※この作品はR-18です。

夢姫伝説   作:Mr,J

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最終話 後編1/2

数名の研究員に付き添われてジュリは施設の長い廊下を歩いて行く。両手にはアンドロイドでは外せない特殊な紐が巻かれていて、下手に逃げ出す事が出来無い状態だった。

施設の地下最下層にある1番奥の部屋の薄暗い室内に連れ込まれてジュリは特殊素材の電子器具ベッドに寝かされる。両手足首を特殊な金属で固定される。

 

「フン、私達を許さないとか言っていた割には呆気無い最後ね…、ミヤギ達が彼女を捕まえるのに随分苦労した様だけど…これで終わりね。もう少し楽しませて貰いたかったけどね…」

 

ふと、女性研究員がジュリを見て見ると、ジュリはフッと笑みを浮かべていた。

薄気味悪くなった女性研究員は、側にいる男性に再調整の電源を入れる様に命じる。

*

本社ビルの屋上、連絡を受けて急いで戻る事にしたタナカ会長の乗ったヘリが、バラバラ…と轟音を立てながら屋上へと降下する。ヘリの羽根が折りたたみ、両サイドにあるエアー噴出口でバランス良く降下して、警備員がヘリのドアを開ける。タナカがヘリから降りると…屋上には、一連の出来事をミヤギから聞いたキクチが、会長の戻りの報告を受けて待っていた。

タナカはキクチを見るなり険しい表情で言う。

 

「一体誰が命令したのだ、オダ君に暴行を加えろ…なんて愚かな指示を出したのは?」

「分かりません…我々も、その様な事態が発生したのは先程聞いたばかりであります」

「とんでも無い事をしてくれたな…これで全ての計画が台無しになってしまったようだ。アリサが、このまま、大人しく我々に従うなんて思わない方が良いぞ」

「そのアリサですが…既に再調整に取り掛かっているそうです」

「キクチ君よ、お前も…彼女を捕えるのに、我々が苦労したのを知っている筈だろう?アレが何もせずにする訳が無い…、ただ気掛かりなのは、オダ君が暴行を受けた事をアリサが知っているかどうか…だ。それでアリサの動きも決まる筈だ」

「そうでしたか…では、研究員に直接問い詰めて見ましょう」

「ああ…そうだな」

 

2人は以前アリサを追跡に使っていたコンピュータフロアへと向かう、そこには先に到着していたミヤギの姿があった。ミヤギはモニターを使ってアリサが再調整されているアンドロイド用の手術室の映像を見ていた。

 

「ミヤギ君、何か変化はあったかね?」

「あ…会長、お疲れ様です。現在のところ何も変化は起きていないですね…」

「このまま何も起きない…て事は、無いでしょうか?」

 

キクチが何気無く言う。

 

「アリサが何もしないとは思えない…必ず何かする筈だ…」

「研究員のイチムラ・エミさん、一つ訪ねたいが…良いかな?」

*

アリサの再調整を先導して行っている女性研究員のイチムラがモニターからの連絡に応じて

 

「何でしょうか?」

 

と、対応を行う。

 

「君は、オダ・シンと言う人物が暴行を受けた事をアリサには伝えてはいないよね?」

「伝えましたが…、それが何か?」

 

それを聞いたコンピュータフロアにいる3人は、深い溜息を吐く。

 

「最悪の事態になりそうだ…」

「心配する事は無いですよ、既に再調整は始まっていて、もう最終段階まで来ていますので…」

 

彼女は近くでデータのモニターを監視している男性に声を掛ける。

 

「どう…?あとどの位で終わりそうなの?」

「それが…その、全く変化が無いのです…。記憶をリセットした段階に発生する波長が全く見られません…」

「何言ってるの、もう始まって30分以上は経過しているわ!普通のアンドロイドなら15〜30分以内には終わる筈よ!一体どうなっているのッ!」

*

それをモニター越しで見ていたミヤギが男性に向かって言う。

「データのモニターを別の数値表に変えて見てみろ、何か変化がある筈だ」

*

男性は、ミヤギの指示を受けて、他のデータ表を調べる。そしてある数値を見て男性は「ヒィ!」と、大声を出して後退りする。

 

「あ…あり得ない、こ…こんな事、信じられない」

「何が分かったの、はっきり言いなさい!」

「ア…アリサは、再調整の電気エネルギーを全て体内に吸収しています」

 

