※この作品はR-18です。

戦国†恋姫X 犬子と九十郎(エロ回)   作:シベリア!

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前話、おまけ2にはR-18描写がありませんので、通常版に投稿しています。
おまけ2URL「https://syosetu.org/novel/105831/123.html」


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犬子と柘榴と一二三と九十郎おまけ3『省略された幕間シリーズ・烏の場合(後編)』

 

注・原作キャラが凌辱される描写があります。

 

時は少し遡る。

 

これは蘭丸との戦いが終わり、九十郎達がオーディンとの戦いの準備に奔走していた頃の事……テンポが悪くなるため省略された出来事である。

 

「お前が何も言わずにいなくなって、剣丞が心配してたんだよ。 お前の妹も。

 俺の所に顔を出して、探しているから見つけたら教えてほしいって頼んできたよ。

 あんな事があった後でも、あいつらは愛想を尽かしていねぇし、心配もしてんだ。

 悪い事は言わねぇから、一回は剣丞の所に顔を出しとけ」

 

基本考え足らずな九十郎にしては珍しく慎重に、珍しく常識的に声をかけていた。

だが烏はその言葉を聞いて、こう思った……『そんな事できない、できる訳が無い』と。

 

「……くっ!」

 

烏は急に立ち上がると、そのままどこかへ駆け去っていった。

ボロボロの身体を押して、ボロボロの心を抱えて、何の宛ても無く立ち去った。

 

「張り倒してでも剣丞のもとに連れてくのは、流石になぁ……やめよう、絵面が悪すぎる。

 剣丞を呼ぶのも同じ結果だろうし、

 だからって放置したらどうなるか本気で分からん。 何かあったら後味が悪すぎる」

 

九十郎はそんな烏の様子を見て、はぁ~っと深いため息をつき……

 

「美空か、ちょっと一二三に話があるんだが……いない? 分かった、他を当たる」

 

片眼鏡型のデバイスを通信モードに切り替えて、美空のデバイスに声を送る。

 

「……光璃、俺だ。 その辺に一二三はいるか?

 ああそうか、じゃあちょっと代わってくれ」

 

デバイスを手早く操作し、今度は光璃のデバイスと通信を繋いだ。

 

「一二三、体調はどうだ? ああ、そりゃ良かった。

 いや、多少は心配してたよ、多少はな。

 まあ、そんな事はどうでも良いんだ、ちょっと用が……

 うるさいな、お前がどこでくたばろうが野垂れ死にしようがぶっちゃけ興味ねぇよ。

 それより一二三、忍者は連れて来てるよな?

 ああ? そんな事はそんな事だよ、お前の具合なんて正直どうでも良いんだよ、

 死んでなきゃ自力で復帰してくるだろお前、そういう奴だよ。

 忍者はいるのかいないのか? ハイかイイエでとっとと答えろよ。

 そうか、じゃあ悪いが1人貸してくれ」

 

九十郎は烏が立ち去った方向に視線をやる。

元々小柄で、歩幅が狭い上に、体力が落ちているから歩みは遅い筈だ。

今すぐ追いかければ、見つけ出すのは簡単な筈だ。

 

だから九十郎は……

 

「ああ、見張ってほしい奴がいる。 何と言うか、こう……嫌な予感がするんだよ」

 

九十郎はしばらく烏を見張る事にしたのだ。

割と他力本願的な方法で。

 

……

 

…………

 

………………

 

九十郎の嫌な予感が現実のものになるのに、半日もかからなかった。

ボロボロの身体を押して、ボロボロの心を抱えて、何の宛ても無く彷徨う烏は、ちょっと性質の悪い男に捕まってしまった。

 

「あぁっ! あ、あぁぁっ! や、あぁあぁっ!!」

 

誰かが打ち捨てたボロ小屋の中から、烏のくぐもった声が聞こえてくる。

 

「へ、へへっ……じっとしてろよ……」

 

下卑た笑みを浮かべながら、薄汚れた男が烏を押し倒し、組み伏せ、ワレメに指を這わせて愛撫をしていた。

 

「ひぃぅ! ふぁぁっ! あ、あぁっ! うあぁっ!」

 

指先がクリトリスを擦り、揉み解す度に、膣内をくにくにと刺激する度に、烏は成す術も無く喘ぎ声を漏らす。

 

どこの時代でも、どこの国でも、後先を考えないバカは一定数いるものだ。

例えば、牛丼屋で共用の紅ショウガを直食いするような、回転寿司屋で醤油差しに口をつけたりするような、そういう自分の行動が何をもたらすかを考えもせず、目先の楽しさを優先して行動に移す人間はいるものだ。

