- 亜希菜視点 -
私は人見くんの夢の世界がとても気に入ってしまった。
最初の飛行練習の時は心底驚いて取り乱してしまったけど、その後の彼の対応はすごく良かった。
常に私の事を考慮し、無理のない教え方をしてくれていた。
私が失敗しそうな時は常にサポートしてくれる。
今の彼は私を犯し、辱めた人物とは別人の様だ。
そして彼の夢の世界は素晴らしかった。
いつも明るい空と青い海、彼の創った不思議な生き物たち、ディズニーランドのアトラクションの様に様々な特徴を備えた島々が私を迎えてくれた。
人見くんは私に夢の世界のルールをいろいろ教えてくれた。
夢の世界は自由な様で、実はいろいろ不便だ。
まず願わない事は叶わない。
自分がこうなって欲しい、こうしたいと明確に想わない限り叶わないのだ。
思いついたことがポンポン実現するわけではなく、特殊な思考パターンが必要だ。
この世界にきて自分の服装を変えることから教えてもらったが、しっかり頭の中で自分の着たい服のイメージを思い浮かべて初めて着たい服が着れた。
イメージが明確でない時は服はまるで靄の様にまとわりつくだけで、身体のラインがはっきりとわかるほどにまで薄れてしまった。
人見君が見ていたので、内心すごく焦っていたが、何事も無かった様に次の服に意識を集中した。
そのうちコツが分かってきた。
明確に服のデザインを思い浮かべた後に、自分がその服を着ているイメージを描くと、スムーズに着替えることができた。
思考の順序も関係するのだ。
何も考えなくても自分の意思に関係なく勝手に流れていく、現実世界とは大違いだ。
人見君が理屈っぽく、論理的過ぎる性格なのはこの夢の世界の仕組みに慣れすぎたせいだと思う。
ただ、しっかり願った事は確実に実現される。
私は現実世界ではあり得ない、大空を身一つで自由に飛び回る事でその素晴らしさを味わった。
それは本当に気持ちの良い体験だ。
現実世界の疎ましい事を全て置き去りにして、高速で空を飛び回る事はかつてないストレス解消になって私を虜にした。
私を虜にした物は他にもあった。
巨大な空飛ぶクジラの背中に住むデフォルメされたウサギ達だ。
彼らは人のように後ろ脚で立ち、人語を話す。
彼らは最初は私の事を無視していたが、しつこく話しかけるうちに、少しづつ打ち解けて私の事を認めてくれた。
私は比較的容姿に恵まれたためか、多くの人から声を掛けられる事が多い。
私は私が望まない会話を、相手を傷つけず、いかに断るかにいつも苦労していた。
ただし、ここのウサギ達は違った。
私を徹底的に無視した。
ウサギだから当然かも知れないが、私が関心を持って欲しいと思ったのに、それを無視する存在がとても新鮮だった。
私は知らず識らずのうちに傲慢になっていたのかもしれない。
なんとか彼らに私の存在を認めてもらおうとした。
何回も通ううち、ようやく彼らは私を認めてくれた。
私の姿を見ると声を掛けてくれ、私の事を褒めてくれた。
誰に褒められるよりも嬉しかった。
私はウサギ達が大好きになった。
ウサギ達とのたわいもない会話は私を癒やしてくれる。
日頃の『皆に好かれなければならない』という張り詰めた緊張から、私を解放させてくれた。
こんな素晴らしい世界を創った人見君が、あのおぞましいレイプ犯と同じ人物だとはとても思えなかった。
人見君は常に私を見守り、サポートしてくれる保護者の様な存在だ。
最初の頃は私も常に警戒していたが、この世界に着て彼が最初に私に拳銃を渡し、何かあったら自分を撃てといった時、彼が改心しようとしている事を感じた。
私は人見君を信じることにした。
何よりも、この夢の世界が楽しくほぼ毎晩訪れた。
彼は夢の世界では完全な紳士になっていた。
本当に心を入れ替えたのかもしれない。
私は徐々に心を許し、彼と自然に接する様になっていた。
それどころか、私は彼に好意さえ持ちはじめてしまった。
彼は何度も私の危機を救ってくれる。
私はこの世界が楽しくてはしゃいでしまい、危険な状況になった事が何度かあった。
その度に彼は身を呈して、私を守ってくれていた。
私はこの世界で怪我をしても、夢から覚めれば元に戻るが彼は別だ。
それでも彼は私を救おうとしてくれる。
そんな状況で女子なら好意を持たないはずが無かった。
それに学校では全く気づいてなかったが、人見君は整った顔立ちをしていた。
銀縁眼鏡であまり目立たないけど、一部の女子が知的男子と噂していた事は知っている。
