※この作品はR-18です。

シンジになってハーレム計画   作:聖夜竜

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お待たせしました。最新話です。

すみません……予定よりもアスカとのエロシーンまで長引いてしまい、前後編に分けます(汗)

今回は原作の育成計画と少し展開を変えてみました。

浴衣姿のAI挿絵はまた後日追加予定……


夏祭りの夜 前編

 

 ──今日は神社近くの広場で行われる町内会の夏祭りの日。

 

 日も暮れた宵闇の中、お祭り広場に集まったシンジ。ぼんやりと光り出す提灯と賑やかな祭り囃子が夏らしい雰囲気を醸し出している。

 

 何処からか聞こえる大きな太鼓の音に子供達のはしゃぐ声。そしてお祭り広場に立ち並ぶ屋台からは食欲を刺激するソースや醤油などの匂いと煙が立ち昇る。

 

 そんな祭りらしい音色と熱気に包まれながら、シンジは広場の入口で一人寂しく立ち尽くす。

 

(……おぉ、今年の夏祭りは去年よりも人でいっぱいだ)

 

 シンジは一年ぶりに見る夏の風物詩と言える光景に感嘆の声を漏らす。毎年の事ながら、お祭り会場となる広場の中は今まで見た事の無い人混みで溢れていた。

 

 いつもならこの辺りに住んでいる人達しかおらず、ここまで人が密集する事はない。

 

 ……だが、今日だけは違う。一体これだけの人間がこの町の何処に潜んで居たのかと言いたくなる程の圧倒的な人波。

 

 広場の中心には一際目立つ大きな櫓があり、その周りを囲む様に様々な出店が並んでいる。普段は閑散としている神社の境内にもたくさんの露店が立ち並び、今年も非常に多くの人で賑わっている。

 

 これぞ夏祭りだよなぁと嬉しく思いつつ、シンジは胸を高鳴らせていた。

 

(アスカの奴、遅いな……待ち合わせ時間とっくに過ぎてるのに)

 

 腕時計を見てみるが、時刻は既に夜の18時を過ぎている。集合時間は5時半だったので既に30分以上遅れている事になるのだが、待ち人は未だ現れる気配が無い。

 

(こんな事なら綾波さんの着付けが終わるまで家で待ってれば良かった……)

 

 そう思うものの後の祭りである。ちなみにレイは生まれて初めての夏祭りらしく、自宅のマンションでユイに浴衣を着付けして貰っている最中だ。

 

 シンジは当初レイを待っていたのだが、なかなか浴衣の帯を結べないレイから「惣流さんを待たせているんでしょう……? 先に行ってて。おばさまと一緒に後から追い付くから」と言われた為、アスカを待たせるのはまずいと思い一足先に待ち合わせ場所に来たのだ。

 

 しかしあれから30分も時間が経ち、アスカは一向に来る気配が無い。携帯電話に連絡を入れてみても返事は無いし、メールを送っても返信が来ないのでシンジは完全に待ち惚けを食らっていた。

 

(まさかとは思うけど……急に来れなくなったとかじゃないよな?)

 

 流石に心配になってきたシンジ。するとその時、前方から見覚えのある三人組が歩いて来た。

 

「なんやセンセ、今日は一人なんか?」

 

 ──トウジとケンスケとヒカリの三人だった。どうやら三人で祭りを回っているらしい。

 

「あ、トウジ、ケンスケ……! それに委員長も……!」

 

「おっす碇! 今日も毎年恒例の“アレ”やりに来たんだろ?」

 

 ケンスケの言う──アレ。それはシンジ達がネルフ学園の初等部に入学した時から続く、夏祭り実行委員会を毎年大いに震え上がらせるシンジとアスカ両名による激闘の屋台巡りの事である。

 

 実を言うと……シンジとアスカは町内会では名の知れた『祭りの鬼』と呼ばれるほどの祭り好きである。

 

 『型抜きのシンジ』の異名を持つシンジは持ち前の器用さでありとあらゆる型を抜き、祭りの度に型屋を毎年破産させ、ついにはシンジ対策として型屋への出入り禁止処分が夏祭り実行委員会で決定されたほどには恐ろしい怪物である。

 

