今日の更新でおまけを含め最後になります。
皆様、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
前話、おまけ11にはR-18描写がありませんので、通常版に投稿しています。
おまけ11URL「https://syosetu.org/novel/105831/128.html」
諸葛孔明は……朱里は夢を見た。
昔の夢を見ていた。
心の底から敬愛する主君で、一人の男性としても愛している人物……北郷一刀に想いを告げる夢だった。
「貴方を愛しています。 主君としてだけではありません、一人の男として愛しています。
貴方の妻になりたい、貴方と閨を共にしたい、貴方と添い遂げたい……
そう願っています」
何度も何度も同じ夢を見た。
何度も何度も思い返した。
何度も何度も何度も何度も……孔明はこの悪夢を見ていた。
「ありがとう、凄く嬉しいよ。 だけどすまない、俺には朱里の想いには答えられない。
俺にはもう、心に決めた女性がいるから」
彼女が愛した唯一無二の男性、北郷一刀の視線の先に一人の女性がいた。
建物の影に隠れながら、静かに様子を伺っているのが見えた。
北郷一刀が愛した、たった一人の女がいた。
大勢の……本当に本当に大勢の英雄・英傑達から愛された北郷一刀が選んだ、たった一人がそこにいた。
北郷一刀に選ばれる幸運に恵まれた……いや違う、周囲を裏切り、卑怯で卑劣な手段で強引に一刀を奪い去った女がそこにいた。
その時、朱里の顔は……怒りと嫉妬で醜く歪んでしまっていた。
目の前に心から愛する男性がいたというのに、怒りと嫉妬の表情を隠せなかった。
それが朱里にとって……孔明にとって何よりも強烈な悪夢であった。
……
…………
………………
「はぅわっ!? あ、あんうぅっ!?」
全身に高圧電流が迸ったかのような強烈すぎる快感に、孔明がたたき起こされる。
気絶して、悪夢を見ていたのだと気がついた。
それは孔明にとってあり得ない程の油断、あり得ない程の迂闊、あり得ない程の失態だった。
フランシス・ドレイクの船、ゴールデン・ハインド号の船員の1人に悪い奴がいて、孔明の食事に媚薬を混ぜた。
普段の孔明ならば即座にその船員の挙動不審を見抜き、敵を排除する策を思いつくだろう。
しかし、孔明にとって悪条件がいくつもいくつも重なって、孔明の洞察力、判断力を鈍らせていた。
1つ、言葉が通じなかった。
九十郎以外の全員が英語で話しをして、孔明は身振り手振りで周囲とコミュニケーションを取らざるを得なかった。
後漢末期、赤壁の戦いが始まろうとしていた頃に、たった1人で孫呉の重臣達を説き伏せ、劉備軍との同盟を組ませた経験はあるが、その時は言語学的な意味で話が通じない者はいなかった。
言葉が通じるのと通じないのとでは、得られる情報の量も質も桁違いだった。
2つ、九十郎が不在だった。
ゴールデン・ハインド号には佐渡で採れた砂金を筆頭に、刀剣、茶器、美術品と言った日ノ本でしか手に入らない物品を多数積み込まれていた。
これらの品々は孔明達が黄金の国ジパングから来た外交使節である事の証明として、イングランド王室内部への浸透のための実弾として使用するつもりであり、船員達に盗まれたら非常に拙い事になる。
そのため、九十郎は1日の殆どを積み荷の監視ができる場所で過ごしていて、孔明と別行動の時が結構あった。
3つ、孔明達が未開の蛮人と侮られていた。
普通に考えて、よその国の外交使節に媚薬を盛り、強姦なんてしようものなら国際問題化まっしぐらである。
しかし、学の無い一船員にとって、孔明や九十郎は言葉すら通じない未開の国の蛮人、イエローモンキーに過ぎなかった。
こっそり性欲処理に使っても大して問題にはならないだろうと高が括られていた。
そしてそんな船員達の空気感を、孔明は気づけずにいた。
常識で考えて外交官の食事に毒は盛らないだろうと油断していた。
4つ、孔明は大航海時代の船舶事情を知らなかった。
いや、知ってはいたが体感はしていなかったと言うのが正しい。
大航海時代の船舶が不衛生の塊で、そこら中から酷い腐臭がする事、食事はカビてウジの湧いた乾パンをお湯でふやかした物で飲み物は全部アルコール、英国海軍は常に人手不足で酒場等で普通に食事をしていた若者を無理矢理誘拐して水夫にするような場合がザラにあった事を知っていた。
知ってはいたが、どこか甘く見ていた。
悪い男が使った媚薬は、現代ニホンでは薬機法や麻薬取締法で規制される程に強力だったが、臭いも味も強いので、普通の環境であれば口にする前に気づかれる。
しかし、大航海時代の船舶の酷い悪臭にも、大航海時代の不味すぎる食事にも慣れておらず、水分補給用のアルコールで少し酔ってもいた孔明は、媚薬の臭いにも味にも気づけなかったのだ。
あるいは後漢末期に生きていた頃の彼女であれば、船舶の腐臭と悪臭、クソ不味い食事、水分補給用のアルコール飲料に調子を崩される事は無かったかもしれない。
その意味では、現代日本での清潔かつ利便性の高い生活、美味な食事に慣れてしまった事もまた孔明にとっての悪条件になっていた。
ここまで長々と説明したが結論は一つ。
孔明は悪い船員に媚薬を盛られた……それも途方も無く強烈やヤツをだ。
「ひ、あぁっ! 頭ぁ……し、痺れてぇ……ふ、ふあぁぁっ! はぁあ、あううぅっ!!」
薄汚い船員の指が孔明の秘所を愛撫する。
ビンビンに隆起したクリに触れられると、股間が爆発したかと思う程の快楽に襲われる。
孔明はその余りの快感に何度も何度も絶頂し、何度も何度も気絶した。
気絶する度に、強烈すぎる快感にたたき起こされ、また絶頂させられた。
「んぉお! おぉっうぅ! い、イクゥ! イッちゃぅ! んんんあぁぁあっ!!」
ビシャッ! ビシャアァッ!! とワレメから潮のように愛液が噴き出る。
全身の水分という水分が全て愛液になって噴き出しているようだった。
腐臭、悪臭で一杯だった船室は、今では孔明の汗と愛液と涎の臭いで上書きされていた。
「あ、やぁ……や、らぁ……」
孔明は数十回とも数百回とも思える強制絶頂の連続に力尽き、全身を脱力させ、だらしなく涎を垂らし、カエルの死骸のように両足を広げて床に横たわる。
いかに後漢末期の英雄・英傑といえど、いかに稀代の名軍師といえど、身体は普通の人間だ。
現代法では即規制されるような麻薬物質を含んだ強烈な媚薬を飲んでしまえば、何の抵抗もできないただのメスへと成り下がる。
「へ、へへへ……そろそろコイツをブチ込んでやろうかな……(英語)」
男がズボンを脱ぎ捨て、男根を露出させた。
垢まみれで、酷い悪臭がする、衛生観念のカケラも持ち合わせていなさそうな醜い男根が孔明のお〇んこに近づいてくる。
ゲスな笑みを浮かべた男が近づいてくる。
しかし、孔明は全身が脱力しきっていて、身を捩る程度の抵抗すらできなかった。
「ひ、うぅ……や、めぇ……あ、あぁっ! やあぁっ!! は、入ってくるぅ……」
醜く汚い男根がぴたりと孔明のお〇んこにくっついた。
ずぶり、ずぶりと膣内を蹂躙されていく。
「(や、だ……嫌だ! 逃げなきゃ……あ、あぁ……)」
孔明の目に涙が滲む。
孔明は処女だった。
自分のハジメテは北郷一刀に捧げるのだ心に決めていた。
それがこんな醜く、汚らしく、食事に媚薬を盛って手籠めにしようとするような卑劣な男に奪われるのかと思うと、怖気と吐き気がした。
だがしかし、媚薬によって全身を蕩かせる快楽と多幸感に包まれ、孔明の心から抵抗する力を奪っている。
ほんの数cm膣内を肉棒が押し広げただけで、クリや肉ヒダをほんの僅かに擦られただけで、媚薬によって敏感になった秘所から津波のように大きな快楽が襲い掛かり、孔明の心を踏み砕いていった。
「い、やぁ……嫌なのに……やなのに、ほしい……」
このまま男根を膣奥にブチ込まれたい。
このまま処女膜を破り、子宮をガシガシと衝いてほしい。
そんな感情が孔明の忌避感、抵抗力を上書きしていく。
そしてついに、垢まみれの醜悪なち〇こが、孔明の処女膜を破り、最奥へと到達しようとした、その時……
「孔明ええぇぇーーっ!!」
ドタドタと大きな足音、日本語で孔明の名を呼ぶ男の叫び……斎藤九十郎がその場に駆け付けたのだ。
