※この作品はR-18です。

ぼくらはポッキー戦士   作:natsuki

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初出2014年8月 ピクシブ連載


第四章 2

 

3

 

 そんな時間はかからずにスーパーセブンティーンに到着した。スーパーセブンティーンは町はずれにあるスーパーだ。それほど大きいスーパーではないけど、品揃えはそれなりにある。それに昔からあるスーパーだからか、地元市民に愛されるそれとなっている。

 スーパーセブンティーンには巨大なアンソウルド・モンスターがいた。今回の『在庫の怪物』は世界的に売られているポテトチップスの最新作から生み出されたものだ。本当なら、売上を考慮するならば、生み出されることはないのだが、売上を考慮して『あまりにも多くの』在庫を仕入れてそれが捌ききれなかったのが原因だと考えられている。なんというか、在庫管理って大事だなあ。

「陣形はいつも通り。私が出撃して江崎がサポート。新人は……とりあえずそこで見ていろ」

 ぐり子ちゃんの言葉を聞いて結風さんは眉をひそめる。

「……もし問題がなければその理由を聞かせていただきたいのですが」

「新人だからだ。新人にそう簡単に任せられるわけがない。それは誰にだって解るだろ?」

「へえ……。そうやって若手の出番を潰すわけですか」

「……なんだと?」

 おやおや……ちょっと雲行きが怪しくなってきた。アンソウルド・モンスターがいる現場近くだっていうのにぐり子ちゃんと結風さんは見つめ合う。もちろん、その『見つめ合う』には恋愛感情とかそういう意味はなくて、寧ろその逆だったりする。

「勝手にやらせてもらいます」

 結風さんが一歩前に出た。

「お、おい!!」

 ぐり子ちゃんがそれを制しようとするが、それでもその手は間に合わない。

 そして、結風さんはアンソウルド・モンスターへ単身突撃した。

 

4

 

「どう思う。能美くん」

 私は能美くんにある資料を見せていた。ほんとうは支部長以外に見せてはいけないことになっているのだが、はっきり言って緊急事態だ。見せて何か処罰されるより、信頼できる人間に見せて意見を聞いたほうがよっぽどいい。

 能美くんはうんうんと唸りながら、軈て口を開く。

「おかしな話ですよね、この時期に。しかも本部からでしょう?」

 能美くんは私がおかしいと思った点を的確に突いてくる。流石だ。

 今見せているのは結風雪穂に関する基本的資料である。とはいえ、その資料の内容はプロフィールと同等に過ぎない。

 だが、この時期に本部から送られてくる……それがおかしいのである。本部だってもうミカド教団のことは知っているはずだ。なぜなら私が、ミカド教団に関する事件が起きるたびに本部に報告しているのだから。しかしながらあまりにも対応が遅く、まさか本部も何か関わっているのではないかと考えている。

 とはいえ、報告しないと怪しまれてしまうし、なにしろ本部に忠誠心がないのではないかと疑われこの支部自体が攻撃されるようなことがあってはならない。

「……で、これを見て私はどうすればいいでしょうか」

「生年月日を見てくれ。忘れもしない、あの日なんだよ。二〇〇〇年十一月二十五日……、日本で初めてアンソウルド・モンスターが観測された日だ」

「……偶然じゃないですか」

 能美くんは一瞬はっと口を開けたが、すぐに冷静を取り戻す。まあ、そう思うだろう。普通なら偶然に思うに違いない。だが、このタイミングで、本部からやってきたのだ。疑う気持ちも解るだろう?

「それでは、あなたはそれをどうなさるおつもりです? というか、ミカド教団の計画はどこまで解っているのですか?」

「ミカド教団の計画、か」

 そう言って私は別紙を差し出す。それはある企画書の原案とも言えるもの。しかし、殆ど修正せずに実行されると考えているので、恐らくこのまま実行されるのだろう。

 ふと、そこで私は能美くんに訊ねる。

「唐突だが、君は神の存在を信じるか?」

「生憎私は無宗教ですが」

 そうか、とだけ私は言った。何か信じているならそれはそれで厄介だが信じていないのならまあいい。

「ミカド教団は、実のところ明確とした神を立てていないらしい。なのに教団を名乗っているのだから案外面白い話だが……そして、ミカド教団は神を作ろうとしている」

「神を……作る?」

 私は頷く。

「ああ、そうだ。神を作り、そして世界をどうするかはまだ解らないが……少なくとも、ミカド教団はその予定があるらしい。計画、と言ったほうがいいかもしれないが」

「神を作る。それをすることで何か意味があるのでしょうか?」

「いいや、知らないな。解らないし理解したくない」

 私はそう言って書類を机の中に仕舞う。もういい。これ以上話をしてもあまり進展が無さそうだ。

「ともなると……やはりこの時期にポッキー戦士が一名居なくなるのは痛手ですね」

「仕方ないだろう。彼女はそれほど心に傷を負ったということだ。身体は治っても心はそう簡単に治らない。そういうものだ」

「ですが……実際に戦力が少なくなるのは事実ですよ。彼女はポッキー戦士の中でも強い方だったではありませんか」

「そうだ。だが、仕方ないことだ。これ以上やらせれば彼女の心が完全に崩壊する。彼女の心の崩壊は……もうそこまで来ているのだ。恐らくは、今回が最後の戦いになるだろうな」

 

5

 

「うわああああああ!」

 アンソウルド・モンスターとの戦いは困難を極めた。結風さんの能力がどういうものか未だに理解できていないが、しかし戦力としては申し分ないのは事実だ。それなりに彼女は強かった。

 だが、とはいっても。

 今回のアンソウルド・モンスターは強い。そして素早い。照準がなかなかアンソウルド・モンスターに合わない。

 ぐり子ちゃんも大変らしい。まだ一撃もクリティカルヒットを与えていない。アンソウルド・モンスターを倒す場合、ちまちまと攻撃するより一発か二発ほどクリティカルヒットを与えたほうがいい。

 とにかく、どうにかしてクリティカルヒットを与える方法を考えねば。

 

  ◇◇◇

 

 江崎がなかなか撃てないのは当たり前だろう。このアンソウルド・モンスターはあまりにも素早く動いている。

 私なら、あと一本ポッキーを食べれば倒すことは出来るかもしれない。

 でも、身体が言っている。これ以上はいけない、と。

 だからなんだというのか。自分の身体と目の前の勝利……どちらを取るべきか。

 ただ、これ以上はいけない気がしてならない。

 でも、結風という新人と江崎が今のところクリティカルヒットに類する攻撃を与えられる気がしない。即ち、今私だけ、クリティカルヒットを与えられる可能性があるということだ。

 ……何を迷っているんだよ、ぐり子。ポッキー戦士の役目を忘れてしまったのか?

 ポッキー戦士の役目は在庫の怪物……アンソウルド・モンスターを倒すこと、そしてみんなの平和を守ること、だろ?

 安っぽいヒーローめいた理由かもしれないけど、それでも立派な矜持ってもんがポッキー戦士にはある。

 だったらその矜持を示す時が――来たんじゃねえのか? 今こそその矜持の価値を示す時が来たんじゃないのか?

 そうだよ。

 私の居場所は、私が居心地のいい場所は、ここだったんだよ。

 そして――。

 私は決心して、二本目のポッキーを噛み砕いた。

 

 

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