〜、起こしに来てやったわよ〜」

 

 早朝の住宅街。幼馴染みのアスカがいつも通りにシンジの住むマンションまで迎えにやって来る。

 

 しかし今日はどうも既に起きているような気配がドアの向こうに感じる。おかしい……いつもならシンジはまだベッドで寝ている時間帯なのに。

 

 ならば先程玄関で出迎えてくれた母親のユイに日課となったシンジの性処理を先越されていたかと思い、悔しそうにアスカが悶々しながら部屋に向かって声を掛けようとすると……

 

「碇くん、惣流さんが来たみたい。早くしないと」

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ。まだこっちは着替えて──」

 

 シンジの声だ。それにどういう訳か綾波レイという女の子の声も部屋の中から聞こえる。

 

(……!? えっ、うそ!? シンジと……この声は、まさか……!?)

 

 思わずドアノブに掛けた手を止めるアスカ。瞬間ありとあらゆる疑問が浮かんでは消え、アスカの脳内でこの理解し難い状況に関する大論争が繰り広げられる。

 

 何故、いつもならアスカかユイでなければ絶対に目覚めないシンジが既に起きているのか。

 

 何故、昨日の夜に人工進化研究所内でお互い知り合ったばかりの少女が早朝の時間帯にシンジの部屋にいるのか。

 

 ドアノブを握ったまま俯き震えるアスカを尻目に、部屋の中からは二人の会話が聞こえてくる。

 

「もう、碇くんったら……ほら、急がないと遅刻するわよ」

 

「ご、ごめんね綾波さん。昨日の夜は色々あって疲れちゃって」

 

 ……もう我慢できない。これ以上は聞きたくない。ドアノブに手を掛けたアスカが強く息を吸って大声を出す。

 

「アンタたち、朝からナニやってんのよッ!?」

 

 ガチャッ──アスカは幼馴染みの怪しい現場に強行突入した。

 

「えっ? ア、アスカ……!?」

 

「惣流、さん……?」

 

 アスカが恨めしく睨んだ視線の先にはまだ着替え途中だったのか──前ボタンを全開にした白いワイシャツにズボンを履き掛けてパンツが丸見えなシンジが赤面して立っていた。

 

 その隣にはシンジのスクールバッグを大切そうに両手で抱えた綾波レイが見慣れた学生服姿で立っており、こちらも同じく頬を赤らめている。

 

「え……シン、ジ……!?」

 

「アスカ……い、いや……見ちゃだめ……」

 

 慌てて着替えているところを女の子に見られて恥ずかしいのか、顔を赤くしたシンジはこの気まずい空気をどうにかしようと女の子口調で呟いてみる。

 

 それが意外と可愛くて案外悪くないと一瞬でも思ってしまったアスカは照れ隠しなのか、顔を赤くしてぷるぷると拳を震わせる。そして……

 

「こ……こんのぉ……バカシンジ〜ッ!」

 

「ぐぉぅえっ!?」

 

「きゃっ!? い、碇くん大丈夫!? 惣流さん!?」

 

「ぐっ、うぅ……お、お願いだから……グーはやめて、グーは……ガクッ」

 

 しかし哀れにも痛々しい顔面パンチとシンジの悲鳴だけが早朝の部屋に虚しく響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 ──その後、何とか学校の支度を終えたシンジはマンションを飛び出し、待たせた二人の美少女にぺこぺこ頭を下げながら彼女達を追い掛けていく。

 

「いっててて……だから何度も言うように、綾波さんに起こしてもらったんだって。それに学校の準備とかも全部やってくれて──」

 

「……ほんとに〜? そう言って“やらしいこと”させてたんじゃないでしょうね?」

 

 アスカが疑わしそうな目でジトッと横目を向けて来る。

 

「ち、違っ『違うわ。碇くんの言っていることは間違ってないわ』──そ、そう! そうなんだよアスカ様ぁ!」

 

