小さなIT企業のオヒィスビル。都心部に近い繁華街の通り沿いにオダ・シンが勤める会社があった。その日…シンは、少し嬉しそうに帰宅時間を待ち侘びていた。ふと…耳を傾けると、近くにいるOL達が、妙に話が盛り上がっている。
「ねえねえ…例の本読んだ?」
「ええ…読んだわ、なんて言うか…女性の心を、擽ぐるって言う感じの本よね」
「2人の決して許されぬ恋が、ロマンチックよね」
シンはOL達の話を聞いて少し嬉しそうにしていた。
「ねえ…オダさんは、最近話題の本は読みました?」
OLが、シンに話し掛けて来た。
「え…と、どんな本ですか?」
「夢姫恋物語って言う本です」
「さあ…最近本を読んでいないから…ちょっと分からないですね」
「そう言えば…本の作者って、オダ・ジュリって言う名前ですけど…オダさん知っていますか?」
シンは、内心ギクッとしたが…
「へえ…同じ苗字の人が本を出したんだ…」
と、愛想笑いをする。
チラッと時計を見ると、退社の時間が来たのでシンは席を立つ。
「退社の時間なので…今日は失礼します」
シンは急いで会社を出て行く。それを見ていたOLの1人が呟く。
「なんか…最近オダさん変わったよね…」
「そうよね、定時になると急いで帰ってしまうし、まるで恋人でもいる見たいよね…」
シンは、急いでロボカーへと乗り、音声モニターに自宅と伝えてロボカーを発進させる。
〜数日前…
ジュリは外出先の中古販売店で見付けた片式の古いPCを購入して来た。
「何で、そんな古いPCなんか購入するんだ?」
不思議そうに見ていたシンがジュリに聞く。
「私が電子波動等で調べた所…このPCのパーツ類、及び電子回路、基盤等に大きな破損、損傷などの問題は無く、OSさえ整えれば充分に操作が可能だと思ったからです。ちなみにワード等のセッティングが無い為、私が独自にOSのソースコードを作成してインストールさせます」
「で…これを使って何するの?」
「前に話した、私なりの稼ぎをします。FXとか馬券等はリスクが伴う為、まずは書籍を出そうと思います。21世紀頃から、AIで作成した映画や小説等が出て来ていますが…やはり生身の人間が作った作品の方が圧倒的に人気がありますしね…私が普通の人間と言う風にして小説を作るのです」
「成る程ね…毎日図書館に行って本を沢山借りて来た理由がそれだったんだ…」
ジュリは中古PCの画面を開き、独自のソースコードを素早く作成する。しばらくぶりにジュリの指使いを見てシンは舌を回す。
「書籍が1000万部程売れば、印税だけで生活出来る筈です」
「世の中そう甘くは無いけど…」
「書籍がダメならネット通販や、別の方法を考えます。それに何時迄もニートアンドロイドでは、貴方にも迷惑掛かりますから…」
ジュリ苦笑いしながらも、短時間で中古PCのセッティングを終わらせてPCを起動させる。復活したPCはもはやサイバーコンピュータと言う程の機能を遂げて、発動と同時に画面に複数のモニターにデータコードが流れ出る。
「なんか…別次元のコンピュータになったね…俺でも、使いこなせないよ…こんな機能…」
「慣れば簡単ですよ」
「イヤ…普通の人間には絶対に無理だと思う」
ジュリは素早い操作で独自のネット環境を機能させる。
「ちょっとネットの小説投稿サイトに小説を投稿して見ようと思います」
「どんな作品なの?」
「ある日男性が…アンドロイドの女性と出会う話です。2人の関係…その世界では人間と機械が恋愛関係至る事を禁止されていて、許されない事になっていた。それでも2人は法を破ってでも関係求め様とする…。と、まあ…こんな感じです」
「なんか…俺達の関係似ているよね…それって」
「ええ…私達の関係を元に作成して見ました。あと…日本の昔話の竹取物語もヒントにして…タイトルは『夢姫恋物語』でどうでしょうか?ハンドルネームはオダ・ジュリで…」
「オダって付けるんだ…」
「私達一緒に暮らしているのだからね…」
ジュリが物語を投稿してから日を待たないうちに、出版社からのオファーが届いた。
そして、つい…先日本が書籍化されて販売した…それは発売と同時に話題作になる。
〜現在…
シンはロボカーから自宅のマンション住宅の近くに来て車の窓から自分の部屋を見た。今日辺りジュリが自分の帰りを楽しみに待っている筈だと思っていた…。シンはジュリに本が発売されて売れている事を伝えようと思い急いで帰宅して吉報を伝えようと思った。
しかし…シンは、ふと…窓から自分の部屋がある辺りを見て不思議に感じる…
(部屋の灯りが点いて無い?)
