「るんたった~、たりららった~」
やたらと体格の良い大男がスキップをしながら山道をゆく。
世が世なら通報案件であるが、九十郎は気にする様子も無く、2人の同行者もツッコミを入れる様子が無い。
ソレを手に入れてから2日も経っているというのに、大男……九十郎の機嫌は有頂天のままだ。
「……なあ、そんなに嬉しいのか? あたいの名前書いた紙が」
九十郎が手に持つ物は『山県粉雪昌景』の名が記された紙。
それ以上のものでもそれ以下のものでもないが、九十郎にとっては価値ある逸品だ。
「ああ嬉しいとも、何せ武田四天王、山県昌景の直筆のサインだ。
しかも『九十郎君へ』と書かれている。
万金を積んでも得られない宝物が、用心棒1回で手に入るんだぞ」
「こんな紙っきれ一枚があたいを抱く事よりも、か……
うぅ、安心したような、ちょっと悔しいような……」
だが助かったのは事実だ、この程度の報酬で助けて貰えるのは非常に有難いのも事実だ。
負け戦の後というのは何かと金が掛かるもの、それが武器も食料も投げ捨てた上での敗走ならば特に。
「個人的に一番好きな戦ご……ごほん、好きな武将は黒田官兵衛だが、
山県昌景も嫌いじゃないぞ」
落ち込むような仕草をする粉雪の頭をわしわしと撫でながら、九十郎は何のフォローにもなっていないフォローを行う。
粉雪は小柄で童顔とはいえ年上で、臨時日雇いとはいえ雇い主にあたる人物だが……そんな些細な事を気にする九十郎ではない。
まあ、山県昌景は長篠で死ぬんだけどな……と、九十郎は心の中で付け加えた。
胸の奥がチクリと痛むのを、九十郎は誰かに言い訳をするかのように気づかぬ振りをした。
「ねえ九十郎、黒田官兵衛って誰?」
犬子が九十郎に話しかける。
「うん? この時期は小寺官兵衛って名乗ってるかな、
豊臣秀吉の参謀で、昔横山光輝って漫画家が……」
「好きなの、前田利家より?」
「まあ、そこは否定せんよ」
なお、後日その小寺官兵衛・通称雫が新田剣丞にベタ惚れだという事が判明し、九十郎のトラウマを盛大に抉る事になる。
「だが俺は黒田官兵衛を女として愛してる訳じゃない、会った事もまだないしな。
女としちゃあ犬子を一番に愛してるぞ」
九十郎が犬子の耳元で囁く。
かつてこの男のファースト幼馴染が、頬を真っ赤に染めながら『み、耳が孕む』とまで言った、九十郎のヒサツ・ワザである。
九十郎の事が好きで好きでたまらない犬子や、憎からず想っていたファースト幼馴染には特に効果覿面だ。
実際の所、九十郎の言葉に嘘偽りは無い。
この男にとって黒田官兵衛とは戦国時代という名の物語の登場人物であり、『信長の野望』や『太閤立志伝』『戦国大戦』という名のゲームのキャラクターに過ぎない。
でも、黒田官兵衛が黒田官兵衛なら、犬子も前田利家なんだよな……と、胸の奥がチクリと痛むのを、九十郎は気づかぬ振りをした。
「本当にソレだけで護衛を引き受けてくれるんだろうな?」
粉雪が犬子と九十郎にそう尋ねる。
危うく命と尊厳を散らす所を助けてもらい、水と食料を分けてもらい、夜が来れば簡易な物とはいえ寝床を用意してもらい、見張り番までやってもらい……正直、貰い過ぎだと粉雪は感じていた。
「十分十分……いやむしろこっちが貰い過ぎな気さえするな。
そうだ、後で俺が神道無念流を手取り足取り……」
「九十郎、甲斐に永住する気なの?」
犬子が止める。
彼女は武田晴信がどのような末路を辿るのかを知っているため、また久遠やひよ子に剣を向けるのを避けるため、甲斐に長居したくないのだ。
