僕は恐竜島のスタート地点に瞬間移動していた。
この島はリョウが毛嫌いしていた結界のある島だ。
彼も来たことはあるが、まだ瞬間移動できるほど、地形を覚えていないはずだ。
レイカに目を向けると、彼女は目を見開いて呆然と僕を見ていた。
驚きと混乱に思考が追いついてないみたいだった。
レイカはワナワナと震えながらこぶしを口にあて、必死の形相で僕に訴える。
「君は…、なんてことしちゃたの!
こんな事してただで済むと思ってるの?
マスターは直ぐにここに来るわ。
今すぐリンボに逃げて。
でないと殺されるわ!」
彼女を見返して言う。
「初めて人に向けて拳銃を撃ちました。
ははっ、見てください、僕の手。まだ震えてますよ。
覚悟が足りてないな」
そう言って拳銃を握る、震える手を彼女に見せた。
「そんなに怖がってるくせに、なんであんなことするの!
もう、私でも彼を
「あなたを救うと約束しました。
まだ本当にできるかわからないけど、とにかくやれるとこまでやってみますよ。
それに僕も彼にムカついているんです」
僕は自嘲気味に笑った。
彼女は悲痛な表情で僕に詰め寄る。
「私のことはもういいから、今からゲートをくぐって、リンボにいくの。
そうすれば次の夢ではここの世界じゃなく、直接リンボに 行けるから彼もすぐには見つけれないわ」
「いや、逃げ出す事はしたくありません。あなたの為だけじゃなく、僕はあいつの言いなりになりたくなかったから、こうしてるんです」
彼女は真剣に僕の事を心配していた。
僕は彼女を巻き込んでしまった事を少し後悔していた。
まったく勝算なく動いたわけではなかった。
リョウが僕を追ってくる事は分かっていた。レイカを一緒に連れて来れば、リンカーの気配を追って、僕の位置を探るはずだ。
この恐竜島なら、リョウの能力をかなり制限させる事が出来る。ヤツをこの島におびき出し、島の上空で戦うつもりだった。
おそらく飛行しながらの戦闘など集中力を要する複雑な動きをしていた場合、あの強力な黒いバリアは張れないはずだ。
島に降りたとしても、すでに武器や能力を設定し終えている僕の方が圧倒的に有利になる。
遠距離での戦闘なら、恐竜島の攻略で少しはならした僕にも勝てる見込みがあるかもしれない。
問題は、本当に僕に人を殺す事ができるかだ。
僕の得意なレーザーは、人に当たれば致命傷になるだろう。
直撃すれば殺してしまう可能性が高い。
出来れば殺人者にはなりたくなかった。
レイカを救うパターンでは問題外とした最悪の選択だったが、こうなってしまっては致し方なかった。
やるしかない。
その前に、僕が殺される可能性も十分にあった。
レイカは僕の話に全く納得しておらず、何とか引きとめようと、僕を説得し続けていた。
その時、まばゆい光が辺りを包んだ。
上空を見上げると、まだ明るい午後の空に、もう一つ太陽が出来たかのように強烈な明るさの光球があった。
その光はゆっくりと島に向って落ちてくる。
戦争映画でみた照明弾の様だ。
レイカはそれに気づくと絶望的な表情で言った。
「もう彼がきたわ…。島ごと吹き飛ばすつもりよ」
島ごと?! そんな事が出来るのか?
