柿崎柘榴景家は、犬子と九十郎と同居する事になった。
その話は稲妻のように越後を駆け巡った。
若い男女が一つ屋根の下……下種で下品な勘繰りも多かったし、噂はそれなりに尾ひれも付いた。
そしてその噂は、日ノ本の各所に居る、耳聡い者達の耳にも届いた……
……例えば、尾張の織田久遠信長。
「越後……長尾景虎の下へ身を寄せたか……」
草からの報告を聞き、久遠が少し寂しそうに呟いた。
久遠は勘当した犬子を、ほとぼりが冷めた頃に呼び戻すつもりであった。
三河に居たのなら、呼び戻す事ができた。
甲斐の武田晴信の下に身を寄せていたのなら、それなりの対価は要求されるだろうが、呼び戻す事も不可能ではなかった。
だがしかし、久遠には越後の長尾景虎と繋がる伝手が無い。
長尾景虎に仕えた犬子を呼び戻す手段が無いのだ。
「便りくらい寄越さんか……馬鹿者……」
幼馴染が、かつての遊び仲間が遠く離れてしまった事に、久遠は一人悲しんだ。
なお、久遠は九十郎の事は心配していないし寂しいとも思っていない。
久遠は九十郎の顔も名前も覚えていない、話をした事も無い。
特に興味を引くような出来事も無かったからである。
……例えば、三河の松平葵元康。
「九十郎様は越後……
尾張に向かうと思っていましたが、予想が外れてしまいましたか……」
葵は一人、臍を噛んだ。
それは九十郎の未来知識を利用し、独占し、技術の優位を得て天下に覇を唱えるプランが瓦解した事を意味する。
「問題は……長尾がウィンチェスターを手に入れたか否か。
いえ、ウィンチェスターよりも危険な知識と技術を得ている可能性も否定はできない」
葵の予想は当たっている。
既にドライゼ銃とハーバー・ボッシュ法が……間違い無くウィンチェスター・ライフルよりも危険な技術が美空に渡っていた。
「ウィンチェスターの量産を急がせないと。
いっそ他国にウィンチェスターの製法を流して、
長尾一強になるのを防ぐ事も視野に入れて……」
葵の頭が次にどうするべきか、どう動けば松平を守れるか、故郷の人々や自分に仕えてくれる家臣達を守れるのかを導き出すべく、超高速で回転を始める。
「これからどう立ち回るか……織田は頼るべき同盟者か、いっそ長尾を頼るべきか……
やはり九十郎様がどの程度まで知識と技術を教えているかが気になるわね」
未来技術と知識の流出という難事を前にしてもなお、葵は折れない、諦めない。
最後の最後まで生き残りを賭けて戦い続ける、抗い続ける。
この程度の困難と逆境で心が折れる松平元康……いや、徳川家康ではないのだ。
徳川家康は、いかなる困難と逆境が襲い掛かろうとも抗い続けるからこそ、徳川家康なのだ。
「やはり、少し様子を見るべきか。
間者を放って、九十郎様の周囲を探って……
伊賀忍者に長尾の防諜を抜けるのか、少し不安なのよね。
今からでもこちらに引き込めれば最良なのだけれど……」
そしてもう一つ、徳川家康は良く言えば冷静かつ慎重で、悪く言えば臆病で気が長い。
彼女が越後国主、長尾美空景虎と接触を果たすのは、もう少し後の話である。
……例えば、甲斐の山県昌景。
「何で長尾なんだよ……何で柿崎景家なんだよ……」
粉雪が両手を握り絞めた。
指先から血が漏れる程に強く強く……少女の目頭には涙が浮かんでいた。
「長尾で良いなら、武田でも良いだろ。
柿崎景家で良いなら、あたいでも……山県昌景でも良いだろうが……」
何故、どうして、悔しい、悲しい、恋しい、そして妬ましい……様々な感情が混じり合い、粉雪はどうすれば良いのか分からなくなっていた。
なお、九十郎にとって柿崎景家か山県昌景かは非常に重要である。
山県昌景とは武田四天王、歴史上の偉人であるのに対し、柿崎景家とは誰そいつレベルの知名度……要するにただの柘榴に過ぎないからだ。
山県昌景ではなく、前田利家でもなく、ただの柘榴に過ぎないから肩の力を抜いて付き合えるのだ。
「何で……何であたいじゃ駄目だったんだぜ! 柿崎の何が良かったんだぜ!」
粉雪は思った、九十郎にもう一度会いたいと、そしてもう一度話がしたいと。