何時もならジュリが台所で、シンの為に夕食を用意している時間の筈…。まさかジュリに何かあったのか?…思ってシンはロボカーを駐車場に置いて急いで部屋に向かう。
部屋に入ってWBで室内を灯す。室内を見渡すとジュリの気配が無い。昼間外出したままで帰って来た気配が無い。
「どうなっているんだ…これは?」
唖然としたシンは、ジュリの身に何かが起きたと感じた…そして、ふと…ある事を思い出す。
(いずれ何か起きるかもしれないが、その時は気を落とさないで欲しい…)
ミヤギは以前、シンと会った時にそう言っていた。つまり…ジュリが居ない理由は彼等が何かした…と言う事だとシンは気付いた。
その直後…
プルルーッ!
固定電話が鳴り出す。
モニター画面開きシンは電話に出る。
「はい、オダですが…」
「こんばんは、私はリンと言う者です」
相手の顔が出ない…公衆電話か、画面を開かずに掛けて来ている…。
「何か用でしょうか?」
「貴方に会って話をしたいと言う人物が居ます。是非…その方に会って貰いたいので明日にでも、お会い出来ますか?」
「残念ながら、明日は仕事なので都合がつきません…」
「その辺は大丈夫です。私の方で貴方の会社に休日の申し出を行なって起きましので…」
「勝手に会社のデータベースを操作したのですか…あなたは?」
「申し訳ありません…ただ、我が社の方も上層部が忙しく、明日以降の時間が作れる日が難しいので勝手ながら、そうさせて頂きました」
「何者なんですか、あなたは?」
「私は、しばらくの間オダさんが一緒に暮らしていた方と同じ機能持った者です…」
「え…それって、つまり…」
「明日、朝8時頃に迎えに行きますので、その様に準備して置いてください」
相手は、そう言って電話を一方的に切った。
電話が切れて、シンは事の成り行きを頭の中で整理した…。ジュリが居なくなった…。以前…ミヤギは、何か起きるかもしれない…と告げていた。そして、何者かは分からないが…アンドロイドと思われる者からの電話…。大体の予想としては、タナカ・コーポレーションが関係しているのは濃厚だとシンは読み取った。
掛けて来た相手先にシンはリダイヤルして見るが…上手い事に相手先には通じない。電話番号が残っていても…既に登録先はに繋げる事が出来ない。一度だけの電話の為に登録をした…と言う事だった。
とりあえず…明日になれば大体の事が分かる…とシンは思った。
夜、寝る時にシンは自分の布団の横を見た。しばらくの間、自分の横にはジュリが寝ていた…。久しぶりに1人で寝る寝室は妙に部屋が広く感じた…。
〜翌日、早朝…
シンは、部屋の外で相手が来るのを待っていた。本来ならば既に出社の時間で、五分前に現場に居ないと、上司から連絡が来るのだが…WBに電話が入らない所を見ると、相手が会社に休日の申し出を入れたのは間違い無さそうだった。
時刻を見ると7:59分を過ぎる…。
シンは周囲を見渡し、相手が来るのを待つ。通路には小さな女の子の姿が見えた。
(こんな時間に、この辺を歩いているなんて…学校行かないのか?)