 シンジは必死に弁明しようとするが、そこにシンジの隣を歩くレイが会話に割り込んでくる。

 

「む〜……怪しい。じゃあなんで一緒にいるのよ!」

 

「なんでって……そりゃあ昨日から僕たち家族になったんだし」

 

「か、家族ぅ!? はぁ!? 何よそれ!? 同棲ってこと!?」

 

 アスカが驚いた様子で声を上げる。確かに傍から見れば、シンジとレイは初々しい男女のカップルに見えるだろう。

 

 ……だが実際にはそうではない。レイはあくまでユイとゲンドウの養子として碇家に引き取られただけで、シンジとは実質昨日出会ったばかりなのだ。

 

「う、うん……母さんと父さんがね、ずっとネルフの施設暮らしだった綾波さんには両親がいないから、これからウチで養子として迎えるんだって」

 

「そんな……あ、あんたはそれでいいの!?」

 

 アスカがレイの肩を掴んで揺さぶってくる。シンジとしては別に構わないのだが……どうやらアスカは納得いかないらしい。

 

「えぇ……ユイおばさまにも碇くんをよろしくって言われたから」

 

 そう言ってアスカに優しく微笑み返すレイ。その表情は心なしかとても嬉しそうだ。

 

「で、出会ったばかりで即同棲って……あたしなんて10年来の幼馴染みで未だに親公認の通い妻で我慢してるってのに」

 

 アスカにとっては宛ら頭を棍棒で殴られたようなショックだった。

 

 それを知ってか知らずか、二人の可愛い美少女に挟まれる形でネルフ学園までの道路を歩くシンジはまさに“両手に花”だ。

 

「そういう訳だから、僕と綾波さんに疚しいことなんて何もないよ。第一、母さんと父さんがいる前で手出しなんて僕にはとてもとても……」

 

 と、笑顔でさらりと言うシンジだが……待て、忘れてはならない。

 

 昨夜、お風呂に入る為に服を脱いだシンジは自宅のお風呂場で“うっかり”レイのぽかぽかと温まったエッチな裸と出会してしまうという、何ともお約束なラッキースケベを発動させていた。

 

 しかも動揺したあまりに逃げようとして転んでしまい、自らの足を驚くレイに引っ掛け、押し倒した挙句に彼女の控えめなCカップの胸に顔を埋めた体勢で掴んでしまい、可愛い悲鳴を上げた彼女から一日二度目となる痛烈なビンタを貰う羽目になったのだ。

 

 そんな馬鹿馬鹿しい話、怒れるアスカには絶対に言えるはずもなく……

 

「むぅ……許してあげるわよ」

 

 とりあえずシンジの言い分を信用したアスカが不機嫌そうながらも渋々引き下がる。

 

「ほんと!? ありがとう! さすが僕のナンバーワン! 姫様女神様アスカ様!」

 

「バ〜カ。まったく……ほんとに調子良いんだから」

 

 実はアスカ、シンジとレイの様子を観察していて本当に間違った事はしてなさそうだと自分なりに納得した為、既に怒りの感情は収まりつつあった。

 

 ……とは言え、嫉妬は隠せてないが。一方でそうとは知らないシンジは、アスカにはこのままご機嫌取って黙っておこうと内心固く誓うのだった。

 

 そうして3人揃ってネルフ学園に到着すると、レイは職員室でミサト先生と話す事があるらしいので一旦別れ、シンジはアスカと共に2年A組の教室に向かう。

 

 そしてこの話は先程の冒頭に戻り──

 

 

 

 

 

「綾波レイです。よろしく」

 

 2年A組の教室に入って来た転校生の美少女を見て、男子達はざわつき始める。

 

 まず目に付くのは、やはり制服越しでも分かる容姿端麗なスタイルだろう。スラリと伸びた華奢な手足に均整の取れた体付き、そして短く切り揃った水色の髪が窓から射す朝日を浴びて煌めく姿はまるで天使のように可憐だ。

 

