※この作品はR-18です。

ワールドメイカー   作:エガイ

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一五話 現実世界での約束

 翌朝目覚め、改めて僕は自分の愚かさに呆然としていた。

 あれほど亜希菜を大切にしようと思っていながら、また彼女を傷つけてしまった。

 彼女を自分の性欲の捌け口にして、物として扱ってしまった。

 病院のベッドの上でこれからどうすべきか考えた。

 僕は彼女に謝らなければならない。

 性的なものが絡むと僕は自分が抑制できなくなってしまうらしい。

 

 朝になって出てきた朝食はほとんど手を付けなかった。

 午前のリハビリの時間がきたが、体調が悪いと言って断った。

 いつもはしつこい看護婦が、素直に引き下がった。本当に体調が悪く見えたに違いない。

 

 僕はベッドの上で鬱々と考え続けた。

 昨日のあの様子では彼女はもう僕を許してくれないし、僕の元に来てくれないだろう。

 このまま、亜希菜との関係は終わってしまうだろうが自業自得だ。

 彼女が僕に初めてキスしてくれてからまだ1カ月も立っていないのに、僕はもうやらかしてしまったのだ。

 こんな馬鹿は死んだほうがいいのかもしれない。

 

 夏休みが終われば、嫌でも亜希菜と顔を合わせる。

 最後に心から謝って、そのまま身を引き目立たないように生きていこう。

 亜希菜というまぶしすぎる存在は、僕にはふさわしくなかったのだ。

 そう考えた時、僕は自分の失った物の大きさに、改めて気づいた。

 

 心の底から亜希菜を愛していた。

 彼女を失ってしまった。

 

 今の僕は人の形をした抜け殻で、もう何も残っていない。

 生きてる価値も無い。

 本当に死んでしまいたい。

 僕はシーツを頭から被り、メソメソと声を殺して泣きつづけた。

 こんな姿は誰にも見られたくなかった。

 

 昼になってドアがノックされた。

 昼食が運ばれてきたと思い、僕はそれを無視した。

 ツカツカと部屋に入ってくる音がし、いきなり被っていたシーツが捲り上げられる。

 

 目の前に亜希菜がいた。

 

「圭太くん!何隠れてんの!

 私、怒ってるんだから!」

 

 亜希菜が眉間に皺を寄せ、顔を突き出していた。

 僕は呆気に取られ、そのまま亜希菜を見返す。

 

「昨日のあれは酷いわ!

私はホントに嫌だったんだから!

もっと私の気持ちも考えてよ!

でないと嫌いになっちゃうよ!」

 

 彼女はまくし立てる。

 僕はまだ彼女がここにいることが信じられず、呆然と見返していた。

 

「圭太くん、聞いてる!?」

 

 亜希菜が怒った顔で、首を傾げる。

 

「聞いてる…。もう会えないと思ってた」

 

 涙が流れ落ちていた。

 今まで人前で泣いたことなんてなかった。

 彼女は僕の涙を見て驚いた表情になった。

 

「えっ?どうしたの?」

 

 僕は声を詰まらせ言う。

 

「僕は最低な奴だ…。

 もう君に会う資格は無いとおもってたのに君は来てくれた。

 僕は君にどう償ったらいいのかわからない」

 

 亜希菜は困惑した表情で言った。

 

「えっ?!償うって…。あの、反省してくれたならそれでいいんだけど…」

 

 僕はその言葉が嬉しくて、おいおい泣き出してしまった。

 彼女は僕の姿を見て、どうしたらいいのかわからないようだった。

 そのうち彼女は泣いている僕の頬に手を当て、慰めてくれた。

 

「圭太くん、泣かないで。君が反省してるのは良く分かったから…。泣かないの」

 

 笑いながらそう言ってくれる。

 彼女は海よりも広い心を持っていた。

 

「私が、もうあなたを嫌いになったと思ったの?」

 

 僕はうなづく。

 

「怒りはしたけど嫌いにはなってないわ。私、あなたに首ったけなのよ。」

 

 彼女はそう言って僕にキスする。

 彼女の思いが伝わってくる、とても濃厚なキスだった。

 唇を離して彼女は言う。

 

「でも、あんな事が何回もあるとわからないわよ」

 

 彼女はいたずら顏だったが、僕は真剣に受け止めた。

 僕は、彼女を失ったと思っていたさっきまでの凄まじい喪失感を思い、身震いした。

 

「もう君の嫌がる事は絶対にしない!

 でも、ああいうエッチな場面になると、僕は自分がコントロール出来なくなるんだ。

 だから二度と僕から君に手出しはしないと誓う!」

 

 また我を忘れて彼女を虐(しいた)げてしまい、彼女を失うぐらいなら、それで構わない。

 亜希菜は慌てていった。

 

「えっ、あの、そこまでしなくていいと思うんだけど…」

 

 僕は即座に答える。

 

「そうでもしないと、僕はまた君を傷つけてしまうかもしれない。それがたまらなく怖いんだ…」

 

 彼女は困り顔で考えていた。

 

 しばらくして言う。

 

「私もエッチな気分になる時はあるのよ。

 あなたにキスして欲しかったり、触れて欲しかったり…。

 そんな時はどうするの?」

 

「その時は言ってくれれば、君の望む通りにするよ」

 

「毎回、私から圭太くんに言わなきゃならないの?

 はい、肩を抱いて…、

 次はキスして…、

 次は胸に触って…、

 次は……。

 変でしょ?

 私、毎回言えないよ」

 

「……」

 

 僕は黙り込んでしまった。

 確かに変だ。彼女が正しい。

 彼女は続けた。

 

「私は今のままでいいと思うの。

 ただ、前よりもっと私の事を見てくれると嬉しい…。

 自分で言うのもなんだけど、嫌だと言っても本心でない時もあるわ。

 でも、私が本当に嫌がっているかどうかはそのうち分かるようになると思う…。

 圭太くんにはそうなって欲しいの」

 

 僕は何も言えなかった。

 彼女は僕なんかより遥かに大人だった。

 自分の言っていたことが、とても子供じみていた様に思える。

 僕は彼女の言葉を、噛みしめるように心に刻み込んだ。

 いつか亜希菜が僕の事を『許す』と言ってくれる日まで、努力し続けることを自分に誓う。

 

 僕は言葉を選びながら言った。

 

「わかった。

 僕は、君にふさわしい、君の望むような男になると約束する。

 少しだけ待ってて欲しい」

 

 彼女は朗らかに笑いながら、最高の笑顔で言ってくれた。

 

「わかった。待ってる」

 

 僕はその笑顔に殺されてしまった。

 

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