その光はゆっくりと島の中央に吸い込まれていった。
しばらくは何も起きず恐竜達の鳴き声が時折聞こえた。
「レイカさん、あれは何ですか?」
レイカは焦った様子で辺りを見回していた。
「すごい威力の爆弾よ。どこかに隠れないと!」
やがて島の中心部から地響きが伝わってきた。少しずつ大きくなる。
「圭太君! あの岩陰に隠れて!」
レイカが大きな岩を指して叫ぶ。
まるで津波でも近づいてくるかの様に、島の中心部から喧騒と強烈な振動が伝わってきた。
僕はレイカを抱えて岩陰に隠れ、空気バリアを張った。
その瞬間、物凄い轟音と衝撃波が辺りを包んだ。
島の中心部から海側に向って、森の木が木っ端微塵になって遥か彼方に吹き飛んでいく。バリアの外は瓦礫が高速で吹き飛び、まるでおろし金の様だ。
バラバラになった恐竜の体も一緒に吹き飛ばされていた。
轟音が辺りを揺るがし、地響きと突風がしばらく続いた。
なんてヤツだ…。
結界の外から強力な爆弾の様な物を打ち込んだのだ。
もし近くに落ちてたら確実に死んでいた。
敢えて僕たちが居そうな場所を外して、燻り出すつもりらしい。
爆風がおさまってきて、僕は岩陰から顔をあげ様子をみた。
島の中心部からこちらにむかって、全ての木が根こそぎなぎ倒されており、隕石でも落ちたかの様に地形が変わっている。
その圧倒的な破壊の光景を見て、僕はかえって覚悟が決まった。
僕はレイカに言う。
「レイカさん、ここにいてください。
今から僕は彼と戦ってきます。
勝てればいいんですが、もし負けたら約束を守れません。そうなったらごめんなさい」
そして彼女に指輪を一つ渡した。
「この指輪はあなたが念じると雷撃を放ちます。
もし生き残った恐竜に襲われそうになったら、これで麻痺させて上空に逃げてください」
僕はそれをレイカの指にはめてあげると、レイカに向って無理やり微笑む。
立ち上がると、空に向かって舞い上がった。
「あっ…、圭太君…」
レイカは絶望的な悲しげな眼差しで僕を見あげていた。
彼女はとても表情豊かだ。
僕はリョウの姿を求めて加速した。
島を上空から見ると、ちょうどその真ん中に巨大なクレーターができていた。
直径は1Km近くありそうだ。
完全に地形が変わっている。
なんて破壊力だ…。
そのクレータ―の上空でリョウの姿をとらえた。
彼は僕を待ち構えるように腕を組んで浮いている。
不敵な笑みを浮かべて僕を見ていた。
「なんだよ、もう出てきちまったか。もっとビビらせてやろうと思ってたんだがな」
「リョウさんこそ、結界のそばにいて怖くないんですか?ションベンちびったりしてませんか?」
無理やり笑顔を浮かべて彼を煽る。
リョウは顔を険しくして僕にいった。
「アキラ、てめえはアマチャンのガキだと思っていたが、なかなかどうして、したたかな奴だ。
レイカを餌にこの島に誘い込んだことといい、この空中での戦いに持ち込んだこといい、俺のバリアの難点もおそらく見抜いているんだろう。
…つくづくうさん臭くて、油断のならねえ奴だ。
だがな、ションベン臭いガキに、そんなことを言われる、筋合いはねえ!」
彼は顔を引きつらせ怒鳴ると同時に、手を横になぎ払った。
その先に黒く光る刃が現れ、水平に広がりながら僕に向かって飛んでくる。
速い!
間一髪で躱す。
近接だけかと思ったらあんな攻撃魔法も持ってるのか。
厄介だな…。
僕のレーザーのメリットを活かすには、彼から距離をとりつつ数を撃つことだ。
彼から離れる様に、距離を開けるため加速する。
200mほどの間隔をあけて彼に最初のレーザー攻撃を行った。
彼はそれをあっけなくかわすと、僕に追いつこうと速度を上げた。
一直線に僕に向って飛んでくる。
狙いを定めてレーザーを撃つ。
それはリョウに当たった様に見えたが、わずかにかすっただけだった。
少し体勢を崩したが、すぐに立て直して僕を追ってきた。
ただしそれ以降、彼はひどく警戒するようになった。まともに食らえば死ぬことは彼もわかっているのだ。