「前言撤回、躑躅ヶ崎館に着いたら張飛流豪傑踊りを見せる事で釣り銭代わりにしよう」
「……張飛流豪傑踊りって何の事だぜ?」
「アニメ三国志で張翼徳が曹孟徳に披露しようとした踊り」
こいつらの常識とか価値観とか、訳が分からないんだぜ……粉雪は心の中でそう嘆いた。
とばっちりを喰らった犬子は怒っても良いだろう。
なお、結局釣り銭代わりはクック・ロビン音頭になった。
それを見せられた武田四天王・内藤昌秀の顔は、実に味わい深いものであったが。
……
…………
………………
その日の晩、草木も眠る丑三つ時、九十郎がその辺で拾ってきた葉付きの木の枝を組み合わせて作った簡易テントの中で、粉雪は1人目を覚ます。
犬子と九十郎が交代で見張り役をしていると頭では分かっていたが、それでもなお、粉雪は安心しきる事ができていない。
突然出会った素性も分からない2人を、たった2日で信用する事はできない、流石に。
「何だ……今何か物音が……」
安眠する事が出来なかった故に、見張りを信用しきれなかったが故に、粉雪は僅かな物音にも過敏に反応するようになっていた。
何時、どこから襲って来るか分からない鬼や落ち武者狩り達と切り結びながら、苦楽を共にした戦友達を一人また一人と切り捨てながら逃げ続けてきたのだ。
過敏にもなる、過敏にならざるを得ない……仲間が鬼に文字通り喰われる悪夢、自分が落ち武者狩りの男達に強姦される悪夢を見ていた日は特に。
「2人が……居ない……!?」
まさか寝ている間に逃げられたかと、粉雪は寝具から飛び起きる。
荷物は無事……元々大した物は持っていなかったが。
水や食料も置いたまま、先日粉雪が書いたサインも……
「逃げた……訳じゃないのか? だけど2人揃ってどこに行ったんだぜ?」
そんな事を考えていた時……再び奇妙な音が聞こえた。
「今の……犬子の声……だったか?」
音と一緒に、くぐもった女の声が聞こえたような気がした。
その声はつい数日前に知り合った前田犬子利家のものに良く似ていたような気がした。
「ま、まさか落ち武者狩りの連中に犯されて!?」
強姦、凌辱……そんな単語が頭に思い浮かんだ。
ほんの2日前に粉雪がそうなりかけたのだ、粉雪がソレを思い浮かべてしまうのも不思議ではないだろう。
粉雪は今にも折れそうな位に酷く刃毀れした刀を握り、声のする方へ走り……声のする方向へ走り……走り、走り、走り、何度か躓きながら走り……声が近づいたと判断するや、草むらに身を沈めて息を殺し、ゆっくりと覗き見て……
「うわぁ……う、うわぁ……あぁ……」
とんでもない光景を目の当たりにした。
強姦……という感じでは無かったが、男女の秘め事ではあった。
粉雪の視線の先で、犬子と九十郎が唇を重ね合わせていた。
とろんとした瞳は、荒い息遣いは……まるで発情した雌犬のようであった。
粉雪は自分の心臓が早鐘のよう跳ねまわるのを感じていた。
自分の耳がかあぁっと熱くなっていくのも感じていた。
2人の営みに視線が釘付けになっていた。
「と、止めないと……止めないと、こんな時に何をやってるんだって。
でも……うわ、あんな事まで……のぜ」
気分を落ち着かせるために、不自然極まりないタイミングで自分の口癖を言ってみたが、粉雪の驚愕と混乱は一向に収まる気配が無かった。
「あの2人、兄妹か何かだと思っていたけど……め、夫婦だったのかぜ!?」
粉雪は顔が真っ赤になっていた。
動揺して、滝のように汗を流していた。
「どう、九十郎? 気持ち良い? ちゃんとできてるかな?」
犬子は着物を大きくはだけさせ、上半身が裸の状態になっている。