そして悔やんだ、もっと貪欲に、もっとしつこく引き留めていれば良かったと。
そして泣いた、一人静かに慟哭した。
九十郎から贈られた魔理沙っぽい帽子に涙が零れ落ちる、何度も、何度も……
……例えば、甲斐の武田晴信。
「……とりあえず、今入っている情報はこの位でやがる」
「そう」
夕霧から一通りの報告を聞き、光璃はしばし瞑目し、思想を巡らせる。
砥石城での敗走から、光璃は方々に間者を放ち、あの異様な敵、あの異形の敵……『鬼』に関する情報を集めようとしていた。
もしこれが大江戸学園の武田光璃であったなら、『睡眠不足は美容と健康の敵、九十郎、少し寝るから枕になって』とか、『今日のおやつはマフィンが良い、九十郎の手作りのを』とか、『ヘイ提督! 紅茶が飲みたいネー!』とか何とか唐突に言い出して盛大に話を脱線させるのであるが、戦国時代の武田光璃晴信はそんな事はしない。
武田光璃晴信は武田光璃よりも残忍で、冷酷で、冷徹で、他人に弱みを見せず、幼馴染を人間抱き枕にするなんて真似はせず、祖先を敬い、御旗盾無を誇りにして……早い話、ほぼ別人とも言って良い存在なのだ。
「村上と接触していた異人……」
「顔も名前も出自も目的も不明……分からん尽くしでやがるが、
そいつが村上と何らかの取引をしていた事は間違いないでやがる」
「鬼を手なずけた……あるいは、部下を鬼に変えた……」
「だとしたら、とんだ鬼畜外道でやがるな」
声には出さなかったが、光璃は内心こう思った。
正道、外道を言うならば、自分が一番の外道だろうと。
少なくとも光璃は、部下を鬼に変えて勝てるのなら、躊躇無く鬼に変える。
残虐非道に対する思考のタガが外れているのだ、武田光璃晴信も武田光璃も。
いや……思考のタガを外しているのだ、自らの意思で。
「織田の天人は?」
「そっちの情報はまだ全然でやがる。
織田久遠信長が一目惚れして愛人にしたとか、義元公を討ち取ったとか、
眩い光と共に天から舞い降りただの、薬師如来だの阿弥陀如来だのの化身だとか、
天孫再臨だとか、裁きの神ジャスティスだとか、
色々と訳の分からない情報が錯綜してるでやがる」
「名前は、新田剣丞」
「確かな事は名前くらいでやがる、今の所。
もっともこれだって本人がそう名乗っているだけ、
偽名の可能性は捨てきれねえでやがります」
鬼の出現、謎の異人、新田剣丞の登場……全く関係の無さそうな甲斐と尾張の2つの出来事であったが、光璃には何故か、密接な関りがあるような気がした。
「一二三に伝えて、村上領が現在どうなっているかを調べるようにと、
それと……砥石城買収作戦、評価する。 細部を詰めて再提出するようにと」
「承ったでやがる」
「それからもう一つ、村上領の調査と並行して、新田剣丞を調べるようにと」
「承ったでやがる」
そして決断する。
武田の目と畏れられる知将、謀将……武藤昌幸を動かす事を。
「……九十郎」
そして光璃が次の事象、次の情報に思考を移す。
「くず……誰でやがる?」
しかし、夕霧は何の事か分からなかった。
いやまあ、九十郎は基本的に屑なので、『くず』でも合っていると言えば合っているのであるが。
「敗走していた粉雪を助けた、その後柿崎景家の客分として迎えられた」
「そいつが何か気になるでやがるか?」
そう言われて、光璃はしばし考え、考え、考え……
「……他人の恋話は楽しい?」
正直全然興味が湧かなかった。
「何故疑問形でやがる」
後に夕霧は、あの時詳しく調べておくべきだったと死ぬ程後悔するのであるが……それはまた別の話である。
……そして、越後の長尾景虎。
「ドライゼ銃、そしてハーバー・ボッシュ法……
この2つがあれば、頓挫しかかっていた武田晴信抹殺計画を立て直せる。
どんなに優れた兵法家でも、初見の武器に対策を立てる事はできない。
ましてやそれが、300年後の武器であるならば」
美空は今、武田晴信を……光璃であって光璃でない存在を殺す算段を立てつつあった。
「ええ認めるわ、認めざるを得ない、武田晴信は優れた将である事を、
戦術、戦略、謀略、知略、えげつなさ、いずれも長尾景虎よりも数段上である事を、
