※この作品はR-18です。

戦国†恋姫X 犬子と九十郎(エロ回)   作:シベリア!

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前話、第145話にはR-18描写が無いため、通常版に投稿しています。
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戦国†恋姫オンラインやってます。
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犬子と柘榴と一二三と九十郎第146話『黒田官兵衛+失言=左遷』

(注意)原作キャラが洗脳される描写があります。

 

 

 

長尾美空景虎はハッキリ言って多忙だ。

 

粉雪の襲撃によって春日山城は派手に炎上し、ハーバー・ボッシュ法で硝石(火薬の原料)を量産する設備がぶっ壊れた。

虎の子ドライゼ銃は弾薬不足によって機能不全に陥り、越軍の全体の編成を根本から見直す必要が生じ……それにも関わらず、美空は北条の勢力圏内にある江戸城への遠征を決定し、城の再建、軍の立て直し、その他日常業務と同時並行で遠征の準備も行っている。

 

しかも時間をかければ周辺勢力がまず間違い無く騒ぎ出し、さらに時間が経てば異世界・ヴァルハラのオーディンが魔神の如き強大な魔法力をもって妨害をかけてくるのが確実な状況である。

 

それ故に、長尾美空景虎は多忙であった。

 

「心だけでも釈放してくれなんだぜ」

 

そんな美空の元に、粉雪が陳情してきた。

なお、心とは先日の戦で捕虜となり、越後長尾家に監禁されている内藤心昌秀の事である。

 

「駄目」

 

美空は一瞬たりとも手元の書類から目を離さずに即答する。

 

「そこをなんとか頼むぜ」

 

「駄目なものは駄目」

 

美空は手元の書類に決裁の署名を入れながら即答する。

 

「良いじゃねぇかよ1人くらいっ!

 兵糧計算とか金子の計算とか人数管理とかその他諸々面倒なんだぜ!」

 

「面倒臭がらずに自力でなんとかしなさい、自力で。

 カミサマは自らを助ける者を助けるって昔から言うじゃないの」

 

なお、そのカミサマはキリスト教のカミサマである。

 

「良いからここを釈放してくれよ~。 頼むぜ~! たぁ~のぉ~むぅ~ぜぇ~!!

 オンラインでも心は凄ぇ強いんだぜ、

 回復役やらせてもアタッカーをやらせても超一流で、

 国盗りでも頻繁に出てくるんだぜぇ!」

 

粉雪が土下座せんばかりの勢いだが、美空は自分の指で耳を塞いで聞き流している。

 

「駄目、駄ぁ~目っ! うちはうち、よそはよそ、オンラインは関係ないでしょ」

 

「良いじゃねーかだぜぇ! せめて理由は言ってくれなんだぜぇ!」

 

なお、アタッカーとしての役割はともかく、回復役としての地位は諸葛亮孔明に脅かされつつあるのは内緒である。

 

「あのねぇ……」

 

美空が大きくため息をついて筆を置いた。

 

「あんたと内藤昌秀が本気で歯向かってきたら負けかねないからよっ!

 そりゃ予定通り未来の銃が手に入ったらどうにでもできるわ、

 でもね、思ったより進軍に時間がかかったとか、

 光璃の奴が銃を仕入れるのをしくじったとか、

 オーディンとの戦いで鼻血も出ない位に消耗したとか、

 あんたが心変わりしてガチでこっちを滅ぼしにかかったとか、

 そういう不測の事態が起きたら死んじゃうからよっ!!」

 

そして美空が超早口で不安材料をまくし立てる。

 

「おいおい、他のはともかく最後のは無いぜ。 あたいが御屋形様に弓引く訳ねーぜ」

 

「あんたの姉はその御屋形様に思いっきり弓引いたんだけど?」

 

「……うぐっ」

 

粉雪は痛い所を衝かれた。

 

粉雪の姉・飯富虎昌が謀反を起こした理由は今なお不明なままであるが、少なくとも甲斐武田家関係者であの事件の事を知らない者、忘れている者はいない。

粉雪が現在『山県』の姓を名乗っているのは、謀反人と同じ姓では肩身が狭いだろうという理由からなのだ。

 

「それに内藤昌秀に説得されても裏切らない?

