※この作品はR-18です。

戦国†恋姫X 犬子と九十郎(エロ回)   作:シベリア!

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第138話はエロ回ではありません。
第138話URL「https://syosetu.org/novel/105831/101.html」

第140話はエロ回ではありません。
第140話URL「https://syosetu.org/novel/105831/102.html」



犬子と柘榴と一二三と九十郎第139話『こいつ真田昌幸です』

「ただいま~」

 

「あ……おかえり一二三、早かったね」

 

 

第四次川中島の戦いから一夜が明け、犬子と九十郎が川で洗濯をしている所に、まるで何事も無かったかのように一二三が帰って来た。

 

「やあ九十郎久しぶり」

 

「出てってから半日も経ってねえぞ」

 

「それにしても君は、洗濯姿が合わないねえ」

 

バッファローマンのような体格の大男ちまちまと洗濯板と格闘する姿は中々にシュールである。

 

「そんな事無いよ、家じゃ結構お洗濯手伝ってくれるよ」

 

なお、越後ではそんなシュールな光景を度々現出させ、失笑を買っている事も追記しよう。

 

「勝った直後とはいえ、ここは敵地も同然だよ。

 それなのにロクに護衛をつけずにえっちらおっちらとお洗濯とは随分呑気じゃないか」

 

「うるせぇな、信虎と顔を合わせ難いから、犬子に無理行って同行させてもらってんだよ」

 

「随分と融通の利く謹慎だねぇ」

 

「柘榴が言ってたけど、越後じゃ良くあるんだって」

 

「甲斐じゃ考えられないねぇ……まあ、謹慎になる前に殺される事の方が多いけど」

 

「良し悪しかなぁ……」

 

「そうさねぇ」

 

……と、いった所で、3人が無言になる。

 

気まずいとか、何を言えば良いのか分からないとか、そういう言葉が九十郎の頭の中で浮かんでは消える。

 

「(何やってんのさ九十郎! 次に一二三に会ったら謝るって言ってたでしょ!)」

 

犬子が小声で訴えかけてくる。

 

「(い、いや、それは分かってるんだけどな……)」

 

「(何でも良いから早く謝りなよ! 土下座得意でしょ!?)」

 

「(得意じゃねーやいっ!!)」

 

あれだけ見事な土下座を披露しておいて、説得力皆無である(第76話)。

 

「ぷ、くくく……あっはっはっはっはっ」

 

そんな2人の小声漫才を前に、一二三は笑いが込み上げてくるのを止められなかった。

 

「聞こえてるよ、2人共。 内緒話するなら、せめて口の動きを隠すくらいしておくれよ」

 

「……へ?」

 

「ちょっと注意したら聞こえるし、

 それに私は唇が見えれば何を話してるか大体分かるんだよ。 訓練しているからね」

 

「どうすんだ犬子!? さらに謝り難くなったじゃねぇか!」

 

「わ、犬子のせいじゃないよっ!!」

 

「二度とそのツラ、俺に見せるな……だったかなぁ?

 いや、我が事ながら酷い言われようじゃあないか、恨み言の一つも言いたくなるねえ」

 

「うぐっ……」

 

「ひ、一二三。 その……犬子が口を挟んで良い事かどうか分からないけど、

 九十郎も……えっと、正直あんまり信用できないけど、

 一応は反省してるっぽい感じもしないでもないし……」

 

「お前はどっちの味方だよ!?」

 

「え、どっちかと言えば一二三や信虎さんの方だけど……」

 

九十郎は軽く絶望した。

とはいえ、今回非道な真似をして一二三や信虎を傷つけた事は自覚しているので、文句も言えない。

 

「……一二三」

 

九十郎は意を決して一二三に向かう。

 

「俺の一世一代の土下座を見せてやる」

 

剣丞の助命嘆願の時に土下座をした事はスパッと忘れた記憶力欠乏男が両手両膝を地面につける。

このまま『ごめんなさいでしたーっ!!』とでも叫びながら大地に額を擦りつければ見苦しい事この上ない九十郎流土下座の完成である。

 