今までの勝利は全て、立地の差、団結力の差、
積み上げてきた悪名と名声の差を利用したギリギリの勝利に過ぎない事を。
そして認めるわ、金欠狙いの長期戦、消耗戦では貴女を殺せない事も」
その上で……と、美空は完成したばかりのドライゼ銃に弾薬を装填した。
九十郎の指示を受け、九十郎の手を借りずに製造されたドライゼ銃に、九十郎の指示を受け、九十郎の手を借りずに調合された黒色火薬を装填した。
「……ならば短期決戦、初見殺し、わからん殺しの作戦で貴女を討つ」
引き金を引く。
ズドン! と春日山城に銃声が響く。
銃弾は九十郎の作品と寸分違わぬ精度で発射された。
美空の脳裏には、ドライゼ銃の軍団が武田騎馬隊を射殺していく光景が浮かんでいた。
次に武田と戦う時が来るまでに、ドライゼ銃と玉薬を量産する。
次に武田と戦う時が来るまで、ドライゼ銃とハーバー・ボッシュ法は秘匿する。
ただそれだけ、たったそれだけの単純な作戦。
単純な作戦だが……光璃には対策の立てようの無い作戦であった。
美空は知らない、気づかない、考えもしない。
自分と光璃が同じ男性を好きになる事に、同じ男性の嫁になるなんて事に。
自分と光璃が妥協し、和解し、協力関係を結ぶ可能性がある事に。
……
…………
………………
「……勃たねえ」
噂の人物こと九十郎は、ある意味では非常に切実な、ある意味では呆れる程にどうでも良い話題を出していた。
「九十郎、食事中にその話題はどうかと思うよ」
犬子が苦笑しながら、九十郎の作ったチーズ入りハンバーグにかぶりつく。
夕食時に九十郎が何の脈絡も無くセクハラ発言をするのはいつもの事だ。
しかし、一応は上司にあたる柘榴の前でのセクハラ発言は初めて……でもなかった。
夕食の席に柘榴が居る事に、犬子も九十郎も慣れつつあった。
2~3日に1度はこれに虎松が混ざり、練兵館の食材を根こそぎ収奪していくのだが、それにも慣れつつあった。
だからこそのセクハラ発言だ。
犬子と九十郎は、既に柘榴を日常の一部と認識し、取り繕う必要性を感じていない。
「立たないって、どういう意味っすか?」
九十郎が焼いたピッツァを頬張りながら、柘榴が首を傾げた。
「ちOこが固くならない」
あの日……犬子と唇を重ねた瞬間、激しい頭痛と幻聴に襲われたあの日から、九十郎は犬子の身体で臨戦態勢に入れなくなっていた。
自慰は普通にできるので、性欲処理に問題はないが……夜の性生活には支障が出る。
「ああ、スケベな話題っすね」
「ごめんね九十郎、犬子がもっと……もっと頑張ったら……」
「全くもっておかしいよな、
普段の俺だったら胸揉んだり舐めたりしたらあっという間に臨戦態勢だってのによ……」
九十郎は巨乳好きだ。
しかし、その巨乳好きパワーをも上回る深刻なトラウマが、九十郎の性欲を減退させていた。
九十郎には、犬子に対する遠慮があった、躊躇があった。
その事に柘榴は、薄々ながら気づきつつあった。
「……うん、じゃあ3Pするっす!」
だからこその提案。
しかしそれは犬子と九十郎にとって斜め上の提案であった。
「ねえ九十郎、3Pって3人で抱いたり抱かれたりする事だったよね。
何で柘榴様が3Pなんて言葉知ってるのかな?」
犬子が笑いながら九十郎に尋ねる。
いや、口角は笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
「九十郎に抱かれるのは初めてじゃないっすよ」
「へぇ~」
柘榴は何でもない事のように言うが、犬子の目は笑っていなかった。
「九十郎、いつからなの?」
「ちょっと前に俺達と虎松、貞子、沙綾、空、愛菜で春日山城に突撃した事があっただろ。
ビール飲んだ勢いで、美空にまともな酒の飲み方を教えようぜとか何とか言ってよ。
だいたいあの辺の出来事だ」
「何回くらい?」
「3回っすね」
「へぇ~、ふぅ~ん」
犬子が九十郎を横目で見つめながら、ちょっとむくれる。
以前は側室でも妾でも良いと言った身ではあったものの、だからと言って完全に割り切れている訳でもないのだ。
「九十郎はさ……犬子の事、嫌いになった……?