 

九十郎のような愚鈍な人物にすら一目で分かる程弱っていた烏が、そういう後先を考えない……しかも、女に飢えた男に見つかってしまったのは、不運だったとしか言いようがない。

 

「オラッ! もっと喘がせてやるよ!」

 

男は愛撫を続ける。

烏の喘ぎ声が徐々に、確実に大きく、激しくなっていく。

基本無口で、喋ったとしても超小声の烏にしては信じられない程に大きな喘ぎ声になっていた。

 

「んんっ! あ、んああぁっ! あ、だ、だめぇ……んんっ! んんぅうぅ!!」

 

烏は必死に声を出さないように歯を食いしばる。

しかし、下半身を蕩けさせる甘美な刺激に翻弄され、止めどなく喘ぎ声が出続ける。

 

「うぅ……ひぅ、ひっくぅっ……」

 

烏は泣いていた。

悲しくて、悔しくて涙を零していた。

 

「(こんなに悲しいのに、こんなに悔しいのに、こんなに辛いのに……

 き、気持ち良い……気持ち良いよ……)」

 

夫以外の男に……愛する新田剣丞以外の男に組み伏せられる屈辱、肌を晒す屈辱、アソコから漏れ出る愛液の水音を聞かれる屈辱、メスの喘ぎを聞かれる屈辱……頭が怒りの悲しみで一杯になっているというのに、自身の身体は快楽と快感で染まっていく。

 

「あぁっ! あ、ああ、あぁああぁっ!! ひ。ひぐっ! ううあぁっ!!」

 

狂ったように喘ぎ声が漏れる。

烏は自分が絶頂しそうになっているのが分かった。

 

それが分かっていながら、烏は目の前の男を跳ねのける事ができなかった。

 

剣丞に愛されていなかったという事実を突きつけられて心が弱っていたのもある、空腹や疲労で身体が弱っていたのもある、だがそれ以上に、心と身体が快楽に屈してしまっていた。

舌と唇で乳首を弄ばれ、指で膣内を蹂躙され、烏は抗いがたい快楽の渦に叩き込まれていった。

 

そして……

 

「ひぅっ! だ、だめ……んああぁぁあうあぁっ!!」

 

両脚がピンと伸び、全身が痙攣し、頬は紅潮し、愛液は噴水のように噴き出し、烏は絶頂した。

耐えられなかった、抗えなかった、メスの本能に、快楽に負けてしまった。

 

「あ……あぅ……」

 

自身のお〇んこから放尿をしたかのように多量の愛液が漏れ出るのを呆然と見つめながら、烏は自分の心が壊されていくのを感じた。

 

「へ、へへっ……じゃあそろそろ本番と行こうか」

 

男が笑みを浮かべながら下履きを脱ぎ捨て、男根を露出させる。

何日も、何十日も洗っていない垢塗れの男根は、鼻が曲がりそうな程に醜悪な臭いを漂わせる。

 

「あ……うっ……やぁ……」

 

烏が身を強張らせるも、男は両足を掴み、強引に股を開かせる。

相手は乞食のように瘦せこけた男だ。

いくら鉄砲以外に取り柄が無いとはいえ、普段の烏であればいくらでも反撃できる相手である。

 

愛する夫以外に許した事の無いアソコを、純潔を守ろうと全身に力を籠めたその瞬間……

 

「(ちがう……私はもう、二度も……二度も……)」

 

その瞬間、思い出してしまった。

自分は新田剣丞以外の男に抱かれたのだと。

自ら股を開き、男根を受け入れ、淫らな声を聞かせ、イカされ、全裸で土下座をしながら貴方の妻になるのだと誓っていたのだと。

 

「あ……あぁ……」

 

涙がぽろぽろと零れ落ちる。

悔しい、悲しい、酷い、辛い……色々な感情がごちゃ混ぜになって、どうしようもない虚無感だけが残る。

 

全身の力が抜けていく。

自らを強姦しようとする男に立ち向かう心が消えていく。

 

「(もう、良い……もう全部……全部がどうでも良い……)」

 

張り詰めた糸がぷつんと切れて、心臓がガラス細工のようにバラバラに砕けていくような気がした。

抵抗しようとする心がへし折れた瞬間、全身から力が抜けていった。

 

「(どうせ……どうせ剣丞様は私を愛してはくれない……)」

 

力が抜けていく。

男がギンギンに隆起した男根を烏のお〇んこに宛がった。

 