 見せかけ上でも反長尾の旗頭やってる内に情が沸いたりしない?」

 

「……うぐぐぅっ!」

 

粉雪はまたも痛い所を衝かれた。

正直な話、心に泣かれたら心が揺らぎそうである。

 

「すまん御屋形様、御屋形様から受けた恩義は忘れてねーけど、

 それはそれとしてあたいにも守るべき物ができちまったぜ!!

 ……とか何とか言って襲い掛かってこない?」

 

「……すまん、やるかもだぜ」

 

「はい駄目ぇ! 絶対却下ぁっ!!

 あんたと内藤昌秀に組まれたら厄介極まりないのよっ!!」

 

「そこを何とか頼むんだぜぇっ!! ちょっとだけ、先っちょだけでもぉっ!!」

 

「絶対嫌よ! 馬場信房か高坂昌信にしなさいよっ!

 あいつら脳筋だからいくらでも料理できるもの!」

 

「そり合わねーから長時間一緒に行動したくないぜ。

 オンラインでもクソ弱いし、別衣装も出ねーし。

 御屋形様いねぇと、たぶん途中で喧嘩別れするぜ」

 

「そりゃ拙いわね、旗印が二枚もあっちゃ二股の蛇みたいに真ん中から裂けちゃうか」

 

そうなった場合どちらか一方が先走って攻撃を始め、残りも負けじと追従し、時間稼ぎの作戦がパアになってしまうだろう。

よって春日や兎々を釈放する案は即刻却下である。

 

「そうだ、いっそ御屋形様に来てもらう訳には……」

 

「それも駄目、ポータル動かせるのは光璃だけなのよ。

 それをやるくらいだったら内藤昌秀を釈放する方がいくらかマシよ」

 

「いくらかマシなら心を……」

 

「駄目ったら駄目ぇっ!!」

 

美空と粉雪が延々と押し問答を続けていく。

気がつけば美空の政務は完全にストップしていた。

 

「もう、こっちは今忙しいのよ! いい加減に聞き分けなさい!」

 

「軍団の管理って大変なんだぜ! 全部あたい一人にやれって無茶言うなだぜぇ!」

 

「気持ちは分かるけど、気持ちは本当に本当に良く分かるけど何とかしなさい!

 あんた無駄に器用だからイケるでしょ!」

 

「そりゃできるけど、疲れるからやりたくないんだぜっ!

 せめて1人か2人補佐をつけてくれなんだぜっ!

 計算とか管理とかが得意な奴がいないと過労で死んじゃうぜぇっ!!」

 

「人を出す余裕なんて無いわよ! こっちは今から一世一代の大博打するのよ!

 ギリギリまで人材を使い倒してるに決まってるじゃないの!」

 

そんなこんなで盛大に時間を浪費していると……

 

「やべぇ、話終わらねぇぞ。 話しかけるタイミングが全然出てこねぇ」

 

「またの機会にしませんか? もう少し言い訳を考える時間が欲しいですし……」

 

「その間に剣丞が余計な事しでかさねぇか心配なんだけどなぁ……」

 

……美空はそんなひそひそ声がする事に気が付いた。

 

「粉雪、この話は一旦やめよ。 考えとくから後にしなさい」

 

「マジか! マジで考えてくれるのぜ!?」

 

「考えとく考えとく、それよりも九十郎でしょ? 用があるなら入ってらっしゃい」

 

割と頻繁に九十郎と夜通し酒盛りをする美空にとって、ひそひそ声であっても九十郎の声を判別するのは簡単な事である。

 

「あ、呼ばれましたよ」

 

「そーだな。 じゃあ雫、一発土下座いってみようか」

 

「……やらなきゃ駄目ですか?」

 

「良いからやれ、俺も一緒に謝ってやるから」

 

雫と九十郎がせーのと合図を送り合い、同時に政務室の襖を開け……同時に土下座をキメた。

 

「ごめんなさい美空様、失言しました」

 

「すまん美空、剣丞との仲が本格的に拗れちまった」

 

バッファローマンのような体格の大男と小柄な少女が自らの失態を告白した。

 

