―――きっかけは、アイツが見せた笑顔だった。
「待て、落ち着け、美琴!」
「落ち着いてるわよ」
「いや、落ち着いてないだろ!どう考えても」
「うるさい」
わたしはそう言い放つと、そのまま当麻をベッドの上に押し倒して彼の上に馬乗りになる。
「アンタはわたしのものよ」
―――耳元でそう囁いてから、当麻の唇を自分の唇で塞ぎ、口内に舌を差し込む。若干の抵抗はあったが、そのうち当麻も舌を絡めてきてくれた。
長いキスを終わらせて透明な糸を断ち切ると、わたしは無言でカーディガンを脱ぎ、リボンを解いてブラウスのボタンに手をかける。
ブラウスを脱ぎ、当麻のシャツのボタンを外す。それから当麻に抱きついて耳元に唇を寄せた。
「アンタのものにして」
美琴は震える声でそう呟く。
「…美琴?」
「アンタはわたしのもの、わたしはアンタのもの」
自分に言い聞かせるように呟く。目を閉じると当麻の笑顔が浮かんでくる。わたし以外に向けられた当麻の笑顔が。
「心の準備、できたから。…わたしを抱いて。当麻」
「美琴…」
上条は右手で美琴の頬に触れ、目を細める。
「なに焦ってんだよ、馬鹿」
「焦ってない」
「そんな震えた声で言っても説得力ないけど」
「震えてない」
「この前と逆か?何に嫉妬してんだよ?」
上条の言葉に、美琴の身体が小さく震えた。それを肯定とみなして、上条は美琴の頭を撫でる。
「俺が好きなのは美琴だけだから」
上条が微笑みかけながら言うと、美琴は眉を顰めて呟いた。
「あんな笑顔、わたしに向けてくれたことないんだもん」
「は?」
「アンタが同級生に向けてる笑顔、あんな優しそうな笑顔、わたしに向けてくれたことないんだもん」
「………あー、その、つまり美琴は、俺が同級生に向けている笑顔が優しく見えるってことでOK?」
「うん」
「それってさ、俺からすればお前が白井とか佐天さんとかに向ける笑顔が楽しそうだなーって感じてるのと同じじゃね?」
「そういうのとは違うと思う」
不満そうに美琴が言うと、上条は素早く美琴の両脇に手を入れて持ち上げ、そのまま身体を起こして美琴を抱き締め、耳元に唇を当てる。
「…じゃあ、美琴が海原に向けてる笑顔を見たときの感覚が近いんじゃねえか?」
低く押し殺した声で囁くと、ベッドに美琴を押し倒し唇を塞いで口内に舌を差し込む。
「…っ。あれは、社交辞令よ」
「お前の社交辞令の笑顔って、すげえ優しく見えるんですけど」
「そんなこと言われても…」
「なあ、美琴」
上条は美琴の名を呼ぶと、小さく咳払いをしてから笑顔を作る。
「あ………」
目の前の当麻の笑顔が、公園の近くで見かけた当麻の笑顔と重なった。
「俺の社交辞令の笑顔ってどうよ?」
両手を当麻の頭の後ろに回し、そのまま自分に引き寄せて唇を塞ぐ。触れるだけの軽いキス。
「ね、笑って」
「なんだよ?それ」
そう言って微笑む当麻を見て、わたしも小さな微笑みを浮かべる。
「社交辞令だと、目が笑ってないんだけど、見る分には優しそうに見えちゃうのね」
「そりゃ、作り笑いだからな」
「でも、異性相手に笑ってるのを見ると、不安になるわ。だから――」
当麻に抱きついて耳元で囁く。
「わたしを安心させて。当麻」
「……愛してる。美琴」
「わたしも、愛してるわ、当麻」
「これじゃ、ダメ?」
「うん。わたしの初めてをあげるから、当麻の初めてを頂戴」
背中に回されていた当麻の右手がブラのホックを外し、そのまま脇を滑り降りてスカートのホックを外す。左手はブラの中に潜り込んで胸を包み込んだ。
「あっ…ん」
「普通に短パン穿いてるんだな」
「うん。スカート短いし」
「ガードが固いのは、その、彼氏からすれば嬉しいぞ」
「変なところ…んっ、感心するのね」
スカートを脱がされ、当麻の手が短パンにかけられる。不思議と前の時みたいに怖くはなかった。
「ね、キスして。……んぅ…ん」
「…っん。後のことを考えると、すぐ脱がせた方が、いいのか?」
「後のこと…って?」
「その、濡れちゃうと、穿くときとか」
「……そう、ね。濡れたの穿くのは、抵抗ある、かな」
「じゃあ、短パンごと、脱がすな」
「………うん」
当麻が身体を起こし、両手を私の腰に当てる。それから一気に短パンとショーツを一緒に膝のあたりまで引き下ろした。
「いや…、見ないで」
「…悪い、無理」
短く言うと、上条は美琴の秘所に右手を伸ばし、撫でるように触れると美琴の身体がビクンと震えた。
「…ぁっん……ぅん」
「痛かったりしないか?」
「だい、じょう、ぶ…ぁん」
三本の指の腹で秘裂をなぞりながら、左手で短パンとショーツを足元まで引き下ろし、右足を抜いた。だが、恥ずかしいのだろう。美琴はすぐに足を揃え、太腿をぴったりと閉じる。
「美琴のここ、濡れてきたぞ」
「言わ、ないで…ぅん」
「熱い、な」
「あ…ん」
中指を立て、秘裂を押し分けて第一関節まで差し込むと、クチュリと淫靡な水音が上条の耳朶をくすぐった。それから、上条は吸い寄せられるかのように被裂と顔を近づけ、右手で押し広げた膣口へと舌を差し込んだ。