 そしてその美しい容姿と裏腹に、何処か人形のような無機質さと神秘的な雰囲気を併せ持つ不思議な魅力を持つ彼女は、早くもクラス中の注目を集める。

 

「それじゃあ席はシンジ君の隣ね」

 

「よろしく」

 

「あ……うん」

 

 担任のミサト先生に促され、シンジの隣の空席に座るレイ。その様子をレイの後ろの席に座るアスカは複雑な心境で見つめていた。

 

 レイはシンジに好意を持っているのか、それともただの興味本位なのか……どちらにせよ、少なくとも幼馴染みであるアスカの眼から見てもレイがシンジに興味を抱いている事は間違いない。

 

(まさか……中学生になってこんなに早くライバルが増えるなんて……)

 

 幼稚園でシンジと出会ってからというもの、アスカは毎日がドキドキの連続だ。幼馴染みのシンジは子供の頃から女の子みたいに可愛くて、昔から一緒に遊んでいた時はいつも面倒を見てきた。

 

 アスカはシンジに女の子としての自分を意識してもらうべく、いつも彼の前では可愛くてエッチな女の子らしく振る舞う努力をしてきた。

 

 時にはスカートを捲ったり、わざと下着が見えそうな格好をしたり、一緒にお風呂に入ったり、ベッドで寝たり、両親に内緒で性行為してみたり……

 

 とにかく色々やってきた。なのにシンジは一向にアスカに対して恋人らしい反応を見せようとしない。

 

 なので、アスカは半ば諦めて幼馴染み兼性奴隷の関係を続けていこうと思っていた。

 

 だが……それはあくまでアスカの一方的な思い込みであり、シンジがアスカを異性として実は誰よりも大切に扱っているという事をアスカ自身はまだ気付いていなかった。

 

 前方の二人を見つめて悶々するアスカが物思いに耽っている間に朝のホームルームが終了し、授業が始まる。

 

 レイは転校生ながら様々な科目で優秀な成績を修め、特に数学と英語の成績は他の教科と比べて群を抜いていた。

 

 それまではネルフ学園が誇る最優秀生徒だった努力の天才アスカと互角或いはそれ以上に渡り合うレイは、転校初日で忽ちクラスの人気者になる。

 

 そして早くも昼休みになり──

 

「「「綾波さん!!」」」

 

 昼休みのチャイムが鳴り響くと同時に、シンジのクラスメイト達が次々とレイの元に押し寄せる。

 

「今までどこに住んでたの?」

 

「第3新東京市に来た感想は?」

 

「好きな男性のタイプは?」

 

「スリーサイズ教えて!」

 

 等々……皆、一刻も早くレイと親しくなってお近づきになりたいのか、矢継ぎ早に質問を浴びせてくる。

 

 それに対してレイは一つ一つ丁寧に答えていき、質問が終わったと思ったら今度は別の女子達がレイを取り囲む。

 

 レイは質問攻めにされるものの、嫌な顔をせずに淡々と受け応えしていく。そんな中、シンジはレイの周りに集まる人達を遠巻きに眺めているだけだった。

 

 するとアスカが一人でいたシンジの前に歩み寄り、もじもじしながらワイシャツをくいっと引っ張ってくる。

 

 アスカは恥ずかしそうに頬を赤らめながら、上目遣いでシンジの瞳をじっと見つめて言う。

 

「ねぇシンジ……あたしと一緒にご飯食べよ……?」

 

「えっ? あ……うん。いいよ」

 

 シンジが笑顔で答えると、アスカは嬉しそうにパァッと明るい表情を見せる。しかしそこにトウジとケンスケが現れ、アスカにちょっかいを掛けてくる。

 

「惣流、ワシらも一緒にメシ食わせてくれや。どうせ碇センセの美味い手作り弁当食うんやろ?」

 

「いいでしょ? ねっ、頼むよ~」

 