そして全力疾走の勢いを乗せ、バッファローマンのような体格から繰り出されるヤクザキックによって孔明を犯す船員を跳ね飛ばした。
……そこから先の事は、孔明は良く覚えていない。
覚えている事と言えば、九十郎が英語で怒鳴りまくっていた事。
騒ぎを聞きつけて集まって来た船員達との殴り合いになっていた事。
そして額から血を流し、顔や腕に青痣をつけ、大きなタンコブまで作った九十郎が、大きくてゴツゴツした腕で孔明の肩を抱き起してこう言ったのだ……
「悪さをした連中は全員ブチのめしてきた。 大丈夫だったか、孔明?」
孔明の小さな手と、九十郎の硬く大きな手が重なった。
廃ビルを爆破した時と同じように、硬くて、ゴツゴツしていて、妙な安心感を覚える手だった。
この時、孔明は思った……ああ、この人は私の為に本気で怒って、本気で戦ってくれたのだと。
そう思った直後から、孔明の記憶が飛ぶ。
安心感から気絶してしまったのかもしれない。
媚薬の影響で再び意識が朦朧としたのかもしれない。
あるいは……中途半端にお預けをくらった事で溜まった性欲が限界を超え、正気を喪って九十郎を押し倒していたのかもしれない。
「ふぁぁあっ! あ、あぁっ! 気持ち良いっ! 気持ち良いぃっ!! んぁぁあっ!」
再び孔明が意識を取り戻した時、彼女は九十郎の上に覆いかぶさり、騎乗位セックスをしていた。
まるで兎のように男の上で飛び跳ねて、ぐっちゅぐっちゅと淫らな水音を響かせて、発狂してしまいそうな程の強烈な快楽に酔いしれていた。
「あぁっ! ふあぁぁっ! はぅ、ああっぁあっ!」
孔明がひたすらに腰を振る。
処女膜はすでに破れ散り、床に血と愛液が飛び散っていた。
破瓜の痛みはあったのかもしれないが、その何十倍、何百倍もの快感がそれを忘れさせていた。
まるで何十日も飢え、何十日も乾いていた中で甘美で瑞々しい果実を頬張ったかのように、孔明の身体は悦び震えていた。
「はぁ、ああぁっ! ん、んんぅうっ! や、やぁああっ!!」
喘ぐ、喘ぐ、普段の慎みも忘れて喘ぎまくる。
子宮を衝かれる度に孔明は絶頂し、膣内から男根が引く度に身体の芯を貫くような切なさを覚えた。
どうしてこうなったのか、孔明は覚えていないし、九十郎は黙して語らない。
孔明の全裸に九十郎が欲情し、押し倒したのかもしれない。
逆に孔明が燻る性欲に負け、九十郎のち〇こを求めたのかもしれない。
分かっている事はたった一つ、この日、この時、孔明は九十郎と一度目のセックスをしたという事だけだ。
「こ、孔明……これ以上は……う、ああぁぁっ!」
「ふぅ、あぁぁあぁっ!!」
そして今度は九十郎がイッた。
孔明の子宮に……ではなく、いつの間にか九十郎のち〇こに装着されていたコンドームに、多量の精液が放出された。
過去に一二三がコンドームに穴を開けた事があり(おまけ9)、その日から九十郎はコンドームを何枚か持ち歩くようになっていたのだ。
「はぁ……はぁ……あ、危ねぇ、危ねぇ。 ゴムがあったおかげで助かった。
いや、あんまり良くねぇよな、後で孔明に土下座しなきゃだよなコレ。
くそう、土下座何回で許してくれるかな……」
ゆっくりと膣内からゴム付きち〇こが引き抜かれる。
何回も、何十回も子宮を衝かれ、イカされまくったおかげか、大量に流れる汗や愛液と共に媚薬が排出されたのか、身体の奥底から疼く性欲は納まりつつあった。
「あ、あぁ……わ、私……私、なんて事を……」
そしてようやく孔明は気づいた。
自分が九十郎とセックスをしていた事に、北郷一刀に捧げると誓ったハジメテを他の男に奪われた事に……九十郎が自身のモノにコンドームを付けてくれていた事に。
床や接合部には血が滴っていた。
自身の処女膜を誰が破ったのか……媚薬を盛り、無理矢理自分を手籠めにしようとした、垢まみれの汚いち〇この男だったか、自分のために本気で怒り、本気で戦い、抱く前にコンドームを付けていた九十郎だったのか、孔明には分からない。
だけども……
「(できる事なら、九十郎さんであってほしい……
なんて考えてしまうのは、ご主人さまへの裏切りになりますよね、きっと……)」
これが孔明と九十郎の一度目のセックスだった。
……
…………
………………
諸葛孔明は……朱里は夢を見た。
その日、朱里は魏国との戦争の準備のために、夜遅くまで書類仕事をしていた。
自国の数倍の国力を持つ国との戦争であるが故に、たった一回の戦術的敗北すら致命傷になりかねず、入念な情報収集と入念な下準備は欠かせない。
流石にそろそろ休まないと身体を壊してしまうかもと思い、自身の寝所へと歩いていた時……男と女がまぐわう生々しい音を聞いてしまった、男と女が愛を伝え合う声を聞いてしまった。
「ご主人……さま……?」
その音は敬愛する主君であり、1人の女として愛してもいた人物、北郷一刀の部屋から聞こえてきた。
聞き間違いでなければ……いいや、愛する人の声を聞き間違える筈はない、その声は確かに北郷一刀の声であった。
好きだ、愛していると自分以外の女に囁いているのを聞いてしまった。
「いや……嫌だ……何で、どうして……?」
敬愛する主君で、愛する男でもある北郷一刀に抱かれる女の顔を見た。
その顔もまた、朱里にとって見知った顔であった。
「焔耶さん……」
怒り、悲しみ、屈辱、絶望、そして強い強い殺意が朱里の心を醜く染め上げていった。
暗く冷たく、ヘドロのように心にへばりつく醜い嫉妬が、朱里の心をグチャグチャに掻き乱していった。
それが朱里にとって……諸葛孔明にとって何よりも強烈な悪夢であった。
……
…………
………………
その日、孔明はスペインとの戦争の準備のために、夜遅くまで陣頭指揮を執っていた。
無敵艦隊と謳われ、畏れられるスペイン海軍を火計でもって焼き尽くす作戦には緻密な下調べ、下準備が必要不可欠であり、孔明は泥のように疲れ切っていた。
泥のように疲れ切っていたが……その日は妙に寝つきが悪く、ベッドの中で尿意を催し、イングランド王室から宛がわれた宿舎の廊下を歩いていた。
「お手洗いは……確かこっちの……」
眠い目を擦りながら孔明が暗い廊下を歩いていく。
昼に脳を使い過ぎ、頭も重く感じていた。
そして九十郎の部屋の前を通りかかった時……ぞくりと背筋に悪寒が走り、瞬時に全身が凍り付いた。
孔明の脳裏に、真夜中に一刀と焔耶……いや、魏延のセックスを覗き見てしまった瞬間がフラッシュバックした。
あの日、あの時、孔明は何も見なかったと目を塞いだ。
あの日、あの時、孔明は何も聞こえなかったと耳を塞いだ。
愛する北郷一刀を掠め盗ろうとした女を糾弾せず、追い払おうともせず、自室へ逃げ帰り、布団に包まり、これは夢だ、何かの間違いだと自分に言い聞かせるだけであった。
あの日、あの時の行動を、孔明はずっと悔やんでいた。
あの日ああしていれば、あの時こうしていれば、もしかしたら一刀の心を射止めていたのは自分だったのかもしれないのにと。
もしかしたら一刀に選ばれしたった1人は、一刀に愛されるたった1人は、自分だったのかもしれないのにと何度も何度も悔やんでいた。
そして思う……あの日、あの時と同じように、九十郎の心も自分から離れてしまうのではないかと。
そして気づく……瞬間、孔明は背筋を凍らせた。
「あ……九十郎さんがいなくなったら……私、ひどい事になるのでは……」
かつて孔明は、劉備軍独力で曹操軍と戦う事は困難だと判断し、単身で呉の孫権と会談し、同盟を結ぶよう働きかけた事がある。
曹操との戦いを避けようとする孫権や重臣を時に利害を説き、時に情で訴え、時に面罵し、時に裏取引を持ちかけ、時に嫌味と皮肉をたっぷりぶつけ、寝る間も惜しんで方々を駆け回り、最終的には劉玄徳との同盟と対曹操戦への参加を決断させたのだ。
今回もその時と同じように、イングランド王室と大臣達に日ノ本への援軍を出させようと、大小様々な手段での説得を試みている。
時に面罵し、時に裏取引を持ちかけ、時にイギリス人ですらドン引きするような嫌味と皮肉をたっぷりとプレゼントし……少なくない人数の不興を買い、怒りや妬み、恨みの感情を向けられているという自覚があった。
そんな状況で孔明が無事でいられるのは、室町幕府及び諸大名連名から全権委任を受けた外交官であること……ではない。