「(九十郎も私を救ってはくれなかった……私を必要としてくれなかった……)」

 

亀頭が陰唇に触れる。

ほんの僅かに腰を突き出せば、挿入されてしまうというのに、烏は抵抗する事ができなかった。

 

「(どうせ誰も……誰も私を愛してはくれない……誰も……もう何も残っていない……)」

 

そしてついに、挿入が始まる。

 

ぐちゅり、ぐちゅりという水音と共に、亀頭が烏の膣内に侵入していく。

絶頂して、ぐちゅぐちゅに蕩けたワレメが、男のモノを容易く咥え込んでいく……

 

「あ……あ、あぁ……」

 

自分のナカを蹂躙されているのが分かった。

膣肉が押し広げられ、異物が侵入してくるのが分かった。

そして同時に子宮が男根を求めて下がり、子宮口が孕ませ汁を求めて大きく広がっていくのも分かった。

 

「(駄目になって……屈してしまう……)」

 

膣肉が目の前の男にモノの形を覚えてしまう。

余りの快楽に頭が駄目になり、二度と剣丞の前に立てなくなってしまう。

子宮がこの男に屈してしまう、魂が穢されてしまう……烏は言いようの無い恐怖感に震えた。

 

だけど、それでも烏は抵抗できなかった。

抵抗する力が入らなかった、抵抗する心が目覚めなかった。

 

「や……や、ああっ……」

 

ぐちゅり、ぐちゅりと男根が膣内を進む。

ゆっくりと、ゆっくりと、嬲り殺しにするかのように時間をかけて膣内を進む。

 

男根が最奥に辿り着いたら……亀頭の先端が子宮口にくっついたら、もう本当に終わりだと、烏は思った。

自分の一番深い場所まで穢されたら、自分の女の最奥部が屈してしまったら、もう本当に自分の心は屈してしまうと、烏は思った。

 

なけなしの力で、なけなしの心で抵抗を試みたが、赤子の手を捻るよりも容易く制圧される。

何の抵抗もできずに男根は烏の膣内を進み、子宮口までの距離がどんどん短くなっていく。

 

「あ……ああぁ……」

 

あと10cm……あと5cm……

 

「剣丞様ぁ……」

 

あと3cm……あと1cm……そしてついに、男根は子宮口に触れ……

 

 

 

 

 

「やめろおおおぉぉぉーーーっ!!」

 

 

 

 

 

もう駄目かと思ったその瞬間、ボロ小屋の戸を蹴破って誰かが雪崩れ込んで来た。

新田剣丞が……ほんの数日前に『大嫌い』と拒絶したはずの夫が、烏を助けるために飛び込んで来た。

 

「なっ!? なんだてめぇ!? 邪魔すんじゃねぇっ!!」

 

「五月蠅い! その娘は俺の嫁だ! 手を出すんじゃないっ!!」

 

そこから怒鳴り合う音、揉み合う音、殴り合う音がボロ小屋に響き渡る。

数秒か、数十秒か、あるいは数分か……そう長くはない時間が過ぎると、烏を犯そうとしていた小汚い男が悲鳴と共に逃げ去っていった。

 

「ごめん、ごめん、本当にごめん……俺が間違ってた、俺が悪かった。

 嫌いだって言われて当然の事をしてしまった。 烏の気持ちを少しも考えていなかった」

 

気がつけば、烏は剣丞に力一杯抱きしめられていた。

垢だらけの小汚い男とは全然違う、剣丞の匂いがした、剣丞の体温があった。

 

剣丞は涙を流しながら、何度も何度も烏に謝罪の言葉を繰り返していた。

 

「な……何で……? どうして……?」

 

これは夢か、幻なのかと、烏は思った。

あまりに辛い現実から目を背けるために、都合の良い妄想をしているのではないかと本気で疑った。

だけど剣丞の匂いが、体温が、感触が、声が……五感を通じて感じる新田剣丞の存在が、妄想の二文字を明確に否定する。

 

「ごめん烏、俺が間違っていた。 何度謝っても謝り足りない。

 例え正しくても、例え人の命がかかっていても……

 それでも、それでも捨てちゃいけないものがあった、

 それでも手放しちゃいけないものがあった、俺はそれに気づかなかった、

 俺が馬鹿だった、俺が間違っていたんだ」

 

剣丞が何度も何度も謝罪を繰り返す。

 

「捨ててはいけない……もの……?」

 

「俺を愛してくれる人達、俺が愛した人達、誑し免状とかじゃない、

 心と心で決めた俺のお嫁さん……愛する人を守る事だ!

