フゥ~~~~。
マズイ事態だ。ひっじょ~~~~にマズイ事態だ。
雷と電を新たに連れ戻し、意気揚々としていた私だったが、そこで一つの問題が発生した。
その光景を他の艦娘に目撃されてしまったのだ。
その艦娘の名は、ぜかま……いや、失礼。その艦娘の名は島風。
島風型駆逐艦の一番艦、島風だった。
偶然、その現場を目撃したらしい島風は、当然二人を取り戻すために襲い掛かってきた。
その襲撃自体は、金剛と榛名が食い止めてくれたのだが……問題は島風を逃がしてしまったことだ。
さすがに駆逐艦の中でもトップクラスの速さを誇る娘、といったところか。
逃げ帰った島風は、当然今回のことを今いる鎮守府の者達へと伝えた。
私が特別に用意した指輪をはめた者は、私の命令に逆らうことはできないといった情報等、全てをだ。
結果、その鎮守府は私の襲撃を警戒し、安易に艦娘達を外に出さなくなってしまった。
どうやら島風は、金剛と榛名が私に取り込まれたことも伝えたらしい。
となると、今後他の艦娘達を連れ戻すのに、金剛と榛名、そして今回連れ戻した雷と電達は使えないということだ。
さらに悪いことに、その情報を聞いた鎮守府の提督が、他の鎮守府にもこのことを伝えたため、その鎮守府にいない他の艦娘達も指輪の存在を知ってしまったのだ。
まあ、この指輪は特別製なので簡単には外せないと思うが、それでも外せないとなれば、指輪をはめた艦娘をむやみに外に出したり、一人にしたりはしないだろう。
しかも最悪なことに、どうやら他の鎮守府の艦娘達が結束して、私を消そうとする動きがあるらしい。
密かにその情報を入手した(より正確に言うと、雷と電をお使いという名の遠征に行かせてその情報を入手した)私は、すぐに今いる鎮守府を捨て、新天地を求めた。
そして現在、私は、金剛と榛名に護衛させながら、雷と電が見つけてきた新たな鎮守府(少し前に破棄されたらしい)に向かって歩いている。
雷と電の二人もすでに調教は済み、今では私の可愛い子猫ちゃんとなっている(もちろん、ネコミミは常時着用を義務付け)。
しかし困った。これでは、指輪を作動させる半径十メートル以内に近づくため、現在手駒となっている艦娘達を使うことができない。
この娘達が目の前に現れれば、当然、他の艦娘達は警戒し逃げ出すだろう。
私一人でこっそり近づくのはもちろん論外だ。
純度百パーセント普通の人間である私がむやみに近づき、万が一見つかったら、一瞬にして蜂の巣にされる。
さて、どうしたものか。一番いいのは新たに手駒を増やすことだが、艦娘達は警戒しているし、今いる娘達は使えないし……困った。
どこかに、無防備に一人で出歩いているおバカな艦娘でもいないものか……
「恋の2、4、イレーブン♡ ……」
んっ? あれは……
私は全く臆することなく、一人でその場に乗り込んだ。
「なっ!」
「えっ!」
私の姿を見た、川内型軽巡洋艦の一番艦、川内が驚愕の声を上げる。
隣にいる姉妹艦の神通も同様だった。
「どうした二人とも? そんなお化けでも見たような顔をして」
「な、何でアンタがここにいるのよ!」
川内が、神通を庇うようにして前に立ち、言い放つ。
後ろにいる神通は、無言のまま、ただ震えていた。
その隣にいる(自称艦隊のアイドル)三番艦の那珂は、辛そうに顔を背けている。
ここは、川内達が新たに着任した鎮守府のほど近く。
どうやらピクニックにでも来ていたのか、そこには広げられたピクニックシートとお弁当が置いてある。
そんなところに私が一人で姿を現したのだ。驚くのも無理はない(ちなみに、手駒者達は新しい鎮守府に置いてきた。下手に大人数を連れて歩くと、偵察機に引っかかるからな)。
「ひ、一人できたの?」
「そうだ」
「……し、信じらんない」
「そうか? では、偵察機でも飛ばして調べてみたらどうだ?」
「……言われなくても……」
川内が悪態を吐きながらも、偵察機を飛ばす。
「……どうやらほんとみたいね」
「だから、そう言っただろう」
「フン。いい度胸してんじゃない」
「おや、昼食の最中だったのか。邪魔をしてしまったかな」
「アンタはいつだって邪魔よ。アタシ達にとってはね」
「やれやれ。嫌われたものだ。そこまで嫌われる覚えはないんだがな」
「はあ? それ、本気で言ってんの? 頭おかしいんじゃない?」
「ひどい言い草だな。何故そこまで私を嫌うんだ?」
「あっきれた。ほんとに分かんないんだ。自分の胸に手を当てて聞いてみれば?」
……何やらちょっと前に言われたような台詞だな。
「すまんが、本当に覚えがないんだ。教えてもらえないか?」
「……いいわ。そこまで言うなら教えてあげる。アンタ、以前アタシ達の部屋に忍び込んできたことがあったでしょ。その時のことをよく思い出してごらんよ」
「…………」
「思い出せた? そうよ。アンタは、夜中に寝ているアタシ達の枕元で、全裸で仁王立ちして『さあ、大人の夜戦を始めるぞ!』とか何とか言って、布団の中に潜り込んできたのよ!」
「…………」
「あの時のことがトラウマになって、神通は男性恐怖症になったの! 男を見るだけで震えちゃうし、ただでさえ控えめな性格がさらにひどくなって、口数まで少なくなったんだから」
「…………」
なるほど。あの時のことを根に持っていたか。
私としては、小粋なジョークのつもりだったんだが。