が……

 

「よし、許す」

 

「ごめんなさいで……って何いいいぃぃぃーーーっ!?」

 

一瞬早く一二三が許してしまったため、九十郎は無駄に地面に頭突きをしただけで終わった。

 

「え? 一二三!? いくら何でも許すの速すぎだよ!?」

 

「そうだぞ、俺がせっかく滅多に見せない土下座を披露しようって時に」

 

「ごめん九十郎、犬子結構頻繁に九十郎の土下座見てる気がするんだけど」

 

「俺の記憶にはねぇな」

 

「うん、分かった、しばらく九十郎は黙ってて」

 

「……はい」

 

自分の半分の身長も無い女性にぴしゃりと窘められるマッチョがいた。

 

「まあまあ良いじゃないか、当の本人が許すと言っているのだから」

 

「それはそうかもしれないけれど! いくら何でも戦の最中に味方に剣を振るったり、

 勝利を決定づけるために命懸けで動いてくれた一二三に暴言吐いたり、

 いくら何でも今回の件はそう簡単に許しちゃ駄目だよ!」

 

「だけど、私がやった事は甲斐武田家内での信用を姑息に利用し、裏切る事だ。

 唾棄すべき裏切者に良くやってくれたと賞賛を与える事が正しいと思うかい?」

 

「う……そ、それは……」

 

「二度とそのツラ見せるな……良いじゃないか、裏切者にはこの程度の扱いで十分。

 例え戦の勝利を決定づけた者であろうとも、主君を裏切り、

 戦友達を地獄に導くような卑怯者に与える賛辞はいらない。

 越後長尾家の信頼を得たいのであれば、これからの行動で示して見せろと、

 そう言う事だろう?」

 

「……九十郎は絶対そんな事考えて無いよ」

 

「そういう事だったとしてしまえば良い」

 

一二三が悪戯を考える子供のように笑う。

それを見て、犬子は脱力してしまった。

 

「いずれにせよ、私がやった事なんて決して褒められたものじゃないんだよ。

 だから良いんだよ、これで」

 

「一二三がそう言うならそれでも良いけど……良いの?」

 

「良いの」

 

そう言うと一二三は九十郎を立たせ、膝や額についている砂埃を払う。

 

「で、結局私は何でそのツラ見せるななんて言われたのかな?

 その位は聞いても良いと思うのだけど」

 

「うぐっ」

 

「あ、その……それは犬子の口からは何とも……」

 

そんな一二三からの問いを聞いた瞬間、九十郎は喉元にナイフを突きつけられたかのように息を詰まらせ、犬子は冷や汗を流しながら視線を逸らす。

 

「いや、さっき許すって言ったばかりで……」

 

「それはそれとして、これはこれ。

 本当に申し訳ないと思っているのなら、言えるよねえ?」

 

一二三はにこやかに笑いながら追撃する。

表裏比興と書いてクソヤロウと読む真田昌幸は、こうやって笑っている時が一番怖い。

 

「光璃は……武田晴信は光璃だったんだ」

 

九十郎は重苦しい空気纏いながら、やっとの思いで口を開く。

 

「九十郎、それじゃ分からないよ」

 

「それは君の前の生で幼馴染だった娘と御屋形様が同一人物だったって趣旨かな?」

 

「嘘、通じた!? 何で!?」

 

「いや半ば当てずっぽうだったけど……だったけど……」

 

九十郎は一二三にズバリ言い当てられ、動揺のあまり石造のように固まっていた。

 

そんな九十郎の姿を見て、一二三は自分でも笑ってしまうようなトンチキ仮説が当たっているのだと察してしまう。

彼女は正直、場を和ませるギャグのつもりで言っていたのだが……

 

「君は本気……いや、正気なのかい?」

 

基本愚鈍な九十郎といえど、一二三が言わんとしている事も理解できる。

戦国時代の武田信玄と、現代ニホンの普通(笑)の女子学生が同一人物だなんて、俄かには信じられないというか、自分自身ですら頭がイカレてるような話だと思っている。

 