 それだけは何があっても……

 たとえ人が死ぬ事になっても絶対に捨てちゃいけなかったんだよ!」

 

「あ……あぁ……」

 

烏の目から涙が零れた。

それは悲しみの涙ではない、絶望の涙でも無い、喜びの涙であった。

 

新田剣丞が自分を愛してくれていた。

鉄砲の扱いくらいしか取り柄の無い、口下手で、貧相で、駄目な自分を愛してくれていた。

ただそれだけが、たったそれだけの事が、この世の何よりも大きな喜びとなって烏を優しく包み込んだ。

 

だからこそ……

 

「剣丞様……」

 

だからこそ烏は、意を決して剣丞にある事を聞こうと決意した。

烏にしては大きく、強く、はっきりとした声量で剣丞の名を呼んだ。

 

「うん、どうしたんだい?」

 

九十郎ならば確実に聞き逃すであろうか細い声を、剣丞はしっかりと聞いていた。

 

「……私を愛してくれますか?」

 

烏はそう尋ねた。

 

「ああ、愛している。 心の底から愛している」

 

剣丞は迷い無くそう答えた。

 

「私は……私の事を、何番目に愛していますか?」

 

直後、烏は剣丞隊のタブー中のタブーに触れた。

剣丞隊の誰もが気にして、誰もが空気を読んで聞かなかった事を聞いた。

 

「それ……は……」

 

剣丞も、この質問については即答できなかった。

 

『全員を等しく愛している』と答えるべきだと思った。

『愛を比べるなんていけない事だ』と答えるべきだと思った。

『あらゆる人間は平等に価値があり、あらゆる人間は平等に扱うべきだ』と答えるのが正しい事だと思った。

 

だけど……

 

「(正しいだけの答えじゃ駄目だ。 それは誤魔化しているだけだ。

 烏に向き合うのを放棄しているのと同じ事だ。

 正しくなくても、間違っていても……それでも捨てちゃいけない事はあるんだ)」

 

新田剣丞はたっぷり数秒、あーでもないこーでもないと考え込み……

 

「上から……そうだな、上から10番目くらいに……愛してる……かな……?」

 

微妙に声を震わせながら、微妙に顔を引きつりながら、剣丞はそう答えた。

その言葉は世間一般の常識に照らせばクズにも程がある発言であった。

具体的に個人名を並べて数えた訳でも無い。

剣丞にはだれかへ向ける愛情の多い少ないを測る事はできない、どうしてもできない。

だからその言葉は、烏に向けた嘘に過ぎない。

 

だけど烏はその言葉を聞いた瞬間、パッと明るくなり、剣丞に力一杯抱きつくのだ。

 

「ありがとう、私を10番目に愛してくれて……」

 

烏は耳元でそう囁く。

剣丞の言葉は正しくない、間違った言葉ではあったが、それでも烏にとって一抹の救いになったのだ。

 

10番目にというのは、剣丞が嫁にした女性の人数から考えると、ぶっちゃけ下から数えた方が早い数字であるが、それでも烏にとっては救いの言葉に他ならなかった。

 

……

 

…………

 

………………

 

剣丞が陵辱されつつあった烏を助け出したのと時を同じくして、九十郎は詩乃を背負って歩いていた。

 

烏の監視をさせていた忍者から危険を知らせる信号が送られ、慌てて信号が出た場所まで走っていたところ、同じく危険を知らされて走り……体力不足から途中でへばり、行き倒れていた詩乃を拾って今に至る。

 

詩乃は九十郎の背中に身体を預け、全身を汗でぐっしょりと濡らし、ぜぇはぁと息を荒くしていた。

 

「……剣丞様は間に合ったでしょうか」

 

詩乃が不安そうに呟いた。

 

「間に合っただろ、あいつは主人公だから。

 なんと言うかこう……運命力的なのでなんとかしてるさ」

 

九十郎が無意味に、無根拠に太鼓判を押す。

烏が不埒者に強姦されそうになっていると知らされた時は物凄い慌てて走っていたが、剣丞が先に向かったと聞いた今は安心して、ゆっくりと足を進めていた。

いっそUターンして帰りたいくらいの心境である。

 

なお、当の剣丞は烏の心がヘシ折れる瞬間にはギリギリ間に合っているものの、先っちょまで挿入されているという意味では間に合っていない。

新田剣丞の運命力も万能かつ完全ではないのだ。

 

「あの2人は元に戻れるでしょうか……烏さんの心を、取り戻せるでしょうか」

 