 方や、その破壊力で絶対不可能と言われる的さえ撃ち落とし、この数年間で射的屋が出していた全ての景品をせしめたという前人未到の怪物──『射的の惣流』。

 

 その恐ろしさはアスカ対策として、去年から射的屋の出店が祭り広場から完全に消えたと聞けばどれほどの事か分かるだろう。

 

「まぁね。だからこうしてアスカを待ってるんだけど──」

 

 言い掛けたところで、綺麗な浴衣姿に身を包むレイとユイが並んで歩いて来たではないか。

 

「お待たせ、シンジ♡」

 

「碇くん……遅れてごめんなさい」

 

 二人の美女の登場により、周囲の人達の視線が一斉に集まる。特に男性の嫉妬の眼差しは凄まじく、殺意すら感じられる程だ。

 

 シンジはそんな男性達からの殺気に怯えつつも、浴衣姿に着替えた二人の元へ駆け寄る。

 

 レイの浴衣は青色に花柄をあしらった大人っぽいデザインであり、普段の清楚な雰囲気と相まって実に良く似合っている。

 

 一方のユイは白色を基調とした花柄デザインの浴衣で、こちらも人妻兼母親のユイらしい落ち着いた感じが良く似合っていた。

 

 二人はシンジの前に立つと、それぞれ違った魅力を放つ微笑みを浮かべながら言った。

 

「ふふっ……どうかしらシンジ。久しぶりに浴衣着てみたのだけど」

 

「碇くん……私も変じゃないかな……?」

 

「ぁ……う、うん……母さんも綾波さんも、二人ともすごく似合ってるよ」

 

 シンジは照れ臭そうに頬を掻きながら答える。それを聞いたユイとレイは嬉しそうにお互い顔を見合わせると、今度は驚いた事に二人で仲良くシンジの両腕に抱き着いた。

 

「「シンジ(碇くん)……嬉しい♡」」

 

 まるでイチャイチャっぷりを見せ付けるかの様に公衆の面前で大胆密着する親子に、周囲からの羨ましく思う嫉妬のボルテージはぐんぐん急上昇していく。

 

 一方シンジはというと、両腕に伝わる柔らかい感触にドギマギしていた。

 

(うわ、やばっ……!? 二人とも浴衣だからか、下着を何も着けてないって事がすぐ伝わるくらいにおっぱい柔らかくて気持ち良い……っ!)

 

 そんな事を考えながら、シンジは必死で表情を変えない様に堪えていた。だが、我慢すればするほど逆に顔は赤くなっていく。

 

 するとそんなシンジの心中を察したのか、ユイとレイはくすっとした笑みを浮かべると、わざとらしく腕に胸を押し付けた。

 

 その瞬間、シンジの心臓は爆発寸前まで高鳴り始める。何故ならシンジは自宅にいる時に二人の生着替えシーンを直接見せて貰い、既に知っているからだ。

 

 ユイとレイが現在、浴衣の下には何も身に着けていないというムフフな事実を……

 

 するとその時、聞き覚えのある元気な声が響き渡る。

 

「な~に鼻の下伸ばしてんのよ、バカシンジ!」

 

 声に驚き慌てて振り返ると、そこには待ち人のアスカが立っていた。アスカは今日が夏祭りという事もあり、普段着ない浴衣姿だ。

 

 桜色の生地に綺麗な花柄が描かれた可愛らしいデザインの浴衣を着ている。

 

(うわ、今日のアスカめちゃくちゃ可愛い……!)

 

 思わず見惚れてしまうほど良く似合っている幼馴染みの姿に、シンジの顔はますます自然と緩んでしまう。

 

「……何ニヤついてんのよ。っていうかあんた、あたしに何か言う事あるんじゃないの?」

 

 アスカは少し不機嫌そうな様子で詰め寄って来た。シンジはその迫力に押され、思わず後退りしてしまう。

 

 ……ちなみに、ユイとレイの胸の柔らかさに興奮して股間まで膨らませていた事に関しては流石に黙っておく。

 

 ユイやレイと並んで私服姿のシンジを取り囲むアスカは、何やら意味ありげにシンジを上目遣いでもじもじと見つめてくるではないか。

 

 シンジは一瞬アスカの可愛らしい浴衣姿を素直に褒めようとしたが、それよりもまず30分以上も待たされた事に腹を立ててしまう。

 