だがしかし……九十郎は一目見た瞬間から、今でもなお、武田信玄は九十郎のファースト幼馴染その人だと確信しているのだ。

 

一瞬、一二三の全身の毛が逆立った。

 

「それは何時分かったんだい?」

 

「そ、それは……その……さっきの戦いの最中に……」

 

「私が御屋形様を殺す策を全て終えた後……か……」

 

一二三の肩や首筋の筋肉がぴくぴくと痙攣した。

 

「せめてさ……せめてもう少し早く確かめる気にはならなかったのかい?」

 

「い、いや……光璃って通称が一致してるなとは思ってたんだが……

 俺の幼馴染が武田信玄の筈が無いって思ってて……」

 

「わ、犬子や柘榴も、いくらなんてもそれは無いよって……その……」

 

瞬間、あまりの理不尽に一二三がブチンッ!! とキレ……なかった。

 

「そうか、じゃあ仕方無いね」

 

怒りの空気が一瞬に雲散し、まるで憑き物が落ちたかのように晴れやかな顔で一二三はそう告げた。

 

「ひ、一二三……お、怒ってないの? いや、怒って良いんだよ」

 

「いや、怒っても仕方が無いじゃないか」

 

「それはそうかもだけど……」

 

あまりにも見事な許されっぷりに、犬子は奇妙な感覚に陥る。

正直、罵声を浴びせながらパンチの2~3発くらいは覚悟していたし、そうなった時は九十郎と一緒に殴られても良いとすら思っていた。

肩透かしというより、安堵したというより、底知れぬ不安さを犬子は感じていた。

 

「(あれ、おかしいな……私はこんなに物分かりが良い人間だったかな……?)」

 

そんな違和感を、一二三も感じていた。

正直、ボー・バック・ブリーカー、ゴリー・エスペシャルからバックフィリップに繋げ、ちょっとばかし痛い目に遭ってもらおうかという気分になっていた。

 

そんな怒りの感情が一瞬にして霧散した……まるで頭の中身が書き換えられたかのように。

 

「(うん、まあ、そんな日もあるだろうさ。 気にするような事じゃない)」

 

そして一二三の疑念もまた、先程湧いた怒りの感情のように一瞬にして消え去った。

まるで頭の中身を書き換えられたかのように。

 

「そうだ、本気で悪いと思っているならもう一個だけお願いがあるんだけど」

 

怒りも疑念も消え去った後、一二三はちょっと含みのある笑みを浮かべる。

 

「焼き土下座か!? 焼き土下座なのか!?」

 

「九十郎、焼き土下座ってなに? 語感からして嫌な予感しかないんだけど」

 

「焼けた鉄板の上で土下座」

 

「それ死んじゃうよ! 一二三、犬子も謝るから焼き土下座だけは勘弁してあげて!」

 

「言わない言わない、君達私を何だと思ってるんだ」

 

「クセ者」

 

「何か胡散臭い人」

 

「やっぱり焼き土下座に変えようかな?」

 

「こら犬子! 火に油を注ぐような事言うなよ!」

 

「九十郎だって似たような事言ったじゃない!」

 

「全くもって愉快だね、君達は」

 

一二三がくすくすと笑う。

さっき九十郎を見かけてから、一二三は色んな表情を見せる犬子と九十郎を前にして、一二三は色んな笑みを出した。

一二三は心の中で、爽やかな風が吹いたような気持ちになった。

 

今、自分が浮かべている笑みは悪くない、心地良い……一二三はそう思った。

 

だから一二三は瞳を閉じて、少し背伸びをして、九十郎とそっと唇と重ねた。

 

「ちゅ……んん……ぷはっ」

 

唇を離し、一二三はまた笑う。

 

妖艶な雌の顔になっていた。

心臓がばくばくと脈打って、子宮がうずくような感覚がした。

気がつけばまるで引き付けられるかのように、一二三の細くしなやかな指先が九十郎の男性の部分に伸びていた。

 

「一二三、お前……?」

 

「なんだか君の顔をみていたら、シたくなってしまったよ。

 ああ、大勢が血を流す姿を見たからかもしれない。 知っているかい?

