また、今回はNTR描写もあります。
嫌な予感がする方は閲覧を控えてください。
今回は第1話、第27話、第28話で描写した事故で九十郎が死ななかった場合を描いた話です。
斎藤九十郎轢かれる。
その朗報……もとい悲報に、大江戸学園は揺れた。
震度2くらいで揺れた……被害者が軽傷だったのだ。
「九十郎、検査はどうだった?」
腕に湿布をつけている男に対し、光璃が心配そうに尋ねる。
「打撲、全治1週間。 ねずみ屋のドアに頭から突っ込んだ桂の方がむしろ重傷だと。
とはいえ、俺も桂も特に問題無く学園祭に参加できるらしい」
九十郎はへらへら笑いながら答える。
無駄に鍛え上げられた屈強な筋肉が九十郎を守った。
九十郎は軽傷だった、死ななかった。
「良かった……」
その言葉を聞いた瞬間、光璃はぺたんと座り込んでしまった。
実母をハメて国外追放にした時も、志賀城に3000の生首を並べた時も、妹婿を騙し討ちにした時も、自らの右腕ともいえる存在であった板垣信方、甘利神拳正統伝承者であった甘利虎康の訃報を聞いた時も顔色一つ変えなかった。
しかし今、彼女は九十郎の無事を聞き、緊張の糸がぷつりと切れ、腰を抜かしてしまったのだ。
「良かった……本当に良かった……」
気がつけば涙が零れ落ちていた。
次から次から溢れ出て、止まらなくなっていた。
久しぶりに思い出した、人は容易く死ぬという事を。
平和な時代に再び生を受け、17年のぬるま湯生活を送り、すっかり腑抜けてしまっていたと。
そして思った、自分はもう戦国大名には戻れないと。
自分は、武田光璃はもう……二度と武田晴信には戻れないのだと。
「おい光璃、床に座り込むなよ」
「……立てない、おんぶして」
「全く、しょうがないな」
九十郎は光璃の身体を軽々と持ち上げ、背負って歩き出した。
身体に伝わってくる男の体温が、鼻孔をくすぐる男の臭いが、妙に心地良かった。
「……九十郎」
「今度は何だファースト幼馴染」
「後で時間を作って、大事な話がある」
「大事な話?」
「今まで隠していた事、全部話す」
そして決意した。
戦国時代の武田晴信から決別しようと。
現代ニホンに生きる、ただの光璃になろうと。
……
…………
………………
「にゃー、にゃーにゃー」
猫耳カチューシャ、肉球グローブ、尻尾型アナルプラグ……後は全裸の武田光璃が九十郎に迫っていた。
「……余りに予想外想定外過ぎて一瞬思考が停止した。
何のつもりだファースト幼馴染」
「完全屈服のポーズ」
「ははは、話が全然通じてねえや」
光璃が九十郎の目の前でごろんと寝転がり、無防備なお腹を見せた。
戦国時代の武田光璃晴信を知る者が見れば、ショックのあまり心臓麻痺を起こすであろう衝撃的な光景であった。
「おかしい……九十郎はこういうシチュエーションがツボの筈」
九十郎は特に興奮していなかった。
顔は赤くなっていないし、男根は隆起していない。
子供の頃から何度も何度も光璃の全裸を見た事があるので、新鮮味が無かったのだ。
「嫌いじゃねえけど現実にやられるとドン引きだよっ!?
てゆうか光璃てめぇまた他人のエロ本勝手に読んだな!?」
「隠し場所は朱金から聞いた」
「何で他人ん家のエロ本の隠し場所知ってんだよ、あのエロ奉行がぁっ!!」
「北町奉行の勘と言っていた」
「あんにゃろう、いつかシメたる」
九十郎は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の北町奉行を除かなければならぬと決意した。
九十郎には政治がわからぬ。
九十郎は、剣術馬鹿である。
竹刀を振るい、弟子を鍛えて暮らして来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に鈍感な屑であった。
「……あんにゃろう、一人だけ幸せになりやがって、いつかシメちゃる」
そして思い出す。
秋月八雲の前に跪き、その男根を咥え、舌を這わせる遠山朱金の姿を。
秋月八雲に跨り、喘ぎ声を出しながら腰を上下に揺さぶる長谷河平良の姿を。
思い出して……脳の神経と血管がブチブチと千切れ飛んでいくかのような苦痛を味わった。
トラックに轢かれた時に感じた激痛の何倍も、何十倍も辛い苦痛であった。
「九十郎は屑じゃない」
「……あ?」
九十郎は思わず聞き返した。
ドスの効いた声だった、明らかに不機嫌そうな声であった。
「九十郎は無価値じゃない、九十郎は嫌われ者じゃない。
遠山朱金と長谷河平良は秋月八雲に惹かれ、秋月八雲を愛した……ただそれだけ。
九十郎が無価値である証拠にはならない」
「煩いぞ、ファースト幼馴染」
九十郎は短く吐き捨てた。
その言葉は何よりも聞きたい言葉であり、同時に何よりも聞きたくない言葉であった。
「お前が何て思おうが俺は負け犬だよ。 どんだけ頑張ろうが秋月八雲に勝てやしない」
「そんな事は無い、どんなに優れた人物でも、負ける時は負ける。
アレキサンダーも、ガイウス・ユリウス・カエサルも、ナポレオン・ボナパルトも、
チンギス・ハーンも、戦上手ではあったが常勝無敗ではない」
「俺は屑だ。 純然たる事実として俺は屑なんだよ。
情報操作に報道規制も、遠山を人質作戦で捕縛する作戦も、
公開処刑にするって案にも真っ先に賛成した。
昔は……俺と長谷河と遠山はダチ公と呼び合った仲だったのに、
長谷河を焚きつけて、勝手な理屈で遠山を裏切って、失望されて、
疎遠になって会話が減って、そして人質作戦に公開処刑だ! ははは!」
「九十郎は屑じゃない」
「屑だよ! 俺は屑なんだよ! どうあがいても屑! 倫理観が欠片も無い屑野郎!!
