その頃、ぐり子と江崎。
アンソウルド・モンスターとの戦いはあっという間に終わってしまった。
とどのつまり、今まで彼女たちが戦ったそれとは比べようにならないほどの強さだった。
「こりゃまるで張子の虎だ。あまりにもひどすぎる。これほどのアンソウルド・モンスターしか用意出来なかったのか、それともわざとこれほどのアンソウルド・モンスターしか用意しなかったのかは……解らないがな」
ぐり子がそう神妙な面持ちで呟くと、何かの気配に気付いたらしく、江崎の肩を小さく叩いた。
「どうしたの、ぐり子ちゃん」
「いいから隠れろ、急げ。誰か来るぞ」
それを聞いて江崎は急いで物陰を探した。
目の前にあった非常階段、その扉へと逃げ込むほか彼女たちには道は残されていなかった。
なので、すぐに彼女たちはそこに飛び込んだ。
そしてぐり子の言うとおり、すぐにそれは上がってきた。
それはピエロだった。何かの鼻歌を歌っているらしく、音楽が聞こえる。
「ピエロ?」
「ピエロだな」
二人は同じような言葉を呟く。しかしまだピエロにはこちらの様子は気づかれていないようだった。
「あのピエロ、いったい何者だ?」
「何だろうね……わからないや」
「教えてあげましょうか?」
其の時、彼らは思わずゆっくりと振り返っていた。
そこには、ピエロが立っていた。ピエロは手を振ってこちらに向かって立っていた。
「な、何故だ?! 確かにピエロは向こうにいたはずなのに……!!」
ぐり子の言葉に対し、ピエロははっはっはと高笑いする。
「そいつは奇妙ですね。些か信じられません。まるで『瞬間移動』を私がしたみたいじゃあないですか、まあ、結局は違うんですけれど」
ピエロはそう言いながら、ゆっくりとこちらに近付いてくる。
「来るな……っ!!」
「何、別に私は戦うために来たんじゃあないんですよ、取引をしたくて来たんです」
「取引……だと?」
「そうですとも、あなたは『カミサマ』となる素質を持っているのですから」
「また、カミサマかよ。くだらない、カミサマなんて……。そもそもカミサマなんて本当にこの世にいるのかよ?」
「それは解りません。少なくともあなたはそうなる素質がある……とだけ言わせていただきましょう」
ピエロの言葉に、ぐり子は背を向ける。
「お断りだね。そんなもの、やろうと思うわけがないだろう?」
ピエロはそれを聞いて首を傾げた。
「まあ、そういうのであれば仕方ありません。退散しましょう。……ですが、我々はまだ諦めたわけじゃありませんよ。それを忘れないでください」
意外にもあっさりとピエロが諦めたのでぐり子は一瞬呆れてしまったが、咳払いをして、話を続ける。
「何度きても変わらないよ、カミサマなんてものに私はなろうとは思わない」
「……本当に残念だ、あなたなら最強のポッキー戦士になれるはずなのに……」
「どう言ったって無駄だ」
「あなたの母親のようになれるというのに?」
それを聞いた瞬間、ぐり子の目の色が変わった。
「おい、母親のことを何か知っているのか?!」
ピエロの襟をつかみ、何度も何度もピエロの身体を揺すった。
「ええ、知っていますよ。あなたなら母親を簡単に超すことが出来るでしょう。最強のポッキー戦士になることが出来るんです。ネオ・ポッキー戦士はあくまでも邪道。あなたのように純粋なポッキー戦士を守る人間に過ぎないのですから……」
「おい、それはどういうことだ……!!」
「フフフ、また会いましょう……」
ポン! とピエロの周りに煙が放たれた時にはもう遅かった。
「煙幕か!」
しかし、ぐり子はまだピエロの襟を放してはいない。だから逃げられるはずはなかった。
しかし。
煙が晴れた頃にはもうピエロの姿はなかった。彼女が持っていたはずの襟も、そこにはもうなかったのだった。
「おい……どこに行きやがったんだ……?」
彼女たちは辺りを見渡すが、もうそこには彼女たち以外の人間はいなかった。