詩乃が不安そうに呟いた。

 

「大丈夫だ、元々愛し合っていた2人なんだからな」

 

九十郎が無意味に、無根拠に太鼓判を押す。

 

「愛し合って……いたのでしょうか……剣丞様は本当に他人を愛しているのでしょうか。

 私も、烏さんも、顔も名前も知らない誰かと同程度に……

 それこそ、道端の石と同じに思われているのではないでしょうか」

 

「考えすぎだ、心配すんな。 ちゃんと愛されてるよ」

 

九十郎が無意味に、無根拠に太鼓判を押す。

 

九十郎はのそのそと、微妙にやる気が無さそうに歩く。

心地良い夜風が、全力疾走で熱くなった詩乃の身体を優しく冷やす。

 

夜の闇が、まるで2人の密会を、逢引きを……不貞の瞬間を隠しているかのようだと、詩乃は思った。

 

「……また、私は妙な事を」

 

「ん、何か言ったか?」

 

「いえ、すみません聞かなかった事にしてください」

 

頭の中で考えていた事が漏れるなんて、これでは雫を笑えないと深く反省する。

 

丁度その頃、旧武田陣営の動きを抑えるべく別行動中の雫が『心外!!』とでも言いたげな顔になった。

 

「……また、助けていただいたのですね」

 

「気にすんなよ、光璃の奴は昔よくブッ倒れてな。

 アイツ病弱なのに無駄に行動力があるから、体力の限界超えてはしゃぎ過ぎるんだよ。

 こうやっておんぶして家まで連れて帰るのはいつも俺の役目だった」

 

「いえ、そうではなく……烏さんの居場所と、襲われているとの知らせを。

 あれは貴方の命によるものだと聞いています」

 

九十郎はバツが悪そうに頬をかく。

 

「あ~……あれな。 実は昨日の朝、烏が俺のとこに来てたんだ。

 見るからに調子悪そうで、嫌な予感がしたからしばらく監視させたんだが……

 すまん、あの時もうちょっと引き留めときゃ良かった。

 それか無理矢理にでも剣丞に引き合わせて……そうすりゃこんな……」

 

九十郎は居心地が悪くなり、歩みを少し早めた。

この話題を続けられるより、とっとと剣丞に追いついて、詩乃を引き渡して帰ってしまおうと思った。

 

そんな九十郎を、詩乃を後ろから抱き寄せるように力を籠めた。

 

「貴方のおかげで、最悪の事態は避けられました。 何度感謝しても足りません」

 

「いや……だが……先に行った剣丞も間に合ってるか分からんしな……」

 

「何を仰ります、大丈夫だと断じたのは貴方でしょうに」

 

「まあ……まあ、そうなんだがな……」

 

冷静になって考えると、先の発言が無根拠で、無責任なもののように思えた。

いや実際問題無根拠で、無責任である。

 

九十郎は自らのクズ発言を珍しく自覚し、珍しく少し反省した。

 

「私は貴方に何を返せるでしょうか。

 何度も救っていただいた恩義をどうやって返せば良いのでしょうか」

 

「おっぱい揉ませてくれるとかどうだ?」

 

「……揉みますか?」

 

「すまん、忘れてくれ」

 

九十郎は若干残念そうに冗談だった事にした。

現代ニホンの価値観では……いや戦国時代でも酷いセクハラ発言である。

 

だから貴様は九十郎なのだ。

 

そして九十郎は先のセクハラをもみ消すべく、足りない頭を無駄に捻って何か別の案を考える。

バカの考え休むに似たりとは、まさしく九十郎の為にあるような言葉であろう。

 

そして……

 

「……剣丞の事、頼むな」

 

散々考えた挙句、九十郎の出した言葉がそれだった。

その言葉を聞いた瞬間、詩乃は何とも言えない複雑な表情になる。

 

「あいつは凄い奴だよ。 俺よりも強くて、俺よりも優しくて、俺よりも賢くて、

 俺よりも正しくて、ルックスもイケメンだ」

 

「るっくす……?」

 

「顔が整ってるって事な、言わせんなコンチクショウ」

 

基本ブサイクな九十郎が天から二物も三物も与えられて生まれた剣丞をやっかんだ。

顔がどうこうより、こういう九十郎の屑な性格こそが剣丞との最大の違いである。

 

だから貴様は九十郎なのだ。

 

「正しさは……正しさはあの人の美徳なのでしょう。 ですが……」

 

「まあ、今回はちょっとな、正しさが空回りしてたよな。

 俺も流石に許容できんから手向かったが……

 それでもな、やっぱ間違ってるよりは正しい方が良いに決まってる」

 