それを聞いた全員が驚く。

 

「エネルギーを取り込んだ能力の数値は…通常のアンドロイドがリミッター解除時に発生する数値の約千倍以上です!」

*

それを聞いてタナカはガクッと肩を落とした。

 

「始まってしまったか…」

「再調整の電気エネルギーを逆に利用して自分の物にしてしまうとは…普通のアンドロイドでは到底思い付かない行為だ…全く恐ろしいヤツだ」

 

ミヤギは唖然としながら言う。

 

「スーパーアンドロイドの誕生って言う事ですね」

 

キクチは皮肉交じりに言う。

*

「そ…そんな事…ある訳無いわよ!何かの間違いだわ!」

 

イチムラがそう叫んでいる後方で、バンッと大きな音が響く。イチムラが震えながら後ろを振り返るとジュリは手足を固定していた金属を自ら引き裂き、電子器具ベッドの上に立っていた。

彼女から透明の陽炎の様な揺らめきが全身を覆っているのが確認出来た。

ジュリは監視カメラを見るなり、軽く手を振ると、コンピュータフロアにある全てのモニターがシャットアウトされた。

*

「恐ろしい事態ですよ…これは…。恋人との関係を引き裂かれ、更に…その恋人を傷付けられたのだから…普通に考えれば、単なる仕返しですが…ここまで能力を高めたとなると…建物の1つや2つ破壊する覚悟が考えられます、それに…いずれ我々にも怒りの矛先が向けられるでしょうね」

 

キクチは唖然とした表情で言う。

 

「ミヤギ君、リンちゃんを呼んで、食い止めて貰えないか?」

「無理ですね、前回の時でさえ…ジュリはあらゆる応用技術でリンを怯ませた程です。それに加えて今はとてつも無いパワーを手に入れたとなると…もはやリンでさえ足元には及ばないでしょう」

 

それを聞いてタナカは激しく悔やんだ。

 

「僕は現場に向かいます」

 

ミヤギは、コンピュータフロアを飛び出して行く。

 

「キクチ君、放送部を通して、社内にいる全ての従業員達に避難指示を行ってくれ」

「了解です」

 

キクチは放送部に連絡を取り入れる。

*

ジュリは、ガラスを挟んだ向かい側にいるイチムラを見てニコッと微笑み掛ける。

イチムラはジュリの微笑みが恐ろしく不気味に感じられた。

 

「な…何て化け物なの…あのアンドロイドは…」

 

ジュリは軽く手を振った、それと同時に室内の電気が消える。

周囲が暗闇に閉ざされた…と同時に何処からかバンッと何か叩く音が響く。

消灯時に点灯する予備電源が灯りを照らしオレンジ色の光が発生する頃、イチムラと男性の前にジュリの姿があった。

 

「さて…貴女には、どんなお仕置きが良いかしら?雌イヌの様にされまくる毎日を送る…って言ってたわね…確か…」

 

イチムラは震えながらジュリを見ていた。既にお互いの立場は完全に逆転していた。

 

「な…何が狙いなの…貴女は?」

「言った筈よ、あなた達全員許さない…と」

「クッ…」

 

イチムラは年貢の納め時か…と諦め掛けていた。その時、男性社員が後方からゆっくりとジュリに近付き鉄の棒で殴り掛かろうとしていた。イチムラはコクッと男性社員に頷く。

男性社員は勢い良く鉄の棒をジュリに目掛けて振り下ろす…が、ジュリは振り返る事無く片手で鉄の棒を受け止めた。

 

男性社員は両手で力一杯鉄の棒を引っ張っるが、ジュリが掴んだ鉄の棒は彼女の手から離れなれず。ジュリが振り返らずに、鉄の棒を軽く振り上げると、男性社員は勢い良く天井まで振り飛ばされ、落下して、そのまま気を失った。

ジュリは、気を失った男性社員の方を見た隙にイチムラは急いで室内を飛び出した。

*

逃げるイチムラは目の前に現れたOLアンドロイドを見付けて話し掛ける。

 

「助けて、アンドロイドが暴走し始めたわ。アイツを捕まえて!」

 

OLアンドロイドは部屋から出て来るジュリを見て構えを取る。

 

