小田丸百貨店、その五階。
二人のポッキー戦士は作戦会議を立てていた。
「さあて、江崎。これからどうする?」
「先ずは警備室を陥落させよう。さっきのアナウンスからして一階のホールに主犯格は居るみたいだし」
「警備室……とは言うが、どうやって向かう? 警備室はさすがにフロアマップには載っていないだろう?」
「それはどうにかするしかないだろうね……」
江崎はそう呟いた。
対して、ぐり子は鼻を鳴らして、
「……まあ、ここでぐだぐだ話している暇もないか」
ぐり子のその声を聞いて、江崎は立ち上がる。
「どうした?」
ぐり子が訊ねる。
「一先ずフロアマップが見えるところに行こうよ」
「アンソウルド・モンスターに見つかるぞ?」
「リスクが多少あっても行った方がいいんじゃあないかな?」
「それもそうだ」
そしてぐり子も立ち上がり、二人は再び歩き始めた。
◇◇◇
舞台は変わり、東日本在庫監視委員会西多摩支部。
「支部長」
支部長室の扉をノックする音がかれの耳に届いた。
「どうした、今は会議中だぞ」
支部長がそう言うも、ノックをした主はそのまま入ってきた。
「申し訳ありません。緊急だったもので」
それを聞いて、支部長は目を見開いた。
「……なんだ?」
「実は今、とあるデパートにて立てこもり事件が発生している、と警視庁から報告がありまして」
「それが我々とどう関係すると?」
「話はこれからです。……どうやら、そこにアンソウルド・モンスターが発生したらしいのです」
それを聞いた支部長と能美が目を見合わせる。
「それは本当ですか」
能美が訊ねると、その人間は小さく頷いた。
「何たることだ! 急いでぐり子くんに電話を!」
支部長はそう言って、机上に置かれた電話の受話器をとったが、
「いえ、実はもう両名に電話をかけているのですが……二人共マナーモードにしているらしく……つながらないのです」
「マナーモードだと? そいつはおかしいだろう。なにせ、彼らはいつアンソウルド・モンスターの襲撃があってもいいようにマナーモードなどしないと決めているはずだったぞ?」
「ええ、そうなのですが……しかし繋がらないのです」
それを聞いて、支部長は腕を組んだ。
「むむむ……どうすればよいか……」
暫く支部長は腕を組んで考え事をしていたが、何かを思いついたらしく「おお!」とオーバーリアクション気味に声を上げた。
「私が出撃すればいいのだ!」
「え……え!? 支部長、あなたは指揮をする立場ではなくて!?」
能美は思わず支部長の脇腹をチョップしたが、支部長の表情は崩れない。
「いいのだよ! 私はこれでも英検三級漢検一級TOEIC九百点を持つエリートなのだぞ!」
「その成績は充分すごいけどまったく関係ないよね?!」
「それと基本情報技術者の免許も!」
「すごい! けど今は要らない!」
能美と支部長の漫才じみた会話を見た男は引きつった笑みを浮かべていたが、会話が終わったのを見て、その表情を元に戻す。
「と、ともかく! 報告は以上です!」
そう言って、彼は戻っていった。
「……こうなれば出撃だ!」
「いや、本当に出撃するんですか?」
「ああ、そうだ。……おっと、そうだ。出撃といえば……こっちも遠征をかけておかねばな」
支部長は唐突にそう言って、パソコンを操作し始めた。
「遠征?」
そう言って能美は画面を見つめる。そのあとすぐに、パソコンから声が響いた。それは、間違って音声をつけたままにしていたのか、手が滑ったのかは解らない。
『か・ん・こ・れ! 始まります!』
その音声が能美の耳に届いた時には、もう遅かった。画面には木造住宅を思わせる背景に砲台を背中に背負った女性の姿が描かれていた。レベルらしき表示が画面上部にあったので見てみるとそこそこ強く、『元帥』などと書かれていた。
それを見て、能美はぷるぷると肩を震わせ始める。
「お、おい……能美くん? 違うんだ、これはだな……?」
しかし。
彼の弁明が能美に聞こえることはなかった。
「仕事中にゲームしているんじゃあないっ!!」
彼女の右アッパーが、支部長の顎に命中し、支部長が壁に叩きつけられた。
そうして怒り狂ったまま能美は支部長室を後にする。
支部長は少し経ってからゆっくりと立ち上がり、のろのろとパソコン画面へと向かい、マウスで何かを操作した。
暫くして、支部長は再びゆっくりと歩き始めた。
「……そろそろ『本気』を出さねばな」