無口で近寄りがたい感じがするため、私は意識して彼を見た事が無かった。
今では彼のことが気になって仕方なかった。
私がこの世界で無茶をするのは、夢から覚めれば全て元通りになるという安心感もあるが、彼の気を引きたかったという事もあったからだ。
ただ、それは表に出さない様にしていた。
やはり最初に知り合うきっかけがレイプ行為だと思うと素直になれない。
出会った頃の孝典君の姿をした彼と、今の人見君は全くの別人としか思えないけど、彼の中にあのいやらしい願望は確かに潜んでいるのだ。
私が彼を素直に受け入れる事が出来ない最大の理由だ。
ただ、うらはらに心の中では彼への好意は日増しに大きくなっていく。
そして自分自身まったく認めたくはないが、もう一度彼に抱かれたいと思う『私』がいた。
自由を奪われ一方的に犯されただけの行為は、私にとって屈辱以外の何物でも無いはずだった。
それでも強制的に与えられた、淫らな快感だけはしっかり身体に残っていた。
夢の世界を訪れている時にも、あの忌まわしい行為を思い出す事があったが、最初の頃の憎しみは消え、今では下腹部に焔が灯った様にじんわりと熱くなる。
簡単に言うと欲情していた。
私は自分の反応が信じられなく、彼が私の心を操ろうとしているのかと疑ったが、冷静になって考えると私のこの反応は正常なものにも思えた。
要はあの時の快感をもう一度味わいたいのだ。
何度も気を失うほどの快感を与えられたこの体は、もう一度あの行為を強く求めていた。
でも、そんな事は口が裂けても言えなかった。
私は自分の矛盾した気持ちに苦しみ、混乱もしていた。
それは彼への挑発という形で現れた。
最初は全身を隠す様な可愛げのない服ばかり着ていたが、彼に好意を感じ始めてからはだんだんと露出度が高いものに変わっていった。
自分で言うのもなんだけど、私は容姿に恵まれスタイルは良い方だと思う。
現実世界ではそれをアピールする様な事は恥ずかしくてできないが、夢の世界で彼に対しては積極的にそれをアピールした。
初めてホットパンツを履いた時は彼は少しドギマギしていて、時折、私の足にチラチラと目が行く様子に私は満足していた。
私はもっと彼に見て欲しくて、ますますエスカレートしていった。
もちろん恥じらいはあったが、それ以上に彼の反応を見るのが楽しかった。
私の服装が薄く軽くなる度に彼は少し顔を赤らめ、私から視線を外す。
それでも彼がチラチラ私を見ている事はバレバレだった。
これ以上挑発を続けると、そのうち襲われるかもしれないなと思ったが、その頃にはそれでもいいと思っていた。
内心はそれを期待していた。
膝上20センチのスカートを履いた時はさすがに彼もそれだと私の後ろを飛べないと言ってきた。
私は見られても平気なパンツだからと答えたが、彼を誘惑する事に必死にすらなっていて意を決しての行動だった。
少し前に、私は女性として欠陥があるのではと思わせる様な目にあっていたからだ。
ある日、クジラの上の街で二人でオーロラを見る機会があった。
空一面を覆うオーロラは、とてつもなく幻想的で言葉では語れないほど美しかった。
そしてそのシチュエーションは私たちにとっても最高の物だ。
私は空を見つめ、彼は私を見つめる。
ふと目が合い、私はこの体験をさせてくれた彼を愛おしく思い、彼にもたれかかった。
私はもう覚悟ができていた。
このまま抱かれてもいい。
夢の世界だからという解放感もあった。
あの時の快感をもう一度味わいたいと言う思いも強く、はしたないと思いつつもいつの間にか股間が潤んでいた。
彼は身を固くしたままで、そのまま動きは無かった。
普通ならここで肩を抱くなり、キスしてくるなりあってもいいはずだ。
しかし、そのまま何もない。
業を煮やした私は彼の腕に抱きついた。
自然に胸が彼の腕に押し付けられる。
彼はビクリと身じろぎした。
私の鼓動が高鳴っていた。
「本当に綺麗だね」
私は微笑みながら彼に話しかけた。
「あ…、ああ」
ぎこちなく彼が答える。
“キスしてもいいよ“
さすがにそこまでは言葉にできなかった。
そのまましばらく時間が流れる。
これ以上、言い寄る方法を私は知らない。
「もう帰ろっか」
唐突に彼はいった。
私は急に熱が冷め、私一人で盛り上がっていたみたいで恥ずかしくなってしまった。
その日はそのまま帰ったが、後になって私は猛烈に頭にきていた。
普通、あの状況でそのまま女子を帰せるものだろうか?