「アスカ……来るの遅いって。待ち合わせ時間とっくに過ぎてるんだけど?」

 

「は、はぁ? 何それ、せっかくあんたの好きそうな浴衣を着てきてやったのに、文句言うわけぇ? 信じらんない、マジありえないんだけど!?」

 

 シンジの余計な一言で不機嫌モードだったアスカの怒りは沸点に達してしまった様だ。見る見るうちに顔を真っ赤にして怒り出す。

 

「……別に僕は浴衣を着たからとか関係無く、いつも通りアスカが来てくれればそれで良かったんだよ。ただそれだけなのに……」

 

 シンジはつい本音を漏らしてしまったのだが、それが今はいけなかった。

 

「……っ!? もういいッ! バカシンジなんて知らないッ! 勝手にその二人とどっかに行っちゃえば!?」

 

 シンジの言葉をどう解釈したのか、アスカは更に怒ってぷいっとそっぽを向いてしまった。気のせいか、アスカの瞳にはきらりと涙の雫が光っている様にも見える。

 

(……え? あれ? なんで僕、こんな事になってるの……?)

 

 予想外過ぎる展開に、シンジはどうして良いのか分からず呆然と立ち尽くす。するとシンジ以外の全員が呆れた様にやれやれと溜息を吐いていた。

 

「碇……お前なぁ……今のはいくらなんでもデリカシーなさすぎだって」

 

「まぁ……今のはセンセが悪いわな」

 

「アスカが可哀想……」

 

 トウジとケンスケとヒカリの三人はアスカを慰める為か、揃って彼女の元へと近付いて行く。

 

 しかし当のアスカはと言うと、三人の心配など必要無いとばかりに、ぐすっと小さく泣き声を漏らしてから足早に人混みの中に潜り込もうとする。

 

「──シンジ、アスカちゃんに付き添いなさい。良いわね?」

 

「あ……う、うん。分かったよ」

 

 有無を言わせない口調でユイから命令され、みんなと別れたシンジは慌ててアスカの後を追い掛ける事に。

 

 

 

 

 

「お~い、待ってよアスカ!」

 

 はぐれてしまいそうな人混みの中を駆けて行くアスカの背中に向かって声を掛けるが、返事は無い。それでもシンジは懸命に追い掛けようやく追い付くと、アスカの華奢な手を離さないとばかりに固く握り締めた。

 

「っ……離しなさいよ」

 

「嫌だよ。アスカに謝るまで絶対この手を離すもんか」

 

 シンジの手を振り払おうとするアスカだったが、シンジも負けずに握った手を強く握り返す。しばらくそんな意地らしいやり取りが続いた後、ついに観念したのかアスカが振り向いてぽつり呟く。

 

「……ごめん、シンジ」

 

「僕の方こそ、ごめん……」

 

 二人はお互いに謝罪すると、どちらともなく顔を見合わせる。そして照れ臭そうに小さく笑い合うと、そのまましっかりと手を繋いだまま並んで歩き出した。

 

「……ねぇシンジ。今日は……その、二人で“普通のお祭り”らしいこと……してみない?」

 

「わかってる。実は僕もそう考えてた……行こうか、アスカ。人混みすごいからはぐれちゃ駄目だからね?」

 

「うん、ありがとシンジ……♡」

 

 二人は互いに微笑み合いながら、仲良く恋人繋ぎで露店が並ぶ境内の方へ向かって歩いて行く。

 

「アスカは何か食べたいものとかある?」

 

 シンジは人混みの喧騒に紛れて消えてしまいそうなほど小さな声で訊ねた。するとアスカはシンジの質問に対して首を横に振って答えると、おねだりする様な甘えた声で言う。

 

「ん~。シンジと一緒なら、何でも良いわ」

 

「そっか……じゃあとりあえず、適当に歩いてみるか。何か良さそうな物があったら買ってあげるよ」

 

 シンジの提案にアスカは嬉しそうに微笑むと、きょろきょろと辺りを見回す。やがて気になる屋台を見つけたらしく、アスカはシンジの袖をぐいぐい引っ張って指差しながら告げる。

 

「じゃ、じゃあ……あれがいい」

 

 アスカが指差した先には綿菓子を販売している露店が見えた。アスカはシンジの手をぎゅっと強く握ると、もじもじと恥ずかしそうに俯きながら言った。

 