銭方はあんなちっちゃい身体でおかしいと叫んだ!
やって良い事と悪い事があるって叫んで! 抗ったんだ!
でも俺は今でもあれが正しい事だと思ってるんだよ!
遠山裏切った時も今回の一件もあれが良かったって!!
ダチ公裏切って踏みにじるのが正しかったって今でも思ってるんだよ!!」
九十郎が叫ぶように言う。
自分がやった事が屑の所業と理解している。
屑の所業を今でも正しいと思っている……だから自分は屑なのだと九十郎は言う。
それでも……それでも、と光璃は思う。
「光璃は今でも正しいと思っている。
母を追い出した事も、志賀城に3000の生首を並べた事も、
妹婿を騙し討ちにした事も、今川義元を殺した事も。
正しいと思ってやった、正しいと思うからやった。
九十郎も正しいと思ってやった……同じ事。
結果が芳しくなくても、秋月八雲に否定されようとも、
九十郎が一生懸命に考えて、正しいと思って決断した事」
「今川義元……? 今川義元を何したって?」
「光璃が殺した。 直接手を下したのは織田信長、光璃は協力者。
光璃は武田信玄。 今までずっと黙っていた、九十郎に嫌われたくなかったから……」
九十郎は光璃の発言の意味を考え……考え、考え、考えて……
「俺の幼馴染が武田信玄の訳がねえだろ、常識で考えろ」
とりあえず信じない事にした。
しばらくの間、2人は沈黙し、気まずい空気が流れた。
猫耳真っ裸の少女とマッチョ……傍から見れば通報案件である。
「九十郎、あれやって」
唐突に光璃が、何かをねだった。
「……分かったよ、ちょっとこっちに寄れ」
九十郎は少し面倒くさそうに光璃を抱き寄せ、その額に口づけをする。
この男は光璃が『あれ』と言った時、あれの内容を直感で理解できる。
この世に生を受けてから今まで、ずっと傍にいたからできる直感だ。
「……唇が良い」
その直感が、今日は珍しく外れた。
光璃は不機嫌そうにそう呟いた。
「そういうのは恋人ができるまで取っとけ、このマセガキ」
「ガキじゃない、同い年。 光璃の方が10分くらい早く産まれた」
「10分早く産まれたって所だけは同意するよ。
だがお前が夜中に泣き出して、俺か担庵が夜通しあやしてた回数覚えているか。
一回や二回じゃないぜ」
「100回は軽く超える」
「何度も何度も、真夜中に電話して叩き起こしてさ、
九十郎、眠れない、近くにいて、なぁんて涙声で言ってきてよ……
お前はガキだよ、少なくとも俺と担庵にとってはな」
「……ガキじゃない、光璃は武田信玄。
前世を入れたら九十郎の3倍以上長く生きている」
「ははは、エイプリルフールはとっくの昔に過ぎてるぞ、ファースト幼馴染」
「嘘じゃない、冗談でもない。 光璃は武田信玄、光璃は甲斐の虎。
虎の歯を引き抜いて、骨抜きにしたのは……貴方」
「光璃みてえな泣き虫が武田信玄の筈があるかよ」
「4度目の川中島の時、光璃は死んだ。 上杉謙信に斬られて死んだ。
そしてこの時代の赤子になっていた」
「4度目の川中島って……確か軍配で刀受け止めて生き延びたんじゃないのか」
「受け止めようとした、受け止められなかった、軍配ごと切り捨てられた。
斬られた瞬間、間違い無く致命傷だと分かった」
「歴史の本では、もうちょっと生き延びてるんだけどな」
九十郎の記憶の中では、武田信玄は第4次川中島の後、織田徳川連合に戦いを挑み、徳川家康を見事に打ち破った直後に病死している。
それは横山光輝の漫画から得た知識だが……概ね、この世界の歴史書に合致している。
「理由は光璃にも分からない。 影武者を立てて死を秘したか、
それともかつて光璃が居た場所は、過去ではなく別の世界だったのか……
新田剣丞の名や行動が歴史書に一切登場しない所や、
剣豪将軍が戦国ボンバーマンに殺されている事、信長とお手紙将軍、
信長と浅井朝倉が殺し合いをしている事を考えると、別世界の可能性が高い。
いずれにせよ確かな事は、光璃は4度目の川中島で死んだ」
「武田信玄……ね……」
九十郎は思った。
光璃の奴、目がマジだと。
長い付き合いだ、光璃が嘘や冗談を言っている時は直感で分かる。
だがそれでも、九十郎は目の前の少女が武田信玄だとは思えない。
ファースト幼馴染……ただの光璃にしか見えなかった。
「さっき謙信に斬られたって言ってたな、軍配で受け止められなかったのか?