「………………」

 

美空は震えていた。

シュタイナーの命令違反、攻撃拒否を聞かされた総統閣下のように全身を強張らせ、微妙に震えていた。

 

ふざけんなと怒鳴り散らしたいという気持ちと、怒ってもしょうがねぇだろという気持ちが混ぜこぜになっていた。

 

「詳しく……説明しなさい……今、私は冷静さを欠こうとしているわ……」

 

美空の背後に毘沙門天の姿が浮かび上がる。

こんな事に呼び出される毘沙門天が可哀そうだが、その点にツッコミを入れられる人物は皆無である。

 

「かくかくしかじか」

 

「へぇ、つまり私が剣丞に言うなって命令した事は粗方漏れた訳ね、貴女の失言で」

 

美空の胃痛ゲージがぐーんと上がった。

 

「これこれうまうま」

 

「うんうん、剣丞と竹中半兵衛が方針の違いで大喧嘩してたから止めようとして、

 竹中半兵衛を連れて帰ってきた訳ね、私に何の相談も無く」

 

美空の胃痛ゲージがぐぐーんと上がった。

 

「で……?」

 

「2人で良い感じの言い訳を考えてたり、

 半兵衛の当面の生活の場を考えてたりしている内に、

 気が付いたら半日ぐらい経ってて、だな……」

 

なお、光璃は途中で飽きてどっかに行ってしまった。

武田信玄は基本的に薄情である。

 

「気が付いたら剣丞隊の長屋がもぬけの空でした。 人っ子一人居ません。

 しかも松平の陣屋も空っぽになってました」

 

「……逃げられた?」

 

「……そうみたいです」

 

「何で誰も気づかないのっ!? どうして誰も報告に来ないのよぉっ!?

 松平はともかく剣丞隊には見張りを置いてたわよねっ!!

 どうして誰一人気づかずに……」

 

「いや、全員殴り倒されて気絶してたぞ」

 

「……全員? 一人残らず?」

 

「ああ、全員」

 

「どうやってそんな真似を……て、そう言えば……」

 

……と、ここで美空は思い出す。

 

江戸城への進軍に向けて忙しくなるだろうと、剣丞隊に張り付けていた見張りを数人残して引き上げさせた事を。

数十人同時に気絶させるのは困難極まりないが、数人程度であればどうにでもできる。

遠隔地に自在に視線を通す御家流を持つ湖衣と、テレパスであり超一流の忍者でもある小波がタッグを組めば容易い事だ。

 

「しまった、人員減らしすぎたわ……」

 

美空の胃痛ゲージが最大まで上がった。

最近なろうで流行っているが、今更後悔してももう遅い。

 

「あと、竹中半兵衛の身柄預かってんだけど、美空の方で何とかしてくれねぇか」

 

「何とかって何よ?」

 

「とりあえず働きたいって言ってたから、雇ってやってくれ」

 

「この状況下でそれ頼む普通ぅ!?」

 

美空の胃痛ゲージが天元突破した。

『もうやめて! とっく美空のライフはゼロよ!』とか何とか叫んでくれる優しい人はこの場にはいない。

 

「あ、そうだ、いっそ竹中半兵衛を人質にして剣丞に戻ってこいって言えば……」

 

「無駄ですよ、あの人はその程度では揺らぎません。 頑固者ですから」

 

これは妙案とばかりに手を叩く美空に冷や水を浴びせたのは、今まさに話題に上っていた竹中半兵衛・通称詩乃だった。

 

「……竹中半兵衛さん?」

 

「私の事は詩乃とお呼びください」

 

「何でここにいるの? ここは関係者以外立ち入り禁止よ」

 

「売り込みに来ました。 ついさっき暇を出されましたので」

 

「仲違いしたフリをして、剣丞を助けるような作戦を私に伝えようって腹かしら?」

 

「埋伏の毒ですか? やや古典的ですが効果的な策ではありますね。

 お疑いなら煮るなり焼くなり切り刻むなりお好きなように。

 生首の一つでも送りつければ、

 いくら頑固者の剣丞様でも多少は動揺するかもしれませんね」

 