「部屋に戻りなさいアリサ、こう見えても私は格闘技の武術をインストールしてあるのよ、大人しく戻れば怪我をしなくて済むわよ。自慢では無いけど…私はアンドロイド格闘技女子の部で全国大会を優勝した身なのよ。貴女みたいなアンドロイドは、一撃で行動不可能にする事が出来るわよ」

 

OLとは思えない構えをしたアンドロイドを目の前にしてもジュリの姿勢は変わらず。

フッと笑みを浮かべ、数十メートル離れてる中を一瞬にして相手の懐へと接近する。

 

「はい、終わり」

 

そう言ってジュリが相手の顔を軽く叩くと、OLアンドロイドは気を失ったかの様に倒れた。

ジュリは、相手の様子を見ずに廊下を歩いて行く。少し歩くと前方に女の子姿のアンドロイドがジュリの前に立ちはだかる。

 

「コードネームXM13J・GC2000ータイプRS。ルナ・リスファー、シリーズ0031番。アリサ、勝手な振る舞いは許さないわ!貴女の行動は我が社の規則を一脱しています。それに加え国が認めた法案にも反しています。これ以上の無駄な行為、及び抵抗を繰り返すのであれば、私は貴女を国家反逆罪として…」

 

女の子が話しを終える前にジュリは女の子の頭に手を当てる。

 

「うるさいわね」

「あ…何を⁉︎」

 

ジュリが手を離すと女の子は放心状態で壁に背を乗せながらアヒル座りする。

 

「アハハ…私マナちゃん可愛い子だよ〜」

「気分はどう?」

 

ジュリが近付くと女の子は震えながら後退りする。

 

「イヤン…マナ怖い人キライ、あっちへ行って!イジワルするとマナ泣いちゃうもん!」

 

女の子は指を加えながら身を捩らせる。その仕草から女の子アンドロイドは頭の中のデータが書き換えられて外観とほぼ同じ幼児体形になっていた。

ジュリは更に歩き続け施設の階段を上って行き、出口付近へと向かう。すると前方に巨漢のアンドロイドと女性社員の姿があった。

 

「レオ、イチムラさんが言ってたアリサって言うアンドロイドよ、貴方の力でアイツを捩じ伏せてやって」

 

後ろに控えていた女性社員がレオと言う巨漢のアンドロイドに言う。

 

「任せな、一捻りで倒してやる!」

 

レオが大きな拳をジュリの顔面目掛けて振りかざす、ジュリは避ける事無く拳を片手で受け止めて、両手で、レオの腕を掴み上げて、自分よりも大きな巨体を軽々と投げ飛ばす。

ジュリは倒れたレオの側へと行き、起き上がる前に相手の顔に近付き頭に手を当てた。

 

「グワッ」

 

レオは大声を立てて、しばらく身動きが取れなかった。

事が済むとジュリは何事も無かった様に施設の出口へと向かう。ジュリは女性社員を横目で見て、軽く笑みを浮かべてながら施設を立ち去って行く。

 

「ねえ…レオ大丈夫?」

 

女性社員がレオの側へと行き無事を確認すると、レオは起き上がり瞬きして女性社員を見る。

 

「ウホッ、ネエちゃん、チョー可愛いじゃん!彼氏居るの?」

 

レオはいきなり抱きつくが、女性社員は力一杯でレオを引き離してレオから離れる。

 

「チョーオレ好みって言うかーサァ…オレと一緒にお茶しない?」

「レ…レオ、アンタちょっとおかしいよ…どうしちゃったの?」

「オレいつでもチョークールだぜ、ねえ一緒に写メ撮ろう」

「ちょっと、こっち来ないでー」

「ウヒョー逃げないで、オレもうアンタにムチューなんだぜ!へへ…」

 

逃げる女性社員にレオは両手を広げて追い掛けて行く。

*

本社ビルへと逃げ込んだイチムラは、既に避難指示が出されて受付カウンターがあるロビーは、もの抜けの殻だった。誰もいないフロアをウロついているとエレベーターが降りて来て、ドアが開くと中からミヤギの姿が現れた。

 

「コッチへ来い!」

 

ミヤギはイチムラの腕を掴んで近くにある用具庫のドアの中へと入る。

 