九頭龍閃とか天翔龍閃でも使ってきたか?」
るろうに剣心の読み過ぎである。
光璃は少し迷い、言い淀み、考え込み……伝えた。
「光璃は……武田光璃晴信は既婚者だった。
光璃は新田剣丞の嫁になった、それが原因で上杉謙信を怒らせた」
「新田剣丞、新田剣丞ねえ……知らねえ名前だな、どんなヤツだったんだ?」
「黒田官兵衛と竹中半兵衛、本多忠勝と榊原康政、それと服部半蔵正成を嫁にしていた」
「榊原……ええと、榊原なんとかって誰だ?」
歌夜は九十郎を殴っても良いだろう。
生きている世界が違うので殴るに殴れないが。
「榊原康政は、徳川四天王」
「なにそれこわい」
「しかも四六時中イチャついていた」
「なにそれ羨ましい」
「光璃の妹達、それに粉雪以外の武田四天王とも良い雰囲気になっていた」
「粉雪って?」
「山県昌景の通称。 砥石城の敗戦の時、助けて貰った人に惚れたと言っていた。
マジキングに似た帽子を、その人から貰ったと言っていた。」
なお、帽子のモデルはマジキングではなく霧雨魔理沙である。
「吊り橋効果ってヤツかな、まあ何にせよとんでもねえモテ男だな。
秋月でもそこまでのモテっぷりは発揮できないんじゃねえのか?」
「さらに織田信長と豊臣秀吉も剣丞の嫁」
「What!?」
「後は剣豪将軍とお手紙将軍と戦国蹴鞠ーガーとついでに上杉謙信」
「おいちょっと待て何人いるんだ。
ハーレムか!? ハーレム物のラノベか何かなのか!? なろう系のアレか!?」
それは違う……と、言おうとしたが、否定する材料が全く無かったので光璃は反論するのをやめた。
「そして武田信玄も剣丞の嫁になった」
「それなんてエロゲって言いたくなるレベルじゃねえか、率直に言って意味不明だな。
そんな大人数が……しかも戦国時代の有名武将達が1人の男の嫁だったと?」
「そう、光璃も嫁だった。 嫁になった事情は実利100%だった、だけど……
だけど光璃は、あの時確かに剣丞に惹かれていた、焦がれていた、きっと恋をしていた」
「そか……」
「たぶん上杉謙信も剣丞に恋をしていた、光璃が剣丞を略奪した、だから上杉謙信は怒った。
怒って兵を挙げ、甲斐に攻め込んで、そして光璃を斬った、光璃は死んだ」
「ガッシ! ボカッ! 光璃は死んだ。 スイーツ(笑)」
光璃は無言で九十郎のスネを蹴った。
真面目な話をしているのだから茶化すな、話の腰を折るなという無言の抗議である。
「要は痴情の縺れか、女って怖いな」
「……あれは光璃の初恋だった。
剣丞以外の人にこんな感情を抱く事はありえないと思った、
一生剣丞を好きでいると思った、何年経とうがこの想いは色褪せないと思った。
だけど……17年経ったら色褪せた。 17年経ったらぼやけた」
「薄情な奴だな」
九十郎程ではない。
「武田信玄は骨抜きにされた、甲斐の虎は牙を抜かれた。
骨抜きにして、牙を抜いたのは……17年という時間と、貴方」
「他人のせいにするんじゃねえよ」
九十郎に言えた義理ではない。
「九十郎は悪くない、悪いのは光璃、薄情なのも光璃。
九十郎に甘えすぎた、平和という名の甘い蜜を飲み過ぎた。
二度と戦国武将に、二度と甲斐の虎に戻れない位に依存した……
気がつけば光璃は貴方に恋をした。 他人を本気で恋しく想ったのは二度目の事。
九十郎の事ばかりを考えて、九十郎無しでは生きられなくなった」
九十郎はそんな光璃の告白を最後まで聞き……
「何と言うかな……実感が湧かねえや」
……そう伝えた。
それは九十郎のありのままの心境であった。
「何に?」
「お前が武田信玄だって事も既婚者だって事もだ。
お前が嘘を言っているとは思えんが、それでもやっぱりお前はただの光璃だよ。
俺のファースト幼馴染の武田光璃。
泣き虫で寂しがり屋でお気楽で寝坊助で生活力皆無で無駄に悪知恵が働いて……
産まれた日からの腐れ縁、俺の大事な大事なダチ公だよ」
九十郎がそう告げると、光璃は九十郎に体重をかけ、床に押し倒した。
体重も、体格も、筋力も大きく差が開いている2人だ、抵抗しようと思えば簡単に抵抗できた。
だけど九十郎は光璃に押し倒された。
「……ダチ公じゃ足りない、男と女の関係になりたい」
そう言って光璃は、やや強引に九十郎の唇を奪った。
体格差は歴然、力も体重も九十郎の方が遥かに上、跳ね除けようと思えば簡単に跳ね除けられた。
