アンソウルド・モンスターを倒した江崎とぐり子だったが、それだけで油断をする彼らでもなかった。
「……さて、どうすればいいかな?」
ぐり子は呟いて、ポッキーを一口齧る。 ぐり子がポッキーを齧るということは相当にイライラしているのだろう。
「一先ずエレベーターは使えないよね……ならば、階段かエスカレーターってことになるけれど……うーん……」
「ピエロがほんとうに居なくなったのかどうかも解らないしな」
一番の不安がそれだった。
ピエロ。
先程現れたピエロの存在について、だった。
ピエロはアンソウルド・モンスターについて知っていた。そしてぐり子をカミサマに仕立て上げようとしていた。
そしてピエロは、ミカド教団は、どうしてぐり子をカミサマにしようとしているのだろうか?
今の江崎とぐり子には到底理解出来なかった。
「さてと……じゃあ、江崎、お前の言った通りに階下へ向かおう。こっちはポッキー戦士だ。何かあっても正々堂々と立ち向かってやる」
「ぐり子ちゃん、その姿勢は素晴らしいものだと思うけれど、僕はちょっと不安だなあ……」
江崎はそう言いながら弾丸を銃にこめる。
「何てったってしょうがないだろう。一先ず、敵の本拠地へ向かおう。話はそれからだ」
そして、二人は下に降りる術を探すために歩き始めた。
◇◇◇
「……階下へ向かった、か。まあ、普通なのかなあ」
そう言ってアミはモニターを見るのをやめた。モニターには江崎たちの姿が映し出されており、彼女はずっとそれを見ていたのか、少しモニターから離れて小さく伸びをした。
「どうだい、様子は?」
背後からアッシュの声がかかり、アミは振り返る。
「問題はないわ、寧ろ普通なくらい」
「そうか、これからも警備を続けてくれ。よろしく頼むよ」
そう言ってアッシュはその場を立ち去ろうと振り返った。
「あ、そうだった」
しかしそこでアッシュは何かを思い出したらしく、再びアミの方へ振り返った。
「どうかしたのかしら?」
「漸く出番がやって来た……といえばいいのかな。少なくともアミ、君だけね」
「ふうん。やっと『上』もそろそろ動き出した、ってこと?」
「まあ、そういうことかなあ」
アッシュは失笑する。
「とりあえず、準備だけはしておいてくれよ。すぐ向かうからね」
「ねえ」
アミの言葉に、アッシュは首を傾げる。
「どうしたんだい?」
「向かう……ということはやはり彼女を『カミサマ』にするということでいいのよね?」
「そういうことになるね」
「どうして彼女なの?」
「どうして、と言われてもなあ……。上からは『運命であり天啓である。彼女が生まれたことですでにこの世界を救うべき存在になるということは決まっていたのだ』などと言っていたが」
「結局解らず仕舞い?」
そう言ってアミは机に置かれたティーカップの中に入っている紅茶を一口啜った。
「そうだね。……まあ、僕は君が一番強いとは思っているよ」
そう言ってアッシュはアミの頭を撫でた。
アミは顔を赤らめながら、
「嬉しい」
とだけ呟いた。
そしてアッシュは今度こそ立ち去っていった。
残されたアミは髪をくるくると指で回しながら、その場を立ち去っていった。
「……でもやっぱり、あの子がカミサマだなんて許さないんだから。いくら『上』が言っているからって、許さない。……イチバンは私なのに……!」
モニターの光だけが、その部屋の唯一の明かりとなった。
「ぐり子ちゃん、どうかしたの?」
道中、ぐり子ちゃんが何か考え事をしていたので僕は訊ねた。
ぐり子ちゃんはやっぱり考え事をしていたのか、少しだけ時間をおいて答えた。
「ん? あ、いや……特に何でもない」
「そう? だったらいいんだけれど」
ぐり子ちゃんはよく考え事をする方ではあるけれど、『ポッキー戦士』の仕事のときはあまり考え事はしない。油断すれば何があるか解らないからだ。
「でも、ぐり子ちゃん、何かあったら言ってよね?」
僕が呟くとぐり子ちゃんはただ頷いた。
素直じゃないなあ。