犬子に魅力が無くなったとか……そういう……」
「ねえよ、俺が前田利家を嫌いになるとかありえん」
九十郎がきっぱりと断言する。
むしろ魅力的過ぎて、俺の方が見劣りする……そう、九十郎は心の中で付け足した。
九十郎の表情が僅かに陰った事に、柘榴は気がついた。
九十郎の肩が僅かに強張った事に、柘榴は気がついた。
なんとなく、柘榴は嫌な予感がした。
直感的に、このままでは良くない事が起きるような気がした。
何をどうすればそれを回避できるのかは、まるで分かっていないが……
「出たトコ勝負、ノリと勢いで突っ走るのが柘榴流っすよね」
しかし、柘榴に迷いは無かった。
勢いのまま突っ走るのが柘榴の性格、柘榴の本質、柘榴の魂なのだから。
それは柘榴の短所であるが、同時に長所でもあった。
……
…………
………………
「んじゃあまずは脱ぐっすか。 犬子、バンザイするっすよ、バンザ~イ」
「柘榴様、犬子の方が年下ですけど、子供扱いは酷いですよ」
なお、柘榴こと柿崎景家は数え年で……いや、あえて明言は避けよう。
「じゃあ次は柘榴様の番ですね」
「うむ、よきに計らえっす」
「その台詞、柘榴様らしさが全然無いですよ」
「そりゃ威厳が無いって事っすか?」
犬子は無言で視線を逸らし、柘榴の衣服を丁寧に脱がせていく。
「柘榴様って、体つきが奇麗ですよね。
整ってるって言うか……お肌も奇麗ですし」
「毎日鍛えてるっすからね」
胸が、尻が、腰が……柘榴の女の部分が露わになる。
XX歳とは思えない極上のプロポーションは、犬子を感嘆させ、九十郎の劣情を引き出す。
九十郎の目の前で、柿崎景家と前田利家が全裸になった。
加賀百万石の前田利家はともかく、柿崎景家は九十郎にとって誰そいつレベルの知名度しか無いため、柘榴はどこまで行ってもただの柘榴だ。
自分の目の前に居る少女は、ただの柘榴、ただの女の子なのだ。
いや、既に女の子と呼べるような年齢では……年齢の話はここまでにしておこう。
「さぁて、最初は……」
「グー?」
「違うっす、最初はキスからっす。 この間九十郎にそう教わったっす」
豊満な胸をどーんと張って、犬子に教える。
「九十郎、柘榴様に何を教えてるのさ」
「お前も好きだろ、キス」
「それは……うん、それは否定しないけど」
犬子と九十郎がそんな事を話していると、柘榴は鼠に襲い掛かる猫のように九十郎に飛び掛かり、吸い付くように唇を合わせてくる。
「ちゅっ……んむ……」
10秒程そうして唇を重ね合わせ、恍惚とした表情で柘榴が離れる。
2人の重なりの深さを示すように、唇と唇を繋ぐ唾液の糸が伸びる。
「九十郎、次は犬子も……良いかな?」
恥ずかしそうに、やや遠慮がちに、犬子も九十郎にキスをせがむ。
「ああ、良いぞ。 利……じゃない、犬子、こっちに来い」
一瞬、前田利家と呼びそうになる。
自分の目の前に居る少女が、自分を好きだと言ってくれた少女が、ただの犬子ではなく前田利家である事を思い出しそうになる。
ただの女の子ではなく、歴史上の偉人なのだと……
「ん……んむ……」
犬子と九十郎の唇が重なる。
一見するとさっきのキスと同じように見えるが、九十郎の肩が強張っていた。
九十郎の肩が強張っている事に、柘榴は気がついた。
「うーむ……」
柘榴は神妙な面持ちで、顎に手をあて、自分はどうするべきかを考える。
考えて、考えて、考えて……
「……おい柘榴、無言でちOこ握るなよ、驚くだろ」
……考えた結果、何も思い浮かばないのでノリと勢いで行動する事にした。
かつて主君・長尾美空景虎が『柘榴の考え休むに似たり』と言った事がある。
その言葉は柘榴を乏しているようで乏していない、下手に考える暇があったら行動しろと激励して、同時に信じているのだ。
柘榴が勢いをつけて行動をすれば、事態は好転するのだと。
「何かこっちの方が元気無いような気がするっすから、こう……刺激してみようかなと」
「もうちょっと優しくやってくれ、男のソレはお前が思ってるよりもデリケートなんだよ」
「でり……? でりへる……?」
「全然違う! 繊細なんだよ!」
筋肉モリモリ、マッチョマンの変態が何かを叫ぶ。
「やっぱり、今日も固くならないね……」
犬子がしゅ~んと落ち込み、沈む。
視線の先にある肉棒は、ふにゃりと柔らかく垂れている。
「普段はこの後、どうしてるっすか?」
「しゃぶったり、素股……って言うのかな?
