※この作品はR-18です。

夢姫伝説   作:Mr,J

11 / 21
第10話

 

午前の日差しが上って行く頃、マンションの一室の中、仕事へと出掛けようとしていたシンは、足止めをされて1時間近く待たされていた。既に会社には遅くなる事は伝えていたが、ジュリの着替えが、こうも時間の掛かる物だとは予想もしていなかった。

 

「なあ...ジュリ、まだ時間かかるのかよ?」

 

「う~ん...髪型がいまいち上手く決まらなくて...」

 

ジュリは、洗面台にある鏡を見て、前髪を整えている。彼女はネットショッピングで購入した衣服、上を白のブラウスに下をフリルの付いた白のスカートと言う、ごく普通の女性のファッションとして選んだ。

 

肩にポシェットをぶら下げて、頭に麦わら帽子。長い黒髪をツインのお下げ髪にしたファッションだった。さらにピンク色の縁の伊達眼鏡まで掛けている。

 

(ほぼ完全に変装に近いな...)

シンはジュリの姿を見てそう思った。

 

「ねえ...どう?可愛いかしら?」

 

ジュリはシンの目の前でクルリと回転しながら言う。

 

「別に良いんじゃない?」

 

素っ気ない返事に、ジュリは頬を膨らまして

 

「何よその言い方!」

 

フンッと怒って、靴を取り出して玄関を出て行く。

 

「お...おい!」

 

シンは慌ててジュリを追いかけて行く。ジュリはエレベーター前で立ち止まっていた。

エレベーターが来て、2人は下へと降りて行く。

 

下まで降りて行き、マンションの玄関前でシンは車のカードキーを取り出す。半透明の電子カードで出来たカードキーは、ホログラムのマークを動かすだけで、ロボカーのセンサーが反応して、オートで所有者の場所まで移動出来るシステムが内蔵されていた。

 

車を呼び出そうとしたシンを見てジュリが「待って」と呼び止める。

 

「ねえ...今日は、歩いて行きましょう」

 

「え...そうすると、バスで行かなきゃ行けないよ?」

 

「それで行きましょう」 

 

ジュリはシンの腕を掴んで、2人で歩き始める。

(近くにタナカコーポレーションの人が来ているわね...)

 

ジュリは鋭い観察力で、相手が近くにいる事を見抜いていた。

 

マンションから少し離れた路地に白のクーペ式のロボカーが停車していた。そのロボカーには黒のWBディスプレイを掛けているミヤギが2人を観察していた。

 

「こちらミヤギ。現在対象となる人物は、少女と思われる人物を連れて外出を始めました」

 

「了解。そのまま追跡を行って下さい」

 

「了解...行動を開始する」

ミヤギは通信を切り、車をオートで移動させる。

 

街角にあるコンビニ。レジの前に立ち、笑顔で「いらっしゃいませ」と、来店する客に対して軽く一礼し接客の態度を見せる女性の姿があった。その女性はアンドロイドであった。数ヶ月前…深夜のその店に強盗が入って来た。強盗は刃物を突きつけて、レジにいるアンドロイドに金を要求したが…、彼女は怯む様子も無く相手の要求を無視した。苛立った強盗が刃物で女性を刺そうとする瞬間、女性は片手で強盗を掴み上げて、店の外へと投げ飛ばした。この時強盗は腕の骨を折る程の怪我を負ったと言う。

 

この事件以降コンビニのレジはアンドロイドにする店が増加し始めたと言う…。

 

店のドアが開きカップルが店内に入って来て、女性アンドロイドは「いらっしゃいませ」と、軽く頭を下げる。その時、入って来た女性の姿を識別すると、相手が生身の者でない事に気付く。

相手も自分を感知するセンサーに反応し、同伴の男性に縋り寄る。

 

「シン…」

 

「どうしたんだジュリ?」

 

「あの人…、私を見ている…」

 

ジュリは、怖そうにレジの店員を指して言う。

 

「ああ…、あれはアンドロイドだよ。君を見て不思議そうに感じたのだろう」

シンは何気ない雰囲気で答える。

 

2人は買い物カゴをレジに持って行く。

会計を済ませる時に、レジにいたアンドロイドが2人に話しかける。

 

「そちらの女性の方、識別信号が認識できませんが…登録は済ませてあるのですか?」

 

「いや…まだ届いたばかりで…、これから手続きを行う予定なんだ…」

 

「そうですか…なら、今ここで済ませましょう。貴女…型式番号を教えて下さい」

 

アンドロイドは、目の前に立体キーボードを映し出して言う。

 

「XM13J・GC2000ータイプRS。ルナ・リスファー、シリーズ0031番よ」

 

凄まじい勢いでアンドロイドはキーボードを打つ。そして直ぐに

 

「未登録の型式ね…プロトタイプかしら?情報が確認出来ないわね…。製造元に連絡を取り、公式的に手続きして下さい。もし…面倒なら私が直接連絡しますが…。ちなみにそちらのプロトタイプの購入額以外での税金、保険料等全ての費用を換算すると約1億6000万円以上と予想して頂ければ宜しいのですが…勿論余った分は返金致します」

 

「うわ…、そんなにするの…」

 

「オートローンを組みますか?」

 

彼等の話を聞いたジュリは、相手が余計な事をされては困ると判断してアンドロイドの手に、自分の手を重ねた。

 

「必要ない事はしないでくれる?」

 