 二人はそう言ってシンジの肩に馴れ馴れしく腕を回してくる。するとシンジは面倒臭そうに露骨な溜息を吐く。

 

「えぇ~……」

 

「何やねんそのイヤそうな顔は?」

 

「大丈夫だよ。惣流の好きなおかずはちゃんと残しておくからさ」

 

 二人にそう言われたシンジがどうするかとばかりにアスカの方を見ると、アスカはぷっくりと頬を膨らませて可愛らしくそっぽを向いてしまう。

 

 その様子から、どうやら今日はシンジと二人っきりで邪魔されずに昼食を食べるつもりだったようだ。

 

「ダメよ、シンジはあたしが先約なんだから! ほら行くわよシンジ!」

 

 シンジの手を引いてアスカが強引に教室から連れ去ろうとすると、トウジがすかさずシンジのもう片方の腕を掴んで引き止める。

 

 シンジは困った様子で頭を掻き、アスカはイラついた表情でトウジを睨み付ける。

 

「ちょっと鈴原、放しなさいよ! シンジが嫌がってるでしょ!?」

 

「なんや惣流、今日は朝から機嫌悪いのう。あないな美人が碇の隣になって、自分のダンナが取られんかと気が気でないんやろ?」

 

「お、おいトウジ……」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべるトウジに、ケンスケは呆れたように苦笑いをする。そんな二人の態度にアスカは更に機嫌を悪化させ、今にも怒鳴り散らそうとする。

 

「な……なぁんですってぇ~!?」

 

「まあまあ、落ち着けって……惣流も綾波さんも可愛くて綺麗だし、どっちも碇とはお似合いだと思うけどなぁ。ただ綾波さんってなんか不思議な感じの子だから、碇もきっと惣流が持ってない何か惹かれるものがあるんじゃないかな?」

 

 ケンスケが慌ててフォローを入れるも、それは逆効果だったようで……

 

「碇! 正直言ってお前も惣流よか綾波さんの方がいいなーとか思っとるやろ?」

 

 シンジの肩に手を回し、ぐいと引き寄せながらトウジが訊ねる。

 

「え、えぇっ……!? 別にそんな事はないけどなぁ……(アスカはおっぱい大きいし、みんな知らないけど僕とのエッチじゃ甘えるようにデレデレして可愛いし)」

 

 シンジが少し動揺した様子で言うと、アスカは負けじとシンジの腰に抱き着き、ぎゅうと力を込めてくる。

 

 そのいじらしい行動にシンジは思わずドキッとしてしまい、同時に胸の高鳴りを抑えられない。

 

 そんなシンジの様子を見て、アスカは勝ち誇ったような態度を見せる。一方、シンジの答えを聞いたトウジとケンスケは、これは面白くなってきたと言わんばかりの悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

「ホンマかぁ? ワシにはそうは見えへんかったで」

 

「いいから綾波さんにも声掛けてみろよ。絶対に脈ありだって──」

 

「何なのよ、さっきから聞いてれば!」

 

 トウジとケンスケの言葉にアスカが苛立った口調で叫ぶと、シンジはハッと我に返ってアスカの顔を見る。

 

 アスカは眉根を寄せて頬を赤らめつつも、怒った表情でレイに向かって指差す。

 

「なんであたしがこんな女に嫉妬しなくちゃいけないのよ! いくら朝シンジの家から出て来たからって──」

 

 アスカがそこまで言い掛けると、すぐに失言に気付いたのか、ハッと口を塞いでレイをチラリと見る。

 

 一方のレイは特に気にする素振りもなく、自分の机に座ってただ黙々とユイが作った弁当箱の蓋を開けていたのだが……

 

「「「えぇぇ~~っ!?」」」

 

 アスカの爆弾発言を聞いて、シンジとレイを除いたクラスメイト全員が驚きの声を上げる。

 

 そのあまりの衝撃に教室中がざわつき始め、シンジはどうして良いのか分からずにクラスメイトから言い寄られてしまう。

 

「碇、どういう事や!?」

 