「しかし、正しさも過ぎれば毒になります。

 正しさが過ぎれば、人はついて行けなくなります。

 今回の事で、私はそれを思い知りました」

 

「だからさ、剣丞の傍にいてやってくれ。 あいつがまた同じ事をしないように……

 正しさが過ぎるって思ったら、何とか止めてくれ」

 

「何とかですか、それは随分と具体性の無い」

 

詩乃がくすくすと笑う。

 

「お前アレだろ、確か……竹中……ええっと……」

 

「竹中重治」

 

「そうそうシゲハルな。 何か超空忍者みてぇな名前だが、凄い軍師なんだろ?

 稲葉山場を16万人で襲撃して乗っ取ったっていう」

 

「それはただの城攻めですねぇ……」

 

どうやったら16人を16万人に間違えられるのだろうかと、詩乃は頭を抱えた。

そして同時に思い出す、かつて斎藤龍興を主君と仰ぎ、何度も何度も諫言を繰り返していた頃の事を。

 

不甲斐ない主だと思っていた。

自分が正しいと信じていた。

自分が正しいと思った事を次から次へと押し付けた。

お前は間違っていると断じ続けた。

自分は正しさを疑いもしなかった。

 

主君が……斎藤龍興がどう思うかを考えもせずに。

 

「ああ、そうか……私は……私もまた……」

 

そして詩乃は思った、自分もまた剣丞と同じ過ちを犯していたのだと。

そして詩乃は思った、かつての自分は何て恥ずかしい真似をしていたのだろうと。

 

そして詩乃は思った……偉そうな顔で剣丞に説教をする自分は、『だから貴方は歪なんです』と知ったような口を叩く自分は、厚顔無恥な自分は、なんて滑稽だったのだろうかと。

 

自然と瞳から涙が漏れる。

あまりの情けなさに、あまりの恥ずかしさに、かつての自分の至らなさに気付けない無能さに、涙が零れるのを止められなかった。

 

「おおいっ!? 何か首のあたりが生暖かいんだけど!? 何やってんのお前!?」

 

涙が首や背中に零れ落ちて、基本鈍感で鈍重な九十郎が慌てだす。

 

「す、すみません……思い出し泣きです……」

 

「思い出し泣き!? 何だそれ、思い出し笑いの泣きバージョン!?」

 

詩乃が咄嗟に誤魔化した。

言った本人も呆れるくらいに下手くそな誤魔化しだ。

普通の人間であれば何かあったのかと心配になる所だろうが、この男は『ま……まあ、あんたほどの実力者がそういうのなら……』とばかりに追及を止めてしまう。

 

だから貴様は九十郎なのだ……と、言いたいところだが、この時だけは珍しく九十郎の鈍感さ、愚鈍さが詩乃にとっての助けになった。

何度拭っても止まらない涙を、くしゃくしゃになっていく顔を見られたら、恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうだった。

 

「ああそうだ、お礼をしてくれるってんなら追加でもう一個頼んでも良いか?」

 

「は、はい……なんでも申し付けてください」

 

詩乃が涙を拭い、綻んでいた心を無理矢理正し、背筋を伸ばし……どう頑張ってもおんぶをされているのは変わらず、イマイチ締まらないのだが、できる範囲で傾聴の姿勢をとった。

 

「じゃあ伝言を頼む、剣丞にな」

 

「剣丞様に……ですか……? はい、どのような言付けでしょうか」

 

どうして自分で伝えないのだろうかと詩乃は思ったが、一先ず伝言の内容を聞く事にした。

 

 

 

 

 

「一回くらい駄目だった程度でめげるんじゃないぞって言っておいてくれ」

 

 

 

 

 

「え……」

 

その言葉が詩乃の耳に届いた瞬間、心が揺れた、心が震えた、魂が揺さぶられたかのように感じた。

 

『若輩者が出しゃばりおって……』

 

かつて詩乃に向けられた心無い言葉が脳裏に響く。

かつて斎藤龍興に仕えていた頃に、斎藤家の家臣から向けられた言葉だ。

 

『所詮書物で知っただけの知識を偉そうに講釈しおって、生意気な』

 

あのころ、詩乃は正義に燃えていた、理想に燃えていた。

より良い政治を行うために、他国からの侵略に備えるために、自分が正しいと思った事を何度も何度も主君に、重臣達に提案した。

反論があればその度に正論で叩きのめした、相手の不見識を、論理矛盾を抉り出し、面子を潰していった。

 