提督補正とかかかってセーフだと思っていたのに。どうやら、そうではなかったらしい。
「アタシ達は、そんなアンタに嫌気が差して、この鎮守府に来たのよ。ここの提督は女性だからね」
「……なるほど。事情は良く分かった。しかし、私としては今一度君達に戻ってきてほしいのだ」
「はあ? 冗談じゃないわ! 誰がアンタみたいな素○ン提督のところになんて戻るもんですか! ねえ、神通! 那珂!」
川内の言葉に、神通は震えながらも頷き、那珂は顔を逸らす。
「分かったら、さっさとアタシ達の前から消えてよ! これ以上ここに居座るつもりなら……死んでもらう」
川内が思いつめた表情で私を睨む。
「アンタの指輪の話、もう聞いてるわ。幸い、アタシ達はアンタから指輪をもらってない。だから、アタシ達に指輪作戦は通じないわよ」
「ククッ。なるほどなるほど」
「言っとくけど、アタシは本気よ。アンタを殺すのに何の躊躇いもないわ。一人できたのが仇になったわね」
「……ククッ。そうかもな。ところで川内、あと一つだけ聞いてもいいか?」
「……何よ?」
「三人お揃いで、随分と綺麗な指輪をしているが、それは誰からもらったんだ?」
「フン。これはね、今の提督がアタシ達三姉妹にって、お揃いの指輪を作ってくれたの。それをさっき那珂が持ってきてくれたのよ」
「ほほう。それは良かったな」
「質問は終わり? じゃあ、さっさとここから消えて。これが最後の警告よ」
川内が、私を睨みつけたまま、シッシッと手を振る。
しかし私は、全くその場を動かなかった。
「いや~しかし、歩き詰めで少し疲れてしまったな。川内、すまないが、その弁当を少し分けてくれないか?」
「はあ? アタシの話が聞こえなかったわけ? さっさと消え……えっ?」
そう言って、私を追い払おうとする川内だったが、その体は彼女の意思に反して、弁当箱を持って近づいてくる。
「ウソッ! 何で……」
「何で……か。そうだな、私の質問に答えてくれた礼に教えてやろう。実はな、お前達が今の提督にもらったというその指輪。あれを贈ったのは、実はこの私だ」
「なっ! そんなわけないじゃない! だって、あの指輪は那珂が……」
「そう。那珂が持ってきてくれたんだよな? 私に操られた那珂が」
「ウソッ! そんな……嘘でしょ、那珂!」
そう言って、那珂を問いただす川内。
しかし、那珂はそんな川内から辛そうに顔を背けている。
それが返答だった。
「うそ……嘘よ! 那珂がアタシ達を裏切るはずない!」
「そうだ。確かに那珂はお前達を裏切ったわけではない。ただ、私の指輪をはめたせいで、私の命ずるままに動いただけさ」
「そんな……那珂は、アンタから指輪をもらってないはずじゃ……」
「ああそうだ。お前達が裏切る以前に、私は那珂に指輪を贈ってはいない。それに、裏切った後も、すでにこの指輪のことを知っているであろう那珂は、当然私が指輪を渡しても、金剛や榛名が渡しても受け取ったりはしないだろう。だが、熱烈な那珂ちゃんファンからならどうかな?」
「アンタ……まさか……」
「そうだ。私は、那珂ちゃんファンに変装して指輪を贈ったのさ。痛カワイイ那珂は、何の疑いも見せずに指輪をはめたよ。そして、その那珂に騙されて、お前達も私の指輪をはめてしまったわけだ」
「クッ。卑怯者っ!」
「ククッ。なんとでも言うがいい。ところで川内、さっきも言ったが、私は歩き詰めで空腹なんだ。その弁当箱に入った卵焼き、なんともうまそうじゃないか。それを食べさせてくれ。もちろん、口移しでな」
「なっ! ふ、ふざけんじゃ……クッ! か、体が……」
必死に抵抗しようとする川内だったが、その体は、徐々にだが確実に私に近づいてくる。
そして、川内は卵焼きを口に咥え、私に突き出した。
「いいぞ。それではいただくとしよう」
私は、川内の差し出した卵焼きを口で受け取り、そのまま川内の唇をも奪う。
「んっ! うぐっ!」
川内は、悔しそうに涙を浮かべながら、それを受け入れた。
その様子に、私は内心で笑みを浮かべ、受け取った卵焼きを頬張りながら口を開く。
「うむ、うまい。だが、少々喉も渇いてきたな。おい、神通。そこのお茶を飲ませてくれ。もちろん、口移しでな」
「ひぅ!」
顔を恐怖で染め、後ずさろうとする神通だったが、指輪の効力により、その体は川内と同じように私に近づいてきた。
そして神通は、水筒に入っていたお茶を一口口に含み、その可憐な唇を私に押し付ける。
「ううっ……んちゅっ……ひっく……ちゅっ……」
涙で少し塩気のするお茶を受け取った私は、そのまま神通の口内に舌を潜らせ、その口の中を味わった。
「やっ! ……ちゅう……やめっ……んんっ……」
瞳に嫌悪を滲ませながらも、抵抗できずに口を犯される神通。
私は、しばらくの間そのまま神通の口内を味わい、やがて解放する。
さて、とりあえずこれで、他の艦娘達にバレていない手駒を三つは確保できた。
「さあ三人とも、仲直りも済んだことだし、これからは私の忠実な僕としてよろしく頼むぞ。ああ、そうだ。これから私のことは『ご主人様』と呼んでくれたまえ。これからの私達は上官と下士官の関係ではなく、主従関係なのだから。ハッハッハ」
そう言って、私は声高らかに笑う。
さて、それでは今回も、恒例の愛の教育的指導に移ることにしよう……