「美空、その可能性は無いと思うぞ。 ガチ喧嘩だった」

 

「止めるの大変でした」

 

「お前は何もやってないだろっ! 早々に諦めて俺に助けてって泣きついてきただろっ!」

 

雫は視線を逸らした。

 

「………………」

 

美空が値踏みするような視線を詩乃に向ける。

汗は無い、震えは無い、怯えの色も恐怖の色も一切無い。

これが演技だとしたら大したものだと美空は思った。

 

「質問させて。 今でも剣丞の事は好きかしら?」

 

「答えます。 好悪という意味では好いています。

 しかし、私の主たる器を有しているか……いえ、天下を治める主としては不足しています」

 

「余計な付け足しをせずに質問だけに答えなさい。 愛しているの? いないの?」

 

詩乃が一瞬、ぐぐっと言葉を詰まらせた。

しかし彼女は竹中半兵衛、今孔明と畏れられる程の知恵者である。

この程度の威圧では屈しない、心は折れない。

 

「……愛しています」

 

詩乃は堂々と、胸を張って回答した。

 

「私は正直あいつ嫌いなんだけどね」

 

「貴女の好悪感情も否定はしません」

 

「あらそう、ありがとう。

 しかし愛しているのなら、最後の最後まで傍で支え続けるべきじゃないの?」

 

「愛しているからこそ、誤った道に進むのを止めたいのです」

 

「言葉を尽くし、説得すれば良いじゃないの」

 

「あの人は頑固者です、私も頑固者です、言葉だけでは止められません。

 私もあの人も、言葉だけでは止められない、言葉だけで止まる事はできないのです」

 

「剣丞隊はきっと、こっちがやろうとしている事を妨害してくるわね」

 

「私が止めます」

 

「止める? さっき貴女、言葉では止められないって言ったばかりでしょ?」

 

「幾許かの兵をお預け頂けるなら、力づくで止めます、止めて見せます」

 

「死人が出るでしょうね」

 

「早く終わらせます。 それが結果として最も死者を減らす方法になります」

 

「早く終わらせるねぇ、言うのは簡単だけどできるのかしら?」

 

「剣丞隊の内情を最も良く知る者は私です。

 それにあの人は何度止めても、何度諫めても単独行動をやめられない人です。

 虜にするのはそう難しくありません」

 

「土壇場になって裏切ったりしない?

 貴女に預けた兵が剣丞隊と一緒になって襲い掛かってきたら流石に面倒なのだけど」

 

「先程も申し上げましたが、私は頑固者です。 言葉で止まる気はありません」

 

「剣丞が泣きながら土下座してきたらどう?」

 

「そうなったら失望して、殺してしまうかもしれませんね。 ありえない仮定ですが」

 

「ふぅん……」

 

美空は数秒考え込む。

本気でこっちに寝返るつもりか、それとも剣丞を助けるために寝返ったフリをしているのかと……考えて、考えて、考えた結果、分からないので思考を放棄した。

 

元より、美空の最大の長所は頭を空っぽにして突っ走れる所だ。

追いつめられて、頭を空っぽにして突っ走って、なんやかんやで窮地を脱するのが美空の最大の長所、最大の美点なのだ。

 

だから考えても分からない事は考えない。

頭を空っぽにして突っ走るのだ。

 

そして……

 

「こいつ今から左遷するつもりなんだけど、代わりをやってくれないかしら?」

 

美空は雫を指さしてそう告げた。

 

「……え?」

 

「謹んでお受けいたします」

 

詩乃は即答した。

 

「……え? え?」

 

「粉雪、計算とか管理とかが得意な奴がいないと過労で死んじゃうって言ったわよね?