『あの小娘、また小難しい事を言い始めたぞ。 周りから疎まれているのが分からんのか』

 

そしてどんどん孤立していった。

主君は顔を見るのも嫌だ、声を聞くのも嫌だという態度を隠さなくなった。

重臣達もそんな主君の態度に倣い、自分の話を聞きこうともしなくなった。

 

詩乃は苦しかった、悲しかった、辛かった。

誰かに分かってほしいとより強い言葉を使うようになった、強引に論戦を挑み、容赦無く躊躇無く相手を論破するようになった。

その度に自分の周りから味方が減っていった。

 

そしてその結果……主君・斎藤龍興に殺されかけ、新田剣丞に助け出されたのだ。

 

「もう一度……もう一度言ってください……」

 

詩乃は思わず聞き返した。

九十郎の言葉はしっかりと耳に届き、胸に刻み込んだというのに、もう一度言ってほしいと懇願していた。

 

「一回くらい駄目だった程度でめげるんじゃないぞ。

 今回はやり方がアレだったから流石に手向かったけどな、

 やっぱ人が死なねぇ方が良いって考え方は正しい。

 本当は剣丞が正しくて、俺や美空が間違ってたんだと思う。

 だからな、剣丞が正しいと思ったのなら、俺が正しいって言い続けてほしい」

 

「正しいと……思ったのなら……」

 

「そりゃあ、毎回毎回その正しさが通るかは断言できねぇよ。

 俺達だって俺達なりに一生懸命考えて、

 正しく無くともそれなりの結果に繋がるように頑張ってるからな。

 正しいからって『はいそうですね』とは言えねぇ時はある。

 だけど……俺達だって、本当は正しい方に進みたいんだよ。 だから……」

 

「だから……」

 

「剣丞には、剣丞が正しいと思った事を俺達に訴え続けてほしい。

 それが俺の……俺の願いだ」

 

その言葉は、かつて斎藤龍興に仕えていた頃は一度も言われた事のない言葉だ。

その言葉は、かつて主君に疎まれ、家臣達から距離を置かれていた頃に、本当に本当に聞きたかった言葉だ。

 

その言葉は詩乃が心の奥底で、欲しくて欲しくてたまらなかった言葉だ。

 

「あ……ああ……あああっ!!」

 

喉の奥から嗚咽が漏れる。

詩乃の胸中から何とも表現し難いナニカがあふれ出す。

 

「(出会う順番が……出会う順番が違っていれば……)」

 

詩乃の良心が警鐘を鳴らす。

それは考えてはいけない事だと、剣丞も九十郎も蔑ろにする事だと訴える。

 

新田剣丞は素晴らしい主君だ。

斎藤龍興のように自分を疎む事も無く、遠ざける事も無く、自分の献策や忠言に耳を傾けてくれる。

 

新田剣丞は愛する夫だ。

斎藤九十郎よりも強く、優しく、賢くて、正しく、見た目も整っている。

 

だがしかし、だがしかし……

 

「何度でも、何度でも、お前の正しさを押し付けてくれば良い。 剣丞にそう伝えてくれ」

 

剣丞は詩乃が本当に欲しかった言葉を言わなかった。

『失敗してもめげるな』と『何度でもその正しさを押し付けてくれ』とは言わなかった。

そして今、九十郎は詩乃が本当に欲していた言葉を、心の底から欲しかった言葉をくれたのだ。

 

「(かつて楚の范増という軍師は、主君に裏切りを疑われて職を辞し、

 死の直前に仕えるべき主君を誤ったのは無念だと語った……)」

 

やめろ、考えるな、考えてはいけないと良心が叫ぶ。

その先は新田剣丞への裏切りだ、それは斎藤九十郎を侮辱する事だと訴える。

 

しかしそれでも、詩乃は……

 

「分かりました、必ず伝えます。 そしてこれからも、私は剣丞様を支えます。

 あの人の正しさが、今度こそ世のため、人のために活かせるように尽くします」

 

詩乃は……

 

「(それが貴方の……願いなのだから……)」

 

詩乃の心は、魂は、新田剣丞を裏切った。

 

……

 

…………

 

………………

 

それからしばしの時が流れる。

 

烏は再び剣丞隊に戻った。

烏は再び新田剣丞の嫁に戻った。

蘭丸との戦いが無かった事にはならないし、傷ついた心が癒えるまで相応の時間が必要になったが……剣丞と烏は再びやり直す事にした。

 