 その仕草がとても可愛らしくて、シンジは思わず見惚れてしまいそうになる。

 

「綿菓子か……ははっ、そう言えばアスカは子供の頃から綿菓子好きだったよね」

 

「だって……あたしがドイツから日本に引っ越して来て、初めて参加した夏祭りで食べたのが綿飴だったから……こんな食べ物ドイツじゃ見ないし」

 

 懐かしそうに言うと、アスカはふふっと笑みを零す。どうやら好きな綿菓子を買って貰えると聞いて機嫌が直ってきたようだ。

 

 シンジはアスカを連れて露店の前までやって来ると、店員にお金を払って注文する。シンジは袋に入った大きな綿菓子を受け取ると、笑顔でアスカに手渡した。

 

「あ、ありがと……」

 

 アスカはシンジに礼を言うと、早速手にした綿菓子を舐めながら二人で人混みの中をゆっくりと進んでいく。

 

「んっ……甘いわ♪」

 

 口の中で溶けていく砂糖たっぷりのお菓子を幸せそうな表情で味わうと、ふぅ~っと満足気に息を吐き出すアスカ。そんな姿を見たシンジは思わずドキッとして頬を赤く染めてしまう。

 

(あれ……? なんか今、アスカの唇が妙に艶々してて、すごく美味しそうだなって……)

 

 つい邪な考えが浮かんでしまい、シンジは慌ててブンブンと掻き消す様に頭を左右に振る。だが、一度芽生えた性的欲求は中々収まらない。

 

「ん? どうしたのよ、シンジ?」

 

「な……何でもないよ!」

 

 不思議そうな表情を浮かべるアスカに対し、シンジは何でもないフリをして誤魔化すと、慌てて視線を逸らす。浴衣姿だからなのか、普段のアスカよりも数段魅力的に見えるせいでシンジの心臓はかつてないほど激しく脈打っていた。

 

(やばいなこれ……ちょっと落ち着かないと)

 

 シンジは何とか平静を取り戻す為に深呼吸を繰り返していると、今度は小さな子供達で賑わう金魚すくいの露店を見付ける。

 

 するとアスカは子供の様に目を輝かせながら、シンジのTシャツをくいくいと引っ張り、興奮気味な様子で話す。

 

「シンジ! 金魚すくいやるわよ!」

 

「えっ……でもアスカってこういうの苦手じゃなかったっけ?」

 

 シンジは呟きつつ、アスカは昔から型抜きや金魚すくいなどの頭を使うタイプは下手くそだった事を思い出す。

 

「むぅ~……いいの! あたしがやりたいって言ってんだから!」

 

 アスカは駄々っ子みたいにシンジの腕を引っ張って催促してくる。その様子があまりに子供っぽくて可愛かったので、シンジはついつい保護者の態度で了承してしまった。

 

「わかったよ──おじさん、お願いします!」

 

 シンジは子供達に混ざってアスカと一緒に屋台の前にしゃがみ込むと、店主のおじさんからポイとお椀を受け取って代金を支払う。

 

「おっ、来たなアスカちゃん。にしても今年はまた随分と気合入った可愛い浴衣着てるねぇ」

 

「ふふん! ありがとう、おじさま♪」

 

 毎年の常連客でもあるアスカは慣れた手つきでポイを構え、いざ真剣な眼差しで水槽の中の金魚に狙いを定める。そして……

 

「──そこだぁぁぁッ!!」

 

 気合いの入った叫び声と共に、アスカは勢いよくポイを水中に突っ込んだ。

 

「あ……破れた」

 

 しかしアスカが狙った一際目立つ大きな赤い出目金はあっさりと紙の部分を破って無残にも水の中に沈んでしまう。

 

「ほら、やっぱり。もう諦めたら?」

 

「嫌よ! まだあと一回チャンスはあるもん!」

 

 昔からアスカは負けず嫌いな性格なので、一旦こうなると意地になってなかなか引き下がらない。

 

「はっはっはっ! 毎年シンジ君に取って貰ってるアスカちゃんの腕じゃ、あの出目金は無理だろうなぁ。何せヤツはこの数年間、水槽に留まり続けるウチのヌシだからな。なぁ、シンジ君?」