避けようと思えば、簡単に避けられた。
それをしなかったのは……九十郎が光璃の本気を感じ取ったからだ。
ごくり……と、九十郎が唾を飲み込んだ。
「そんな恰好で男の部屋に来やがって。
その場で押し倒されて強姦されても文句言えんぞ」
「何の問題も無い。
光璃は避妊薬を飲んでいる、今日は中出しをしても妊娠はしない日」
「知ってるよ。 生理用品も含めて消耗品の補充は俺がやってるからな」
普段の様に軽口を叩く。
しかし九十郎の内心は揺れ動いていた、平常心とは程遠い状態だった、視線は泳いでいた。
間近に迫る女体に……手を出しても良い、むしろ手を出せと迫ってくる女体に心を奪われていた。
「この時代には便利な道具が多すぎる。 一度使えば、二度と戦国時代には戻れない」
「月の日の前後は、普段以上に口数が減るものな」
率直に言って酷い会話、酷い光景である。
次の瞬間……今度は九十郎が光璃を押し倒した。
「色気のねえ会話をした直後だが、ちOこは勃った」
九十郎は少々ばつが悪そうに言う。
身近にいすぎたが故に、あるいは慣れきってしまったが故に、今まで女らしさを感じない……いや、女性である事を忘れ去り、痴情欲情の意識の外に置いていた光璃の身体を凝視していた。
凝視して……発情していた。
「うん……」
その視線の先には、袴越しからでも分かる程にギンギンに隆起した男根があった。
身体が密着した事は何度もあった、混浴の露天風呂に入った事もあった、
ねずみ屋のカップル限定パフェを食べに行った事もあった、2人で遊園地や映画館に行った事もあった……しかし、九十郎が勃つ所を見たのは初めての事だった。
九十郎が光璃の身体で興奮し、欲情した事は初めての事である。
今までずっと、この男は己のファースト幼馴染をそういう対象とは見ていなかった。
九十郎は自分でも驚くくらい、そんな異常事態を受け入れていた。
「光璃を抱きたい」
「うん」
「……浮気とか不倫とか、そういうのになるんじゃねえのか。
離婚した訳でもないんだろ?」
「17年目の浮気くらい大目に見てほしい」
「損害賠償請求とかされるんじゃねえの、剣丞って奴から」
民法第709条……故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
法律上保護される利益の中には平穏な婚姻生活も含まれるので、既婚者をそうと知りながら抱くのは普通に不法行為である。
もっとも、戦国時代にいる新田剣丞に訴訟を提起する事は不可能であるが。
「大丈夫、肉体関係になった時、婚姻関係が既に破綻していた場合、
慰謝料請求権は発生しないと最高裁が言っている。
確か最高裁第三小法廷判決、平成8年3月26日」
「お前何で判決の日付まで暗記してるんだよ。
調べたのか? 調べたんだな?」
光璃は目を逸らした。
「最悪、光璃が風呂屋に沈んででもどうにかする。 九十郎に不利益は及ばさない」
武田信玄がいる風呂屋……意味不明な光景であるし、戦国時代の武田光璃晴信を知る者が見れば卒倒する光景である。
「そうか、頑張れよ」
「……嘘でも良いから、死ぬ時は一緒だと言ってほしかった」
「ははは、俺がそんな事を言う性格かよ」
薄情な男である。
光璃よりも何倍も何十倍も薄情な男である。
「知ってる、九十郎は基本的に屑……光璃自身、どこを好きになったかを理解できない」
光璃は嘘を言った。
九十郎は基本的に屑だが、放置したら洒落にならない事になる者に対しては優しいと思っている。
光璃は九十郎の良い所を10も20も思いつく、そして語れる。
嘘を言ったのは、光璃の照れ隠しである。
「だな……」
そして2人は口づけを交わす……ムードもへったくれもない会話が続いたが、それがかえって2人をリラックスさせた。
そして燃え上がった……情欲と情愛が。
2人の心臓がバクバクと高鳴っていた。
「女っぽい身体になったよな」
九十郎の手が横たわる光璃の胸に伸びる。
幼い頃から見続けてきた身体が、妙に色っぽく感じた。
「ん……はぁ……牛乳と朝晩の豊胸運動が秘訣」
少し息を漏らしながら、やっぱり色気の無い返事をする。
光璃は今、身体の奥底から疼くナニかを感じていた。
自分の中にある女のスイッチが入っていくのを感じていた。