少し前に船員から媚薬を盛られて犯されかけた事から分かるように、ぶっちゃけ今現在の日ノ本はイギリス人から侮られていて、幕府の威光は大して役に立っていない。
美空から渡された佐渡の砂金の方が数倍……いや、数十倍は交渉の役に立っていた。
まるで国交の無い東洋の未開の国にしてはあり得ない程に流暢な英語を扱い、腕っぷしも強く、孔明の身に危険が迫ればたとえ相手がフランシス・ドレイクだろうと怒鳴り込んでいく斎藤九十郎が、つきっきりでボディガードの役目をしているからこそ、孔明は遠い異国の地で無事でいられるのだ。
それに九十郎は孔明の食事の世話もしている。
ぶっちゃけ、大航海時代におけるイギリス料理はクソ不味く、一口食せば吐き気を催し、二口食せば汗と悪寒が止まらなくなるような代物だ。
九十郎が方々に手を尽くして多少はマシな食材を集め、現代ニホンの料理知識と料理技術をフル活用して普通に食べられる食事を用意しているのだが、それが無くなれば孔明は数日で死ぬかもしれない。
なにせフランシス・ドレイクが初めて九十郎の手料理を食した直後の台詞が『結婚してくれ、一生私のために味噌汁を作ってほしい(英語)』になるくらい、この時期のイギリス料理は酷すぎるのだ。
さらに孔明は英語が全く分からない。
言葉すら通じず、下準備も無くイギリスにやって来たので、九十郎の代わりを探す手段は無い。
日ノ本の砂金や美術品、特産物を多数持ち歩く、言葉が通じない自衛力皆無の小娘が異国の地に放り出されればどうなるか……
「はわっ……だ、駄目……どうしようもない。 帰れない、帰れなくなる……
ご主人さま、ご主人さまに会えなくなっちゃう……」
真っ暗な廊下で、孔明は1人震えていた。
九十郎が自分の元から離れたら詰みだ。
そこまでいかなくとも、心情的にイングランド王室の味方になるだけでも終わりだ。
ほんの少しイングランド王室に有利な通訳をされるだけでも、必要に応じて二枚舌、三枚舌を使い分ける孔明の言動をイングランド王室に伝えられるだけでも、孔明は破滅してしまうだろう。
そして今、九十郎はよりにもよってフランシス・ドレイクを抱いていた。
自分には理解できない英語で、何かを囁き合っていた。
ドレイクが艶やかな声で喘いでいた。
あれが強姦の類ではないのは英語が分からなくても理解できた。
そして……
「I love you」
フランシス・ドレイクがそう言った。
孔明にはその言葉が確かに聞こえた。
それはありきたりな、物凄くストレートな愛の言葉だ。
いくら英語に疎い孔明であっても、その言葉が何を意味するのか程度は理解できる。
そして思う、強く思う……あの日、あの時と同じように、九十郎の心も自分から離れてしまうのだろうと。
北郷一刀と同じように、自分を捨ててヤらせてくれる女の元へ去ってしまうのだろうと。
孔明は……
「嫌、嫌だ……帰りたい、帰りたいよぉ……
このままご主人さまと離れ離れなんて絶対に嫌だ……」
孔明は両目からぽろぽろと涙を零していた。
このまま1人ぼっちで死ぬのは嫌だ。
死ぬくらいならまだマシで、味方が誰1人いない状況で全てを奪われ、強姦され、売春宿にでも放り込まれても自分にはどうする事もできない。
だから孔明は……
「ごめんなさい、ごめんなさいご主人さま……
好きです、愛しています、私の心はいつまでも貴方だけを想います。
私の愛は貴方だけのものです。
だけど一度だけ……違う、もう一度だけこの身体を使うのを許してください」
だから孔明は……あの日、あの時できなかったことをやろうと決意した。
あの日、あの時できなかったことを。
あの日、あの時やるべきだったことを。
離れかけた心を繋ぎとめるために……彼の目の前で衣服を脱ぎ、抱いてほしいと懇願しようと決断した。
……
…………
………………
「貴方を愛しています。 一人の男として愛しています。
貴方の妻になりたい、貴方と閨を共にしたい、貴方と添い遂げたい……
そう願っています」
孔明は九十郎にそう告げた。
それはかつて孔明が北郷一刀に伝えた言葉と同じものだ。
告白の練習は何十回も、何百回も繰り返してきた。
演技力には自信があった。
「(ごめんなさいご主人さま、これ以外に方法が無いんです。
だから……だから……)」
しかし、孔明の心は愛する男性を裏切ろうとする罪悪感で一杯だった。
目尻に涙が浮かびそうになるのを堪えるのに必死だった。
目的のために嘘を言った経験は何十回も、何百回もあったが、ここまで強烈な罪悪感に苛まれたのは初めてだった。
心がミシミシと音を立ててひしゃげ、幾重もの亀裂が走るような痛みを感じた。
「あ~……孔明、何のつもりか知らんが、ギャグならやめてくれ、正直笑えねぇ」
しかし、九十郎はかなり迷惑そうな顔で孔明を拒絶する。
あの諸葛孔明が俺みたいな屑を好きになるなんてありえないと、聞く耳を持たない様子だった。
その言葉を聞いた瞬間、孔明は頭をガァン! と殴られたかのような気分になった。
九十郎に捨てられる、遠い異国の地で朽ち果てる、愛する人へ二度と会えなくなる、そんな恐怖で心が満たされる。
「これでも、信じられませんか……?」
落ち着け、落ち着けと自身に言い聞かせる。
震えてしまいそうな手足を気力で押さえつけ、歪みそうになる表情を必死に取り繕い、妖艶な笑みの仮面を作って衣服を脱ぐ。
一枚、また一枚と少女の柔肌が男の視線の前に露になる。
「(大丈夫、大丈夫、これは演技、これは私の本心じゃない。
薬を飲まされた時に一度見せた裸だ、もう一回増えた程度なんでもない、
ご主人さまへの裏切りにはならない……きっと、きっと……)」
羞恥に震えそうな心を殺す。
屈辱感に押しつぶされそうな心を殺す。
機械になれ、ロボットになれと必死に自分に言い聞かせながら、孔明は全ての衣服を脱ぎ捨てた。
一糸纏わぬ裸体を九十郎の前に晒したのだ。
媚薬でおかしくされたのではなく、暴力で剥ぎ取られたのでもなく、自らの意思で裸になった。
「え……いや、孔明……? 別にそんな真似しなくても俺はだな……」
そんな孔明の決意と覚悟を嘲笑うかのように、九十郎は分かっていない。
しかしそれでも、ちょっと顔を赤らめて視線が泳ぐ程度の効果はある様子だ。
女の身体を使った色仕掛け。
紀元前から何度も何度も使われた古臭い手あるが、長い歴史の中で幾度も登場するのは、単純ながら効果的であるが所以だ。
女を抱けば、情が湧く。
情が湧けば、何かと便宜を図りたくなる。
結局の所、魏延が北郷一刀に選ばれた理由はたった一つ、それだけの話だ。
北郷一刀の周りには綺羅星の如く魅力的な女達が集まっていて、魏延程度の顔や身体は掃いて捨てる程にいた。
女としての魅力がズバ抜けて高かったとは思わない。
思わない、決して思わない、断じて認めない、認めてはならない、認めたくない……
だから……
「お願いします、抱いてください。 私を愛してください。
大勢いる貴方のお嫁さんの1人として……
いいえ、一晩だけ、この一時だけでも構いませんから」
だから孔明は、あの日の、あの時の魏延と同じ事をしようと考えた。
戸惑う九十郎にしなだれかかり、肩と肩を触れさせ、指と指を絡め、吐息を吹きかけた。
いつか北郷一刀を……愛する人に使うかもしれないと、密かに練習していた手管を見せた。
「なぁ孔明、俺はお前の事が好きだ」
孔明は一瞬、ドキンとした。
まさか九十郎から好かれていたとは思っていなかったし、九十郎の言葉が嘘偽りのものとも思えなかった。
そんな九十郎に対して、好きでも無いのに股を開こうとしている自分が惨めに思えた。
「でもな、お前の事が好きだと思ってるからこそ、今の孔明が……」
そう続けようとしたその時……不意に言葉を詰まらせる。
「(いや、待てよ……孔明がそんな無意味な事をするか?)」
九十郎は気づいた、今の孔明が嘘を言っていると。
九十郎は思う、諸葛亮孔明が自分なんかを好きになる筈が無いと。
しかし九十郎は気づかない、孔明が自分程度の心を引き留めようとしている事に。
九十郎は気づかない、孔明が自分程度を高く評価していて、敵に回れば終わりだと考えている事に。
そして九十郎はこう考えた……
「(何か意図があって演技しているんだよな? そうなんだよな?