 人は自分の死を強く意識すると、無性に子を残したくなるのだって」

 

「……知ってる」

 

犬子に、柘榴、貞子、粉雪と、九十郎が無性に女を抱きたくなったタイミングは、いつもいつも命の危機が去った時のような気がした。

 

そして今も……光璃を喪ったばかりだというのに、あの凄惨な殺戮劇を抜け、九十郎の肉棒はギンギンに隆起していた。

一二三は器用に九十郎の下履きを外し、その下半身を露出させる。

 

「わ、犬子はちょっとその辺一回りしてくるよ。

 い、一応敵地だし、何かあったら危ないかもだし」

 

「3Pでも良いんだよ」

 

「良いよ、犬子は昨日一杯シてもらったから」

 

犬子は洗濯物が入った桶を抱えて、そそくさと退散した。

 

「へぇ、それはちょっと妬けちゃうねえ。 でも……

 今、ここがこんなに固くなってるのは、私も魅力的だって思ってくれてるからかい?」

 

「まあ、美女だって所は否定しねえよ。

 剣丞のフォローを任せられる程度には信用してるし、目端も利くと思っている」

 

「剣丞のフォロー……ふぉろー……あっ!?」

 

「おいちょっと待て、何だ今の反応は」

 

「ごめんごめん、すっかり忘れていた」

 

「忘れてただぁっ!?」

 

「まあ大丈夫さ、織田の天人殿は放置しても普通に生き残るだろうし、

 現に五体満足で生き残ってる」

 

「そういう問題じゃねぇよてめぇ!!」

 

九十郎が怒りに任せて一二三を押し倒す。

勢いのまま着物を剥ぎ、乳房とワレメをあらわにさせた。

 

「良いよ……来て」

 

一二三の瞳が潤んでいた。

屈強な男性に組み伏せられ、無残に犯されるのを望んでいるかのように、両足を開き、九十郎の男根を受け入れる姿勢になっていた。

 

九十郎は何となく、初めて一二三に会った時、初めて一二三を抱いた時の事を思い出した(第84話)。

あの時も九十郎は一二三を押し倒し、感情に任せ、劣情にまかせ、己の性欲を一二三にぶつけた。

だが今になって思えば、今のシチュエーションと同じく、一二三に自分の行動を誘導されていたんじゃないかと思った。

 

「もうちょっと濡らした方が良いんじゃないか?」

 

「あの時だって、ロクに前戯もせずに無理矢理だっただろう」

 

「良いのか?」

 

「うん、今日はあの時みたいに……あの時よりも、強引に、乱暴に」

 

「そうか、なら……」

 

九十郎は一二三の秘部へ亀頭を宛がう。

九十郎のモノも、一二三のワレメも、男女の交合を求めひくひくと蠢いていた。

 

「……おしおきだ、一二三」

 

「約束を忘れたおしおきかな?」

 

「いいや、嘘つきのおしおきだよ」

 

ずぷんっ!! と、九十郎の逸物が一二三の奥に一気にねじ込まれた。

 

その瞬間……一二三が何故か脳髄が引き裂かれるかのような痛みを感じたような気がした。

 

ロクに前戯もせず、ロクに濡れてもいない膣内に無理矢理ねじ込んだ痛みとは性質が違う。

魂が泣き叫んでいるような、何かとてもとても大事な何かを忘れていると叫んでいるかのような気がした。

 

「一二三?」

 

一二三が泣いていた。

涙が次から次へと零れさせていた。

その涙の理由は、一二三自身にも分からなかった。

 

だが……

 

「抱いて! もっと強く抱きしめて!」

 

まるで叫ぶかのようにそう言うと、一二三は自分の両手両足を九十郎の大柄な身体に絡めた。

この正体不明の心の痛みから逃れるためには、この心の痛みを忘れるには、九十郎のおOんぽを自分のナカにもっともっと密着させないといけない、獣のように交わらないといけない、全く無根拠にそう感じた。