 

「えっ? あ、まぁ……そうですね」

 

 何やら意味ありげな含み笑いをする店主の言葉にシンジは苦笑しつつ同意した。

 

 ……実はシンジ、この屋台で何度もアスカに付き合って金魚を掬い続けた結果、その余りの洗練された頭脳プレイと獲得した金魚の多さに『水槽の救世主』という異名まで付けられてしまった過去がある。

 

「う~……そんなの絶対取らなきゃ気が済まないわ……シンジ、もう一回よ!」

 

 アスカは悔しそうに歯噛みすると、再びポイを構える。しかし結局その後もヌシを狙って失敗してしまうのであった。

 

 それからもアスカはシンジのお金で挑戦を続けたのだが、結果は散々なもので、彼女はすっかり不貞腐れてしまった。

 

 しかしシンジはそんな彼女の姿を見ているうちに、だんだんと可哀想に思えてきてしまい、とうとう我慢できなくなって言ってしまう。

 

「ねぇアスカ……そんなに欲しいなら、僕が代わりにやってあげようか?」

 

「へっ!? あ、あんたが……?」

 

「うん。まぁ、見ててよ」

 

 シンジは自信満々に言い放つと、素早くポイを水面に下げて構える。そして……

 

 ──バシャァン!!

 

 あっという間に一匹の出目金を捕らえた。突然の出来事に呆然とするアスカと感心する店主の前で、シンジは捕まえた金魚の袋を取り出してアスカに見せる。

 

 その瞬間、周囲のギャラリーからは歓声が上がった。アスカはそんな周りからの拍手を浴びて恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 

 シンジはそんなアスカの手を掴むと、あと一回分残っているポイをアスカの手に持たせ、その上からそっと手を添える。

 

 そしてシンジは優しく微笑み掛けると、まるで恋人に囁く様な甘く優しい口調で言う。

 

「アスカ、僕の言う通りに動かしてみて……いいね?」

 

「う、うん……」

 

 シンジの吐息が耳元に掛かる程の距離で話し掛けられた事で、アスカは余計にドキドキして身体が熱く火照るのを感じながら小さく返事をした。

 

「まずはゆっくり……そう、上手だよ。次は……そう、水槽の中をじっくり観察して……」

 

「う、うん……」

 

「そう、ヌシの動きに集中するんだ。周回パターンをよく読んで、ポイントとタイミングが一致した瞬間にケリを着ける……いいね?」

 

 シンジはアスカの手を動かすスピードを徐々に上げていき、ついには完全にシンクロさせて動きを一つにする。

 

 するとシンジが手を握るアスカの操るポイによって、水槽の中を我が物顔で泳いでいたヌシは危機を脱したとでも思ったのか、警戒心を解いてUターンしようと動きが疎かになる。

 

 それを見届けるとシンジは目を煌かせ、アスカのポイを持つ手に力を込めて一気に構えさせる。

 

「よし……今だ!」

 

「待ってました! 必殺! ジャイアントストロングエントリー……ッ!!」

 

 シンジの掛け声に、アスカはノリ良く叫ぶと勢いよく浴衣の袖に包まれた腕を振り上げる。するとアスカの握っていたポイは最初から計算され尽くした動きで見事に誘い込まれたヌシを貫いた。

 

「や、やったわシンジ! あたしにもできた!」

 

 見事金魚すくいでヌシを捕まえる事に成功したアスカはとても嬉しそうな笑顔を浮かべると、早速袋の中に入ったヌシを見て大いにはしゃぎ始める。

 

 周囲のギャラリーが拍手喝采する中、子供らしさ全開で喜ぶ彼女の様子をシンジは微笑ましく見つめていた。

 

 その後もアスカはシンジを連れ回して色々な露店で遊び回った後、最後に境内の端にある休憩所までやって来た。

 

 そこはベンチがいくつか置かれているだけの簡素な場所で、祭りのメインイベントとなる櫓下での打ち上げ花火が近いせいなのか、人の姿はそれほど見られない。

 

 シンジとアスカは空いているベンチに並んで腰掛けると、互いに寄り添いながら静かに話し始めた。

 

「楽しかった……あたし、こんな風に誰かと二人っきりで普通のお祭りを楽しんで回るなんて、今まで一度も無かったから」

 