ジュリは、そう言うとアンドロイドの体内に電気信号を送った。その電気信号を受けたアンドロイドは素早く瞼を動かし、数分前の状態へと戻る。そして何事も無かったかの様に「いらっしゃいませ」と、軽く一礼する。

 

話が途中で途絶されたのを見たシンは、不思議そうな表情で声を掛ける。

 

「あ…あの…?お支払いの話は?」

 

「え…何の事でしょうか?」

 

「この女の子の事ですよ」

シンはジュリを目の前に出す。

 

「あら、可愛い子ですね〜。彼女さんですか?」

記憶が消えている!シンは驚いた。

 

「ねえ、もう行きましょう」

 

ジュリはシンの手を引っ張って、店の外へと出て行く。

 

「セキュリティのブロックが、意外に固かったわね」

 

「何か言った?」

 

「なんでも無いわ」ジュリは首を横に振る。

 

(さすがに裸踊りまでは無理か…)

とジュリは思った。

 

コンビニの前にあるバス停に2人は向かった。その後を追う様にして、コンビニの駐車場に白色のクーペスタイルの車が入って行く。車の中から男性が出て来てバス停にいるカップルの姿を眺めながら、コンビニへと入って行く。

 

彼はコンビニでガムを買う。

レジでWBをクレジットコードに当てて購入を済ませると、彼はレジの店員を見て話し掛ける。

 

「先程店に入って来たカップルは、どんな感じだった?」

 

「とても仲の良い2人でしたわ」

 

「そう…何か不振な点とかは、見られなかったかな?」

 

「不振な点は有りませんでしたね。むしろ貴方の方が、どうか…と思われます。その懐に入っている物なんか、特に怪しいですね」

 

そう言われてミヤギは、スーツの胸の内側に隠し持っている小型の光線銃に手を当る

 

「こ…これは、護身用なんだ」

 

「いいえ、危険です」

 

女性アンドロイドは、そう言ってレジ飛び出して来て、すかさず彼の股間に手を当てる。 

 

「こんなに大きな物をぶら下げるなんて、いけませんね…。私がゆっくりと貴方を調教させてあげますわ」

 

「こ…こら!何を言っているんだ!」

 

店内で大きな声が聞こえたと思うと、大慌てで店長が店の中から飛び出して来た。

 

「おい!ミキ何をしているんだ。止めなさい!」

 

「店長〜、私…彼の事が気にいっちゃったの〜」

 

ミキと言われたアンドロイドは、ミヤギを抱きしめて。彼の股間をゆっくり撫で回し続ける。

 

「一緒に楽しい時間を作りましょうね…ア・ナ・タ。フフ…」

 

「た…助けてくれー!」

 

 

バスを待っていたシンとジュリは、コンビニの店内が少し騒がしそうになっている事に気付く。

 

「何か…コンビニの店内が賑やかだね」

 

「あのアンドロイドが、何か始めたのかしら?」

ジュリは、クスッと軽く笑みを浮かべた。

 

バスが到着すると2人はバスへと乗り込む。バスの車内に入ると2人は直ぐ手前の座席に腰掛ける。ジュリは座席に取り付けてあるモニター画面を見ると、そのモニターに手を当てる。

 

(こちらの行動が読まれている…と、言う事は…既に組織的に準備が整えられている可能性が考えられるわね…、少し社内の様子を覗いて見る必要がありそうね…)

 

ジュリはモニター画面から、ネットワークでタナカコーポーレーション内にある監視カメラを覗き込む。複数ある通信網を瞬時に見分け、その一部に集団でデーター情報を回している場所を発見した。その付近に設置してある監視カメラから、さらに内部の状況を詳しく見る。そこには複数いる作業員達の姿が映し出され、中央付近に見覚えのある男性の姿を見付ける。

 

(成る程…、そう言う手配で動いていたのね…)

 

相手が行動に出て来たのなら…少しお灸を据える必要がある…。そう思ったジュリは、立体キーボードを映し出し、モニターを画面代わりに使い素早い指先でオリジナルのソースコードを作成し始める。

作業が終了すると(これで良し)と、呟きリターンキーを押す。それと同時にジュリの左手にうっすらと光が浮かび上がる。

 

(電子波動セッティング完了。あとは…)

 

ジュリは周囲を見渡す。前方に女子大生と思われる2人組の女性の姿を見付けた。彼女達はWBを手に持ち、仲間とのチャットを楽しんでいた。

 

(あの子達にしよう…)

 

しばらくしてシンが立ち上がり「降りるよ」と、ジュリに声を掛ける。ジュリはシンの後を追う様な感じでバスの車内を歩いて行く、その時女子大生達の近くを通る時に彼女達に当たり、1人の子がWBを落としてしまう。それを見たジュリが左手を差し伸べて小声で

 

「電子波動挿入」

 

誰にも聞こえない程の声で呟いた、その瞬間左手の掌が一瞬光った。放たれた光はWBの中へ吸収される様に消えて行く。

 

「ごめんなさい」

 

そう言いながらジュリは、女子大生のWBを拾い上げて持ち主の人に手渡す。それを受け取った女子大生は、何事も無かったかの様にWBを腕に巻き付ける。

2人はそのままバスを降りた。

 




※某投稿小説サイトでは2013年頃、今回の話の序盤部分で物語が途切れてしまったままの状態でした。
一応…それ以降の話の続きがありましたが…物語を続ける意欲がわかなくてずっと放置状態でした。
こちらで頑張って完結させたいと思っております。

どうか応援よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。