プロローグ 日常の終わり
ポッキー戦士。
それは、ポッキーを食べることにより秘められた力が解放される不思議な能力を持った存在のことを指す。
政府にも公認されていることで、そしてその存在は少年少女に限られることが多い。
彼らの目的は、余り余った在庫が怪物化してしまった存在――『怪物化残売品(アンソウルド・モンスター)』を倒すためにその力を日夜使っている。
そして、これは、そんな少年少女の物語――。
年が変わり、二〇一四年。
僕はある場所へと向かっていた。格好はいつもと一緒だけれど、どことなく綺麗な格好にしている。どういう感じかといえば埃を落としたりとか糸くずを取ったりとか、そんな感じ。一年もあっという間に終わってしまったなあ、とか思いながらただいつも通り歩いているだけ。
それじゃあ、僕はどこへ向かっているんだ、って?
そんなことは簡単なことだし、今までこれを読んでいた稀有な読者ならば解っているんじゃあないかな。
そう。
「ここか……」
漸く到着して、名前を見る。
坂の上にある小さな家だ。どれくらい小さいかといえば、家族三人暮らしと言われても目を疑うくらい。
ここはぐり子ちゃんの家だ。
ぐり子ちゃんの家は学校の裏山の中腹にある。裏山といっても殆どが切り開かれているから、住宅地になっていたりするのだけれど、ぐり子ちゃんの家の周辺はまだ整備されていない。要するに都会の中にある田舎、ってやつ。
「おい、聞こえたぞ。江崎」
そんな言葉が聞こえて、僕は上を向いた。
そこに居たのは、ぐり子ちゃんだった。
ポッキー戦士の相方である、彼女と一緒に初詣に行く予定があったのだった。
「さあ、江崎。行くぞ」
「うん、そうだね」
そう言って、僕は踵を返した。
――その時だった。
僕の右腕が、無残にも切り取られた。
あまりにも唐突過ぎて、何が起きたのか解らなかった。
「……え?」
僕は腕の方を見る。
腕は無くなっていた。
はっきりとなくなっていた。
血も出ていない、痛くもない。
聞いたことがある。あまりにも鋭い剣で切ったその切り口は、痛みも感じないっていうことを。
ぐり子ちゃんはその間ずっと僕を見ていた。きっと何があったのか解らなかったんだ。僕だって、解らなかったんだから。
「ぐり子ちゃん」
声が、出なかった。
いったい、誰がこれを――。
僕は、前を向いた。
そこに居たのは『影』だった。大の大人程の大きさの影。それが、笑っているような感じがした。
「……ぐり子ちゃんっ!!」
叫んだ。でも、声が出ない。
そして影は容赦なく僕の体を貫いた。嗚咽が走り、血を吐く。ぐり子ちゃんは驚いていたようだった。だが、動けなかった。動かなかったのかもしれない。動いたら死ぬ――そんな本能が働いたのかもしれなかった。
だけれど。
ぐり子ちゃんだけには逃げて欲しい。
たとえ、僕は死んでも構わない。
だけれど、ぐり子ちゃんだけは――。
「死ね」
小さい声が頭の中に響いた。
そして、
影が伸びた。
僕の叫びも届かずに、
僕の叫びも聞かずに、
それは、
ぐり子ちゃんの腹を貫いた。