シンは、女の子に気に留めず相手が来るのを待っていると、女の子がシンの前まで来て
「おはようございますオダ・シンさん。初めまして昨夜電話したリンです」
シンは挨拶されて驚いた。
「え…ああ、おはようございます。初めまして」
「宜しければ、下に車が用意されているので、乗って行きましょう」
リンは、手を差し伸べてシンを誘導させる。
マンションのエレベーターを降りて出入り口に来ると、2人の前には黒い高級セダンの車と、男性の姿があった。シンは男性の顔に見覚えがあった。
「おはようございます、ミヤギさん」
いきなり挨拶されてミヤギも苦笑いしながら
「やあ…おはよう」
と、軽く手を振った。ミヤギに誘われながら3人は車に乗り込む。
ミヤギは車に乗り込むと、車内のボタンを操作すると、車内の床や壁天井が森林に覆われた景色へと変わる。
「私は海が良いな」
リンは、ボタンを操作して、景色を海に変える。
3人を乗せた車は発進して、マンションを後にした。
「君には、色々と話す事がある」
「まあ…大体の予想は着きます。目的地はタナカ・コーポレーションでしょ?」
「感が良いね」
ミヤギは愛想笑いする。
「ジュリは、破壊されたのですか?」
「イヤ…我々が現在保護している」
「お姉ちゃんは強いです。簡単には倒せません…正面から立ち向かったら、私は敗北でした」
「お姉ちゃん?」
「ジュリと、リンは同じメインシステムを搭載している。彼女達は言わば姉妹の様な存在だ」
「良く分からないですが…貴方達がジュリを捕まえたのですか?」
「そうだ、少し強引なやり方だったが…」
「で…俺には、一体何の用があって、タナカ・コーポレーションに向かうのですか?」
「我が社の会長が、是非君に会いたと言うのだ。今回の一連の騒動を会長が詫びるのだろう、君は今回の騒動に巻き込まれた関係者だからね」
「成る程ね、大体の事情は分かりました」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
「ただ…1つ聞きたいのですが…貴方達はジュリをどうするのですか?」
「それは…君には残念ながら伝えられない。彼女は…元々我が社の製品だったからね、今後は我が社の研究課がどうするか決める」
そう話しをしている間に車は巨大な工場のある施設へと進んで行く。シンは目の前に広がる工場を車の窓から眺めていた。
「噂には聞いていたけど…まさか、ここまで大きいとは…」
「本社ビルは中央にある建物だよ」
ミヤギはシンに向かって言う。
シンは、本社ビルを眺める。その建物だけでも自分が勤める会社のビルよりも遥かに大きい。
「随分立派な会社に勤めて居ますね」
それを聞いてミヤギはフッと笑う。
「僕は、一度辞職した身だけどね…会社が再び受け入れてくれたんだ。前の役職には戻れなくなったけど…外交として勤めているよ」
3人を乗せた車は本社ビルの玄関前で停車する。
玄関前に立っていた警備員らしき人物が車のドアを開ける。3人は車から降りて行く。ミヤギは警備員らしき人物に一礼して、本社ビルの中へとシンを誘導させる。
ミヤギは受付にいる人物に声を掛ける。
「会長に連絡を」
「かしこまりました」
受付の者はモニターで連絡を行う。
「了解です…。会長様は最上階のお部屋で待っているとの事です」
「分かった」
ミヤギはシンに向かって
「行こうか」
ミヤギは目の前のエレベーターに2人を乗せて、建物の最上階へとボタンを押す。
エレベーターは回転式で…最上階は、建物を一周した先にあった。
「エレベーターが回転式なのは、エレベーターに乗っている間に工場内を一望出来るから…こうしてあるのだ…そうだ」
「テーマパーク見たいな発想ですね」
「まあ…そうだね。ちなみに会長室は幾つかあって…外交用や、特別なお客様には最上階の部屋を使う事がある…つまり、君は我が社にとって特別な客人と言う事になる」
最上階に到着して、ドアが開くとシンは息を呑んだ。会長のいる部屋の前には赤いカーペットが敷かれていて、壁には電子パネルを使って海で優雅に泳ぐ魚達の映像がドアを挟んで、最上階全体に映像が流れている。
下の受付の場所とは別次元の場所にシンは驚いた。
「リンは外で待っていてくれ」
「はい」
ミヤギはシンを連れて会長室のドアを数回ノックさせる。
すると…自動でドアが開いた。
ドアが開いた先にタナカ会長が外の景色を見ながら立っていた。
「会長様、オダ・シンさんを連れて参りました」
「御苦労様…。ミヤギ君は下がってくれて良いよ」
「分かりました」
ミヤギは、一礼して部屋を出る。
「どうぞ、お掛けください」