唇と唇が離れると、今度はたわわに実った2つの乳房で九十郎のモノを挟み込み、上下に揺らしていく。
「ははは、流石の俺もこの破壊力は予想外だぞ。
視覚的にも温かくて柔らかな感触的にも、マジ最高としか言いようがない」
ガチガチに硬くなり、天高く隆起する九十郎の逸物が、何よりも雄弁に男の興奮度を物語っている。
九十郎は犬子の乳房に手を伸ばし、すべすべの柔肌と隆起した乳首を撫でまわした。
「あ……あぁぅ……」
こんな時に何やってんだだとか、護衛って立場が分かってんのかとか、そういった事を叫ぶべきだ、叫ばないといけないと頭では分かっていた。
しかし粉雪の喉から出てくるのは、まるで虫の羽音のようなか細い声だけだ。
粉雪は2日前、九十郎の目の前で服を脱いだ。
護衛の報酬の先払いとして、自分を抱いても良いと告げた。
その時は男女の交合に対し、嫌悪感しか抱いていなかった。
その時は確かに……
「あ、あんなに……幸せそうに……」
だがしかし、犬子は心底幸せそうに、心底楽しそうに九十郎と肌を重ねていた。
九十郎に自らの身を差し出す事が、自らの生きがいだとでも言いたそうに……いや、差し出すという表現は正しくない、交わっているのだ。
互いが互いを味わい、高めあっているのだ。
粉雪は自分の息が荒くなっていくのを感じた。
自分もアレをしようとしていたのかと。
自分も今の犬子と同じように、幸せそうに、楽しそうに、九十郎と交わっていた未来があったのかもしれないのかと……そう考えていた。
「……って、何考えてるんだぜ!? あたいは!?」
顔を耳まで真っ赤にしながら粉雪は大きく首を左右に振るが。
一度浮かんでしまった邪念は、妄想は、そう容易く振り払えるものではなかった。
「九十郎って、ホントにおっぱい好きだよね」
自分の胸をぐにぐにと揉みしだきながら、犬子が九十郎にそう言った。
「良いか犬子、でっぱいには夢と希望が、ちっぱいには嘆きと絶望が詰まってるんだよ」
酷い差別である。
粉雪は自分の平坦な胸部をチラリと見下ろし、少しだけ腹立たしい気分になった。
後日今のと同じセリフを新田剣丞の前で言い放ち、三日三晩にも及ぶ大乱闘の末、黒田官兵衛怒りのシャイニングウィザード事件を引き起こすのだが、それはまた別の話である。
「もう一度言うぞ犬子……でっぱいにはぁっ! 夢と希望がぁっ!!
ちっぱいにはぁっ! 嘆きと絶望が詰まってるんだよおおおぉぉぉーーーっ!!!」
改めて聞いても酷い差別である。
この男の前の生、大江戸学園にて同じ台詞を大声で叫んだ事が何度かあるが、その度に将軍E(貧乳)に殴り倒されていた。
「犬子、でっぱいに生まれて良かったかも」
「ははは、俺も犬子がでっぱいに育ってくれて嬉しいよ」
下品に笑いながら、九十郎は犬子の豊満な胸に指先を沈める。
その弾力と肌の感触を確かめ、楽しむ。
……そんな光景を、粉雪が必死に息を殺しながら見ていた。
「九十郎、どうしたい? このままおっぱいに出す? それともこっち?」
『こっち』と言われ、九十郎の視線が下がる。
近くの草むらに隠れる粉雪の視線も釣られて下がる。
視線の先にあるのは、犬子のワレメ、犬子の子宮……それの意味が分からない程、粉雪も九十郎もガキではない。
「口の中で……てのは、駄目か?」
やや遠慮がちに、九十郎がそう告げる。
目の前の人物が前田利家だという事をこの男は忘れていない……一瞬たりとも忘れてはいない。
「うん、良いよ。 あ……んぁむ……ん……」
犬子は少しも躊躇せずに、九十郎の肉棒を吸い付くように咥えた。