「そうだよ。アスカってば毎年ムキになって僕に屋台勝負をしようと挑んでくるし……まぁ、お互いの得意分野が違うから今まで直接対決した事はなかったけどさ」

 

「うぅ……だって、シンジに負けたくないんだもん」

 

「ふふっ、嬉しいこと言ってくれるじゃん」

 

 シンジは言いつつアスカの肩を抱き寄せると、空いている方の手で頭を優しく撫でてやる。するとアスカは気持ち良さそうな表情で目を蕩けさせ、されるがままになっていた。

 

 そんな幸せそうな彼女を見ていると、シンジの心の中には自然と温かい感情が湧き上がってきて、ついつい頬が緩んでしまう。

 

「ところでどうするのさ、コレ……」

 

 シンジは視線を落とすと、自分の足元に置かれた大量の白いビニール袋を見下ろし、困った様に呟く。中には先程の屋台で購入した焼きそばやお好み焼き等の定番メニューの他にカチワリやスブラキ、ベビーカステラが入っているのだ。

 

 最初は二人で分け合って食べようと思っていたのだが、シンジはついつい美味しそうに食べるアスカの表情を見ている内に食欲を抑えきれず、結局自分でも注文してしまった。

 

 更には金魚すくいやヨーヨー釣り、輪投げにくじ引きといった様々なゲームで獲得した景品も大量に抱えているせいで、二人とも完全に手が塞がっていた。

 

「ん~……もうすぐ打ち上げ花火が始まる時間だし、こんなにたくさんの荷物ぶら下げてたら何もできないわよね……」

 

 アスカは呟きつつ、シンジにくっついて甘える様に頭をすりすりと寄せてくる。そんな彼女の仕草が可愛らしくて、シンジは思わずドキッとしてしまう。

 

「ぁ……えっと、じゃあ……祭りの実行委員の人に知り合いがいるから、祭りが終わるまでちょっと預かって貰ってくるよ。アスカはそこで待ってて? すぐ戻って来るから」

 

「そう? ありがと──」

 

 アスカが言い終える前に、シンジは両手いっぱいの荷物を持って走り出した。人混みの喧騒の中へと消えていくシンジの後ろ姿を見ながら、アスカは寂しげに溜息を漏らす。

 

(まったくもう……何なのよアイツは……せっかくのラブラブお祭りデートなのに、あたしの浴衣姿見て“可愛い”の一言も言ってくれないなんて……たしかに待ち合わせ30分遅れちゃったけど、ママに買って貰ったとびっきりの浴衣なんだから、ちゃんと見て欲しかったな……)

 

 アスカは拗ねた子供の様に唇を尖らせると、まだ微かに残るシンジの香りを思い出して頬を赤らめる。

 

「バカシンジ……♡」

 

 アスカは小さく呟くと、彼の帰りを待つ為にシンジが座っていたベンチにわざわざ移動してちょこんと座り、空に浮かぶ満天の星を眺め始めた。

 

 するとそこに──

 

「うっひょ~! かわい子ちゃん発見!」

 

「しかも超絶美人! ねぇねぇ君、もしかして一人? 俺達と一緒に遊ぼうぜぇ?」

 

「へへっ、こんな可愛い浴衣着てるとかマジ最高だな!」

 

 いかにも軽薄そうなチャラ男三人組がニヤつきながらベンチに座るアスカに近付いてきた。

 

(何こいつら……ナンパ?)

 

 アスカは不快げに眉を潜め、彼等を無視して沈黙を決め込む。しかしチャラ男三人は馴れ馴れしくアスカの座るベンチを取り囲むと、下卑た笑みを浮かべる。

 

「あれ? シカトしちゃう感じぃ?」

 

「あ~……そういう冷たい反応されると傷付いちゃうなぁ……なぁ?」

 

「へへっ、そうそう。それにほら、せっかくの夏祭りの夜だしさ。もっとみんなでパーッと盛り上がろうよ?」

 

 そう言うとチャラ男の一人がアスカの腕を気安く掴んで無理矢理立ち上がらせようとする。しかしアスカは反射的に腕を振ると、その手を乱暴に払い除けた。

 

「うっさいわね! いま彼氏とデート中なんだからどっか行ってよッ!」

 