何の意味があるのかまでは分からねぇけど、何かがあって……それなら……)」
そして九十郎は決意する。
「分かった、孔明。 あえて真意は問わねぇ、今から孔明を抱く事にする」
何かは分からないが、何かがある筈だ。
九十郎はそう考え、孔明を抱くと決意する。
そこから先は早かった。
「は、はわわっ……」
九十郎が妙に手慣れた手つきで孔明を脱がす。
なんやかんやでセックス経験は結構ある方だ、服を脱がせる程度でまごまごしない。
しかし、セックス経験皆無……媚薬で頭がおかしくなった状態で一回あるだけの孔明は、驚き戸惑うばかりで何もできなかった。
「ま、待ってください! ちょっと待って! わ、私も何かしますから」
「良いんだよ、孔明は大人しく気持ち良くなってろ」
「そ、そんな訳にはいきません、い、今舐めますから……」
九十郎をベッドの上に座らせると、孔明は跪いて九十郎の男根に口づけをする。
「た、確かこう……ん……んぅ……ちゅぅ……」
恐る恐るといった様子で、孔明は九十郎のモノに奉仕する。
亀頭を舌で舐り、口に含んで軽く吸う。
後漢末期にいた頃から艶本で勉強し、張り子で練習していただけあり、やり方そのものは決して間違っていない。
しかし……
「(うぅ……ご主人さま、ご主人さまぁ……)」
孔明には好きな男が他にいる。
孔明は好きでも無い男に奉仕するという嫌悪感、屈辱感に必死に耐えながら九十郎のモノに奉仕していた。
「ん、ちゅっ、うむぅ……」
じゅっぷ、じゅっぷと唾液の音。
口をすぼめ、ひょっとこのように……というのはやや極端だが、それでも恥辱感を覚えるには十分過ぎる程の変顔を九十郎に晒しながら、必死に男に奉仕をする。
「(あーあ、こんな事する孔明なんて見たくなかったよ、正直……
何でこんな演技してるのか知らねぇけど、
孔明のためにもとっとと終わらせた方がよさそうだ)」
そんな孔明の必死の演技を、九十郎は少し冷めた表情で見つめていた。
嫌悪感を顔に出さないように、目の前の男を少しでも興奮させるようにと必死になり、自身の演技が九十郎に見破られている事に、孔明は気づいていなかった。
「……でも、本当に可愛いんだよな、孔明って」
九十郎は小さくそう呟いた。
「はわっ!?」
「あだぁっ!?」
突然耳に届いたその言葉に驚き、戸惑い、思わず九十郎の肉棒を軽く噛んでしまった。
「こ、孔明てめぇ……男の子のココは敏感なんだぞ……」
「はわわっ! ご、ごめんなさい! ごめんさーいっ!!」
バッファローマンのような体格の大男が股間を抑えながらプルプルと震える姿は実に滑稽である。
だから貴様は九十郎なのだ。
「(あーあ、涙目になって震える所も可愛いでやんの。
本当、一刀に惚れて無けりゃ口説いてたのになぁ……)」
涙目になる孔明を良し良しと撫でて、あんまり痛くないアピールをしてみる。
恐怖に震える孔明を落ち着かせるまで、結構かかった。
「(朱里って呼びてぇな……真名で呼んでも良いって前に言われてるから、
呼んでも多分怒られねぇし、殺されたりはしねぇだろうけど……)」
九十郎は秘めたる心境に想いを馳せる。
本当はずっと、孔明を真名で呼びたかった。
本当はずっと、孔明を朱里と呼びたかった。
だけど……
「(勘違いするなよ九十郎、何でこんな演技してるか分からんが、
孔明が惚れた男はあくまで一刀だ。
だから俺にはこいつを朱里と呼ぶ資格は無い)」
だけど九十郎は、どうしてもどうしても孔明を朱里と呼べなかった。
「(というか……ただの『朱里』って意識したら、本気で惚れそうで怖い)」
九十郎は孔明に抱いた想い……抱きそうになって、必死に胸の奥に押し込めている想いを、もう一度強く強く潰して消した。
「早く終わらせよう、もうなんだか辛くなってきた」
九十郎はそう言うと、朱里を……いや、孔明をベッドに押し倒した。
全裸の少女を横たわらせて、半勃起の肉棒をワレメに押し当て、素股の要領で腰を前後させる。
「は、あぁ! ん、んんぅ……んんぅっ!」
九十郎が腰を揺さぶる度に、孔明のクリトリスが擦られる。
孔明の小さな口から、小さく喘ぎ声が漏れ始める。
「はわ、き、気持ち良い……ん、あぁ! あ……」
孔明の顔が紅潮していく。
クリトリスが隆起する。
乳首が勃起する。
全身から発汗し、心臓がバクバクと高鳴り始めた。
「(うぅ……な、何で……薬を飲まされた訳でもないのに、ご主人さまじゃないのに……)」
孔明が全身を強張らせる。
何となく、特に理由も無く、九十郎の愛撫で気持ち良くなってしまう事が、北郷一刀への裏切りに繋がるような気がした。
罪悪感が孔明の胸を苛んでいるのだ。
「ひぅ、あぁあっ! あ、駄目、こんな……ん、んうっ!」
孔明が両手を握り締め、足をピンと張り、快楽に抵抗しようとする。
しかし、セックス経験は九十郎の方が遥かに上だ。
それに蘭丸戦の後、自身のエロ技術に不足を感じた九十郎は、密かにエロ・ツー本を買い集め、(主に一二三を実験台にして)エロ技術の研鑽を行っていた。
蘭丸戦の時の織田軍のように、食事と睡眠以外はひたすらセックス漬けになっていた訳では無いので、技術的にはまだまだ発展途上と言えるが、それでも今の孔明を喘がせ、イカせる程度の手腕は持っていた。
「や、やぁあっ! あ、あん、あんんぅ! はぁ……んんあぁぅっ!」
孔明の喘ぎ声が大きくなっていく。
股座はぐちゅぐちゅに濡れ、今にもイキそうになっていた。
そして九十郎の逸物も、いつしかフル勃起状態になっていた。
「そろそろ挿れるぞ、孔明」
いつの間にか、九十郎のモノは厚さ0.01mmのゴム膜に……いわゆるコンドームに包まれていた。
眼を白黒させながら快楽に押し流されそうになっていた孔明は、九十郎がいつそれを装着したのかも分からなかった。
「(挿れ……私のココにに入ってくる……)」
本当はやめてと叫びたかった。
好きな人がいるから、愛する人がいるから、挿入だけはやめてと叫びたかった。
だけど今、九十郎に嫌われれば、九十郎が敵に回れば、愛する人に二度と会えなくなる。
見知らぬ土地で朽ち果てる事になる。
綺麗に死ねればむしろ幸運だ、おそらく……想像しただけでも怖気が走る、惨めな末路を辿るだろう。
九十郎に股を開いていた方が数百倍も、数千倍もマシだったと思う位、酷い末路になるだろうと思った。
だから……
「は、はい。 どうぞ……好きなだけ、私のお〇こを堪能してください」
孔明は強張り、引き攣りそうになる表情を必死に押し殺し、全力で作り笑いをして、九十郎の目の前でワレメをくぱぁと広げた。
幸いと言って良いのか、膣内は十分すぎる程に濡れて、ほぐされ、男根の挿入を受け入れられる状態だった。
そしてもう一つ、幸いなことに……
「(ゴム……着けてくれてる……)」
九十郎は一度目のセックスと同じようにコンドームを装着していた。
これなら男のモノが直接触れることは無く、妊娠や性病の心配も殆ど無い。
気遣われている、気遣ってもらっている……その事実が、孔明の罪悪感と嫌悪感を軽くした。
だが一方で……
「あ、や……わ、私……今、何を……!?」
……孔明は自分の心の変化に驚き、戸惑い、顔を青褪めさせた。
一瞬、安堵してしまった自分が信じられなかった。
今から一刀以外の男に抱かれるというのに、ああ良かったと安心してしまった自分に愕然とした。
「ま、待って! ちょっと待って! 挿れないでください!」
駄目だ、このまま挿れられたら駄目だと孔明の心が強く強く警鐘を鳴らしていた。
さっきまでの自分の言動を忘れ、恐怖に満ちた顔で九十郎の挿入を止めた。
今の心境で挿入されれば、今の安堵した心で九十郎のモノ受け入れれば、さっきの愛撫の気持ち良さ以上の快楽を与えられれば、心の底から九十郎とのセックスを受け入れてしまいそうだと思ったのだ。
「……ん、良いぞ」
そして九十郎は止まった。
孔明がやめてと言ったら、九十郎はすぐに止まった。
股間のモノがいっそ痛々しく思える程に膨らんで、今すぐにでも女のアソコに入りたがっていると、女を犯したがっていると分かるのに、九十郎は少しも不平を言わず、少しも嫌な顔をせずに止まった。
「あ……」
やはり気遣われている。
九十郎は自分を守ろうとしている。
九十郎の顔を見れば一目瞭然だった。
もしかしたら、九十郎に抱かれなくても、九十郎が好きだと演技をしなくても、九十郎はこの先ずっと自分を裏切らずに、自分を守り続けてくれるのではとすら思ってしまう。
「(乱暴に犯してくる相手の方が、いっそ良かった……)」
孔明はそんな九十郎の気遣いをありがたいと思う反面、憎いとすら思った。
「あ、いえ……ど、どうぞ……」
孔明はもう一度作り笑いをして、もう一度九十郎の前で股を開いた。
「(大丈夫、大丈夫、私が好きなのはご主人さまだけ、
私が愛しているのはご主人さまだけだから……)」
孔明は自分に言い聞かせていた。
どれだけ九十郎が自分を気遣っても、守っても、決して九十郎を好きになってはいけないと自分に言い聞かせた。
「(ゴムを着けたアレを挿れるのは2回目だから……
あの時と同じ事をもう一回するだけ……ううん、今度は媚薬が無いから楽なはず。
だから大丈夫、だから耐えられる、きっと……)」
孔明は自分に言い聞かせていた。
どれだけ九十郎とのセックスが気持ち良くとも、どれだけ自分が喘いで、イッてしまっても、心の中で九十郎とのセックスを受け入れてはいけないと自分に言い聞かせた。
そして……
「はうっ! はうううぅっ! あ、あんんっ!」
そんな孔明の決意が崩れるまで数分とかからなかった。
「や、あぁぁっ! ふ、ふあぁぁっ! ふぁああぁっ! んんぁぁあっ!」
孔明は喘ぐ、喘ぎまくる。
その股座からぐっちょぐっちょと淫靡な音が、はしたない音がでていた。
媚薬が無い分だけマシな筈と思っていたが、意識がハッキリしている分だけかえって気持ち良さが直接孔明の心を蝕み、崩していく。
「や、らぁっ! 頭壊れるぅっ! おかしく……はわぁっ!
はぅうっ! あぁぁああっ!!」
九十郎は孔明の身体を気遣い、孔明の心を気遣い、せめて苦痛を感じさせないように、精一杯の技術を使って孔明を気持ち良くさせていた。
その気遣いが、その想いがかえって孔明を苦しめているとは思わなかった。
「……すまん、早すぎたか? ちょっとペース落とす」
九十郎がピストン運動を少し遅くする。
暴力的な快楽の嵐が、じわじわと真綿で首を絞めるかのような快楽の拷問に変わる。
どちらが孔明にとってキツイかと問われると、どっちもどっちだ。
「んんっ! んんぅっ! ひっ、ひううっ!」
子宮に男根が届く、子宮が男根で押しつぶされる。
膣内をピストンされる度に、掻き混ぜられる度に、孔明の脳がチリチリと焼け付き、快楽で押し流されてしまいそうになった。
「あ、あぁあっ! あぐっ、あぁぁあっ! や、やぁあっ!