犬子が九十郎の上に乗っかって、アソコをおOんちんに押し当ててみたり、
あとは胸で挟んだり……」
「色々ヤッてるすねえ、どれどれ……」
柘榴が力なく横たわる九十郎の愚息にキスをする。
舌先を這わせ、匂いを嗅ぎ、そして口に含む。
「ん、うぅ……」
竿が腔内にすっぽりと覆われ、舌がチロチロと動き回り、性感を刺激する。
九十郎が刺激と快感に襲われる。
前田利家が同じ事をしたのなら、前田利家に同じ事をさせたのなら、九十郎の心は罪悪感で一杯になり、男の情欲に身を任せようという気分ではなくなってしまう。
歴史上の偉人に何をさせているのだ……そう考えてしまう。
だから勃つ、故に勃つ。
ただの女の子、ただの柘榴が脱ぐ姿に興奮する。
ただの柘榴が口をすぼめ、自らの男根を咥え込み、舌で愛撫する姿に興奮する。
ただの柘榴を抱きたい、ただの柘榴に挿れたい、ただの柘榴と交わり、孕ませたいと思ってしまう。
「おお、今日も元気っすね」
……結果、柘榴が九十郎のちOこから口を離した時、ソレは雄々しく、力強く隆起していた。
「何か……何か複雑な気分……」
柘榴がギンギンにした肉棒を見ながら、犬子がそう呟く。
「九十郎……」
犬子が何かを言おうとした。
犬子は何も言えなくなった。
自分では駄目なのかと、柘榴でなければ駄目なのかと……その心中を口にする事は出来なかった。
山県昌景だから助けた、山県昌景だから愛せない、ただの粉雪とは思えない。
前田利家だから助けた、前田利家だから愛せない、ただの犬子とは思えない。
何の事は無い、犬子は今、かつて粉雪が味わったのと同じ想いを抱いたに過ぎないのだ。
側室でも良いと思っていた、妾でも良いと思っていた、それで九十郎の傍にいれるのならばと。
しかし、自分がどれだけ頑張っても、どれだけ誘惑しても、ぴくりとも反応しなかった九十郎の男根が勃起するのを見ると、複雑な気分になる。
九十郎が離れていくようで、自分が九十郎に必要とされていないようで。
「こ~ら、しょんぼりしてちゃ駄目っすよ。 犬子は可愛いっすから」
そう言って柘榴は、暗い顔になりかけた犬子の頬をぐにぃ~っと引っ張る。
そして今度は九十郎の後ろに回り、両肩をガッシと掴み、力を籠めて揉み解す。
「九十郎、こっちもガチガチに固くなってるっすよ~。
肩に力入れ過ぎっす、何を怖がってるのか知らないっすけど」
「む、そうか……?」
「そうっすよ、ここ最近ずっと肩に力入れてるって感じしてたっす。
何かあったっすか?」
「何かあった訳じゃ……いや、まあ色々な、昔色々あったんだよ、俺にも」
思い出す、敗北の記憶を。
思い出す、惚れた女とダチ公が揃って秋月八雲に傅く様子を。
雌の顔になって秋月八雲の男根にむしゃぶりつき、跨って腰を振る様子を。
そして思い出す、あの日感じた痛みと虚無感を。
「犬子、挟み撃ちっす! 柘榴は背後を突くっすから、前を攻めるっす!」
そんな苦悩を、暗くなりかけた気分を、雰囲気を、柘榴の能天気な声が吹き飛ばした。
「わ、わんっ!」
犬子が咄嗟に反応し、九十郎の逸物を胸で挟む。
九十郎が一番好きな前戯だ。
普段の九十郎なら、ここで強烈な罪悪感に襲われる。
かつては情欲がそれに勝っていたため、普通に性交にまで漕ぎ着けたのだが、ここ最近は、罪悪感と自己嫌悪が情欲を上回っていた。
故に萎む、萎える。