「この尻尾、随分精巧だな」
尻尾型アナルプラグをわしわしと揉み、撫でまわす。
「んっ! ……んふ、ネット通販で……ぁん! 猫耳も……んんぅっ!」
「どこの世界にネット通販を使いこなす武田信玄がいるんだよ、
お前って本当に現代人だよな」
「英雄戦姫では、織田信長がアマゾンを愛用していた」
「ははは、しれっとエロゲを基準にしてんじゃねえよ」
振動が指から尻尾に、尻尾からアナルプラグに、アナルプラグから直腸に伝わる。
こそばゆい感覚が来る度に、光璃が翻弄され、昂っていく。
「……ちょっと待て、何でお前が英雄戦姫知ってるんだよ。
まさかエロ本盗み読みするだけじゃ飽き足らず、
他人のPCに入ってるエロゲまでやったのか」
「犯人は遠山朱金、光璃は後ろで見てた。
九十郎はエロフォルダの隠し方が昔から変わっていないと言っていた」
「あの野郎、覚えとれよ……」
九十郎は後で朱金を殴ると決意した。
「く、九十郎……ここも……」
「ああ、分かったよ」
光璃が指し示す場所……股座の最奥、秘所へと指が伸びる。
「あ……ふっううぅ……ああっあ……」
喘ぎ声が徐々に徐々に大きくなる。
「ぁふわっ……あっ……んっ、し、舌が……」
興が乗って来たのか、九十郎の愛撫がさらにエスカレートする。
光璃のクリトリスに舌先が這う。
唾液と愛液が混じり、その味と感触が九十郎を興奮させる。
舌先の愛撫が光璃を興奮させる。
前の生でも、今生でも味わった事の無い未知の感覚が、好いた男に奉仕させている事への背徳感が、光璃を一気に絶頂寸前にまで昂らせていた。
「んぁ! あぁぅ! ……駄目、自分で……んんっ!
スルのと……違う……っあぁあん!」
光璃自身が驚く程、九十郎が戸惑う程、成す術も無く翻弄されていた。
女の蜜がとめどなく溢れていた。
九十郎が欲しい、九十郎を受け入れたいと叫ぶかのように……
「九十郎……挿入したい……」
光璃がそう告げた。
「良い……のか……」
九十郎は思わずそう返してしまう。
正直な所、この男は自分が光璃と身体を重ねる事になるなんて全く想像した事が無かった。
未だに目の前の現実を信じ切る事ができていない。
「ハジメテは、騎乗位が良い」
「それは構わんが……って、ハジメテ?」
「信じて貰えるかは分からない、証明する手段は無い。
けど……光璃はハジメテ、剣丞と一夜を共にする前に死んだから」
「m9(^Д^)プギャーwww」
PKフーリンカザンで呼び出された武田の祖霊が九十郎をドツいた。
「痛えな! ツッコミくらい自分の手でやれよ!」
「光璃の一大決心を笑う九十郎が悪い」
そう言いながら光璃は、今度は自分の腕で九十郎の頭をぽかぽかと叩く。
片方は暇さえあれば筋トレをしているマッチョ、片方は基本出不精な少女なので、その儚い抵抗はまるで効いていないのだが……それでもぽかぽかと叩き続けた。
「笑って悪かった、スルか光璃」
「う……うん」
抗議のぽかぽかがピタリとやんだ。
そして光璃の顔がかあぁ、と一気に紅潮した。
そして光璃は九十郎を再度押し倒し、馬乗りの体勢になる。
発情し、男性を求めてヒクつくワレメに亀頭をあてがい、押し当てる……
「……挿れる」
光璃が静かに宣言した。
新田剣丞の顔が脳裏に浮かぶ、新田剣丞の声が脳裏に浮かぶ……かつては四六時中剣丞の事ばかり考えていた。
かつては戦国時代に戻る事ばかりを願い、戦国時代に戻る手段を探し続けていた。
しかし今……光璃は大江戸学園の日々を思い出していた。
光璃は斎藤九十郎との日々を思い出していた。
楽しかった、心地良かった。
17年という年月と楽しく心地良い日々が、胸が躍り、安らぐ日々が……武田信玄を骨抜きにして、甲斐の虎の牙を抜いたのだ。
武田信玄を変えたのだ、ただの女の子、ただの光璃へと。
「……おい光璃、いつまで硬直してるんだ」
「思ったよりも太くて固い」
「おい既婚者!? 見るの初めてか既婚者!?」
「剣丞のも見た事が無い……脈打ってる……」
「見てないってお前、夜の生活とかどうやってたんだよ!? 目隠しでもしてたのか!?」
「光璃は結婚後1ヶ月で死んだ、夜の生活は断られた……」
「ちょっと待て、実は新田剣丞は女だったってオチか?」
「男性」
「ホモ?」
「それは無い」
何度か深呼吸をして、意を決して……腰を下げた。