「説明しろ! 二股か!? ハーレムなのか!? どっちなんだ!?」

 

「不潔よ碇くん!」

 

 などと詰め寄るトウジにケンスケ、更にはクラス委員長のヒカリまで加わり、シンジはタジタジになる。

 

 その一方で、アスカはしまったという表情でレイの様子を伺う。

 

「綾波さん、今の話……本当なんですか!?」

 

「えぇ。だって私、碇くんの家にご厄介になってるんだもの」

 

 ところがレイは相変わらずの無表情で、静かに弁当の箸を進めていた。アスカはレイが今の発言を全く意に介していない事に、ますますムキになって機嫌を悪化させていく。

 

「ず、ずるいぞ碇! お前ばっか……!」

 

「そ、そんな事言われても……」

 

 男子生徒達からの嫉妬深い非難の目に晒され、シンジは困り果ててしまう。

 

「今ここで決めろ! どっちが本命なんだ!?」

 

「だ、だから何でそういう話に──」

 

「男らしくないわよ碇くん! アスカが可哀想よ!」

 

「そうだそうだ! はっきりしろ!」

 

 大勢に囲まれたシンジが困惑してオロオロしていると、顔を真っ赤に染めたアスカが突然大声で叫び出す。

 

「あ~もうっ! いい加減にしなさ~い!!」

 

 いきなりの大音声に、騒いでいたクラスメイト達はビクッと体を震わせ、一斉に静かになるのだった。

 

 そして──

 

 

 

 

 

「はぁ……もうっ、あいつらのせいでゆっくり食べる時間なくなっちゃったじゃない! おまけにシンジは鈴原達に奪われちゃうし……はぁ」

 

 アスカは人気のない学校の屋上で溜息を吐きながら寂しげに弁当を食べている。

 

 その横にはクラス委員長でアスカの親友であるヒカリが弁当を食べており、苦笑いしながらアスカの愚痴を聞いてあげていた。

 

「アスカ……今日はほんとご機嫌斜めね。やっぱり綾波さんのこと気になる?」

 

「なっ……!?」

 

 アスカはヒカリに図星を突かれ、思わず口の中のものを喉に詰まらせそうになるものの、何とか飲み込み、顔を赤くしながら必死に誤魔化そうと取り繕う。

 

 しかしアスカが動揺している事はバレバレであり、ヒカリはクスッと笑う。

 

「さっき聞いたんだけど……綾波さん、碇くんの母方の親戚なんだって」

 

「……そんなのがいるなんてあたし知らなかった……」

 

 弁当を食べ終えたアスカはそう呟くと、再び大きな溜息を漏らす。

 

「アスカでも碇くんの事で知らない事あったんだね」

 

「ちょっとヒカリ! もう何度も言ってるけど、あたしとシンジは昔からの腐れ縁ってだけなんだから!」

 

 そう言うとアスカは拗ねた子供のようにプイッと顔を背ける。しかしヒカリにはそれが照れ隠しにしか見えなかったようで、ニコニコと楽しそうに微笑んでいるだけだった。

 

「ふふっ。そうなんだ」

 

「……そうよ(……ほんとはあたしのご主人様なんだけどね)」

 

 アスカは心の中でそう付け加えると、空になった弁当箱を片付けて立ち上がり、屋上のフェンス越しから校庭を見下ろす。

 

「ねぇ、アスカ」

 

 そんなアスカに、今度はヒカリの方から声を掛ける。しかしアスカはそれに答えようとはせず、ただ黙って景色を眺める。

 

 するとヒカリはアスカの横に立ち、同じように校庭を見下ろしながら話し掛けてきた。

 

「アスカにはアスカの良い所がいっぱいあるんだから。もっと素直になったらいいと思うよ」

 

 優しく諭すヒカリに対し、アスカはチラッと横目でヒカリの方を見て、やや照れ臭そうな様子でそっぽを向いた。

 