気持ち良すぎ……んんぅっ!!」
気がつけば腰がガクガクと、ビクビクと痙攣し始めていた。
自分の意思とは無関係に腰が、膣肉が、子宮が勝手に動き、九十郎のピストンを自分が一番気持ち良くなれる場所で受けるようになっていた。
頭が真っ白になりつつなるのが分かった。
自分がイキそうになっているのが分かった。
「(駄目、駄目ぇ! イッちゃ駄目、イキたくないぃ!)」
孔明は両目をぎゅうぅと閉じ、肩を強張らせて、必死に快楽から意識を逸らそうとした。
媚薬を盛られた訳でもないのに九十郎のち〇こでイッてしまうのが、何故か北郷一刀への裏切りのような気がしていた。
だがしかし……蘭丸戦から密かにエロ技術を練習していた九十郎の技巧と、少しでも苦痛が少なくなるようにとの九十郎の余計な気遣いが、孔明の決意を容易く打ち崩し、容赦なく絶頂に導いてしまう。
「はぅ……んんぅ……ん! んんぅ! んぅあぁあっ!!」
そして孔明はイッた。
孔明の決意は、覚悟は、セックスの快楽の前にいともたやすく粉々になっていった。
「あ……あ、うぅ……」
せめてイッた瞬間のだらしない顔は見せたくない、イッた瞬間の淫らな声は聞かせたくないと、孔明は顔を覆い、口を塞ぐ。
孔明にできた儚い抵抗は、その程度だった。
そして……
「あとちょっと、もうちょっとだけ……くっ、イクぞ……」
びゅるるっ! びゅるるるっ! と、九十郎がゴム越しに射精し、行為が止まる。
孔明にとっての快楽の拷問、尊厳の処刑、敬愛する主君にして愛する男性への裏切りの時間がようやく終わる。
「はぁ、うぅ……はううぅ……」
孔明は、息も絶え絶えになってベッドに横たわっていた。
心を埋め尽くすのは一刀に対する強烈な罪悪感だ。
セックスの最中、孔明は完全に一刀の事を忘れてしまっていた。
一刀に対する想いは快楽で消され、九十郎のモノで気持ち良くなるだけのメスにされていた。
そして同時に……九十郎とのセックスが終わったというのに、胸によぎるのは苦痛と屈辱だけではなく、幸福な、満たされた気持ちが少なからずあった。
頭の中で、九十郎との思い出が次から次へと思い浮かんだ。
九十郎が自分のために怒る姿、剣を振るい戦う姿、英文の意味を教えてくれる姿……魏延ごと敵を爆破したあの日の光景が思い浮かんだ。
思い出す度に、胸の奥で暖かく、幸せな感情が出てくるのが止められなかった。
孔明は……
「あ……駄目だ……この方法は二度と使えない……」
孔明が小さく呟く。
予感めいた確信があった。
もしもう一度、九十郎と身体を重ねたら、今度は本当に一刀の事を忘れて、九十郎とを受け入れ、九十郎を愛してしまう予感があった。
いや、もしかしたら今でさえ……
「どうして……どうして……」
孔明はぽろぽろと涙を零していた。
どうしてそんなに気遣うのか。
どうして自分を守ろうとするのか。
どうして……どうして自分は、九十郎を憎からず想ってしまうのだろうか。
自分は生涯をかけて北郷一刀を愛し続けると誓った筈なのに……
好きになった男への愛すら貫けない自分が情けなかった。
ほんの僅かな時間ではあるが、愛する男の事を完全に忘れ、他の男とのセックスに溺れてしまった自分が情けなかった。
そして……
「大丈夫、大丈夫だ孔明。 俺が守るからな、俺が何とかするからな。
孔明は孔明のやり方を貫いてくれりゃそれで良いから。
それ以外の事は全部俺がなんとかするからな」
……そして九十郎は、涙を流す孔明を優しく抱きしめ、孔明を守ると誓っていた。
股間の逸物はバッキバキに勃っていて、結んで床に捨てられたゴムには濃厚な精液で満杯になっていて、まだまだ性欲に滾っているのが見て分かるのに、裸の孔明にそれ以上のセックスを求めず、優しく抱きしめていた。
「(俺が頑張らねぇとな……俺が頑張って、朱里……
じぇねぇ、孔明を一刀の元に返さねぇと)」
九十郎は孔明を守ろうと強く誓った。
孔明にも九十郎の決意がなんとなく伝わった。
だがしかし、いやだからこそ……
「(駄目だ、このままじゃ駄目だ……このままじゃ……本気で好きになっちゃうかも……
私には好きな人がいるのに、ご主人さまがいるのに……)」
だからこそ孔明は、強う強い危機感を覚えたのだった。
こうして、孔明と九十郎の二度目のセックスは終わった。
……
…………
………………
諸葛孔明は……朱里は夢を見た。
後漢末期……俗に言う三国志の時代から現代日本に転移し、平和で退屈な時間が過ぎた。
北郷一刀は魏、呉、蜀の三国の英雄・英傑達から我が伴侶にと求められたが、決まって自分は1人の女性しか愛せないと告げて断り続けていた。
朱里もまた、他の英傑達と同じように北郷一刀に愛していると伝え、同じ理由で断られた。
「魏延……あの人が……あの人がいなければ……」
心が醜く歪んでいくのが分かった。
北郷一刀の顔を見る度に、素敵な一面を見つける度に、愛の心を強める度に、その北郷一刀を奪い去っていった焔耶に対する怒りと憎悪、殺意が強まっていった。
いつしか朱里は、彼女を焔耶と呼ばなくなっていた。
そんな屈折した感情を抱えていたある日の事、並行世界から前田利家、真田昌幸、そして斎藤九十郎と名乗る男女が現れた。
彼等の説明によれば、オーディンなる異国の神が英雄・英傑の魂を集め、エインヘルヤルという改造人間
のようなものに作り変え、いずれ来る最終戦争の戦力にしようとしていた。
そして北郷一刀の甥っ子である新田剣丞や織田信長を始めとする戦国時代の英雄・英傑達が力を合わせてオーディンに立ち向かおうとしているので、力を貸してほしいと言われた。
朱里を含めた後漢末期の英雄・英傑達は、ほぼ全員が剣丞の助けになろうとしていた。
平和過ぎる現代日本に飽き飽きしていたのかもしれないし、ここで良い所を見せれば北郷一刀が振り向いてくれるかもという打算もあったかもしれない。
そして彼らと共に決戦の地、大江戸学園へと向かう準備をしていた時……オーディンの先兵、エインヘルヤル達が襲撃してきた。
エインヘルヤルは恐ろしく強く、戦いは熾烈を極め、呂布と真田昌幸は裏切った。
追いつめられた朱里達は廃棄予定のビルに誘いこんでビルごと爆破する奇策によって逆転を目指す事になった。
そして……
「……誘い込んだ、誘い込めた」
朱里は魏延に15回戦いを挑み、15回負けて逃げろと命じていた。
朱里は諸葛孔明だ。
敵を死地に誘い込み、罠を仕掛けて殲滅するのが諸葛孔明の得意技で、それはエインヘルヤル達も知っていて、明らかに罠を警戒していた。
だから2~3度負けたくらいでは用心して追ってこないだろうと考えた。
だが15度も勝てばどんなに用心深くとも勝利を信じる気持ちが強くなり、気を許して居って来るだろうと考えた。
そして孔明の策は的中し、エインヘルヤルは無様に逃げ出した魏延を負い、廃棄予定のビルの中に入っていった。
発破解体用の爆薬が仕掛けられ、朱里がスイッチを押せば大量の瓦礫に押し潰されるとも知らずに……
「今、爆破すれば勝てる、あのエインヘルヤルを倒せる……
これを逃したら、もう本当にどうしようも……だけど……」
スイッチを握る朱里の手が震えていた。
魏延は廃ビルから脱出できていなかった。
今、ビルを爆破すれば、魏延もエインヘルヤルと共に爆死するのは確実だった。
魏延に対する嫉妬はあった。
魏延に対する殺意はあった。
だけど同時に、これが単なる八つ当たりだという事にも気がついていた。
魏延は北郷一刀に想いを寄せる女性が何人も何人もいる事を知りながら、夜這い、強姦スレスレの手段で肉体関係を持ち、そのまま一刀のたった1人の妻になった。
魏延にも顧みるべき部分はあったかもしれないが、それが死に値する程の暴挙かと問われれば、恋の駆け引きの範疇のようにも思えてしまう。
魏延を殺せば、北郷一刀は別の女性をたった1人の妻に選ぶかもしれない。
だがしかし、次の1人が朱里である保証はどこにもない。
次の1人が桃香ならば、今度は桃香を殺すのだろうか?
次の次の1人が雛里ならば、今度は雛里を殺すのだろうか?
自分の番が来るまで殺して、殺して、殺し続けるのだろうか?
そんな血塗られた腕で、愛しいあの人を抱き寄せる事ができるのだろうか?