 

「良いから! 壊れても良い! 怖いんだ! 何か……分からないけど! 何かが怖い!」

 

「おい一二三? 本当にどうした?」

 

「お願いだから!」

 

「オーケー、ちょっとばかし乱暴にいくぞ!」

 

ぎゅうっと抱きしめる。

一二三は脳裏をよぎる謎の不安感、謎の不快感を忘れるために。

九十郎が震える一二三を決して離さないように。

 

「んんっ! んううっ! うあぁっ!」

 

乱暴な挿入、力任せの抽送。

痛くて痛くて仕方が無かった。

メスの快楽とは程遠いセックスだった。

 

あの時の……決して思い出せないあの時の人外の快楽とは比べるのすらおこがましい。

 

「ううぁっ! ああっ! い……たぁ……」

 

一二三はもっと強く、もっと激しくとせがむかのように九十郎にしがみつく。

九十郎は訳が分からないまま一二三を犯す。

 

ロクな潤滑もない膣肉は、九十郎にとってもあまり気持ちの良いものではないが、それでもなおこの交合は続いていく。

 

「この嘘つきめ!」

 

腰を上下に揺さぶりながら、九十郎が一二三を罵倒する。

一二三はこくこくと頷く……続きを促すかのように。

 

「この裏切者め!」

 

腰を上下に揺さぶりながら、九十郎が一二三を罵倒する。

一二三は目尻に涙を浮かべ、九十郎に身を寄せる。

 

「なんで……何で光璃を殺したんだ……」

 

ぽとりと、一二三の胸と首筋に涙が落ちた。

一二三のものではない……一二三を組み伏せる九十郎のものだ。

 

「お前のせいじゃねぇのは分かってる! 俺が悪いんだよ! 気づけなかった俺が!

 だが……だが、畜生……何で光璃を殺したんだ!

 光璃を殺しちまったんだ! 畜生おぉっ!!」

 

九十郎が理不尽に叫ぶ。

 

「や、やめて……嫌だ、そんな目で私を見ないで……」

 

一二三もまた泣いていた。

 

「わ、私は! 私は九十郎のために! キミのために頑張ったんだよ!

 疑り深くて用心深い武田晴信を騙し通して! 湖衣も典厩様も裏切って!

 死地に誘き出して! 全部キミが武田晴信を殺したいと言ったからだっ!!」

 

一二三が九十郎に抱かれながら叫んでいた。

脳裏に浮かぶのは、嫌が応にも浮かぶ光景は、湖衣と夕霧落ち武者狩りの手にかかり、凌辱される光景だ。

 

「分かる訳が無い! 分かる訳が無いじゃないかっ!

 御屋形様がキミの幼馴染だったなんて! 私に分かる訳が無い!

 私は! わ、私は……キミに褒めてほしくて、喜んでほしくて、それで!」

 

表裏比興と書いてクソヤロウと読む一二三が、生まれて初めて本気で後悔し、本気で涙を流していた。

 

「そんな目で……そんな目で私を見ないでぇっ!!」

 

九十郎は泣いていた。

光璃が死んだのは自分のせいだ……そう思っていた、それは真実だ。

 

だが同時に、九十郎はこうも思っていた……一二三がいなければ、光璃は死ななかったのではと。

 

九十郎自身、理不尽な想いだと思っている。

だがしかし、九十郎にとって光璃の喪失は、光璃を殺す手伝いをしてしまったという事実は、そんな理不尽な責任転嫁をしなければ耐えられない程、グラついていたのだ。

 

「……膣内に射精すぞ、一二三」

 

「うん」

 

一二三が頷いた。

まるで泣きじゃくる童のような顔であった。

 

「お前は俺の女だ、一二三」

 

「うん」

 

一二三が頷いた。

 

「俺の児を孕め、一二三」

 

「うん」

 

一二三が頷いた。

 

「絶対に離さねえからな、お前も俺から離れるな」

 

「うん」

 

一二三が頷いた。

 

そして九十郎がピストン運動を再開させる。

強く、激しく、野獣のように乱暴に、乱雑に、強引に。

 