生まれてこの方、あそこまで積極的に男性にアプローチした事は無かった。
彼は見事にそれをスルーしてくれた。
私の自尊心は打ち砕かれた。
彼が心を入れ替えて反省している事はよく分かるが、それでもあの状況なら私の気持ちを理解してくれてもいいはずだ。
私に魅力を感じていないのだろうか?
でも、それなら最初から私を選んだりしてないはずだし、日頃の彼の言動は私に好意を持っている様にしか見えなかった。
やはり一番最初に私を辱めた事が、今となっては彼の心のブレーキになっているのだろう。
私は彼のそのブレーキを打ち壊すことを決意した。
傲慢な考えだが、彼を私の女性としての魅力で落としたかった。
少し間違っている気もしたが、今の状況は私の存在を否定されている様な気がして悔しい。
恋愛で言えばもう振り向いてくれてはいる。あとは彼をどうやってその気にさせるかだ。
その方法を考えながらその日は眠りについた。
そんな出来事があって後日、私はあざといとさえ思えるミニスカートを履く事にしたのだ。
これだけ一緒に遊んでいても、出会いが出会いなだけに、二人とも恋愛や性的な話題は避けてきた。
それは私を警戒させない為の彼の配慮からだが、それもあって今まで続いてきたのだとも思える。
最初の頃にそんな会話があったら私も警戒して、彼の元には来なくなっていただろう。
おかしな事に、今ではどうやって彼をその気にさせるか苦心していた。
その日も空飛ぶクジラへ向かっていた。
スカートで空を飛ぶのには若干抵抗があった。
いくらペチパンを履いているとはいえ、ちょっと動くだけでスカートの中は丸見えだ。
いつもは私の少し後ろを飛ぶ彼も今日は横に並んで飛んでいた。
巨大なクジラが見えてきてその背にある街に舞い降りる。
スカートが大きくめくれ上がり、おヘソまで丸見えになった。
さすがに恥ずかしくて、思わず前を押さえる。
着地して振り返ると、メガネをしていてもわかるほど彼の顔が赤くなっていた。
こんなカッコをして恥ずかしがる私も変だが、彼の純情さもよくわからない。
あんなエッチなことしてたくせに…。
夢の中で無理やりとはいえ、私の処女を奪ったのは彼だ。
彼だけが私の体を隅々まで知っている。
私がこんな風にエッチな妄想を抱く女になってしまったのも彼のせいなのだ。
彼には私をこんな風にした責任がある。
しかし、どんなにセクシーな服を着ても彼は恥ずかしそうに私を見てくれるが、一向に一歩引いた姿勢は変わらなかった。
私から手を繋いだり、寄り添ったりしてみると、彼はとても嬉しそうな顔はするのだが、決してそれ以上踏み込んでは来なかった。
ある晩、私は途方に暮れていた。
今日も彼とは仲良くお友達で別れた。
私が彼にアプローチし始めてもう1ヶ月近く経つが、彼のガードは想像以上に硬かった。
私を大切にしてくれているのは良くわかるし、端々から伝わってくる。
でも、もうガードしなくても良いのに…。
私はとっくに彼を許していて、彼が何かあったら撃てといって渡された拳銃もすでになくなっていた。
ここまでやってダメなら、もうこちらから言葉で言うしかないのかな?
でもなんて言えば良いんだろう?
