「支部長さん! どうしてここに?」
僕は支部長さんに駆け寄って、訊ねる。
「事態がうまくいかないから、って自分できたのよ」
それに答えたのは支部長さんではなく、能美さんだった。
そして、能美さんのとなりにはもうひとりの男性の姿もあった。
「あの……?」
僕は訊ねようとしたが――
「彼は十七夜樹、君たちと同じくポッキー戦士よ」
そう能美さんから紹介があったので、僕は頭を下げた。それを見て、樹さんも頭を下げた。
「さて! 細かい話はあとだ! さっさとここにいるテロリストを殲滅するぞ!」
「それはどうかな」
僕は振り返る。そこに居たのは、銃を構えた男だった。メガネをかけて、顎には無精ひげが残っている。清潔感はあまりない、そんな男だった。
ショットガンを背負っており、ウエストポーチを装着していた。ポーチからジャラジャラと音が聞こえるから、恐らく、あれには銃弾が入っていると思われる。
ともかく、これだけは言える。
あれは、敵だ。
「まさかポッキー戦士が三人も居るとは思いもしなかったな」
そう言って男は手に持っていた拳銃を空に掲げると、引き金をひいた。
その行動にためらいなどない。
「次はお前らに撃つ」
「……出来ると思ってんのか、そんなのが」
対してそれに怒りの表情を示したのは、ぐり子ちゃんだった。
「ハハッ! できるに決まってんだろうがよゥ! 結局、ポッキー戦士だろうが何だろうが知らねえが、ただの中学生! ボスはビクビクしているが、そんなことはまったく関係ねえんだよッ!!」
そして。
男がぐり子ちゃんに向けて拳銃の引き金をひいた。
それからはあまりにも瞬間的すぎて、何があったのかはよく解らないけれど、少なくとも一瞬にして男が倒れていて、ぐり子ちゃんの額には汗が浮かんでいた。
「はじめて試してみたが……やってみるもんだな」
ぐり子ちゃんの口にはポッキーが二本あった。
「能力を限界突破させる『リミット・ブレイカー』機能、ってやつを」
「リミット・ブレイカー機能?」
「聞いたことがないのか? ポッキーを複数本同時に食べることを条件として起きるんだよ」
それは聞いたことがなかった。けれど覚えておけば今後のためになりそうだと思った。
「さてと」
ぐり子ちゃんは呟いて、辺りを見渡す。
「終わらせますか、このテロを」
ぐり子ちゃんはゆっくりと歩き始めた。
「まさかあそこまで簡単に倒せるなんてね。旧世代のポッキー戦士も馬鹿にできないわね」
冷たい声が、響いた。
そこに居たのはひとりの少女だった。全身をピンクの服で身を包んだ少女だった。少女はぐり子ちゃんを一瞥すると、小さく舌打ちする。
「……あんたがぐり子ね。初めて会ったけれど、やはり実物を見ると違うね」
少女の話は続く。
「私の名前はアミ。井風アミだ。ネオ・ポッキー戦士と呼ばれているが、もともとは君たちと同じくポッキー戦士だった」
「ネオ・ポッキー戦士というのは……一人じゃあねえのかよ」
「ひとり? そんなわけなかろう。そんなもので『私たちの構想』を実現出来るわけがない」
「構想……だと?」
ぐり子ちゃんは訊ねる。だけれど少女はそれに対して高らかに笑った。
まるでその質問に答える必要などない、と言いたげに。
「その質問に答えてもらうには、お前を倒す必要がある……そういうことか?」
「倒せる自信があるなら、ね」
その言葉に少女はにっこりと微笑むと、
瞬間的にぐり子ちゃんの目の前まで来ていた。
「!!」
「遅い」
ぐり子ちゃんは横になぎ倒される。ショーウィンドウのガラスが破壊され、陳列された商品が見るも無残な姿へと変貌していく。
「ぐり子ちゃん!!」
僕は叫ぶも、
「動くなよ、もうひとりのポッキー戦士。お前を倒すのはあいつを倒してからだ。あいつさえ倒せば、お前は雑魚だからな」
そして、少女はぐり子ちゃんの方へとゆっくりと歩いていく。
「ぐり子ちゃんを倒すことで、何があると言うんだ?! いや、そもそもだ! ポッキー戦士を倒すことで何の利害が発生する!」
僕は思ったことを精一杯叫んだ。
だけれど、その言葉は少女に届くことはなく、ぐり子ちゃんの方へと歩いていくだけだった。
「やめろ」
しかし、その行く手を遮った人間がいた。
それは、支部長だった。
「ぐり子くんを……好きにはさせぬぞ……!!」
支部長は手を大きく広げて、進路を遮った。
しかし、少女はそれを鼻で笑った。
「その程度で私の進路を遮れるとでも思っているの? まったく、笑っちゃう」
そう言って。
支部長よりも小さい身体のその少女は。
支部長の身体をいとも簡単に持ち上げて、それを天へと投げ打った。
「うおおおおっ!!」
支部長は二階、いや三階のエスカレーターデッキに届く距離まで飛ばされ、そして落ちていく。
「支部長さん!」
それをなんとか抑えようと樹さんが空を飛んだ。
「させないよ」
樹さんの行動を、少女は読んでいたのか。
そうとしか、考えられなかった。
樹さんの身体が『見えない何か』に遮られた。
支部長の居る距離まで、ほんの僅かだった。
「支部長さんっ!!」
支部長は落ちていく。
支部長は上昇したときの圧力で意識を失っていた。
どうすればいいのか。
どうすればいいのか。
どうすればいいのか。
僕の頭の中は、考えることがいっぱいだった。
そして結論も見いだせずにいた。
「どうすればいいんだ……」
ぐり子ちゃんは倒れている。
支部長は意識を失っている。
樹さんは動けない。
どうすればいいんだ。
「……ポッキー戦士がこんな弱いものなんて知らなかった。やっぱり在庫監視委員会なんてクダラナイ組織さっさと潰すべきよね」
少女の言葉だけが、耳に届いた。
時間が恐ろしい程にゆっくりと動いていた。
そして。