 こいつじゃ駄目かしら、ちょっと失言が酷いけどそこ以外は優秀よ」

 

美空は雫を指さしてそう尋ねた。

 

「……え? え? えぇ?」

 

「正直、心の方が良いんだけどな……」

 

「妥協しなさい、全部一人でやれって言われるよりマシでしょ」

 

「う~ん、この辺が落し所か……分かったぜ、やるぜ」

 

「え? ちょっと私の意思は……」

 

「良かったな雫、解雇も斬首も免れたじゃないか」

 

九十郎が優しい笑みを浮かべて雫の肩をポンと叩いた。

 

「そんなあああぁぁぁーーーっ!!」

 

という訳で、そういう事になった。

雫は天下分け目の大一番で、未来世界の大江戸学園への次元を超えた跳躍という超貴重な機会も喪い、愛する男性と離れ、本隊とも離れ、時間稼ぎ役という悲しくなる程に地味な役目に回されたのであった。

 

「あんまりだ……あァァァんまりだァァアァ……」

 

雫はなんかどっかで聞いた台詞と共にその場に崩れ落ちた。

 

「いや、ぶっちゃけ穏当な処分だと思うぞ」

 

「そうね、私の計算を色々狂わせた罪の清算にしては軽すぎるわ。

 剣丞には絶対に言うなって念押ししたのに……」

 

ただし、美空は小難しい計算は苦手な性格である。

 

「しかしこうなると、剣丞にも備えを置く必要あるんじゃねぇか?

 こうなっちまったら放置は悪手だろ」

 

「そうねぇ……」

 

「では進言いたします。 剣丞隊に追撃をかけましょう、今すぐ」

 

悩む美空と九十郎に対し、詩乃が毅然とした態度でそう告げる。

 

「尾張に向かう道は何個かあるわよ。 全部の道に十分な数の兵を送る余裕は無いわ」

 

「どの道を使うかは検討がつきます。 距離、道の険しさ、休憩や補給の算段、

 剣丞隊と松平の規模や練度、使える金子の量を考えれば相当限定できます、

 私もイザという時の備えとして、ここから逃げ出す道順の下調べをしていましたので」

 

「……勝算は?」

 

「あります」

 

詩乃は力強く断言した。

 

「……良いのね?」

 

「やると決めたなら、手早く終わらせるべきです。

 それが結果として、敵味方双方の被害が最も少なくなります。」

 

「遅巧よりも拙速か……」

 

美空が追撃の結論を出そうとしたその瞬間……

 

「はーい、進言しまーす。 追撃はやめとくべきでーす」

 

……なんとも適当なノリで一二三が割り込んで来た。

 

「一二三、お前いつから居た……?」

 

「え? 最初から居たよ」

 

「嘘つけこの野郎ぉっ!!」

 

「追撃をやめるとはどういう意味ですか?」

 

詩乃がむっとした様子で乱入してきた一二三に尋ねる。

 

「意味って、そのままの意味に決まってる。

 放置してとっとと江戸城を占拠してポータルを設置しちゃいましょうって事さ。

 美空殿もザ・ニュー御屋形様もそのつもりで準備を進めているから、

 下手に方針転換するより、初志貫徹した方が早い」

 

「尾張に行き、久遠様を説得し、兵を興し、戻ってくる……

 その時間で全てを決するつもりですか?」

 

「ご明察」

 

「ポータルという未知の機械を扱う以上、予想外の問題が生じる可能性は常にあります。

 それに江戸城は堅城ではありませんが北条の勢力圏内、

 そう易々と進軍できるとも思えません。

 先に剣丞隊に対処し、後顧の憂いを断つべきです」

 

「では追撃を取りやめる事により、

 今俎上に出ている以上の利益が生じるとしたらどうかな?

 例えば……助っ人外国人とか」

 

「す、助っ人……そんな人がどこにいるのですか!?

 仮にいたとしても、追撃と助っ人がどう関係するのですか!?」

 

「はい、もう入ってきて良いよ~」

 

強い剣幕で詰め寄る詩乃をよそに、一二三が軽~い調子で手を叩く。

 

そして……

 

「助っ人外国人、本多綾那忠勝なのです!

 ホームランとヒーローインタビューは頂きなのです!」

 

真田昌幸のモンスター効果発動、威信を墓地に捨てデッキから本多忠勝を特殊召喚した。

なお、本多忠勝を特殊召喚するのはこれで2回目である。

 

「何でてめぇが残ってるんだ糞弟子いいいぃぃぃーーーっ!!」

 

九十郎が思わず頭を抱える。

あっという間に浸透無念流の全てを会得し、あっという間に鬼神あるいは悪魔将軍の如き強さを得たこの愛弟子は、正直ちょっと苦手である。

 

「いやね、湖衣が何故か知らないけど逃げ支度してたからさ、

 見逃してあげる代わりに何かくれって言ってみたんだよ。 そしたらくれた」

 

「くれたって何だよ!? くれたって!?」

 

「鬼と北条相手に大戦なのです!