「……んんっ!」
2人が拍子抜けする程にあっさりと、光璃のアソコは男根を受け入れ、飲み込んだ。
膜が破れる痛みも、出血も、思った程深刻ではなかった。
子宮口と鈴口が触れ合った瞬間、光璃は絶頂した。
自分の肉体が、本能が九十郎の男根を求めていた。
九十郎とセックスがしたい、中出しをされたい、子種を迎え入れたい、種付けされたい、子供を産みたい、子供を抱きたい、子供を育みたい…光璃はその瞬間、自分の魂が、自分の本能がそう叫んでいるかのように感じていた。
「タンポンの使い過ぎかな」
絶頂の興奮と多幸感が覚めやまぬ中、PKフーリンカザンで呼び出された武田の祖霊が九十郎をドツいた。
「だからツッコミは自分の手でやれよ!」
「光璃がどんな想いで腰を下げたか、理解しない九十郎が悪い」
「……どんな想いだったんだ?」
「寂しくて、悲しくて……それがどうでも良いと思えるくらい、幸せな気分。
全部全部九十郎が悪い、九十郎が光璃を変えた、九十郎が武田信玄を殺した」
「だから他人のせいにするなよ」
だから九十郎に言えた義理ではない。
しかし、九十郎は今までずっと光璃の世話を焼き続けてきたが、それは断じて武田信玄を殺すためにやった事ではないのも確かである。
「光璃はきっと、斎藤九十郎の妻になるために生まれたのだと思う。
光璃はきっと、斎藤九十郎の子を産むために生まれて生きたのだと思う」
「何を馬鹿な」
「馬鹿な事かもしれない……でも、光璃は今、本気でそう思っている」
そして光璃は九十郎に身体を預ける。
愛おしそうに……いや、悲しそうにその厚い胸板を撫でる。
「でも……17年もあれば人は変わる、どうしようもなく変わってしまう。
初恋を忘れる程、愛する人への想いが薄れる程に……変わってしまうこの想いも……
心の底から感じる愛しいという気持ちも、幸せな気分も、
きっと17年放っておかれたら忘れてしまう……たった17年で……」
九十郎は挿入したまま、光璃を抱き寄せた。
強く強く抱きしめた……
「……九十郎?」
「そこは信じろよ、俺が光璃を17年も放っておく訳がねえって。
お前は泣き虫だからな、お前が泣いた時、俺が支えてやんねえといけないからな」
「うん……」
それでも人は死ぬのだ。
平和な時代に生きていると実感する機会が少ないが、人は案外あっさりと死ぬのだ。
どれだけ九十郎を求めても、大切でも、死の別離は容赦無く前触れ無く訪れるのだ。
だから光璃は、今この瞬間、九十郎が生きている内に九十郎と結ばれたいと望むのだ。
九十郎が生きている内に自らの想いを伝えたいと望んだのだ。
「大丈夫だ、俺が居る、俺が付いている、俺が助ける、俺がどうにかする。
だから泣くな、安心して笑っていろ……昔、九十郎が光璃に言った言葉。
光璃は毎日泣いていた、光璃が立ち直れたのは九十郎が支えてくれたから」
「そこは担庵も入れてやれ、あいつはお前の事、本気で妹だと思っているぞ」
「うん……頼もしくて、物知りで、時々屑な、素敵なお姉ちゃん」
姉がいる、頼れる者がいる……自らの肉親を追い落し、妹と家臣団を抱え、戦国大名として生きた武田信玄にとって、それは幸せな事であった。
「九十郎は、光璃の事が好き?」
「お前こそ俺の事をどう思ってるんだよ? まだ何も聞いてねえぞ」
2人は顔を突き合わせて、2人して笑い合って、そして……
「大好き」
「好きだぜ」
……そう伝え合った。
「動いて、九十郎」
「ああ、分かった」
そこから先は、お決まりのパターンだ。
「んんっ! あっぁあっ……ふわっ!」
獣のような嬌声を上げる男と女が、
初めて女を抱く童貞男と初めて男を受け入れる未通女が本能のまま、欲望のままに腰を振り、互いに高めあっていく。
腰を突き上げる度に上下に揺れる双丘が、巨乳好きの九十郎を視覚的にも楽しませていた。
「ぁふわっっあんんっ! あぁあっううぅ!」
気がつけば光璃は四つん這いになっていた。
「せっかくこんな格好なんだ、猫みてぇににゃーにゃー鳴いてみたらどうだ」
そう言って九十郎が下品に笑う。
男の欲望を隠そうともしない、繕おうともしないその笑みが、むしろ光璃を興奮させた。
お前はただの光璃だ、お前は俺の女だと告げられているようだった。
「に、にゃー…………んんっ! ぁぁあっううぅ! にゃあ!