「駄目……駄目……こんなの、正しくない……」
朱里は爆破スイッチを押せずにいた。
魏延ごと……いや、焔耶ごと敵を倒す策を立てながら、土壇場で迷ってしまったのだ。
震えて、震えて、何もできずに固まってしまった。
今この瞬間も焔耶は恐ろしく強いエインヘルヤル達と戦っているというのに、命がけでエインヘルヤル達を引き留めているというのに……
「何やってんだ? とっとと押せよ、孔明」
震える朱里の右腕に、誰かが手を重ねてきた。
まるでバッファローマンのような大きな手だった。
筋肉質でゴツゴツしていて、妙に暖かく感じた。
その硬く大きな手が重なった瞬間、何故か朱里の身体の震えが止まった。
「失恋したんだろ? お前さ」
九十郎の言葉に、朱里は大きく肩を跳ね上げた。
「お、その反応は図星だな? 何となくそんな気はしてたんだよ。
あの剣丞によく似たモテ男が、俺はたった1人しか愛せねぇなんて言ってたからな。
何となく……うん、何となくそんな気はしてた」
九十郎が朱里の手を強く握り締める。
「泣くなとは言わん、膝をつくなとも言わん、というか言えねぇ。
俺も昔な、惚れた女がいたんだよ。
惚れた女は秋月八雲っていう大江戸学園一のモテ男の彼女になってて、俺はフラれた。
だから気持ちは分かる、泣いたって良い、俺も泣いたからな」
そして九十郎は孔明の小さな手と共に、廃ビルの爆破スイッチに触れた。
「やっちまえよ、腹いせをさ。 憎いアンチクショウを思い切りぶん殴っちまえよ。
孔明が殴っても大して痛くねぇってんなら、いっそ爆破しちまえ。
誰が何と言おうが俺が許す。 正しいとか正しくねぇとか関係ない、俺が許す。
そしたらさ……いくらかスッキリするぜ。 経験者の俺が言うんだから間違いない」
朱里の震えは止まった。
廃ビルからは焔耶もエインヘルヤルも出てきていない。
朱里は……いや、朱里と九十郎の2人は、廃ビルのスイッチを入れた。
そして次の瞬間、天と地がひっくり返ったかのような凄まじい轟音、爆音と共に閃光が迸り、廃ビルがガラガラと崩れ落ちた。
数秒か、数十秒かの静寂の後……瓦礫の山の中から、アフロ頭の焔耶が飛び出し『殺す気か!?』と叫びながら朱里に駆け寄って来た。
後で知った事だが、少し前にオーディン陣営に寝返った恋(呂布)と真田昌幸が裏で手を回し、焔耶を救っていたらしい。
朱里は笑った。
朱里は笑い転げた。
何年ぶりか……もしかしたら何十年ぶりかに、腹を抱えて笑いまくった。
それが朱里にとって……諸葛孔明にとって何よりも笑える、強烈な悪夢を吹き飛ばす、大事な大事な思い出になった。
……
…………
………………
「はぁ……」
孔明が深々とため息をついた。
懐かしい夢を見た。
楽しい夢を見た。
九十郎と共にエインヘルヤルと戦った時の夢だった。
あえて負け続けて敵を油断させ、死地におびき寄せ、魏延ごと爆破して勝負を決めたあの日の夢だった。
剣も、槍も、弓矢も、銃火器すら受け付けない恐るべき強敵を撃退した安堵感と、アフロ頭で詰め寄って来る魏延の……いや、焔耶の姿があまりにも可笑しくて、腹の底から大笑いをしたのを覚えている。
そして九十郎があの大きくて太い両腕で孔明を抱え上げて、凄い凄いと褒めまくってくれたのも覚えている。
あの日、あの時、あの瞬間を思い出す度に、胸の奥が熱くなっていくのが分かった。
「もしかしたらあの時から、私は……」
孔明のその呟きを聞く者はいない。
「私は……九十郎さんを……」
九十郎との二度目のセックスから月日が経った。
スペイン無敵艦隊を相手に大立ち回りをした。
海賊の戦いを見せてやるとドレイクが敵船に乗り込んで、チャンバラを怖がって大江戸学園に帰れるかよと九十郎も追従し、2人でスペイン海軍相手に大立ち回りをしていた。
暴れまわる2人の……いや、九十郎の姿から目が離せなかった。
カッコイイな、素敵だな、綺麗だな、輝いて見えるな……そんな思いが胸の内から湧き上がってくるのを抑えられなかった。
気がつけば少しずつ、少しずつ、九十郎の姿を目で追う時間が増えていった。
九十郎との思い出に浸る時間が増えていった。
そして同時に、北郷一刀の事を考える時間が減っていった。
「どうしよう、このままじゃ本当に……本当に……」
……好きになってしまうかもしれないと口にしようとして、慌てて口を噤んだ。
かつて孔明は生涯をかけて一刀を愛し続けると誓った。
例え一刀の愛が自分に向かなくても構わない、ずっとずっと愛し続けると宣言した。
一刀は苦笑しながら、ちゃんと自分の幸せを探してほしいと言った。
孔明は思う……このままではあの日の誓いを、愛の誓いを破ってしまうと。
九十郎の事を考えるだけで、心臓が高鳴り、顔が熱くなってくるのが分かった。
ほんの少し前までは、この胸の高鳴りは一刀を想う時だけの現象だったというのにだ。
孔明は迷った。
孔明は悩んだ。
このまま九十郎を好きになって良いのだろうか。
それは一刀に対する裏切りではないか。
それはかつての自分の誓いを、愛を、蔑ろにしているのではないか。
それならば、いっその事……
「どんなに想いを寄せても、どんなに恋焦がれても、
決して手の届かない所に追いやってしまえば……そうすればきっと……きっと……」
「……きっと私は、九十郎さんへの想いを断ち切れる」
孔明は自身の胸に巣食う悪魔に屈してしまった。
孔明は九十郎がいない時間に荷物を漁り、ケチュア語の翻訳のために集めたノートの一部を偽物にすり替えたのだ。
外交上の挨拶を誤り、インカ帝国の皇帝たるワイナ・カパックに求婚するように仕向けたのだ。
……
…………
………………
ケチュア語翻訳ノートのすり替えからしばし月日が流れた。
九十郎をワイナ・カパックに求婚させる策は成功した。
国を挙げての結婚祝賀ムードをやっぱナシねという訳にはいかず、カパック本人もかなり乗り気だった事もあり、最終的に九十郎の方が折れた。
その意味では、孔明の読みは見事に的中していた。
しかし、ワイナ・カパックが一夫多妻を許容する性格だった上に、孔明が九十郎に対する複雑な想いを抱いている事を察して、孔明を九十郎から遠ざけるどころか背中を押すような事を始めたため、九十郎を自身の手の届かない所に追いやるという目論見は失敗し終わった。
その意味では、孔明の読みは見事に外していた。
その後、カパックとドレイクと孔明と九十郎は三国の兵力を終結させて共産主義一向衆の武力鎮圧に成功、大江戸学園で暴走した天草四郎を卑怯殺法で叩きのめし、正妻戦争もなんやかんやで乗り切った。
長く続いた冒険と戦いが終わり、孔明は……
「そっか、終わるんだ……帰れるんだ、ご主人さまの元に……」
孔明は心の奥底に冷たい隙間風のようなものを感じていた。
九十郎との旅は楽しかった。
危機また危機の連続で心が休まる暇も無かったが、自らの知恵と勇気で道を切り開くのは楽しかった。
大して、現代日本での生活は退屈で仕方が無かった。
命の危険は全く無かったが、磨きに磨いた知性を使う余地が無く、毎日が何も変わらない生活だった。
想い人は自分ではない女性に優しそうに笑いかけ、想い人を奪った女は幸せそうに微笑み、自分はそんな2人を羨ましそうに見つめるだけだった。
いつか何かが変わる筈だと自分に言い聞かせ、何もせず、何も変わらない毎日を過ごしていた。
あまりにも暇すぎて、あまりにも退屈すぎて、暇つぶしに大江戸学園でチャドーを学ぼうなんて考える程だった。
九十郎との旅は楽しかった。
本当に本当に楽しかった。
そして思ってしまった……
「帰りたく……ないな……」
思い返せば、九十郎との旅の事ばかりが頭に浮かんだ。
敬愛する主君であり、愛する男性でもある北郷一刀の事を想わなければいけないのに、やっと帰れるんだと安堵しなければいけないのに、頭に浮かぶのは九十郎の事ばかりだった。
戦国時代に連れてこられた頃は、一日でも早く面倒事を終わらせて帰りたいと願っていた筈なのに、今は九十郎との日々が少しでも長く続いてほしいと願っていた。
「ご褒美エッチを要求するっ!!」
……そんな孔明の耳に、思わずズッコケそうになる妙な声が届いた。
九十郎の正妻の座を賭けた戦いにおいて、孔明と結託して他のライバル達を裏切り、蹴落とした真田昌幸・通称一二三の声である。
「あの……一二三さん? そういうのはもうちょっと小さな声で……」
「やあ朱里、ちょうど良い時に。
九十郎がね、正妻交代の話を有耶無耶にしたお礼にって、
何でも言う事を聞いてくれるって言うから、私はご褒美エッチが良いな~って、
朱里にも権利があるから、何でも言ってごらんよ」
「何でもとは言ってねぇよっ!! 何でもとはっ!!
5000兆円とか明らかに非現実的な事とか、犯罪になるような真似は流石に却下するぞ!」
「それならご褒美エッチは通るじゃないか。
双方合意の上なら犯罪にもならない、非現実的でもない」
「……避妊はするぞ。 学生が学生を孕ませたら退学待ったなしだからな」
「じゃあ優しくて気の利く一二三さんがコンドームを用意して……」
「断固拒否するっ! 俺が買ってくるからお前は何もするなっ!」
一二三と九十郎が楽しそうにじゃれ合っていた。
ああ、良いなぁ……と、孔明は思う。
ああ、羨ましいなぁ……と、孔明は思う。
そして思う、もし許されるのであれば、自分も……
「私も……」
気がつけば九十郎の手を握っていた。
顔を真っ赤にして、心臓をバクバクと高鳴らせながら、か細い声を絞り出していた。
そして……
「わ、私も……私もご褒美エッチが欲しいです」
孔明は九十郎にそう告げた。
一度目のセックスのように、媚薬で頭がおかしくなったのではない。
二度目のセックスのように、九十郎が自分から離れてしまうかもという危機感からでもない。
ただ純粋に、単純に……九十郎と愛し合いたいと願ったからだ。
そして九十郎は顔を真っ赤にしながら俯く孔明に、驚くでもなく、慌てるでもなく、笑うでもなく、呆れるでもなく、ゆっくりと膝を曲げて小柄な少女と同じ目線になり……
「良いんだな? 俺も本気になるぞ……いや、たぶんとっくの昔に本気になってた」
九十郎は孔明に問いかける。
孔明は顔を真っ赤にしながら、大きく頷く。
「私……今度は本気です。 本当に貴方が好きになりました。
だから……だから……私も貴方の、九十郎さんのお嫁さんになりたいです」
それは嘘ではない、演技ではない、孔明の告白だった。
九十郎はその言葉を聞くと、嬉しそうに、少し気恥しそうに笑い、そっと孔明を抱き寄せた。
「……そういえば今回の旅で増えた九十郎のお嫁さん、全員貧乳だよね。
趣旨替えでもしたのかな?」
「一二三、黙ってろ」
……
…………
………………
「ん……んんぅ、ちゅぅ……」
その日の夜、長屋で孔明と九十郎が唇を重ねていた。
唇が触れ合うだけで、たったそれだけで胸が多幸感で一杯になる。
きっとそれは目の前の男性を……斎藤九十郎を愛しているからなのだと孔明は思った。
「あっ……」
唇が離れる。
唾液が糸になって孔明と九十郎の間に掛かる。
唇が離れただけで、胸の中が寂しさと切なさで一杯になる。
「脱がすぞ、良いな?」
「はい、どうぞ。 その……ちょっと貧相な身体ですけど」
孔明と九十郎が互いの衣服を脱がせ合う。
一枚、また一枚と肌が露になっていく。
唇を重ね、ほんの僅かに身体を弄っただけだというのに、アソコはしっとりと濡れていた。
九十郎のモノもバッキバキに勃起し、臨戦態勢に入っている。
「孔明……」
「九十郎さん……」
2人が見つめ合う。
紆余曲折はあったが、今の2人を隔てるものは何も無い……
「うぇ~い、一刀クン見てる~?