 苛立つアスカは声を荒げて言い放つ。だがそんな彼女の勝ち気な態度が逆に男の嗜虐心を煽ってしまった様だった。

 

「へへっ、そんな奴より俺らの方が絶対楽しいって!」

 

「そーそー、なんなら彼氏のことなんか綺麗さっぱり忘れて、俺達三人と付き合っちゃおうぜ?」

 

「おぉ、それいいじゃん! はい彼女セフレ決定~!」

 

 まるで聞く耳を持たない様子のチャラ男達に、アスカは内心舌打ちする。

 

 この手の連中は自分達の思い通りにならないと直ぐに暴力に訴えようとしてくる。だからここは下手に逆らわずに適当にあしらうのが一番なのだ。

 

 アスカはなるべく穏便に済ませられる様にと、浴衣の下に忍ばせた赤い玉を探そうとするが……

 

(こうなったらあたしの神器(エヴァ)を使って少し怖がらせるか……)

 

 内心呟くが、夏祭り中という事もあってアスカの神器(エヴァ)は待機状態である赤い水晶玉のまま、自宅の部屋に置きっ放しにしてしまっている事を今更に思い出す。

 

(あぁ……もう、こんな時にっ! シンジのバカ……早く帰って来なさいよ……!)

 

 アスカは心の中で毒づき、忌々しそうにシンジが消えた方向を睨む。するとその時、突然背後から伸びてきた手がアスカの浴衣越しに膨らんだ豊満な胸を掴んだ。

 

「きゃあっ!? ちょ、ちょっとあんた……どこ触って……ぁんっ!」

 

 アスカは驚いて振り返ると、そこにはベンチを取り囲むチャラ男の一人がニヤニヤと笑いながら立っていた。

 

「うっひょ~、すっげー巨乳ちゃん!しかも感度良好だねぇ」

 

「や、やめてよ! イヤ! 離してっ! あぁんっ、だめっ!」

 

 アスカは悲鳴を上げて抵抗するが、男達は力ずくで浴衣の上からアスカの胸元やお尻をいやらしく揉みしだく。

 

「へへへっ、マジ美味そ~!浴衣の下はノーブラとかエロすぎんだろ!」

 

「ちょっと触っただけですぐ乳首ビンビンに立ってるし、こっちの具合も確かめてやるか」

 

「や、やだ! だめっ! やめて! シンジ! 助けてシンジィ……!」

 

 アスカは必死に抵抗するがチャラ男達の力は強く、とても振り払えない。

 

「やべ、こいつ超イイ匂いするわ。汗の臭いで興奮してきた」

 

「おい、お前ばっかりズリィぞ。オレにも貸せよ」

 

「はいはーい。順番、順番っと」

 

 アスカは涙目で助けを求めるが、男達はそんな彼女に構わず強引に抱き寄せると、ベンチから無理やり立ち上がらせて神社の裏手にある林の中へと連れ込んでいく。

 

 ……そこは祭りの灯りとは無縁の暗がりで、人の気配は全く無い。アスカは三人組のチャラ男に囲まれて身動きが取れない状態のまま、連れ去られてしまう。

 

(やだ……助けて、シンジ……ッ!!)

 

 アスカは恐怖と悔しさで目に大粒の涙を浮かべる。身体を震わせ、声を殺して泣き叫んだ。

 

 




【次回予告】

シンジがお祭り広場でトウジ達と再会している頃、アスカは三人組の男達によって暗がりに連れ込まれていた。

アスカと別れたと知ったヒカリがシンジに説教する中、シンジの脳裏に浮かんでは消えるアスカとの様々な思い出。

焦るシンジが神社に駆け付けた時、あと少しのところで凌辱されるアスカの姿を目撃する。

静かに怒りを燃やすシンジ。そして……

次回、『夏祭りの夜 後編 ★(アスカ)』

今後、ヒロインたちとのエロ回がかなり増える予定です。そこで少しでもキャライメージをしやすいようにAIを使った挿絵を導入しようか迷ってます。アンケート結果によって採用するかしないか決めるので、もしよければ皆さんお答えください。

  • AI挿絵が欲しい
  • AI挿絵は要らない
  • 原作キャラの挿絵だけ欲しい
  • オリキャラの挿絵だけ欲しい
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