 そんなアスカにヒカリは苦笑いしてしまう。元々アスカはプライドが高く、自分に自信があり過ぎるせいか、普段から周りに対して高圧的な態度を取る事が多い。

 

 その為かヒカリやシンジ達以外のクラスメイトからはあまり好かれてはいなかったのだ。

 

 しかし最近になり、何故か女子にモテるシンジを通じて他の女子とも話す機会が増え、少しずつではあるが他人に対する思いやりや優しさを見せるようになっていた。

 

「素直……か」

 

 アスカは小さく呟くと、昼休み終了のチャイムが鳴るまでずっと遠くの景色を眺めていた。

 

 

 

 

 

 そして──午後から始まった体育の授業中に事件は起きた。

 

 今日は男女に別れて校庭でサッカーの授業だったのだが、アスカはシンジを意識し過ぎるあまり、いつもの調子が出せていなかった。

 

 その証拠にボールを蹴る度に変な方向に飛ばしてしまい、結局前半はほとんど何もできずに終わってしまう。

 

 一方、そんなアスカとは対照的にレイはサッカーでも絶好調であった。流石はネルフが誇る監視者(シェムハザ)のファーストチルドレン──恐らく普段から使徒と戦う事をイメージしてこういった運動トレーニングを行って身体を鍛えているのだろう。

 

 涼しげな表情でレイがパスカットしたボールは的確に味方に回り、ドリブルで敵陣に切り込んでいく様はまるでもう一人のアスカを見ているようだった。

 

 しかしそれが却ってアスカには気に入らないようで……

 

「っ……元はと言えば、全部こいつのせいじゃない。あんたなんか……大嫌い!!」

 

 レイのプレーを見て完全に頭に血が上ってしまったアスカ。苛立ちを隠せない様子でレイに向かって叫ぶと、レイ目掛けて思いっきりボールを蹴ろうとして足首を強く捻ってしまう。

 

「痛っ……!」

 

「アスカ、どこ蹴ってるの!?」

 

 アスカの足から離れた勢いそのままにボールは明後日の方向へと飛んでいき、やがて地面に落ちて転がっていく。それを離れた場所から見ていた男子達は騒ぎを聞き付け、すぐさまシンジが倒れたアスカの元に駆け寄ってきた。

 

「アスカ、大丈夫!?」

 

 シンジが心配してアスカの身体を抱き起こすと、アスカは痛みを堪えるようにぎゅっと目を閉じ、歯を食い縛っていた。

 

 どうやらアスカの左足首はかなり腫れてしまっており、とても歩けそうにはなかった。

 

「こりゃ無理な蹴り方しようとして足を捻ったな」

 

 体育教師の加持先生が判断すると、近くにいたシンジに向かって声を掛ける。

 

「シンジくん。すまないが彼女を保健室まで連れて行ってくれるかい?」

 

「へ、平気です! あたし何ともありません!」

 

 しかしその様子を見ていたアスカはプライドが邪魔するのか、シンジの手を振り払うと自力で起き上がる。

 

「だが一応赤木先生に診てもらわないと──」

 

「行けって言うならあたし一人で行きます!」

 

 心配する加持先生にアスカは強がって見せると、ゆっくりと歩いて校舎に向かって歩き始める。

 

 シンジはその様子を見つめると、何かを決心したかのように強く拳を握り締め、すぐにアスカの後を追うように走り出した。

 

「待ってよアスカ!」

 

「うるさいわね。ついて来ないでよ!」

 

「バカ! そんな早足で歩くなよ」

 

 シンジはネルフ学園1階に位置する保健室に向かう廊下でアスカに追いつく。

 

「ほんとに平気なんだから」

 

「そんな事言って──」

 

 だがやはり左足首に激痛が走ったのか、堪らずアスカはその場に蹲る。

 

「痛っ……!」

 

「ほら見ろ。言わんこっちゃない!」

 

「ほ、ほっといてよ!」

 