今から私の旦那様が~、キミの大事な朱里ちゃんと~、エッチな事をしちゃいま~す」
……訂正、若干一名の賑やかしがビデオカメラ片手に北郷一刀を煽っていた。
「一二三、邪魔すんならどっか行ってろ」
「そうだねぇ、アイス一本奢ってくれるなら考えるけど」
「自分で買ってこいそんなモン」
九十郎が一二三を意識の外に追いやった。
「孔明……」
「九十郎さん……」
賑やかしの事は一旦忘れて、2人が見つめ合う。
「真名で……朱里と呼んでいただけませんか」
孔明がそう懇願する。
真名というのは、本人が心を許した証として呼べる名前である。
これまで何回か真名で呼んでほしいと伝えているのだが、真名で呼ぶまで返事をしない課〇バカ一代戦法も試したが、九十郎は頑なに『孔明』と呼び続けていた。
孔明は九十郎の意図をなんとなく察していた。
1度目のセックスの時も、2度目のセックスの時も、九十郎は孔明を気遣っていた。
いや、世界を一周する長い長い旅路の中で、九十郎はいつだって孔明を気遣い、守って、支えていた。
「ああ……いや、そのな……真名はちょっと……」
九十郎は少し気まずそうに視線を逸らす。
頬をかきながら、数秒だけ何かをぶつぶつと呟き……意を決して向き直る。
「孔明を真名で呼ぶのを嫌がった理由はな。
俺が本気で孔明を欲しくなりそうだったからだ。
抱き寄せて、キスして、俺の女だって宣言したくなってた。
でもなぁ、孔明は今でも一刀が好きだって言ってたろ。
振り向かれなくても、報われなくても、それでも愛は変わらないって言っていただろ」
「ええ、はい……言いました。 あの時、確かに言いました……」
「俺も昔惚れた女がいて、好きだって伝える前に他の男の恋人になって。
好きだって伝えたら案の定フラれてな……孔明にも言ったよな?」
「はい、聞いています。 覚えています」
「諸葛亮孔明でも失恋はするんだなって思ったら、親近感が出て……
気が付いたら孔明を俺の女にしたい、孔明が欲しいって気持ちがあった。
だから俺は……つまり……」
言葉に詰まった所で、孔明が九十郎の顔を抱きしめた。
犬子や柘榴に比べたら貧相で平坦ではあるが、人肌の温もりが九十郎の緊張を解きほぐす役に立つ。
「だったらなおの事、真名で呼んでください。
私は貴方の女になります、貴方のものになります。
貴方が愛しくて、好きで好きで想いが止められない。 だから……だから……」
「一刀の事は諦めるのか?」
孔明は一瞬……ほんの一瞬だけ身体を強張らせて、返事の代わりに九十郎を強く強く抱きしめる。
「俺なんかで良いのか?」
「貴方が良いんです」
今度の問いかけには一瞬も迷わず返事をした。
孔明の胸の内に、北郷一刀を想う気持ちは今もある。
あり得ない仮定の話ではあるが、今この瞬間、一刀が孔明を奪い返しに来たらふらっとしてしまうかもしれない。
だがしかし、だがそれでも、今この瞬間孔明が抱く気持ちは……九十郎が欲しい、九十郎が愛しいという気持ちは、決して嘘ではない。
孔明は……いや、朱里はそう確信していた。
「……朱里」
「はいっ!」
何故ならばその音が、その声が耳に届いた瞬間、全身が歓喜で震えるのが分かったからだ。
「朱里」
「はい」
孔明ではなく、朱里と呼ばれた。
字ではなく、真名で呼ばれた。
ただそれだけ、たったそれだけで朱里の心が嬉しさで一杯になった。
「朱里、もうこっちは遠慮しねぇぞ。 朱里にやりたい事、我慢してた事を全部やる。
まずは……そうだな、朱里を俺の嫁にしたい」
「はい、なります。 不束者ですが、よろしくお願いします」
「ああ、だけど正妻はやっぱ柘榴が良いし、
俺は一刀と違って嫁が1人だけって訳じゃない。 それでも……良いか?」
「はい、分かっています。 大丈夫、上手くやっていきますから」
「後は……ああそうだ、ジェロニモとやり合った時、ワザと1人だけ逃げ遅れただろ。
ああいうのもうやめてくれ」
「いえ、あの、あれは……あの時点で自分の魂を生贄にしてて、
封神台から遠隔操作で死体を動かしてる状態でして……
じ、時間稼ぎと、犬子さん達から注意を逸らす意味もあって……
だから、その……ノーカウントという事には……」
「なる訳ねぇだろ」
「……はわぁ」
朱里は痛い所を突かれた。
「ジェロニモで思い出した、勝手に他人の命を生贄にするな。
生きた心地しなかったぞ」
「ああ、あれは後で踏み倒す算段がついていましたから……」
「カミサマへの捧げものを踏み倒すな、バチが当たるだろ」
「……はい、そうですね」
朱里はまたも痛い所を突かれた。
「ダーティな作戦を立てるなとは言わねぇけどな。
せめて次からは事前に相談してくれ、心臓に悪いから」
「はい……その……確約はしかねますが、前向きに検討します」
「後は……後は思いつかねぇや。 朱里、今からお前を抱くけど、良いよな?」
「……はい」
九十郎が朱里を抱き寄せる。
朱里が九十郎に抱きつく。
肌と肌が密着する。
互いの吐息の音と熱が伝わってくる。
心臓の音がどくどくと高鳴るのが分かる。
「……一二三、ゴムくれ」
「ヘイゴム一丁入りました~! 穴無しと穴有り、どっちが良い?」
「無い方に決まってんだろっ!!」
一二三からコンドームを手渡されると、照明にかざしたり、指で軽く引っ張ったりして穴が開けられていないかを確かめる。
使う前に妙な細工がされていないか確認する癖がついたのは、間違いなく一二三に前科があるからだろう。
「では、私が着けますね」
「え? いや俺が……ああ、じゃあ、頼めるか?」
突然の申し出に少し驚きながら、朱里にコンドームを渡す。
九十郎のモノを軽く手で扱き、亀頭に口づけをして、舌を這わせて勃起させると、ゴムを口で咥え、もう一度口づけをするように男根の先端に当てて、舌と唇で丁寧に丁寧に広げていく。
「……何か妙に手慣れてるな。 一刀とかにやってたのか?」
「初めてですよっ! まあその……すりこぎとかを使って練習してました。
そのうち使うかもしれないので……」
諸葛亮孔明が夜な夜な口でコンドームを着ける練習をする絵面を想像して、一二三と九十郎が思わず吹き出しそうになる。
「はわわっ! わ、笑わないでくださいよぅ!」
「悪い悪い、じゃあ……挿れるな」
「は、はい……」
朱里がごくりと息を呑む。
ゴムで包まれた亀頭がゆっくりとアソコに宛がわれる。
心臓は早鐘のように高鳴って、今にも破裂するのではと思ってしまう。
「……緊張してるな?」
「い、いえ大丈夫です。 これで三度目ですから。 でも……や、優しくお願いします」
朱里は緊張で身体が強張っていた。
九十郎のち〇こが挿入されるのはこれで三度目。
一度目のセックスは媚薬で頭がおかしくなっていた。
二度目のセックスは身体を許しこそしたが、心は開いていなかった。
心も体も、全てを捧げるセックスは今回が初めてだった。
朱里も九十郎も、全身が硬くなっていくのが分かった。
「……じゃあ、三顧の礼ならぬ三ま〇この礼になる訳だ」
……一二三が空気を読まないギャグを言って良い感じの雰囲気をブチ壊した。
「ぶふっ!!」
「ぷぷっ!!」
朱里と九十郎が同時に噴き出す。
互いの顔に唾が吹きかかり、苦笑しながら手で拭う。
「一二三、お前……笑わせんなよな! こんな時によぉっ!!」
「三ま〇この礼! 三ま〇こって……あははははっ!!」
三顧の礼……目上の人が格下の者の許に三度も出向いてお願いをすることをいい、現代二ホンや日本に伝わる歴史書において、劉玄徳が諸葛孔明を迎えるために、孔明の庵を三度尋ねたという逸話から産まれた言葉である。
こことは別の世界で、朱里は北郷一刀に軍師として仕えているものの、この三顧の礼をやっていない。
混迷極まる天下を憂い、自ら一刀の元に出向き、配下に加えるように懇願しているからだ。
「三顧の礼……そっか、これが私の三顧の礼になるんだ。
なんて……ふふっ、あははっ、なんて私らしい三顧の礼なんだろう」
孔明は何かツボにはまったのか、中々笑いを止められずにいた。
「お前もうどっか行ってろ、終わったらスマホで呼ぶから」
「アイス奢って」
「分かったよ! おやつは300エンまでな!」
「わぁい、九十郎大好き! あ、後で感想聞かせてね、歴史書に書くから」
「あ、おいコラ! 待て、財布ごと持ってくな!? 300エンまでだからなぁっ!!」
一二三が九十郎の制止を一切聞かず、嵐のように去っていった。
なお、九十郎の財布が戻ってきた時、中身はスッカラカンだった事は言うまでもない。
「くそっ、素っ裸でなけりゃ追いかけて張り倒すんだがな。 あいつは本当に……
まあ良いや、気を取り直して続きといこう」
九十郎がもう一度朱里に向き直る。
心臓はまだドキドキと脈打っているが、一二三のギャグのおかげで緊張は少しほぐれていた。
「やっぱりゴム、外しませんか?」
「え? いや……」
「三顧の礼のお話、知っていますか?