僕は惜しいと思いつつも、少しホッとしていた。
リョウはなんとか僕に近づこうと、僕を追いかけまわす。
僕は彼を引き離そうと、速度を上げる。
彼は警戒して、僕をまっすぐ追いかけることはなくなり、常に左右にスライドを繰り返していた。
僕たちは島の上空で、まるで戦闘機のドックファイトのように、激しい機動を繰り返した。
上下左右へ高速飛行しながら、互いに撃ち合う。
飛行しながらリョウが声をかける。
「おい、逃げてねえで向かって来たらどうだ! このひよっこが!」
僕はその誘いには乗らず、距離を開けてレーザーを撃ち続けた。
これだけ激しい動きだとなかなか当たらない。
だが、手数で勝負だ。
隙をみてはレーザーを撃ちまくる。
彼は時折、黒い刃を放つが僕はうまくかわし続けていた。
彼は執拗に僕に接近を試みてくる。
なにかあると僕は思った。
確かに今の状況は僕に有利だ。
攻撃の手数では圧倒的に僕の方が多い。
僕に追いすがるリョウに適時レーザーを発し続けていた。
いまは彼は躱し続けているが、これだけ手数に差があればいつかヒットするだろう。
何度か確実に当てれそうな場面もあったが、僕は彼の胴体は外し、足や腕など四肢を狙ってしまった。
まだ人を殺してしまう事に躊躇があった。
僕の作戦は功を奏していた。
あのバリアが使えず、手数の打てる攻撃が少ない彼は、かなり不利と言える。
その不利な状況を理解しているにもかかわらず、彼はそれでも僕に追いすがってくる。
そこまで無理をしてでも僕に接近しようとしていると言うことは、接近した時に何か仕掛けようとしているのだ。
何があるにせよ、それは防がなければならない。
リョウが僕を追いながら声をかけてくる。
「どうした?全然当たらねーじゃねーか。
俺を殺る覚悟がないなら大人しく殺られちまえ!」
彼は続ける。
「だいたいレイカを自由にしろとか、テメエは正義の味方気取りか?」
それを無視して、彼を引き離しながら狙撃し続ける。
彼の言うとおりだった。
何度か直撃させるチャンスは確かにあった。
僕はその都度、躊躇して狙いを外してしまった。
彼はそれを見抜いて、ああ言っているのだ。
「お前は自分がいい人間だと思っているのかも知れねえが、お前がこの世界に人を呼んだ時、何をしたか当ててやろうか?」
ドキリとし、彼を見る。
「お前も、この世界で女を犯しただろう?」
僕は彼の言葉を否定したかった。
だが出来ない。
その通りだからだ。
耳を塞ぎたかった。
「この能力を与えられた野郎がやる事なんてみんな同じだ! お前も気に入った女を呼んで思う存分犯しまくった口だな」
これは彼の作戦だ。
僕を動揺させようとしている。
衝動的に彼に向ってレーザーを放った。
全く的外れな方向にそれは射線を引いた。
まずい、本当に動揺している。
「否定出来ないんだろう。そんな奴がレイカを自由にしろとか、ちゃんちゃら可笑しいぜ! 犯した相手は今の別れたリンカーか? 答えろ!」
僕は思わず彼に向かって言った。
「うるさい! 僕はそれを後悔している! あんたも自分の間違いに気づけ!」
彼との距離が縮まる。
「はん! 認めたな! お前も俺と変わらねえ! 同じ穴のムジナなんだよ!」
だめだ、彼の言葉に囚われるな!
僕の理性がそう言っているが、感情が先に立った。
「違う! 僕はもうあんな事はしない!」
ほとんど彼に向き合い、彼の言葉を否定した。
彼はすぐそばに迫っていた。
目を爛々と輝かせ、僕に腕を振り上げる。
「待っていたぜぇ〜、この時を!」
腕の先から長い紐の様な物が放たれた。
オートガーターがそれを弾く。
だが、それは形を変えながら一旦弾かれた盾を避けて僕の体に巻き付いた。
それは蛇だった。
素早く僕の首に巻きつき、そのまま締め上げてくる。
息が出来ない。
僕は首から蛇を引きはがそうとしたが、そのうち腕まで巻き取られてしまった。
蛇はますます僕を締め上げてくる。
意識が遠のき、僕は落下していた。
くそっ!してやられた!