まるでひょっとこの面のように頬をすぼめて、丹念に丹念に、丁寧に丁寧に、舌と唇で竿を愛撫していく。
「ん……ぐ……犬子、ぅ……」
パイズリによって、既にかなり昂っていた九十郎だ。
早漏と思われたくない安っぽい男のプライド的な何かで頑張って耐えようとするも、気合や根性でどうこうできる程、男の性欲と生理的反応は優しくない。
「ずずっあむっ……ちゅっあむっ……」
口の中でチロチロと舌を蠢かし、犬子は容赦無く九十郎のムスコを責め立てる。
艶めかしく生々しい唾液とカウパー液の水音が、森の中に響く……当然、粉雪の耳にも届く。
「あ……あっ、んぅ……」
2人の感情の昂りに中てられたのか、無意識の内に粉雪は自分の秘所に指を這わせていた。
つい2日前、落ち武者狩りの男達に取り押さえられていた時は、ピクリとも反応を示していなかったソコは……今は充血し、僅かな湿り気を帯びていた。
「こ、声が……出しちゃ……んんっ!」
こんな事をしていてはいけないと頭では分かっていたが、粉雪は指を止める事ができなかった、視線を逸らす事もできなかった。
静かな夜の森の中で、荒い吐息が、艶めかしい喘ぎ声が、水音が響いていた……犬子と九十郎のものと、粉雪のものとが。
「んぷっじゅぷっんっんちゅ」
「あ……あぁ……はぁふっうはぁっ……ふっあぁう!」
犬子の口撃が、粉雪のクリトリスを撫でる指の動きが、徐々に激しくなっていく。
粉雪はどんどん艶めかしい声を出し、昂っていく。
「わ、犬子……だ、出すぞ!」
犬子の口の中で、肉棒がビクンビクンと痙攣し始めていた。
安っぽい男のプライド的な何かが粉々に砕け散ろうとしていた。
「んっんむんぷっれろんちゅ……」
半死半生の状態の九十郎に……正確には、九十郎の肉棒にさらなる追撃がされる。
犬子は激しく男の股間に吸い付きながら、唇をすぼめ、顎を上下に揺り動かす。
「あぁはぁっあぁうあぁうっ! くっぐっふっ!」
粉雪もどんどん高みへ登っていく、絶頂に向かい登っていく。
声が聞こえるかも、気づかれるかもと思うが……それでもなお指が止まらななかった、快楽が止まらなかった、どんどん昂っていった。
「犬子ぉっ!!」
「ん……んあぁっ!」
そして一際大きな声が2か所から同時に出て、犬子の喉奥に濃厚な白濁液が放出された。
粉雪と九十郎が同時にイッたのだ、
粉雪はともかく、九十郎は早漏と罵られても良いような結果だが、犬子は男の子種を何回か舌先で転がし、飲み込んだ。
「……犬子、今何か変な声がしなかったか?」
キョロキョロと周囲を……粉雪が息を潜めて隠れている場所の辺りを見回しながら、九十郎が疑問を呈す。
「へ? えっと……九十郎の声の事?」
「いや、何かこう……別方向から……」
犬子と九十郎が口を閉ざし、鵜の目鷹の目で木々を睨む。
粉雪は口と鼻を抑え、腰や頭を地面に密着させ、必死になって身を潜める……なんて事をしてるんだあたいはと軽く後悔したが、かと言って今更覗き見を認め、2人の前に姿を現す気にもなれなかった。
自分でも驚く程に性の悦びに没頭し、過去に無い程に愛液で濡れてしまった今となっては。
「てっきりヤツに追いつかれたかと思ったが……違ったか」
そんな言葉が聞こえた時、粉雪は全身から汗が吹き出し、まるで岩のように硬直していた肩や腰がへなへなと弛緩していくのを感じた。
「あの娘が来てるんだったら、隠れてないで九十郎に飛びついてくるでしょ。
あの娘、まるで親子みたいに九十郎に懐いていたし」
「ははは、一目見た時から厄ネタだとは思っていたが、