そしていくつかの並行異世界に生きる英雄・英傑の力を結集した戦いが……オーディンとの戦いが終わり、3ヶ月の時が流れていた。

 

「……またとんでもない夢を見てしまった」

 

その日、詩乃は大量の寝汗と共に飛び起きた。

布団や寝巻がぐっしょりと濡れていた。

特に股間の辺りが……汗ではなく、愛液でぐちゅぐちゅになっていた。

 

夢の中で詩乃は九十郎に抱かれていた。

愛する夫である新田剣丞ではなく、九十郎に抱かれる夢を見た。

 

所詮は夢の中の事、所詮は妄想に過ぎない事、浮気にはならないと自分に言い聞かせる。

心臓は今にも破裂するんじゃないかと思う程に速く、激しく脈打っていた。

 

「もし……もしも九十郎殿に強引に迫られたなら……私は……」

 

九十郎が自身を強引に押し倒す場面を想像した。

ただそれだけで、たったそれだけで心臓は早鐘のように鼓動して、体温が上昇して、子宮が疼いて止まらなくなった。

 

「あ……ん、あぁ……」

 

自身の秘所に指を這わせる。

自分でも信じられない程に濡れて、発情していた。

 

くちゅくちゅと、ぐちゅぐちゅと、際限なく濡れていく。

クリトリスを弄る指の動きもどんどん速くなり、九十郎に抱かれる妄想もどんどん過激になっていく。

 

「ふっ、ふっ、ふうぅっ! ん、んあぁっ! あぁっ!」

 

自慰行為を続けながら詩乃は思う。

もしも本当に九十郎に身体を求められたら、自分はどうなってしまうのだろうかと。

いや、身体を求められないにしても『君の力が必要なんだ』と手を引かれたら、自分はどうなってしまうのだろうかと。

 

自分は新田剣丞の妻なのだからと、自分は新田剣丞の軍師なのだからと、九十郎の手を振り払う事は出来るのだろうかと思った。

 

「い、くぅ……いくっ! イキますっ! ああぁぁぁああっ!!」

 

そして愛する夫である新田剣丞ではなく、斎藤九十郎に抱かれる妄想をしながら……詩乃はイッた。

 

「はぁ、はぁ……あぁ、もう……またこんな不健全な事を……」

 

ぐしょぐしょになった寝巻と布団を見ながら、詩乃は強烈な自己嫌悪に陥った。

こんな事は正しくない、健全ではない、あり得ない妄想だと思いつつも、また九十郎に抱かれる夢を見て、九十郎とのセックスを自慰のネタにした事を恥じた。

 

だけど……ほんの少し、ほんの僅かに、こうも考える……

 

「もしもあの方が……九十郎殿が、私の力を貸してほしいと願ったのなら……

 危険な旅に、冒険の旅に誘われたのなら……その時は、その時はきっと……」

 

……

 

…………

 

………………

 

「は……はわわぁっ!? な、何ですかぁっ!?」

 

「すまねぇ孔明ぇっ! 本気ですまねぇっ!

 いきなり巻き込んで悪いが、俺の主君と嫁が大ピンチなんだよっ!

 たぶん俺一人じゃどうする事もできねぇ、お前の知恵がどうしても必要なんだっ!

 だから頼む孔明、俺に力を貸してくれっ! 俺と一緒に戦国時代まで来てくれぇっ!」

 

一方その頃、当の斎藤九十郎は諸葛亮孔明の手を引いて、力を貸してほしいと手を引いて、半ば無理矢理危険な旅に、冒険の旅へと連れて行くのであった。

 

詩乃ではなく、雫でもなく、諸葛亮孔明に力を貸してほしいと懇願し、諸葛亮孔明の手を引いていた。

 

「……察するに、戦国時代の方で何かがありましたか」

 

1人その場に取り残された雫が、孔明と九十郎が走り去るのを呆然とした表情で見送っていた。

今すぐにでも追いかけたい気持ちはあったが、どんなに走っても九十郎のサイドカーに追いつける訳がないという冷静な軍師としての思考が邪魔をした。

 

「九十郎さんは居ても立っても居られずにポータルに向かって、

 途中で自分1人にどうにかできるか不安になって、

 知恵袋役として目についた朱里さんの手を掴んだ……のでしょうね、きっと……」

 

雫は深く深くため息をついた。

 

そして……

 

「……そこは私を選んでくださいよぉっ! 馬鹿ああぁぁーーっ!!」

 

そんな雫の叫びが、大江戸学園に虚しく響き渡った。

大江戸学園は今日も平和……全く平和ではないが、今日も平常運転である。

 

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