◇江崎サイド◇
その時だった。
目の前が、一気に真っ暗になった。
「江崎!!」
ぐり子ちゃんの声が響く。僕はぐり子ちゃんに突き飛ばされ、倒れていく。
ぐり子ちゃんは、それと対面した。
◇ぐり子サイド◇
どうしてこうなったのかは、私にだってはっきりと解らないが、しかしどうしてミカド教団とやらに色々と狙われるハメとなったのか。
それは私が知りたいくらいだ。
ならば。
私は聞いてみようじゃあないか。
目の前にいる、見たことのない『敵』に。
「ごきげんよう、ポッキー戦士」
その声は酷く落ち着いていた。それはもう、機械みたいに一本調子で冷たい声だった。冷たい声は、響く。
「お前はいったい何者だ」
私は訊ねる。
「私ですか? 『ミカド教団』……恐らくご存知であると思われるのですが」
やはり、ビンゴだったか。
ミカド教団。あいつらの方からやってきた。
これは、チャンスと捉えるべきだ。
「まさかお前たちの方から来てくれるなんてな」
「いえいえ、戦うのは私ではありませんよ」
そう言って、その男? は退く。
そこに居たのは、少女だった。赤茶色の髪に、赤茶色の目。白いマフラーに茶色のセーター、ジーパンに両手を突っ込んでいた。
「何者だ、お前は」
「これは私たちが開発した『ネオ・ポッキー戦士』だ」
男の話は続く。
「『ネオ・ポッキー戦士』は我々の悲願であった。ポッキー戦士をトップにおくことが出来ないのならば、せめて『神写し』としてポッキー戦士を作れば良い……我々はそう考えた、というわけだ」
「腐っている。本当に腐っている考えだよ」
「どうとでも言うがいい。だが、あなたよりは強い」
そう言うと、少女は驚異的なスピードで私との間合いを詰めてきた。
私は思わず後退する。
「ぐり子ちゃん!!」
江崎の声が聞こえるが、私はそれに答える暇などなかった。
そして。
少女は驚異的なスピードで、私の少し横を掠めていった。頬のあたりがどこか冷たいのは、頬を切ってしまったからだろう。
それにしても、恐ろしいスピードだ。
私がポッキーを食べても叶うかどうか解らない。
「どうです? 我々の開発した『ネオ・ポッキー戦士』は?」
その言葉とともに少女は男のもとへ戻ってきた。
私はその隙をついて、ポッキーを確認しようとした。ポッキーさえ確認出来れば、それを奪えばそのスピードも取り除けるはずだったからだ。
しかし。
「……あれ?」
ポッキーを銜えてはいなかった。
「『ネオ・ポッキー戦士』はポッキーをすでに食べている状態なのです! さらに!」
そう言って男はポッキーを少女に投げ渡す。少女は華麗にそれを口でキャッチした。
しかし、其の時私には見えていた。
そのポッキーのチョコがピンク色――そう、それは。
あの少女が食べているポッキーは、いちごポッキーということを。
「見えた……!」
私が呟いたのを聞こえていたのか、男はこちらを向いてニヤリと笑った。
「だから言ったでしょう? この『ネオ・ポッキー戦士』は新たにポッキーを食べると!」
ヒュン! と風を切り裂いた音がした。
つい数瞬までに私の目の前にいた少女が、私の後ろに立っていた。
「……瞬間移動……だと?」
「いいえ、あっているようで間違っています。説明する必要もありませんが、あなたをこれ以上傷つけるつもりは毛頭ないのですよ」
「何だと?」
私はその言葉を思わず聞き返していた。
「取引をしましょうか、ポッキー戦士ぐり子」
「私の名前を、どうして……」
「そんなことはどうだっていいのです。今も言いましたが、我々はこれ以上あなたを傷つけるわけにはいかないのです」
「何故だ?」
「あなたは、『カミサマ』となるべき素質を持った存在だから」
「…………は?」
まさかここまで沸いているとは思わなかった。
「今回は、これだけとさせていただきます。返事は早くなくても、別に今すぐにされても、あとでも結構です。もう一度あなたの前に訪れる予定です。その時に……教えていただけると幸いです」
そして、そいつは。
いちごポッキーをくわえたネオ・ポッキー戦士と共に。
私の目の前から、姿を消した。