にゃ……ぁぁあっんんっ!」
にゃあと口にする度に感度が上がっているような気がした。
自分が本当に九十郎の飼い猫になっていく、飼い猫にされていくような気になっていった。
甲斐の虎ではなく、武田信玄でもなく……ただの光璃に。
「にゃあ……あっんんっ! っんんっ! んんっ! にゃっ!」
ドスドスと乱暴に膣奥を衝かれ、同時にアナルプラグを弄られ、光璃は喘ぐ。
喘いで喘いで、感じて感じて……楽しんでいた。
「今日は中出しOKの日だっけ?」
今にも気絶しそうな程の快楽の波に翻弄されながら、光璃がこくこくと頷いた。
膣肉がうねり、締まり、男根を刺激している。
鈴口からカウパーが漏れ始め、睾丸が上がっていくような感触がした。
表面上は余裕そうな顔をしていたが、九十郎は早くも果てそうになっていた。
「ペース上げるぞ……」
まるで我慢比べだ……そんな事を考えながら、九十郎は光璃をイカせに掛かった。
九十郎は歯を喰いしばり、肛門の辺りに力を籠め、力一杯光璃を突く。
別に競っている訳ではないが、幼馴染より先に果て、精液を漏らすのはなんとなく恰好がつかないからだ。
「んんっ! にゃ……ぁあっ! にゃぁわっ!」
そんな九十郎の思惑も知らず、光璃はただただ目の前の快楽を貪る。
セックスという名の非日常を堪能する。
「んんっ! にゃんんっ! んんっ! にゃ……ふわっ!」
早くイケ、早くイケと念じながら、九十郎はアナルプラグや乳首、クリトリスをクリクリと刺激していく。
亀頭は破裂せんばかりに膨らみ、肉竿は硬直し、脳髄に女の肉の感触が刻まれる。
一突きする度に押し寄せる肉ヒダの快楽が、九十郎を問答無用で射精に導く。
「……んんっ! ぁあっんんっ!!」
……そして果てた。
どちらが先に果てたかは当事者にも分からなかったが、光璃は恍惚とした表情で九十郎の精液を受け入れた。
まるで精液を一滴残らず絞りだそうとするかのように、光璃の膣内がぐにゃりと脈打ち、痙攣し、肉棒を吸った。
「はっ……はぁ……はうぅ……」
全身を汗で濡らし、息を乱し、ぐったりと横たわる光璃を見下ろしながら、ワレメからどろりと零れ落ちる白濁液を見つめながら、九十郎はもう一回犯してえなとか最低で下種な事を考えていた。
……
…………
………………
汗と唾液と愛液でぐっしょりと濡れた身体を洗うため、風呂を沸かして2人で入った。
産まれた日からの腐れ縁である2人にとって、服を脱がせ合うのも、背中を流し合うのも良くある事で、普段ならば特に何も意識せずに終わらせる。
だが今日は、男女の関係になった今日だけは違った。
自然と唇が重なり、自然と吐息が重なり、自然と身体が重なり、雄の部分と雌の部分が重なり……再び、先程の光景が再現された。
「九十郎の子種、流してしまうのが勿体無い気がする」
自分の膣内にシャワーを当てながら、光璃がそう呟く。
「注いでほしけりゃいくらでも注いでやるから我慢しろよ」
湯船に浸かりながら、九十郎がそう答える。
「……毎日でも?」
「避妊はするぞ。
いくら大江戸学園が大らかだって言っても、学生の身で子持ちとか洒落にならん」
「本当は、危険日中出し種付けセックスがしたい」
「前向きに検討するよ、前向きに。 俺だってシてえんだからな、本当は。
俺も我慢してるんだから、あんまり無茶言うなよ」
「うれしい」
光璃が笑った。
自分と九十郎が危険日中出し種付けセックスをしている光景を想像したら、それだけで絶頂してしまいそうな程の多幸感が全身を駆け巡った。
光璃はこの時、本気で自分は世界一の幸せ者だと思った。
織田信長も、豊臣秀吉も、徳川家康も、上杉謙信も味わえないような大きな大きな幸せに包まれていると感じた。
戦国時代の武田光璃晴信を知る者は誰も見た事が無い、朗らかな笑みであった。
光璃も湯船に入る。
大柄な九十郎と一緒に入ろうとすると、風呂桶はかなり狭く感じるが……その狭さが、今は嬉しかった。
九十郎の身体に包まれている事で、安心と幸せを感じていた。
「御旗・楯無など俺には関係ない!」
湯船の中で、光璃は唐突にそう叫んだ。
その言葉はかつて戦国時代を生きる武田晴信が、仁義よりも、道徳よりも、家族よりも大事にしていた価値観を否定するものだ。
新田剣丞に対する愛情を、かつて誓った婚姻を否定するものだ。
発言の内容も、秘唇からも菊門からも精液を滴らせるその姿も、戦国時代の武田光璃晴信からはおよそ想像できないものだ。
叫んで、大きく深呼吸をして……満足そうに胸を撫でおろし、にこりと笑った。
