僕は夢の世界の、亜希菜のアトリエに居た。
今、僕は一人だ。
ほぼ毎日、亜希菜はここにいてくれて、いるのが当たり前の様になっていた。
彼女を呼び出さない夢の世界が、こんなにも空虚なものだと思いもしなかった。
以前は一人でも十分楽しめていたような気がするが、今となっては何が楽しかったのかがわからない。
彼女の存在は僕のなかで計り知れなく大きかった。
亜希菜と喫茶店であった日から2日が過ぎていた。
あれ以来、リョウは現れていない。
僕は彼らの現れた歪んだ空間の近辺に、目立たない様にカメラを設置した。
彼らが来ればこのアトリエから観察できる。
僕は彼らからもっと情報を引き出さなければいけなかった。
まだ彼らの目的すらわかっていないのだ。
なぜ彼らがここに来たのか、その理由を聞かなければならない。
あと、僕のこの世界をどうやって発見したのか、またあの歪んだ空間の外がどうなっているのかも知りたかった。
ほかにも知りたいことは山ほどあるが、それと合わせてレイカの救出も進めなければならない。
僕は現実世界でも夢の世界でも、レイカをどうやってリョウの手から救うかをずっと考え続けていた。
彼らのやり取りを直に見ていた僕にとって、それはとてつもない難題に思えた。
ただ、亜希菜がレイカを救ってほしいという気持ちは痛いほどよくわかった。
同じリンカーとしてレイカの現状をわが身のように感じているのだ。
僕は彼女にふさわしい男になると誓った以上、彼女の願いをかなえる為に全力を尽くすつもりだ。
レイカを救うために何が必要か?
まず、彼女がリョウをどう思っているかが問題だ。
僕や亜希菜はレイカがリョウに支配されていると考えているが、まずは彼女に実際そうなのか確認する必要がある。
可能性としては低いが、レイカは本当にリョウのことを愛していて、盲目的に従うことに喜びを感じているかもしれない。
いずれにしても、本人に確認してみないとそれはわからない。
レイカと二人だけで話せる機会を作る必要があった。
その確認をした上で、レイカが救いを求めた場合どんな解決策があるか?
僕はそのパターンを考えてみた。
1.リョウを説得し、彼女を愛し、いたわるようにさせる。
2.リョウを懲らしめて、彼女に手出しできないようにする。
3.リョウを殺して彼女を解放する。
いろいろ悩んだあげく、正直この3つのパターンしか思い浮かばなかった。
『1』 については結果的には一番いいような気がしたが、説得できるような相手では無い様な気がする。
試すだけ試してみよう。
『2』についてはまだリョウがどれくらい強いのかがわからない。これについてはどこかで彼に戦闘をさせてみるのがいい。
恐竜島に一緒に遊びに行く提案をしてみて、そこで見極めよう。
『3』は問題外だ。僕は殺人者になるつもりはない。
大まかな行動指針をきめた。
当面、僕がやるべきことは彼らの目的の確認、次にレイカの意志の確認、あと彼らの戦闘能力の確認だ。
それらを進めやすくする為に必要と思われる道具を僕は用意することにした。
結局、リョウはその日も来なかった。
作戦の検討と、道具の準備をして終わってしまった。
その翌日、夢の世界に入ると彼らはすでにいた。
僕はまた新しいことを一つ学習した。
僕の夢の世界は僕が夢を見ているときだけ存在するのだと思っていたが、そうではなくリンボ界に常に存在しているのだ。だから彼らは、僕よりも先に夢の世界に入ることができている。
彼らの存在がなければ、分からないことだった。
アトリエからカメラの映像をみると、見慣れない建物が作られていた。
赤いモルタルのような外壁で、色合いは派手だが建物自体は貧相な感じがする。
いつの間にあんな物を…。
僕はまた『アキラ』を演じ、情報を得るために彼らの元に向かった。
僕は瞬間移動を使った。
赤い建物のちょうど目の前だ。
この前、リョウと話し込んだ場所とほとんど同じ、歪んだ空間からそれほど遠く無い場所にそれは建っていた。
広い荒地にポツンと立つその赤い建物は、非常に周りから浮いている。
大小の四角い箱を二つ無造作に並べただけの様に見えるその建物は、外側が真っ赤に塗られ悪趣味だ。
窓などは一切なく、まるで倉庫の様だ。
彼らはこの中にいるのだろう。
僕は入り口と思われる、大きなスライドドアの前にたつ。
「リョウさん、レイカさん、いますかー?」
ドアの前で声をあげる。
しばらく待つが返事がない。
ドアを開けようか迷っていると、頭上からリョウの声が聞こえた。
『おう、アキラか。入ってこいよ』
見上げると、ソフトボール大の目玉が浮かんでいた。
僕は一瞬ギョッとしたが、すぐにあれが監視カメラの役割を果たしているんだと気づいた。リョウの声もその目玉から聞こえてくる。
しかし、悪趣味だ。
僕はドアをスライドさせて中に入った。
なかは薄暗く、ねっとりとした暑さと独特の匂いがする。
男女がまぐわう時のすえた汗の様な匂いだ。
やっぱりな…。
僕はそう思いつつ、奥に進んだ。
「アッ…、アッ…、アンッ…」
レイカの喘ぎ声が聞こえてくる。
大きな部屋があり、その室内は古いランプの様な照明が何箇所かに置かれ薄ぐらい。
天井からは至る所に手枷のついた鎖が垂れ下がっている。
外側と同じく赤を基調とした部屋で、大きなベッド以外は古めかしいソファーとテーブルぐらいしかなかった。
要は女性を監禁して犯す為の部屋だ。
広い部屋の中に5人は並んで寝れそうな大きなベッドがあり、赤いシーツが敷き詰められた上で、リョウはレイカを犯していた。
「もうちょいでイクから…、もう少し待ってろ」
リョウは僕と正対する形で、豊かなむっちりとしたレイカの尻をかかえ、腰を突き出していた。
レイカは後ろ手に手枷を嵌められ、顔を乱れたシーツに押し付けている。
表情は見えないが、喘ぎ声を発し続けていた。
彼女の手枷が痛々しい。
僕はある程度そのシーンを予測していたので、驚きはしなかった。
「あっ…、僕には刺激が強すぎるんで、外で待ってます」
僕はそう言って外に向かおうとした。
「なんだよ…、せっかく生のAV…、見せてやろうと思ったのにな」
リョウは腰を突き動かしながらそう言って、レイカの髪を引っ張り上げる。
レイカが無理やり上半身を起こされると、彼女の豊かな乳房が見えた。
僕はそれを見て目を見張った。
彼女の乳房や脇腹などあちこちに、噛まれたような歯型がついていた。
「レイカ…、イクぞ!」
リョウはそう言うと、彼女の肩に噛みつく。
僕はその様子に目を伏せ、体を震わせながら出口に向かう。
「アアッッ、マスター! イタイッ、やめて! マスター!」
背後からレイカの悲痛な叫び声が聞こえてくる。
僕は奥歯を噛み締め続けた。
ダメだ…! まだ、ダメだ!
あいつの…、リョウの戦闘能力が全く分かっていない。
今は
震える体を抑えつけ、自分に言い聞かせる。
僕は、血が滲むほど拳を握り締めながら、建物の外に向かった。