3回撒いても3回追いついて来る程に懐くとは思わなかったぜコンチキショウ」
「九十郎は気安く他人を助けすぎなんじゃないかな。
まあ……犬子は九十郎のそういう所が好きになったんだけど」
「そんなにホイホイ助けてる気はしないんだがな……」
この男は、放置していてもしぶとく逞しく生き延びそうな者は基本助けない。
仮に助けたとしても、打算と損得勘定に塗れた理由からだ。
だが……
「例のアレの件はともかく、粉雪の件は勘弁してくれ。
誰ソイツって言いたくなるような奴ならともかく、
山県昌景を見捨てて、強姦されて殺されるのを放置するのは流石に心が痛むからな」
「好きなの? 山県昌景って人」
「俺よりもむしろファースト幼馴染の方だな。
あいつは筋金入りだぞ、部屋にはタペストリーやフィギュアを飾るし、
ゲームでは必ずスタメン入り、ドラマで討ち死にするシーンが流れれば号泣して、
何日かは俺かセカンド幼馴染が抱き枕代わりになってやらないと眠れなくなる」
そんな九十郎の言葉を、息を潜めながら粉雪は聞いていた。
ゲームとかドラマとか良く分からない単語が並んでいたし、死んでもいないのに討ち死なんて不吉な単語が混ざっていたが……九十郎とファースト幼馴染なる人物が、山県昌景を少なからず好いている事だけは良く分かった。
「そっか……じゃあ一生懸命守らないとね」
「まあ、な……」
長篠で討ち死にする運命だがなと、九十郎は渋い顔をする。
九十郎の表情の変化に、犬子も粉雪も気づかなかった、気づけなかった。
「はぁ……あたい、こんな所で何をやってるんだろうな……」
粉雪は一人静かに、一瞬でも裏切ったのかもしれない、2人で逃げたのかもしれないと疑ってしまった自分を恥じた。
そして同時に、2人の愛の営みを盗み見て、自らを慰めている自分が情けなくなった。
指についたドロドロの愛液を眺め、虚しくなった。
「犬子、もう一回シても良いか?」
「うん、良いよ」
九十郎が犬子を抱き上げ、ゆっくりと地面に横たわらせる。
「来て、九十郎……」
そう言って犬子は両足を開き、秘唇を指で開き、煮えたぎるかのように熱気を帯びたオンナの部分を見せつける。
いかなる偶然か、粉雪が隠れている場所からもソコはハッキリ見えていた。
犬子と目が合うんじゃないかと心配になったが、犬子の視線は九十郎だけを捉えていた。
「あ……」
亀頭が犬子の下の口に宛がわれた。
見ちゃいけない、今すぐここから離れないといけない……頭の中で何度も何度もそう叫びながらも、粉雪は指一本動かせず、視線を逸らす事もできなくなっていた。
「ん……ぁう……」
ずぷずぷと、犬子のアソコが九十郎の男根を飲み込み、咥え込んでいく。
粉雪は一瞬たりとも目が離せなかった。
肉棒の全部が膣肉に包まれるまでの1秒にも満たない時間を、粉雪は何倍にも何十倍にも引き伸ばされているかのように見えていた。
犬子にとっての歓喜の瞬間を、2日前の自分にとっては苦痛と屈辱と絶望の瞬間であった1秒を……偶然なのか、犬子と九十郎の姿勢は、2日前の粉雪と落ち武者狩りの男の姿勢と全く同じであった。
しかし表情はまるで違っていた。
「幸せそう……なんだぜ……」
そんな粉雪の呟きを聞く者は無く、犬子と九十郎の睦事は進んでいく。
粉雪の指先が再びクリトリスに伸び、淫らでふしだらな水音がし始めるまで、そう時間は必要でなかった。
火照る肉体を自ら慰める粉雪の脳裏では、今の犬子と同じように歓喜の声と表情で九十郎に抱かれる自分の姿があった。
ああ、羨ましいな……と、思いながら。