 綾那だけ除け者にしようったってそうはいかないのです!!」

 

「話がややこしくなるから黙ってろ糞弟子! いや、黙っててくださいお願いします!」

 

やはり九十郎は綾那に苦手意識があるようだ。

 

「まあ要するに、追撃をしない代わりに戦力を融通してもらってという訳さ。

 良かったね景虎殿、これで戦力アップだよ」

 

「追撃しない代わりって、勝手に変な約束すんじゃないわよ!

 今初めて聞いたわよそんな約束!」

 

「ええ、今初めて言いましたので当然でしょうとも」

 

「一二三、あんたとは一度決着をつける必要があるわね……

 だいたい、私はそんな約束知らない、関係無いって言ったらどうするつもりなのよ!?」

 

「あ、追撃しようとしたら助っ人外国人が乱闘騒ぎを起こしますので悪しからず。

 そうなった場合私は逃げます、後は野となれ山となれ」

 

「百人、千人は道連れにしてやるのです!」

 

なお、神道無念流により超パワーアップを遂げた綾那にとって、千人どころか万人殺す事も十分可能であり、しかも粉雪や九十郎程度では止めるどころか時間稼ぎすら不可能である。

要するに、追撃の下知を出した瞬間、美空も雫も九十郎も即刻皆殺しにされるという事だ。

 

とりあえず全部九十郎が悪い。

 

「ああそれと、諸事情あって置いてった今孔明殿の保護もお願いされていますので、

 今孔明殿に危害を加えたり人質にしたらやっぱり乱闘騒ぎを起こします、悪しからず。

 その時も私は逃げます、死にたくないので」

 

「一世一代の大乱闘を見せてやるのです!」

 

ここまでくると最早お邪魔キャラである。

とりあえず全部九十郎が悪い。

 

「その代わりって訳じゃありませんが、

 将来的に剣丞隊と戦う事になった時は中立でいてくれます」

 

「ポップコーン片手に見物してるのです!」

 

それで良いのか本多忠勝。

とりあえず全部九十郎が悪い。

 

「九十郎……」

 

美空はなんとも味わい深い顔で九十郎に呼びかける。

 

「美空……」

 

俺も同じ想いだ。

九十郎の目は雄弁に物語っている。

 

つまり……

 

「一二三の馬鹿あああぁぁぁーーーっ!!」

「一二三てめえ覚えてろよおおおぉぉぉーーーっ!!」

 

美空と九十郎の叫びが全焼した春日山城に木霊した。

剣丞隊追撃は断念せざるを得なくなった事は言うまでもない。

 

とりあえず全部九十郎が悪い。

 

「ううぅ……すっかり忘れ去られてる……」

 

「まぁ、何だ……元気出すんだぜ。 あたいと一緒に地味ぃ~に地獄を見ようぜ」

 

「そうですね、命じられた以上はやりますよ、やりますけど……

 どこまで時間が稼げるか……」

 

一方、途中から蚊帳の外に追いやられた雫と粉雪が、隅っこの方で地味に結束を固めていた。

雫も粉雪も多少……いや、相当不満気だが、とりあえずやるべき事はやるつもりだ。

 

とりあえず全部九十郎が悪い。

 

……

 

…………

 

………………

 

「あ、あぁぅ! ううんんぅ! んんあぁ!」

 

その頃、新田剣丞の最愛の妻である織田久遠信長がセックスをしていた。

相手は恐るべき洗脳能力を有する鬼子・森蘭丸……ではない。

 

「んんっ、い、良い……ぞ……んくぅ! ああんんっ!」

 

織田久遠信長が織田家で召し抱えている常備兵の一人に跨り、煽情的に腰を振っていた。

メスの顔になって、男に媚びを売るかのように厭らしく、膣内に男根を受け入れて腰を振っていた。

 