ああ馬鹿らしい、ああ阿保らしいと、自分は何てくだらない物にこだわっていたんだと光璃は思った。
「いきなり大声で何を言ってるんだお前は」
雑巾で汗とか愛液とか精液とかを拭き取りながら、九十郎がそう尋ねた。
「確認」
「何の?」
「疑似体液が逆流して死なないかの確認」
「どこのドットーレだ」
「武田信玄にとってはフランシーヌ人形と同じ位重要で、同じ位馬鹿らしい価値観。
たった今、確認ができた。 今の光璃は戦国時代を生きる武田信玄じゃない。
今の光璃はこの時代、この世界を生きる……ただの光璃」
今までずっと、光璃は御旗・楯無を話題に出さなかった。
考えるのをずっと避けていた。
だけど今……御旗・楯無を否定したというのに、光璃は自分でも驚く程、心が痛まなかった。
この日、光璃は武田信玄である事をやめた。
光璃はこの日、ただの光璃になった。
それが良い事なのか、悪い事なのかは光璃自身にも分からなかったが……
「卒業をしたら籍を入れたい、できれば子供も欲しい」
「卒業って大学をか? それとも大江戸学園の事か?」
「大江戸学園」
「あと2年弱か……稼ぎの良い就職先を見つけないとな。
まさか卒業後まで担庵の実家に援助頼む訳にもいかんし」
「光璃も働く、働いてお金を貯める。 そうしたら……子供を産みたい」
光璃がそんな未来予想図を想像する。
武田光璃は九十郎の隣で、幸せそうに笑っていた。
戦国時代の武田光璃晴信では絶対に手に入らない幸せを手にしていた。
……
…………
………………
そして翌日……
「そういえば、幻聴が聞こえなかったな」
九十郎がぽつりとそう呟いた。
『お前は屑だ』『誰もお前を好きにはならない』と、煩く煩く聞こえ続ける声が無かった。
九十郎は最初から最後まで、光璃と武田信玄が同一人物と信じ切れていなかった。
九十郎は最初から最後まで、目の前の少女をただの光璃としか認識していない、認識できなかった。
ただの光璃だったからこそ、特に抵抗も無く受け入れられたのだ。
自分を好いている女性の存在を……
もしも目の前の女性が、九十郎にとっての価値のある女……例えば前田利家、例えば山県昌景、例えば徳河詠美だったとすれば、そう簡単には受け入れられなかった。
心が軽くなった気がした。
昨夜までの光璃のように……御旗・楯無というくだらない価値観に延々とこだわり続けていた武田晴信のように、九十郎はこだわっていたのだ、秋月八雲に。
案外くだらなくて、案外馬鹿馬鹿しい敗北の記憶に。
「九十郎、手伝って」
昨日まではファースト幼馴染、今は恋人の関係にある少女が物思いにふける九十郎に話しかける。
「今度は何をやらせるつもりだ?」
「さっき詠美から電話があった。
九十郎が轢かれた時間、剣魂システムがハッキングを受けていた。
ハッキングの元は……キョート学院」
「学園とは名ばかりの科学要塞研究所か……
大江戸学園に並ぶ頭のイカれた連中が通う魔境じゃねーか」
「殴り込む」
「俺にも来いと?」
「うん」
光璃は頷いた。
九十郎はニヤァ~と下品に笑った。
「打撲1週間の恨みは晴らさねえとな」
この男、合法的に神道無念流振るえるチャンスだぜヒャッハーとか考えていた。
この男は正真正銘の屑であった。
「大江戸学園の学生は、ナメられたままでは終わらない」
そして光璃は決意する。
自分の全知全能を九十郎の為に使おうと。
この世界で出会い、抱えきれない程に大きな幸せを貰い、心の底から愛した男のために使おうと。
もう御旗・楯無のようなくだらない骨董品のために使ってなんてやるものかと。
どんな手段を使ってでも、何を利用してでも九十郎は守ると。
北条早雲、徳河創雲が敵に回ろうとも、負けはしないと、負けてたまるかと。
キョート学院で靖国の英霊を召喚する、光璃と同じタイプのスタンド使いが現れたり、横山光輝の漫画に登場する剣法・霞の小太刀の使い手とチャンバラする羽目になったり、消息不明になっていた柳生十兵衛とバッタリ出くわしたり、九十郎が『何だっていい! 柳生十兵衛を抹殺するチャンスだ!』とか何とか叫んで突撃して普通に負けたり、詠美がキョート学院の全校放送でゲイナー・サンガ並に恥ずかしい告白をやったり、詠美の魂の叫びを聞いた九十郎がトラウマを踏み越えたりした。
そして最終的には光璃と詠美と十兵衛と九十郎が色々な意味でやらかし、キョート学院が跡形も無く大爆発する事件が起きるのだが……それは別の話である。