それとも全裸で寄り添えば、さすがに彼も私の気持ちに気づくだろうか?
彼に襲われたのは2年生になってすぐの頃だ。
当時はこんな気持ちになるなんて全く想像していなかった。
女は初めての男に夢中になると聞くが、今の私がまさにそうだった。
彼が欲しかった。
また全身を舐め回され、いじられ、無茶苦茶にして欲しかった。
こんな事を考えてしまうなんて…。
私は自己嫌悪に落ちいった。
よし、明日はもっとセクシーな衣装で行こう。
最近見たファンタジーアニメのコスプレだ。人見君からアニメの話は聞いた事がないけど、とてもセクシーだから気に入ってくれるかな?
私はあれこれ考え、悶々としながら眠りについた。
翌晩、私は夢の世界で彼に恐竜ハントをしようと提案した。
コスプレ衣装を着るのにも意味もなく着ていたら変だと思ったからだ。
恐竜ハントならいい理由付けができる。でも、いつも彼は危険だという理由で敬遠していた。
自分が造った島ではあるが、使える能力に色々制限をかけていると聞いた事がある。
そうしなければ全く面白みがない事もこの世界に来てよく分かっていた。
ただ、これまで何度か訪れたがそこまでの危険は感じられない。
まるでリアルなゲームの世界にいるようで、私には十分楽しかった。
今日も彼ははじめは難色を示したが、結局行く事になった。
私としてはその島に行かないとコスプレする理由が無くなるので、どうしても行きたかったのだ。
島について事前の準備を始める。
私は雰囲気を出すためと理由を着けて、昼の間によく研究したコスプレ衣装への着替えを念じた。
思ってた以上に過激だった。
ブラにあたる部分は前が繋がっておらず首筋からヘソの下まで大きく開いていた。背後から回された薄い金属板がちょうど乳首の上で留まり、辛うじて胸を隠している。
繊細なレリーフと宝石が散りばめられ、デザインも素晴らしいが、乳房の下の方は丸見えで、しかも寄せられた乳房が谷間を強調している。
下のパンツにあたる部分も、ひどくローライズされていて
横ひもにあたる部分が繋がっておらず、大きなクリップのように股間に張り付いているだけだ。
前と後ろに幅の狭い半透明な絹のレースが垂れ下がり、それがお尻を隠してくれていたがかえって卑猥さが増していた。
私はあまりのローライズさに陰毛が見えてしまっているのではと気になったが際どいラインで隠されていた。
あとはヘッドバンドや様々なアクセサリだが、何故か肩当や小手とブーツだけはがっしりした造りになっている。
これに剣と盾、弓がセットになっていた。
実際に着てみた感想として『これは鎧じゃないな』だった。
アニメで見ている分には露出は高いけどとても可愛く素敵に思えた。
しかし、いざ着てみるとスケベな男性が考えた妄想以外の何物でもなかった。
ふと顔を上げると人見君が沸騰しそうなほど顔を真っ赤にして私を見ている。
視線が私の胸に集中していて、思わず胸元を手で隠してしまった。
私は自分が露出狂になったかのような気がして恥ずかしかったが、今更後には引けない。
気を取り直して彼の前に立ち、あくまでもアニメのコスプレだと説明して彼の反応をうかがう。
「いや、いいと思うけど…。ちょっと過激過ぎないか?」
彼は私から視線を逸らし、そっぽを向いたままいう。
私は自分がやり過ぎてしまったことに気づいた。
大きく外してしまった気がする。
単なる露出狂の女だと思われたかもしれない。
私は沈んでいく心を圧し殺して、彼と狩りに向かう事にした。
最初はこの姿で動き回るのが恥ずかしくぎこちなかったが、鎧は思いのほか動きやすかった。
それにアニメで見た鎧の能力をそのまま付与したので、見た目とは裏腹にしっかり防御力もある。
私は軽快に恐竜たちを斬りはらい、島の奥へと進んでいった。
彼はいつものように私のサポート的な立ち回りで、私が撃ち漏らしたり気付いてなかった獲物を火炎魔法で仕留めていた。
狩りを進めながら、私は自分の浅はかさに腹を立てていた。
彼の気を引こうとして馬鹿なカッコをしてみたが、反応はいつもと同じだ。
私が裸で抱きついたとしても、恐らく彼は何もせず、距離を置いて接するだろう。
”私にはもう手を出さない”
彼は私に謝罪した時、そう誓ったのだ。
私もその時、そう望んでいた。
彼はそれを守ろうとしている。
そしてこれからも守り続けるだろう。
どうしてそれを今まで理解できなかったのか?