「久遠、調子はどうだい?」

 

恐るべき洗脳能力を持つ鬼子・森蘭丸が久遠に声をかけた。

久遠が名も無き一兵卒相手に腰を振っているという異常事態にも関わらず、蘭丸は特に何も感じている様子も無い。

 

「んんっ! んあぁっ!! ふああぁぅう!!」

 

「おい久遠、くぅ~お~ん! 喘いでないで答えなよ」

 

「あ、ああ……すまない蘭丸、少し熱がはいっていたようだ」

 

恍惚とした表情のままではあるが、久遠は辛うじて蘭丸の声を認識する。

 

「調子はどう? 練兵の」

 

「悪くない。 尾張の弱卒と嘲笑う連中に一泡も二泡も……

 んんっ、ふ、吹かせられるであろうな」

 

そう説明する間も、久遠は織田の兵の一人と繋がったまま、腰を前後にうねらせていた。

その光景に異を唱える者はいない、違和感を覚える者もいない。

 

久遠は今、練兵をしている。

正気を保った者が見れば、明らかにセックスをしているだけなのだが、少なくとも久遠達の認識ではこれは単なる兵の訓練だ。

何度も、何人もの男達と交合しようが、久遠にとっては浮気でも何でもない、ごく普通の行為だと思い込まされている。

 

既に森蘭丸によって常識を書き換えられてしまっているのだ。

 

「こら集中を切らすな、こう……んんぅっ! あん、あぅん!

 そ、そうだ、もっとしっかりとナカを意識して……ふぁぁっ、ああんんんっ!」

 

久遠がさらに激しく、艶めかしく腰を上下左右に揺さぶり、膣肉を絞めて男根を責め立てていく。

 

「うっ……うぅ……も、もう出る……」

 

久遠と交わる織田の名も無き足軽はそれなりに耐え、それなりに下から突き上げてメスの性感帯を攻めてはいたが……決壊の時は案外あっさりと来てしまう。

 

「ええいっ、もう少し耐えんか! もっと腰を入れて突かんと実践では役に立たんぞ!」

 

「そ、そうは言っても……う、あああぁっ!!」

 

びゅるるるっ! びゅるるるっ! と盛大に久遠の子宮に精液が発射された。

妊娠の危険のある膣内射精であるが、久遠は少しも嫌がる素振りを見せなかった。

 

最下級の兵に跨りセックスをさせる事も、膣内射精される事も、練兵のために必要なことで、武家の統領として当然の事をしていると認識していた。

 

それが森蘭丸の恐るべき洗脳能力により植え付けられた偽りの認識、偽りの常識であるとは思いもしない。

 

「……全く、情けない限りだ。

 これでは尾張の弱卒とかいう不名誉な綽名を返上する日は遠いな」

 

久遠がはぁっとため息をついた。

 

「そうかなぁ、私は相当良い所まで行くと思うけど」

 

こんなアホ臭い訓練を大真面目にやってる所なんて他に無いし……と、蘭丸は小さく呟いた。

実際の所、白昼堂々とセックスの訓練をしている大名家は織田家だけである。

蘭丸に構成員の全員を洗脳された大名家も織田家だけであるが。

 

「蘭丸、あまり甘やかさないでくれ。

 戦と言うものはそれまで積み上げた物で決まるものだ」

 

「そうだね、事前の準備が大事だって孫氏も言っているものね」

 

まあ、こんなアホ臭い訓練で積み上がる物が戦争の役に立つとも思えないけど……と、蘭丸は小さく呟いた。

 

「うあぁっ! こ、擦られ……んんぅっ! んあぁうっ!!」

 

「ふぁぁっ! んぅ、だ、駄目、駄目になって……ああっ! ああぁっ! やんんっ!」

 

久遠が周りを見渡すと、織田の宿老たる柴田壬月勝家と丹羽麦穂長秀がはしたなく嬌声をあげていた。

彼女達も久遠と同じように、織田の足軽と交合していた。

だが久遠と違って、蜜壺を剛直にずんずんと衝かれ、翻弄されている様子であった。

 