「んうっ! ああんっ! 九十郎もっと! もっと強くぅっ!」

 

「孕め一二三! 孕めよっ!」

 

「うん! だからもっと……うぁあっ! ふあぁっんんっ!」

 

そして……びゅるるっ! びゅるるるっ! と一二三の子宮内一杯に九十郎の子種がまき散らされた。

 

「ぜぇ、ぜぇ……」

 

「はぁ、はぁ……」

 

一二三と九十郎が大きく肩で息をする。

気がつけば2人共、全身が汗や涎でぐっしょりと濡れていた。

 

「少しは頭が冷えたか?」

 

「うん、冷えたよ。 君は?」

 

「俺も少しは頭が冷えた……すまん、一二三」

 

「良いんだ、良いんだよ」

 

一二三がもう一度九十郎を抱きしめる。

ああ、あの日、あの時、九十郎に話しかけて良かったと、九十郎に抱かれて良かったと思い、一二三は九十郎の頬に唇を捧げた。

 

そして急激に頭が冷えていき、軍師としての冷徹な思考が戻っていく……

 

「なんだろう……これ……」

 

一二三が呟いた。

 

「初めてだ、自分自身の言葉の意図が読めないのは」

 

一二三は今日の自分の言動に違和感を覚えていた。

それは普通の人なら絶対に気づかないような小さな小さな、僅かな僅かな違和感だ。

例えば諸葛孔明のような、例えば賈文和のような、例えば竹中半兵衛のような……あるいは真田昌幸のような、悪魔の如き悪辣さと、狂人の如き精神の歪みを併せ持つような奇人で無ければ絶対に気づかない、気づけないような違和感だ。

 

いや……この種の違和感は諸葛孔明でも、賈文和でも、竹中半兵衛でも気づけないだろう。

気にも留めずに、気にしすぎ、考えすぎだと見逃してしまうだろう。

 

諸葛孔明も、賈文和も、竹中半兵衛も……本質的な所で『誠』と『忠』の二文字を芯として、本質的な所で『誠』と『忠』の二文字を拠り所にする者達だ。

真田昌幸には『誠』と『忠』を拠り所にする者達には決して到達する事のできない才能を持っていた。

劉玄徳、呂奉先、魏文長あるいはユダ、マルクス・ユニウス・ブルトゥス、ランスロットと同じ類の才能、同じ類の魂……『裏切者』であるが故の才能を持っていた。

 

「まるで……まるで『私』が、『私』を裏切ろうとしているみたいだ……」

 

悪辣であり、知恵者であり、狂人であり、同時に『裏切者』であるが故に、一二三は気づいた。

気づいた上で、強烈な違和感を覚えた。

 

この瞬間、森蘭丸の作戦に僅かな綻びが生じた。

森蘭丸は知らなかった、森蘭丸は気づけなかった。

一二三が……真田昌幸は、本質的な所で『裏切者』である事に、魂のレベルで『裏切者』だという事に。

 

……

 

…………

 

………………

 

「うへぇ、そいつはヤバかったなぁ」

 

「だろ、言っちゃなんだが、人生最大の危機だったよ、あれは」

 

現代ニホン、大江戸学園にて、犬子と粉雪があーでもない、こーでもないと水着を選んでいる間、朱金と九十郎はベンチでかき氷を口に運びながら雑談をしていた。

 

興味本位で蘭丸と九十郎の血で血を洗う抗争……いや、ある意味血で血を洗うよりも残酷で、同時に滑稽な争いの顛末を聞き、遠山朱金がなんとも表現し難い思いを抱く。

 

正直、どんな反応をすれば良いのか迷うような話であった。

 

「結局、蘭丸の敗因はなんだったんだろうな」

 

感想の代わりに、朱金がそんな疑問を口にする。

 

「さっき九十郎も言ってたけが、

 本当に傾世元禳を持ってる相手に太極図無しで戦うようなものだろ。

 普通にやってりゃ九十郎達の負けは確実じゃないか」

 