タナカは目の前にある高級感ある茶色のソファーにシンを勧める。
「あ…はい」
シンは、ソファーに腰を下ろす。上質で柔らかいソファーの感触をシンは感じとった。
タナカが向かい側に腰を下ろす頃に、執事のタチカワが中央のテーブルに淹れたての紅茶と菓子類を用意して来た。
「はじめまして、会長のタナカ・ミノルと言います」
「あ…自分はオダ・シンと言います」
シンは、軽く礼をする。
「シン君には、少し迷惑な事をさせてしまった事、我が社を代表として深くお詫び申し上げたい」「迷惑とは…どの様な事でしょうか?」
「我が社の製品が、君の場所に無断で行った事であるが」
「そうでしたね」
「アリサは、本来新製品の発表会へと提供する予定であったのだが…偶然、君と出会って君の場所に同居してしまったよだね」
「そうです…」
ジュリは研究所に行くのを嫌がっていた。シンは今日までタナカ・コーポレーションと言う会社の事は詳しく知らなかったが…どうやら、アンドロイドにとっては、あまり居心地の良い場所では無さそうな感じがした。
「今回の騒動に関して、我が社なりの迷惑保障をお付けして、今回の騒動を終了させようと思っているのですが…御要望があれば、なんなりと申し付けて構いませんよ」
「要望は、特に無いです」
「何故です?」
「自分は、特に迷惑しては居なかったので…」
予想外の発言に流石のタナカも少し困惑していた。
「そうですか…今以上の高収入先の職場を紹介して欲しいとか、女性アンドロイドを一体用意して欲しいと言えば、こちらで準備しますが…」
シンは感じた。つまり…それでジュリとの関係から手を引け…と言う事だと…。
「とても魅力的な話ではあると思いますが…自分には必要無いです。現在の生活も充実して居ますし…今の仕事に満足しているので…」
「そうですか…我々なりに君への配慮として、申し上げた次第ではあったのですが…少々残念ですね…」
タナカは、シンとの交渉決裂でお開きにしようと思った直後、シンから意外な発言が交わされる。
「タナカ・コーポレーションは、何故…ジュリ…アリサにこだわるのですか?」
その言葉に今まで表情の硬かったタナカに少し驚きの顔が現れる。
「どなたからか話を聞いたのですか?」
「2度も彼女を捉えようとしていれば…アリサが、余程重要だと誰でも気付きます」
その言葉にタナカは少し沈黙してから、WBを使って壁にあるモニターを映し出す。
「こちらを見て欲しい…」
そう言われてシンはモニターに目を向ける。そこに映っている女性を見てシンは「ジュリ⁉︎」と、思わず口に出してしまった。
美しく若い少女、長い黒髪に白い肌…。綺麗な瞳で凛とした顔立ち。つい先日まで自分と一緒に暮らしていたジュリと、ほぼ寸分の違いも見受けられない程良く似た少女…。
「彼女は私の娘だ…」
「え…?」
「名前はアリサ。15歳になって、しばらくして事故に遭い此の世から去った…突然の出来事で、私は何度も電話で妻に確認をした…。娘は病院に着く前には息を引き取っていた…。この映像は誕生日パーティを開いた時に私が撮影した物で…彼女の最後の姿になった。もし…彼女が生きていれば。今年で32歳位になったと思う…」
「つまり…ジュリは、娘さんに似せて造ったアンドロイドですか」
「そうだ…」
映像の中でアリサと言う少女は無邪気戯れて友達と一緒に楽しそうに走り周っている。
「娘の他界の後…私は信頼出来る人達を集めて『有機質細胞』と言う独自の研究の果てに、それをアンドロイドに取り組む事に成功した。それが現在の有機質アンドロイドの始まりだった。Lコアと言う自社開発した高性能のメインシステムを取り入れる事により、どんなスーパーコンピュータよりも優れた性能が発揮される。が…常に移り変わり行く時代には追いつくのが難しいと…判断して、より優れた製品開発を目指したのが…君が名付けたジュリだったのだ…」
「そうでしたか…」
シンはタナカの話を聞いて、少し気持ちが重く感じた。
「大体の事情は分かりました。最後に自分から一つお願いがあります」
「なんなりと申し上げてくれ」
「ジュリ…アリサと一度だけ話がしたいです」
「分かった…そのように手配をしよう」
「お願いします」
そう言って、シンは部屋から出て行く。部屋を出る前にタナカに一礼をした。
会長室から出るとミヤギ姿は無くリンだけがいた。
「ミヤギさんは?」
「外交の仕事で出られました。私が貴方を自宅まで送ります」
「ジュリに合わせてくれるとタナカさんが言ってくれたけど…」
「少々お待ち下さい」
リンは手を耳に当てて、誰かと会話する。
「そのようですね、分かりました。では…お姉ちゃんの居る場所まで行きましょうか」