「ねえ、ミヤギあのアンドロイドの暴走何とかならないの?」

「悪いけど…今回ばかりは手の打ち様が無い」

「そんな!元研究員でしょう?何か相手を破壊するとか、特殊部隊を派遣するとか…作戦は無いの?」

「唯一彼女の暴走を食い止める事が出来るオダ・シン君を君達は暴行してしまったんだ。彼女からして見れば…これは復讐であり、我が社の建物さえ破壊する覚悟だ。特殊部隊を派遣しても犠牲者を増やすだけだ。君達は早まった行為をした、もはや謝っても許しては貰え無い状況だ。我々は彼女の怒りが収まるまで大人しくするしか手段は無い」

「そんな…、たかがアンドロイド一体の為に、私達は指を加えて見ているの?」

「その…たかがアンドロイドでも、彼女には感情がある。誰だって自分にとって大切な人を傷付けられると相手を恨む筈…それと同じ事だ。君達は何故それに気付かなったんだ?」

 

それを聞いてイチムラは、ジュリがシンが来ると知った時に嬉しそうな笑顔を見せたのを思い出した。

 

「そうね、軽率だったわ…。ところでミヤギ…貴方は彼女の味方なの?」

「イヤ…僕は会社の人間だ、君を逃す為に来た。何とかしてアイツを足止めさせる、その間に施設から離れろ」

「分かったわ、ありがとう助けに来てくれて…」

 

イチムラが倉庫から出ようとする時にミヤギが「ちょっと」と、声を掛ける。

 

「WBを僕に貸してくれ。アイツは君のWBのコードを確認してこっちに向かって来る筈だ。生身の体なら遠くに逃げてしまえば、追っては来れないと思う」

 

イチムラは言われた通り自分のWBをミヤギに手渡す。それを受け取ったミヤギはイチムラを倉庫の裏口のドアを開けて逃す。

ミヤギは倉庫を出て、建物の内部の通路へと走る。人気の無い場所へと進むと反対側からジュリの姿が現れる。

 

「ミヤギ…貴方、何かと私達の前に現れるのね」

「腐れ縁ってヤツかな」

「あの女は何処に行ったの?」

 

ジュリは周囲を見回す。

 

「残念だけど、君に教える義理は無いね」

「貴方にも色々と聞きたい事は有るけど…今は他に用があるから失礼するわ」

「悪いけど、そうはさせない!」

 

ミヤギは懐から光線銃を取り出してジュリに狙いを定めて撃ち放つ。

チュンッ!チュンッ!

光の速さで、光線銃が何発か撃たれるが…ジュリは、光線銃よりも早くに自分の前に強力なエアバリアを作り出して光線銃を跳ね返す。

 

「そんなオモチャじゃ、私は倒せないわよ」

「クッ…」

 

ジュリはミヤギに向かって指を軽く折り曲げる。するとミヤギの手にあった光線銃がジュリの方へと飛んで行く。ジュリは光線銃を掴むと片手で簡単に握り潰し、それをミヤギの方へと投げ返す。

 

「しばらく、その場所に居なさい」

 

ジュリは、軽く手を振ると後方のシャッター降りる。ミヤギは後ろを振り返り、そして前方のシャッターが降りる音に気付き前を見るとジュリの姿が視界から消えようとしていた。

 

「貴様ー!」

 

ミヤギは、1人通路の中に閉じ込められてしまった。

*

ジュリは相手の事など気にせず本社ビルのフロアへと向かう。本来ならば、人気が溢れ活気的な場所であるが…現在は、彼女が暴走した…事により、安全を重視してタナカ会長が職員達に避難指示出して、ビル自体をもの抜けの空にしてしまったからである。

 

ジュリは受付カウンターにあるディスプレイに手を押し当てると、複数のメインモニターを表示させる。そして、素早い指の動きで、独自のソースコードを作成し、オリジナルモニターをその場で、作り上げる。それにより、立体ディスプレイ式のモニターが完成されてジュリは、それを操作させる。それにより目の前に複数のディスプレイと共に社内の全ての監視カメラがジュリの目の前に現れる。様々な場所で避難している人々の姿が次々と現れる。

 

会話さえも聞こえて来た。ジュリは何十個以上もある監視カメラを流す様に捲って行く中、一ヶ所のモニターに目を止める。

 

(イチムラ、逃さないわよ)

 

ジュリは軽く笑みを浮かべる。

 




後編2/2に続きます。
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