 シンジの手を払い除け、アスカは再び一人だけで立とうとするも……やはり左足首に強い痛みを感じてバランスを崩してしまう。

 

 それを見たシンジはすぐに倒れそうになったアスカを支えようと手を伸ばす。ところがその瞬間──二人は同時に互いの指先が触れ合ってしまい、驚いて反射的にお互いの体を引き離す。

 

 その反動でアスカは尻餅をつき、シンジは咄嵯に伸ばした右手を左手で押さえていた。

 

「ぁ……その、ごめん」

 

 それからしばらく沈黙が続き、やがて先に口を開いたのはシンジの方だった。その表情はどこか切なそうに、申し訳なさそうに悲しんでいた。

 

「………」

 

 一方のアスカはシンジに触れられてしまった事が余程恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤にして俯いている。

 

「あのさ、アスカ」

 

「……何よ」

 

 シンジは真剣な眼差しでアスカを見据える。アスカはそんなシンジの視線から逃れるようにして顔を背けた。

 

 シンジはそんなアスカのいじらしい気持ちを察すると、倒れたアスカを抱き起こして背中におんぶする。

 

「よいしょ……っと」

 

「えっ……!? ちょっ、ちょっと何すんのよ! 放しなさい!」

 

 いきなりおんぶされた事に驚いたアスカは慌てて抵抗しようとするが、既にシンジは動き出しており、アスカの制止を無視してスタスタと誰もいない廊下を歩き始める。

 

「や、やめてよ恥ずかしい……」

 

「だけどさ、今だけは我慢してくれないか? 僕は大好きなアスカが辛い思いをしてるのを放っておけないんだよ。怪我人なんだし、一応女の子なんだから」

 

「………」

 

 シンジの言葉を聞いた途端、背負われたアスカの顔は見る見るうちに真っ赤に染まる。

 

「な、何よ“一応”って!」

 

「気にするなよ。言葉の綾だよ」

 

「もう……っ!」

 

 照れ臭さと悔しさからか、アスカはシンジに背負われながらその広い男の背中に顔を埋めてしまう。

 

(あたしがシンジにおぶられるなんて想像もしてなかったな……)

 

 アスカはそんな事を思うと、先程のシンジの言葉を頭の中で何度もリピートさせる。

 

 

 

『僕は大好きなアスカが辛い思いをしてるのを放っておけないんだよ。怪我人なんだし、一応女の子なんだから』

 

 

 

 その一言がアスカの心に強く響き渡り、胸の奥をドキドキしながら熱くさせていく。

 

「男の子、なんだよね……」

 

 シンジに聞こえないように小さな声でぽつり呟くと、アスカはシンジの体操服の襟元を掴み、ぎゅっと自分の方に引き寄せる。

 

「えっ、何? 何か言った?」

 

「な、何も言ってないわよ!」

 

 アスカは恥ずかしそうに言うと、シンジの首に両手をぎゅっと回したまま黙って身を任せる。

 

「──バカシンジ♡」

 

 シンジはそんなアスカの様子に首を傾げながらも、そのままアスカを背負ったまま保健室まで運ぶのだった。

 

 




【次回予告】

体育の授業中に怪我をしてしまい、シンジにおんぶされたまま保健室に運ばれたアスカ。

レイには負けたくないからとシンジを求め、二人は授業中である事を忘れてラブラブなエッチを始める。

そんな中、隣のベッドでは保険医のリツコが怪しく嗤って二人の様子を覗き見ていた。

次回、『保健室の秘密 ★(アスカ)』

今後、ヒロインたちとのエロ回がかなり増える予定です。そこで少しでもキャライメージをしやすいようにAIを使った挿絵を導入しようか迷ってます。アンケート結果によって採用するかしないか決めるので、もしよければ皆さんお答えください。

  • AI挿絵が欲しい
  • AI挿絵は要らない
  • 原作キャラの挿絵だけ欲しい
  • オリキャラの挿絵だけ欲しい
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