白い小さな室内にジュリは閉じ込められていた。ベッドだけが置いてあり、出入り口にはアナログ式の鍵が掛けられていた。
ジュリは、無表情のままベッドに腰掛けていた。
部屋の鍵が開いて白衣を着た女性研究員が室内に入って来た。
「貴女に面会しに来る人がいるわよ」
「どなたでしょうか?」
「オダ・シンと言う人だそうよ」
「え…シンが会いに来てくれるの」
それまで無表情だったジュリに笑顔が浮かび上がる。
「ええ…今こっちに向かっている見たいよ」
ジュリの嬉しそうな表情を見て女性研究員はドアを閉めて、近くにいる体格の大きい男性社員に声を掛ける。
「ちょっとオカモトさん…例のアンドロイド、彼氏が来ると言った途端に、凄く嬉しそうに振る舞ったわ」
「ずっと無表情だったのにか?」
「あのアンドロイドって…かなり高性能だから、油断すると何するか分からないわよ。下手に彼氏と一緒にさせて暴走したら危険だわ」
「じゃあ、その彼氏は追い出すのが1番だね」
オカモトと言う男性社員は、ニヤつきながら拳を鳴らす。
「どう言う事ですか、話が全然違うじゃないですか⁉︎」
「何度も申し上げて居ますが、こちらでは何の連絡受け居ません、お引き取り下さい」
シンは、ジュリが保護されている施設の前に立たされて、中に入れ無い状況になっていた。
「じゃあ、会長をお呼び下さい。それで話が着くでしょう」
「会長は、既に出発されて、現在連絡が出来無い状態です」
「ちょっとリンちゃんも、何か言ってよ」
「私は、部外者なので…何も出来無いのです…」
そう話している間に、オカモトがシンの目の前に現れて
「ちょっと兄さん」
そう言うなり、彼の横顔を殴り飛ばす。
「グッ、何するんだよ!」
シンは鼻血を出しながら起き上がる。
「聞き分けの悪いヤツには、お仕置きが1番だよ!」
今度は大きな足でシンの腹部を蹴り出す。
「ちょっとヤメテ、こんな事するなんて酷いじゃない!」
「うるせえ、機械黙ってろ!」
その言葉にリンはムッと相手を睨み付ける。
オカモトは、シンを起き上がれ無くなるまで殴り付ける。
ボロボロ状態になって、オカモトはシンに向かって言う
「ゴミクズは黙って家に帰れ」
シンは顔中が血塗れになり、身動きが取れ無くなっていた。
側に居たリンが涙流しながら彼を持ち上げて急いで車に乗せて病院へと運んだ。
シンが来るのを待ち侘びていたジュリは、女性研究員が再び入って来たのを確認する。
「アリサさん、そろそろ再調整の時間が来ました」
「え…シンは来ないの?」
「シン…ああ、そう言えば、施設前で中に入れとか言ってた人がいましたね」
「どうして来ないの?」
「ウチの社員が追い返しました。あまり聞き分けが無かったから、殴り付けたようです…ゴミクズ見たいにボロボロになったって言ってました」
研究員は笑いを堪えながら言う。
その言葉にジュリが目を大きくした。
「シンを傷付けたの!」
「そんな感情も直ぐに忘れるるから心配しないで、もう直ぐ貴女は…されるままの雌イヌ見たいになるのだから…」
「許さない…あなた達全員絶対許さない!」
ジュリは真剣な眼差しで相手を見ていた。
外出中のミヤギにリンから連絡が届く。
「大変、シンが社員に怪我を負われたの」
「何だって!どう言う事だよ、ソレ⁉︎」
「今、病院で手当てを受けているわ」
「本当か⁉︎」
「ウン、私も目の前で見ていたの…シンが会長の許しで、お姉ちゃんに会おうとしたところを暴行を受けたの」
「マズイぞ…これは…」
「どうして?」
「もしジュリの耳に入ったら暴走しかね無い…」
「え…そうなの?」
「僕は急いで工場に戻る、リンはそのままシンの側に居てくれ」
「分かった」
ふとリンはシンが使っていて、治療の際に外されて看護師手渡されたWBが点滅するのを確認して、画面を開く。
『今夜、会いに行きます。ジュリ』
(え…お姉ちゃん、どう言う事?)
文明時代の小さなオフィスビルの一室でパイプ椅子を並べて横になって寝ているムラタ、つい数日前に彼は青森までタクシーで乗せられたが…タクシー会社のコンピュータ不良と言う理由で、料金の支払いは免除された…が、帰りには少し日数を要した。
そんな彼が自分のWBが点滅するのを確認して画面を開いた。
それを見るなり、ガバッと起き上がる。
「お…オイ!シライシ、急いで出掛ける準備をしろ!」
「どうしたのですムラタさん?」
ムラタは近くでWBで遊んでいる社員を見つけて
「お前も暇だったら一緒に来い」
と、小型カメラを持たせる。
「ちょっと、何があったんですか?」
「もう直ぐ…ドデカイ花火が打ち上げられるぞ…特ダネだ」