転生
全てのモノに魂は宿る。そう魂は者にも物にも等しく宿る。それらは輪廻転生を繰り返す。そして、今日もまたいくつかの者と物が死に、その魂が新たな道へと旅立とうとしている。
夜、とある山の中、アスファルトで塗装された片側一車線の見通しの悪い道路。
普段であれば何の明かりも無いこの場所。いつもならこの時間帯だとそこは静かな闇に包まれている。しかし、今は崖や木々がその姿を照らし出されている。それはガードレールを突き破り、崖下に落下した車が轟々と火に包まれているからだ。
その車には五人の男が乗っていた。彼らは揃いも揃って窃盗、傷害、強姦何でもござれの札付きだった。特にここ最近のお気に入りは、街で女を車に引きずり込み、
今日は彼ら的に言えば、最初からツイていなかった。夕方頃から街で獲物を物色していた彼等だったが、一向に目ぼしい女が見つからない。さらに、日付も変わろうかという時間になってやっと見つけた獲物に激しく抵抗され、そのうえパトロール中のパトカーにちょうど遭遇してしまった。慌てた彼らは女を放り出し、逃げ出した。
実のところこれらは運、不運だけの話ではない。ここいら一帯で連続して発生する誘拐と強姦に、女性は警戒心を強めていたし、警察はパトロールを強化していたのだ。
何とかパトカーを振り切り、彼らは念の為に県境を越えてほとぼりが冷めるのを待つつもりだった。実際はこれ以上追うと重大な事故を招くと危惧したパトカーが追跡を止めただけなのだが、その配慮も無駄に終わる。県境に向かって走っていた車はカーブの多い山道で、そのカーブの一つを曲がり切れなかった。そして、ガードレールをブチ破り、崖の下どころか地獄までまっしぐらである。
崖下に落下しても頑丈な車のおかげか、彼らのうち何人かは即死を免れた。しかし、まともに動けないくらいの重傷を負った彼らを待っていたのは、車の炎上であった。燃料に引火した車は瞬く間に灼熱地獄へと化す。それはこれから地獄に堕ちるであろう彼らの、現世での予行演習だろうか。
彼らのこれまでの所業から考えれば、無残に焼かれるその姿も当然の報いだったかもしれない。彼らの魂は深い闇へと堕ちていく。ただ、一つの例外を除いて。五つの罪人の魂が地獄へと堕ちていく傍らで、一つの魂が天へと昇っていく。
☆☆☆☆
天に付いたその魂に大いなる光が降り注ぐ。そして、光から透き通った声が辺りに響きました。
「穢れなき魂に祝福あれ」
「どういういみ? ここどこ?」
状況が分からない魂は幼い口調で問い返します。炎に包まれて焼かれたいたはずなのに、今はどこも熱くないと魂は不思議に思いました。
「ここは死後の世界。貴方は死んでしまったのです」
「そ……そうなの?」
光の言葉を聞いて、魂は悲しくなりました。まだ自らの使命をほとんど果たしていなかったからです。
しかし、悲しむ魂を透き通った声が気遣います。
「悲しむ必要はありません。私が貴方を祝福します」
「しゅくふく?」
「はい、穢れ無き魂である貴方は、私の祝福を受けられます」
魂にはなんのことだか、さっぱり分かりません。
透き通った声は幼子に言い聞かせるように、ゆっくり丁寧に教えてくれます。
「罪無きものである貴方は、私の祝福によってこのまま天国で何不自由ない生活を送ることも、新たな生を始める事も出来るのです」
「んんー? ぼくは人のために生まれてきたのに、みんなをいっぱい泣かせたし、悪いことをしたよ」
「それは貴方の罪ではありません」
自分を悪い子だと言う魂を、光がはっきりと否定しました。魂は難しいことが分からないので、そうなのかなと納得しました。そんな魂に光が聞きます。
「貴方は天国での暮らしと新たな生のどちらを望みますか?」
「ぼくはねー、人のために生まれたから、ぜったい人の役に立ちたいんだ」
「では新たな生ですね。人の役に立つものですか。それなら……」
魂の望みを聞いた光は、どんなものが良いのかと例を挙げていきました。人を救う医者や薬、人々の安全を守る警察など、いろんな例を聞いても魂はぴんと来ません。
「ぼくはぼくだから、なにかに変わりたいわけじゃないよ」
「そのままの姿が良いと」
「うん、それとね。ぼくが泣かせちゃったり、痛い思いをさせちゃった子達みたいな子がもう出ないようにしたいなぁ」
光は魂の望みに合う転生先を考えました。考えて、考えて、いっぱい考えたその時、最も魂の望みに近い転生先を思い付きました。
「貴方が先程までいた世界とは違う世界に、貴方の言う様な子達が大勢いる場所があります。そして、これからも増え続けるでしょう」
「えっ、なんで増えるの?」
「貴方を使っていた者達のような、人を襲うものがいるのです」
「わかった。ぼくがそこにいってなんとかするよ!」
いまいち自分の置かれた状況を理解出来ず戸惑い気味だった魂は、自分の目の前に道が現れたように感じました。
やり方は分かっている。今まで自分の主たちは女の子をおそって悪いことをしていた。これからはそんな主達のようなやつを、悪いことを出来ないようにすれば良い。
考えがまとまった様子の魂を見て、光は転生の準備を始める。このままアノ世界に魂を送ってもあまり役には立たない。何故ならあちらでは軽油が手に入るか微妙だからだ。
光は魂へあちらの世界に相応しい器を作った。
見た目は生前のままの黒塗りボディ、全長約470cm、重量約2000kg。しかし、光は神と呼ばれることもある力ある存在。その光の御業によって作られた車体は、それそのものが奇跡の結晶である。もう彼に軽油は必要ない。
ここにハイエー●は魔法生物として蘇った。婦女子を襲う悪鬼、ゴブリンを狩る死を運ぶ車として。
おまけ(嘘設定)
クラス 不明
マスター 無し
真名 ●イエースGL
性別 不明
身長・体重 約470㎝約2000㎏
筋力 EX 人を完全に超越した力
耐久 EX 人なら死ぬような衝撃でも完全破壊までには至らない
敏捷 B 最高速は馬より早いが、小回りはきかない
魔力 D 元は一切魔力を持っていなかったので、神の加護を受けても低め
幸運 E いわずもがな
宝具 A
宝具・黒い車輪
ランクA
レンジ可変
速度によってダメージは変わる。最高速度の場合、耐えられる人間はいないと思われる。人は車に轢かれると死ぬ。