「敗因か……色々あると思うけど、やっぱ一番でかいのはアレだろ」

 

「てめーは俺を怒らせた」

 

「だと良かったんだが、あいつの洗脳は怒った程度でどうこうできるもんじゃねえよ。

 そうじゃなくて、俺を引っかける釣り針として、よりにもよって一二三を選んだ事だよ」

 

「へえ、どういう意味だ?」

 

「あいつ真田昌幸だぜ、要は生粋の裏切者だ。

 マンモスマンをタッグパートナーにするのとほぼ変わらねえ、特大の死亡フラグだよ。

 ついでに言うならサイコマン並みの嘘つきだ、今まで何度あいつの嘘に騙された事か」

 

瞬間、周囲の温度が2~3度下がった。

 

「おい九十郎、この話はこの辺にしとこうぜ」

 

「あいつ戦うと異様に面倒くさいと言うか、戦いだけは得意と言うか、無駄に厄介だからな。

 そういう所もマンモスマンみたいなもんだよ。

 そうだ今度からアイツの事はマンモス一二三とでも呼んでやろうぜ」

 

通行人の1人がにこやかな笑みを浮かべながらつかつかと歩み寄ってくる事に九十郎は気づいていない。

 

「おいやめろ、おい馬鹿やめろ、やめてくれ、やめてくださいお願いします」

 

「そもそも何であいつこっちに来て学生なんてやってるんだろうな。

 犬子とか粉雪は俺に惚れてるからで分かり易いんだが。

 考えてみりゃ、俺は一二三を押し倒して強姦した事はあっても、

 優しくしてやったり、助けてやったりした事なんて全くない。

 これで実は俺に惚れてますなんて話だったら、よっぽどの変わり者、捻くれ者だよな」

 

無駄に五七五七七の韻を踏んだ警告を無視して、さらに九十郎は喋りまくる。

近づいてくる通行人の速度がどんどん増していく。

 

「志村~、後ろ! う~し~ろ~!」

 

「後ろ……?」

 

朱金の必死の訴えにようやく九十郎が反応し……た瞬間、九十郎の顔面にアイアンクローがかけられる。

 

「ドーモ、クズロー=サン。 無駄に厄介で捻くれ者のマンモス一二三デス」

 

九十郎の視界はアイアンクローで塞がっているが、下手人……一二三がにこやかに笑っているのはすぐに分かった。

表裏比興と書いてクソヤロウと読む真田昌幸がこういう笑い方をした時は非常に危険だという事も知っていた。

 

「やあ一二三、今日も美人だな」

 

「その誤魔化し方は火に油というものだねえ」

 

九十郎の頭蓋骨がミキミキと音を立て始めた。

案外腕力あるじゃねえかと九十郎は思ったが、後の祭りである。

 

「そうそう、これから皆でサーフィンしに行くんだが、お前も来るか?」

 

「50点、悪くはないけどもう一押しほしいな」

 

「……ギブアップ」

 

「危険日ゴム無しエッチ1回で手を打とうじゃないか」

 

「ははは、正気かよ俺達ゃ学生だぞ」

 

「良いじゃないか、デキちゃった退学、私は大歓迎だとも」

 

「俺が気にするんだ」

 

「戦国時代では何度も孕め一二三~って叫ぶながら何度も中出ししてくれたのにねぇ」

 

「ここは現代ニホンだ! 学生の身分で同級生孕ましたら就職先が無くなるだろ!」

 

「どうせ君の就職先は戦国時代だろうに」

 

「それとこれとは話が別だ!」

 

九十郎が唾を飛ばしながらガーッと吠える中、マンモスマンもとい一二三がさっきとは別ベクトルの笑みを浮かべて、その頬にそっと口づけをし……

 

「君が言う通り、私は嘘つきで、裏切者だよ」

 

その笑みは、九十郎も朱金も思わず見とれてしまう程、美しいものだった。

 

「だから……君以外の全てを欺き、君以外の全てを裏切り、

 何度でも君の元に帰ってくるよ。 愛しい貴方」

 

 

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