11
目を覚ますと、そこは白い空間だった。
僕は訳が分からず、辺りを見渡す。
そして、何もないと分かってへたり込む。
「僕はどうしてこんな場所に飛ばされてしまったんだ……」
飛ばされる前の会話を、少しだけ思い出してみることにした。
「……思い出せ、江崎カカオ。お前は覚えているはずだ。世界のすべてを。なぜ牧場ぐり子が狙われているのかを。そして、なぜお前と牧場ぐり子がともに菓子戦士として活動しているのかを」
「なぜ僕が菓子戦士としているのか……」
それは単純にして明快な答えだ。雇われているから、に過ぎない。
でも、きっと。
あの彼女が言いたいのは、そういうことじゃないのだろう。
あと三日で世界が滅びる?
それは誰のため?
まさか……ぐり子ちゃんのために世界が滅びるとでもいうのか?
「そう。そうだよ。江崎カカオ。そうして一度世界は『リセット』された。そのことに気づいているのは、誰一人として存在しない訳だがね」
「そう。そうだよ。江崎カカオ。そうして一度世界は『リセット』された。そのことに気づいているのは、誰一人として存在しない訳だがね」
「でも、あなたは気づいている」
「そりゃあ、そうだ。私はこの次元に存在するべき存在ではないからね」
「? ……いったい何を?」
「影神って知っているかい?」
「影……神?」
「そう。影神だ。知らないだろう。当然だろうね。神のシステムについて、人間が知り得るはずが無いのだから」
「つまり君は、」
一息。
「神様だって言いたいのか?」
「まあ、そういうことになるね。この世界を修正するためにやってきたプログラムと言って貰って差し支えない」
「それで。そのプログラムがいったい何をしに来たというんだ? まさか、プログラム直々世界を破壊せよと言いに来たのか?」
そんなこと、出来る訳が無い。
菓子戦士に備わっている力で、人を破壊することなど出来やしないのだから。
「そんなことが出来ているなら、苦労はしない」
「ならば、どうして?」
「言っただろう。私はこの世界を修正するために遣わされたプログラム、だと。そして私たちは、この世界を修正するためにある団体と結託した。……ここまで言えば、君にも事態が把握出来るのでは無いかね?」
「まさか……ミカド教団と!?」
「そう」
「我々『神』は、ミカド教団と協力して牧場ぐり子を神に仕立て上げる。それが我々の最終目的だ」
12
「……流石に遅すぎるねえ、江崎くん」
定期ミーティングをするというのに、三十分以上も遅刻している。
それが彼女の不安を増長させていた。
「まさか、江崎に何かあったのか?」
「それは心配をしすぎではないかな。ぐり子くん。江崎くんは菓子戦士の中でも随一を誇る戦闘力の持ち主だ。精神も鍛えているはずだし、彼が闇に落ちることは先ず有り得ない」
「そうであるなら、それで問題無いのだが……」
そのときだった。けたたましいサイレンが鳴り響いたのは。
「何だ! このサイレンは!?」
支部長は慌ててモニターを確認する。
そして、そこに映し出されていた人物を見て絶望する。
「江崎くん……どうして君がそこにいるんだ……!」
『あー、聞こえていると思うが、我々はミカド教団だ。目的は菓子戦士であるある少女の神への昇格。その為にはどんな手段も厭わない。死人が出たとしても、それは救済だ。それ以上でもそれ以下でも無い』
江崎はそう言って。
カメラをライフルで撃ち放ったのだった。