一度目と二度目は庵まで尋ねても会えずに引き返して……」
朱里が九十郎の返事を聞かず、さっき着けたばかりのコンドームを引っ張り外した。
そしてフル勃起状態の肉棒の前で、お〇んこの入口をくぱぁっと広げた。
「三度目で直接会って、2人は結ばれるんです。
今日は私の三顧の礼だから、直接……というのは、どうでしょうか?」
九十郎は思わず苦笑する。
一二三はもう今更だが、朱里も朱里で意外と愉快な性格をしているのだなと思う。
だけど九十郎は、そんな時々愉快な朱里に惚れているのだ。
そんな朱里を抱きたいと、自分の女にしたいと、嫁にしたいと、愛し合いたいと願ったのだ。
「じゃあ今日から朱里は俺の女だって事になるけど、良いんだな?」
九十郎がちょっと悪役っぽい笑みと共に、亀頭をワレメにあてがった。
肉棒の先端が朱里の膣肉に僅かに沈み込む。
朱里のナマの感触が伝わってくる。
「はい、今日が私の……私達の三顧の礼です。
諸葛孔明のナマお〇こをどうぞ味わってください」
朱里が足を大きく広げ、指でアソコの入り口を広げ、九十郎のモノを受け入れる姿勢になる。
2人を隔てるものは何もない。
一度目、二度目のセックスで2人を遮っていた厚さ0.01mmのゴム膜もない。
「ん……あ、あぁ……はぅう……」
ゆっくりと、ゆっくりと、焦らすように、堪能するように、九十郎のモノが朱里のナカを進んでいく。
奥に、奥に、最奥の子宮まで突き進んでいく。
そしてついに……最奥部、子宮口に亀頭が触れた。
ぶちゅうっ、とまるでディープキスをするかのように、ち〇ことま〇こがくっついた。
「これで三顧の礼だ。 ようやく会えたな、朱里」
「はい、初めましてですね、私の旦那様」
妙な事をやっているなと、2人で苦笑する。
だけど不思議と、悪くない気分だった。
「あ、あぁっ! はうぅっ! はわぁあっ!」
そして九十郎は腰を前後に揺さぶる。
ぐっちょぐっちょと淫靡な音を立て、男根が何度も何度も子宮をノックする。
一度目とも、二度目とも違うナマセックスだ。
ナマの子宮がそこにある。
ナマのち〇こを咥え込んでいる。
そう考えるだけで、脳髄が痺れるような感覚がした。
「ん、あぁぁあっ! こ、こんな……気持ち……あぁぁっ! あうぁあっ!」
朱里が喘ぐ。
一度目よりも、二度目よりも気持ちが良いと感じた。
子宮が、膣肉が、九十郎のナマち〇この形を覚えて、元に戻らなくなってしまうと思った。
自分の女の部分が九十郎を受け入れて、魂すらも九十郎専用になっていくような感覚すらした。
心も体も九十郎色に染め上げられていくように感じた。
だけどそれが、どうしようもなく心地良く、気持ち良かった。
「や、あぁぁっ! 奥ぅ、もっと奥にぃ! ふ、うあぁぁっ! あ、あぁぁあぅっ!!」
朱里の喘ぎ声が止まらない。
「奥にね、こんな感じか?」
九十郎はピストン運動からぐりぐりと子宮口を抉る動きにシフトした。
体位も普通の正常位から、覆いかぶさるようなものに変わっていた。
「はぅ! はわぁっ! ん、んんぅ……もっとぉ……ふぅ、あぁぁあぅっ!」
全身が密着する。
肩が触れ合い、乳首が擦れ、子宮が押しつぶされていた。
九十郎と触れ合う全ての場所が、朱里を気持ち良くさせているかのようだった。
そして……
「朱里、そろそろ射精すぞ。 中が良い? 外が良い?」
朱里の耳元で九十郎はそう囁きかけた。
九十郎は顔こそブ男であるが、声質は良い。
かつて光璃が『耳が孕む』とまで称した美声で、膣内射精か膣外射精かの選択を迫った。
「ああぁっ! ふあ、ああぁっ! あ、あんんぅ、ああんんぅっ!」
朱里には返事をする余裕が無い。
問いかけをしながらも九十郎は一切腰を止めず、手を休めず、子宮を尽き、亀頭を押し当て、指で乳房を舐り、朱里の身体を責め続けていた。
朱里は発情したメス犬のように喘ぎ声を漏らすばかりで、何かを喋れる状態ではなかった。
「ふ、ふうぅっ! んんんぅっ! ん……んんぅっ!!」
だから朱里は、両手、両足を九十郎の身体に絡めて返事の代わりにした。
全身を密着させて、お〇こを締めてち〇こに密着させて、自分の身体の全部を九十郎に捧げた。
「それが返事って事で良いな」
朱里がこくこくと何度も何度も頷いた。
すると九十郎はさらに激しく腰を揺さぶり、朱里を責め立て、そして……
「ふぁ……ああっぁあぁあぅ!」
たまらず朱里が絶頂に達し、膣内をぎゅうぅっと締めた直後に、九十郎もまた絶頂し、その子宮内に濃厚な精液をブチまけた。
一度目のセックスでも、二度目のセックスでも厚さ0.01mmのゴム膜で阻まれ、朱里の身体へは届かなかった九十郎の精液は、三度目のセックスで朱里の子宮に辿り着く。
それが三顧の礼にどこまで似ているのかはさておき……
「好き……好き……大好き……」
朱里はセックスの余韻に浸り、火照る身体で九十郎にもたれかかり、何度も何度も愛を囁く。
三度目のセックスが三顧の礼にどこまで似ているのかはさておき、朱里にとってはこの日は決して忘れられない特別な日になった。
かつて愛を誓った北郷一刀への想いは、未だにある。
かつての誓いが、愛が嘘でも、偽りだったとも思わない。
それでも、自分は九十郎を愛さずにはいられない。
九十郎を好きになった。
その想いを……どうしてもどうしても、否定できなくなっていた。
……
…………
………………
「気が付けば豪遊っ! 一二三、他人の金で豪遊っ!」
……一方その頃、一二三は九十郎の財布の金で缶ビール、焼き鳥、肉じゃが、ポテチ、チーズちくわを買い揃え、深夜の公園で独り酒を楽しんでいた。
一応は教育施設である筈の場所で、学生が管理、運営しているコンビニで、普通に酒とツマミが買えるところが大江戸学園の笑えるところである。
『おやつは300エンまで』という九十郎の言いつけを守る気は一切無い。
焼き鳥を頬張り、ビールを飲みながら、次はどんな騒動が起きるのだろうか、次はどんな悪巧みをしてやろうかと思いを馳せる。
「しかし、諸葛孔明ときたか……反骨の相があるって魏延の受け入れに反対して、
後で裏切りそうだって理由で司馬懿ごと爆殺しようとした諸葛亮か。
私との相性は最悪だね」
表裏比興と書いてクソヤロウと読む真田昌幸が一人静かに呟いた。
一二三には予感があった。
もし自分が九十郎を裏切れば、朱里は躊躇無く自分を殺そうとするだろうと。
一二三には確信があった。
諸葛孔明たる朱里の目を盗んで裏切りをするのは物凄く大変だろうと。
そして一二三はニヤリと笑った。
「あの諸葛孔明に吠えヅラをかかせるのは楽しそうだ。 実に楽しそうだ。
ああ、いけないなぁ、いけないと思えば思う程、試してみたくなってしまう」
そして一二三の頭の中で、朱里を泣かせる作戦が次から次へと浮かんでくる。
とりあえずは、さっき撮影したNTR風動画を北郷一刀に送りつけてみるのはどうだろうかと考える。
手元のビデオカメラには導入部分しか録画されていないが、事前に設置しておいた隠しカメラの画像と組み合わせれば、大変楽しい事になるだろう。
孔明と九十郎の……いや、朱里と九十郎の物語はここで終わりを迎えたが、九十郎達の人生はこれからも続く。
これまで散々騒動を起こし、騒動に巻き込まれた九十郎達が、この先は平穏無事に生きられるだなんて欠片も思っていない。
だけど一二三は、そんな九十郎と共に生きるのが楽しくてならなかった。
「大江戸学園に冒険の種は尽きまじ!
経験点と成長点を受け取り、次の冒険に備えるのだ!」
そして一二三は九十郎の金で買ったビールを飲み干した。
九十郎達の次なる冒険については……また別のお話である。