前田利家にこんな事をさせて良いのかと、歴史上の偉人を性欲の捌け口にして良いのかと、俺のような屑が前田利家を抱く資格があるのかと……そんな事ばかりを考えてしまう。
「……こ~ら、また変な事考えてるっすね。 肩がガチガチに固まってるっすよ」
……それを止めたのは、また柘榴だった。
「……おぅ!?」
直後、九十郎の視界がおっぱいで埋め尽くされる。
柘榴の体温が、柘榴の匂いが、胸の感触が、九十郎を覆いつくす。
言うなれば顔面パイズリであろうか、九十郎の鼻先に柘榴が胸を押しあてたのだ。
「肩の力を抜くっすよ、大丈夫っすから」
それは何かを言っているようで、何も言っていない、何の根拠も無い台詞だったが……九十郎は自分の股間に力が宿るような気分になった。
どんな精力剤よりも強烈に作用し、九十郎の心に情欲を呼び覚ました。
顔は柘榴のおっぱいに包まれ、
肉棒は犬子のおっぱいに挟まれながら、九十郎はふっと笑った。
「よぅし反撃だ! 柘榴行ってこい!」
「了解っす!」
九十郎の背後に回り、動きを封じていた柘榴が、九十郎の指示の下で今度は犬子に飛び掛かる。
「わぁ!? 柘榴様裏切るんですか!?」
「裏切り内通は戦国のお作法っすよ」
「そんな作法聞いた事も……
いや、結構ありますけど、ここでそれは無いんじゃないですか!?」
「機を見るに敏ってヤツっす!」
犬子があっという間に羽交い絞めにされる。
単純な戦闘能力だけなら、犬子がやや上回る2人であったが、上司を本気で殴り倒して逃げる訳にもいかず、成すがままにされていた。
「く、九十郎ぉ……」
思わず助けを求める。
「くっくっくっ……パイズリの御礼をしてやらなきゃだなぁ……」
しかし、九十郎はニヤニヤと笑いながら、指をワキワキとさせながら犬子に近づいてくる。
助ける気も、手加減する気も全く無いのが理解できた。
「んっ……んんぅっ……」
九十郎の指が犬子のワレメに触れる。
神道無念流によって鍛え、磨かれたゴツゴツした腕であるのに、指先の動きは想像以上に繊細で、巧みで、しなやかであった。
この男は無駄に器用な男である。
「ううぅん……ぁあううぅ……」
犬子の喉から吐息が漏れる。
何度も何度も体を重ね、九十郎は犬子が感じ易い場所を学習していた。
「もうちょっと奥の方も責めてみるかな、と……」
人差し指と中指が内部に飲み込まれる。
膣内で男の指が蠢き、広がり、犬子を震えさせる。
「九十郎、目つきがやらしいっすよ」
「ははは、誰がこの状況作ったか胸に手を当てて考えてみろ」
「胸に手を当てたら犬子を抑えられないっすよ」
「ううむ、それも困るかなあ……」
九十郎がニヤニヤとサディスティックに笑いながら、さらに犬子を責め立てる。
指での責めに飽きてきたので、今度は舌先が犬子の陰唇と陰核に触れる。
「く、九十郎……汚いよ……くっはぁっうっ! ふっああっ……くっ!」
犬子の声に耳を貸さず、九十郎は舌の愛撫を続行する。
舌先がクリを這い、舐る度に、犬子の背中がビクンと跳ねた。
「んっぁふわっ! ぁあっんっ! あっふわっ!」
犬子の喘ぎ声が大きくなっていく。
ぴちゃりぴちゃり、ぐちゃりぐちゃりと水音が響き、少女の顔がどんどん赤くなっていく……
「さぁって、1週間熟成させた特濃の子種汁、一番搾りはどっちに注ぐっすか?」
犬子の顔が緩み切り、蕩け切った頃、柘榴がそんな事を言った。
犬子と九十郎が、ごくりと息を呑んだ。