「む……壬月に麦穂は調子でも悪いのか? いつもならもっと……」

 

足軽達の尻を叩いて追いかけ回す事はあっても、自身が翻弄されるような事は無かった筈だと、久遠は思った。

 

「くぅっ! うう……んんっ! んんぅうっ!! ま、待て、もう……んんぅあぁあっ!!」

 

「ああ、もう……あぁぅう! っや! んんぁやぁっ!! つ、つか……衝かれてるぅ!」

 

壬月も麦穂も、唇を噛み締めながらギリギリの所で達するのを堪えるだけで、男の逸物を扱いてイカせる事まで意識が向けられていなかった。

それは久遠の記憶の中の壬月、麦穂の姿とはまるで違っていた。

 

「おいおい、もう音を上げるのか? こっちはまだまだ……んぅっ!

 い、今のは良かったな……うぁぁっ! ん、やんんっ!!」

 

「もぅ、和奏ったら油断しすぎ、咥え込んでる時は休んじゃ駄目だって……

 ほら、ほら、ほらぁっ!!」

 

むしろ和奏や雛といった、普段壬月達に追い回されている若手達の方が順応しているような気さえした。

 

「何か妙な様子だな……前の訓練の時はもっと……もっとこう……」

 

そして久遠が何かを思い出そうとして……

 

「まあ、しょうがないんじゃない。

 訓練の方向性を未来志向に……具体的には明後日の方向に大きく変えたんだからさ。

 まだ慣れていないんだろうさ」

 

……久遠の思考を、蘭丸が遮った。

 

「ああそうか、それもそうだな。 特におかしな事ではないか」

 

蘭丸の視線が向き、声が聞こえた瞬間、久遠の頭の中から疑念と違和感が瞬時に消える。

蘭丸の洗脳能力によって、思考が誘導されたのだ。

 

「ああ、そうだ久遠。 剣丞達、尾張に戻って来るって」

 

蘭丸が明日の天気の事でも話すかのような気安さでそう告げた。

 

蘭丸は一二三、湖衣、そして夕霧が見聞きした事を残らず認識するため、越後で剣丞隊が逃げ支度を始めた瞬間から色々と筒抜けになっている。

いやそれどころか、湖衣の思考を誘導し、尾張に戻るように勧めさせたのは蘭丸であった。

 

「何、本当か! 剣丞が戻って来るのか!」

 

愛する夫の帰還に久遠が即座に食いついた。

 

「ねえ久遠、折角だから皆で出迎えない?

 毎日の訓練でこんなに強くなったんだって所、剣丞に見せたいでしょ?」

 

なお、毎日の訓練とは今日やっているようなセックスの訓練である。

 

「ああそれが良い。

 まだまだ鬼も野盗の類も出てくる危険がある、早めに出迎えた方が良かろう」

 

「私もいっしょに行くよ、久遠。 剣丞には前々から興味があるからね」

 

蘭丸は自分が生まれた直後の事、金ヶ崎の戦いで出会った剣丞の事を想起する。

あの時は何故か洗脳にかかりにくい男程度の認識であったが、久遠に、結奈に、壬月に、麦穂に、和奏に、雛に、詩乃に、一葉に、小波、ひよ子……洗脳をするまでもなく幾多の女性達から大小様々な愛を捧げられた男性に、大きな興味が生じていた。

 

もしかしたら新田剣丞こそが、蘭丸が探し求めている『本当の愛』を知る鍵になるのかもしれない。

もしかしたら新田剣丞ならば、蘭丸が欲している『本当の愛』を教えてくれるかもしれない。

『本当の愛』を与えてくれるかもしれない……

 

「会いたいなぁ、剣丞に……一日も、いいや一刻も早く会いたいなぁ……」

 

蘭丸は恍惚とした表情で天を見上げ、剣丞の顔を思い返していた。

 

新田剣丞は既に越後から離れ、街道を避け山道や獣道を進み、尾張を目指して進んでいた。

一二三によって追撃を防ぎ、湖衣の御家流による道案内を受け、尾張に向かって進んでいた。

 

湖衣と一二三の目と耳を通じて、剣丞達の行動は全て筒抜けであった。

 

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