「ひゃぁっ!やだっ!きた、ない、からぁぁぁんっっ!」
「チュッ、じゅるっ、汚くなんかないぞ、チュッ」
「やぁっ!舐めちゃ、やぁ…ん、ぁ…」
陰唇をゆっくりと舐りあげると、上条は陰核を口に含んで吸い付いた。その瞬間、美琴の身体が大きくビクンと震える。
「やああああああっっ!!…はあぁ…ん…」
「感じてくれたのか?」
「……ぅん」
小さく美琴が頷いたのを見て、上条は静かに立ち上がると、穿いていたズボンを脱ぎ、ポケットに入っていた財布から避妊具を取り出し、トランクスを脱いだ。そして避妊具の封を開け、己の肉棒に装着する。
美琴はぼんやりとした眼差しで天井を見つめて、両手を上へと伸ばす。
「当麻」
「今行く」
ギシッとベッドのスプリングが鳴り、上条の顔が上にあげられた美琴の両手の間に差し込まれた。
「ね、キスして」
「ああ、今しようと思っていた」
美琴の両手が上条の頭の後に回され、美琴の方へと上条が引き寄せられていく。
「んっ…クチュ…はぁ…チュッ、んぅ…ん」
「美琴、愛してる」
「わたしも、愛してる」
「大丈夫、か?」
「もう一回、キス、して」
「ああ」
「はぁっ、…んっ、チュッ、クチュ、んっ…ぅ」
唇が離れ、お互いを見つめる。美琴は小さく微笑むと、静かに呟いた。
「…いいよ」
ゆっくりと上条が身体を起こし、美琴の両足を開く。その間に膝立ちの状態で座り込み、美琴の太腿を持ち上げて陰唇に自らの性器をあてがった。
「最初は、擦るだけ」
「…ひゃんっ」
クチャッ、ニチャッと淫靡な水音が二人の耳朶をくすぐる。
「はっ、はっ、これだけでも、気持ちいい、な」
「…あっ、あぅ、あっ…ひぅっ」
ニチャッ、ニチュッ、ニチャッ、ニチャッ
「やだ、おかしく、なっちゃう、ぁっ、あんっ…」
「感じやすい、な」
「当麻の、せい、っん、なんだから…ぁっ」
「それは、彼氏冥利に、尽きるな」
動きを止め、右手で肉棒を持ち、左手で美琴の大腿を持ち上げる。それから膣口に肉棒を当てて息を大きく吸いこんだ。
「美琴、いくぞ」
「…うん。きて」
ニチッ、ミチッ、クチャッ、クチュ、ミチャッ
「…ぁっ、あ、ああっ、ああああああああっっ!!」
「…っ、きつっ…はぁっ」
「はぁっ、はぁっ、いたい」
「大丈夫か?」
「しばらく、このまま、ぎゅって抱いて」
「ああ」
「いたい、けど、これで、当麻の、ものに、なったん、だよね?」
「ああ」
「うれしい」
「キスしていいか?」
「うん。して…んっ、チュッ、クチュッ、…んっ、んぅ…」
長いキスの後、啄むような短いキスを数回繰り返し、それからまた長いキスを交わした。
「そろそろ、動いて、いいよ」
ゆっくりと腰を動かすと、美琴は辛そうに顔を顰めた。
「なあ、止めるか?」
―――どうしてそんなこと言うの?
「あぅっ、だい、じょう、ぶ、んっ」
「辛いだろ?」
―――ジンジンするけど、大丈夫だから。
「やめないで、んっ、大丈夫、だからっ」
「でも…」
―――だから、やめないで。
「お願い、わたしで、イッて」
「わかった」
腰の動きを少し大きくすると、お互いの腰のぶつかるくぐもった拍手のような音が室内に響きはじめた。
「あっ、あん、あっ、あっ、あぅ…」
「美琴、美琴っ、美琴っ」
「あっ、当麻、当麻、当麻ぁ…」
お互いの名前を呼びあい、やがてどちらからともなく唇を重ね、荒い息づかいと淫靡な水音と腰のぶつかる音が部屋を満たした。
わたしは今、当麻に抱かれている。当麻は今、わたしの中にいる。
処女喪失は想像していたよりも痛かった。抱かれている今も、気を抜けば泣き言が漏れてしまいそうだけど、初めてだから…初めてだけど、わたしの身体で当麻には達してもらいたい。
「…ぅあっあっ、あっ、とう、まっ、当麻っ」
当麻の動きが止まり、ゆっくりとわたしにのしかかってくる。まだわたしの中に入ったままだけど、嫌じゃない。
「ありがとうな。美琴」
「…キス、して」
触れるだけのキスを交わし、それからお互いの顔を見て微笑みあう。
「美琴、その、大丈夫か?」
「まあ、なんとか」
「なんだよそれ?」
「ジンジンするし、すごい怠い。けど、なんか、幸せ」
「…そっか」
「うん」
軽いキスをしてから上条は身体を起こし、ゆっくりと美琴から離れる。それからベッド際に立ちあがり、ティッシュを数枚取って股間に当て、避妊具を包んで抜き取り、そのまま丸めてゴミ箱に捨てた。それからトランクスを拾い上げて穿くと、ベッドへと顔を向ける。
「…って、美琴!」
「…なぁに?」
「ゴメン、痛いよな?でもシャワー浴びたほうがいい。結構血が出てる」
シーツに着いた破瓜の血を見て、上条は慌ててそう言った。
「…立てそうにないから、連れてって」
「じゃ、じゃあ、持ち上げるぞ?」
「えへ。お姫様抱っこね」
「まあ、そうなるな」
抱き上げられると、美琴は両手を上条の首の後ろに回し、耳元でそっと囁いた。
「この手を、離さないでね」