私はもうどうしたらいいのか分からなかった。
彼を求める気持ちは強くなるばかりなのに、彼は私の本当の思いに気づいてくれない。
怒りは彼にも向く。
私にこんなカッコまでさせておいて、自分は紳士ぶって何もしないなんて。
誰のせいでこんな思いをしてるというのよ!
あなたが最初に私を襲ったから、こんなことになったんでしょ!
私は怒りに任せ恐竜を切り払った。
アンキロサウルスと呼ばれるトカゲとアルマジロの合いの子のような恐竜で、トラックのように大きい。
この辺りはこの種の恐竜が多いようだ。
私を見るなり襲いかかって来るから、斬りつけるのに躊躇はない。
彼らを薙ぎ払いながら、どんどん人見君から先行する。
先に進んで森を抜けると草原が広がっている。
そこには五体のアンキロサウルスの群れがいた。
彼らは私に向かって襲いかかってきた。
私もそのまま突進し、たちまち二体を切り倒す。
次に向かおうとした時、遠くから彼の叫び声が聞こえた。
私はその声を聞いて身の危険を感じ、とっさに盾を前に構える。
その瞬間、雷光が走り周りが真っ白になる。
雷が落ちたかの様な轟音がし、振動があたりを揺るがした。
盾が雷撃を防御し、間一髪で直撃を避けることができた。
彼の叫び声がなかったら、防げなかっただろう。
改めて目の前の獲物を見ると、形は他の恐竜と似ているが一回り大きく、色も少し違っていた。しかも、小さなプラズマが体全体に走っている。
恐竜ではなく怪獣だ!
彼からそんな種がいる事を聞いている。
怪獣は私を再び攻撃しようと、向き直った。
危険を感じ、すぐに後ろに飛び退く。
「後ろっ!」
彼の大声が聞こえた瞬間、視界が真っ白になった。
強烈な痛みと痺れが全身を襲い、悲鳴をあげながら倒れこむ。
雷撃に撃たれたのだ。
辛うじて意識はあったが身体がいうことをきかない。
もう一体、同じ種類がいたのだ。
私はそれに全く気付いてなかった。
鎧がある程度吸収してくれてはいたが、それでもダメージは大きい。
仰向けに横たわった状態から、なんとか身を起こそうとした。
怪獣が地響きとともに近づいてくる。
最悪なことに視界の隅に翼竜が二体、舞い降りて来るのが見えた。
プテラノドンだ。
10メートル以上はある。
私を狙っている。
もうダメかもしれない…。
状況を見極めず恐竜の群れに突っ込んだ私のミスだ。
私は初めてこの島の危険性を理解するとともに死を覚悟した。
その時、強烈な熱が私をかすめ、電撃を放つ怪獣が吹き飛ぶ。
人見君がレーザーの様な魔法で、怪獣を一撃で灰にしていた。
瞬間、私のそばに舞い降りる。
私を片手で抱き上げると、天に手をかざした。
強烈な光がほとばしり、私を狙って舞い降りていたプテラノドン一体が灰になった。
次の瞬間、もう一体いた怪獣が雷撃を放出する。
彼はとっさに空気バリアを張ったが、私の盾ほどには防ぐことができず、衝撃が二人を襲った。
さっきの直撃よりはかなり弱いが、それでも私は悲鳴をあげてしまう。
彼は歯をくいしばってそれに耐えると、私を抱え、空へ舞い上がった。
とにかく怪獣の雷撃から逃れるためだったが、そこにもう一体のプテラノドンが急降下して来る。
翼を広げた姿は巨大で、避けきれないと思った。
それに気付いた彼は衝突する直前、私を庇うように翼竜に背を向け、体勢を入れ替える。
その瞬間、衝撃が襲い二人は弾き飛ばされた。
私は地表に向かって落下していた。
その時、世界が暗転した。