まんまとリョウの術中に嵌まったのだ。
このまま落ちれば死ぬ…。
朦朧とした意識の中、どんどん地表が迫ってくるのを感じていた。
どんなに足掻いても蛇の拘束はビクともしなかった。
落下速度がますます早くなる。
僕は死を覚悟した。
ああ、クソッ、ここで終わりか…。亜希菜、レイカさん、ごめん…。約束は守れそうにない…。
全てを諦め、目を閉じ地表との激突を待つ。
不意に柔らかい感触とオレンジの淡い香りが僕を包む。
目を開けると、すぐ目の前にレイカの顔があった。
彼女は僕を抱え込み、なんとか落下速度を抑えようとしている。
「止まって…! お願い!」
彼女は叫んでいた。
重すぎる僕を抱えて必死に速度を殺そうと、彼女にとっては限界を超える能力を発揮していた。
やがて速度が少しずつ落ち僕は彼女に抱えられながら、ゆっくりと地表に降ろされた。
スタート地点の近くだった。
レイカと一緒にその場に倒れこむ。
彼女は荒い息を上げ、しばらく寝転んでいた。
以前、僕が亜希菜を助けた時と似た状況だ。
だが、僕は相変わらず拘束されたままだ。
蛇はガッシリと全身に巻き付いていた。腕も一緒に巻き込まれているため、全く自由が利かない。
生物を使った拘束具か。
なんでこんな物を…。
蛇を焼き切ろうと意識を集中しようとしたが、それと同時に蛇が僕の首を絞め始めた。
苦しくて意識が乱れる。
同時に蛇の締め付けが少し緩む。
まさか…。
「対メイカー向けの拘束生物よ。なにかを念じようとすると締め付けて意識の集中を妨げるわ」
レイカが絶望的な表情で説明した。
「その通りだ」
リョウがそう言って僕とレイカのそばに舞い降りる。
「レイカ、良くやった。これでこの世界を手に入れられるぜ。あのままこいつに死なれてたら、ここは放棄するしかなかった」
僕は彼を睨んだ。
この状況ではもう僕にはなす術はない。
せいぜい意地を張り通すしか無かった。
レイカがリョウを宥める様に言う。
「マスター、まだ彼は子供よ。
こんな子供相手に本気になる事無いわ」
リョウは僕を見下ろしながら言う。
彼にしては珍しく、真剣な顔をしていた。
「いや、レイカ。
俺はこいつを見くびっていた。
こいつはとんでもなく危険なヤツだ。
今の空中戦で俺はいつ殺られてもおかしくなかった。
こいつは俺を殺すことに躊躇したんだ。
それさえ無ければ、俺は確実に殺されていた」
彼は冷静にさっきの戦闘を分析していた。
自分の敵対者として僕を対等に見ていた。
それはもう僕を子ども扱いしないということだ。
彼は僕のそばにしゃがんで言う。
「俺にこの世界の創造能力を今すぐ渡して楽に死ぬか、拷問されて痛めつけられた上で渡して死ぬか、どっちか選べ」
彼は僕を生かすつもりは無いらしい。
僕はこの夢の世界からの離脱をこころみた。
とたんに蛇が締め付けてくる。
くそっ、この蛇はよくできてる。
離脱すらさせてくれない。
「逃げようとしても無駄だ。その蛇はお前の意識を感知する」
リョウが獲物を追い詰める目で言う。
彼の背後でレイカが悲痛に顔をゆがめていた。
僕は彼を精一杯敵意のこもった目で睨みつけた。
「ほう、いい表情だ。どこまでその顔がもつかな」
彼は拘束された僕の右手の中指を握った。
そのまま関節の曲がる方向とは逆に力任せに折り曲げる。
ボキリと骨の折れる音がすると同時に凄まじい痛みが走った。
「グアッーーーー!!!」
思わず僕の口から咆哮が放たれる。
手をみると中指が完全に折れ、ありえない方向を向いていた。
ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!
痛みと口惜しさで、無意識に涙が溢れ出てくる。
「どうだ、痛いだろう。まだ指は9本ある。足も含めりゃ19本だ。
ま、足の指は折れねえから切り落とすがな。
…俺に世界を渡す気になったか?」
リョウはまるで外科医のように冷静な顔で僕に言う。
メイカー殺し…。
僕は初めて彼の素顔を見た気がした。
これまでのふざけた感じではなく、この冷静に人を痛めつけることができる今こそがリョウの本性だ。
涙を流しながらも、彼を睨み返す。
「ほう、その若さでたいした根性だ。
これだけ痛みがあると、もうまともに意識の集中はできねえ。
お前に反撃の機会は微塵もない。
じゃ、次は人差し指だ」
そう言いながら彼は僕の人差し指を握った。
僕はとてつもない絶望を飲み込みながら次の痛みにそなえる。
彼が指に力を加えようとした時、唐突にその手が離れた。
レイカの叫び声が聞こえ、リョウが後ろに突き飛ばされていた。
彼女がリョウに体当たりしたのだ。
腰の短剣を抜いて、彼に向けて構える。
「もうやめて! これ以上、彼を傷つけないで!」
彼女は僕とリョウの間に立ち対峙した。
「レイカ! てめぇっ!」
彼は立ち上がるとレイカを燃えるような鋭い目で睨みつけている。
彼女はガタガタと震えながら剣を構える。
僕は痛みで過敏になった意識のなか、レイカの彼への反乱を憂慮していた。
ああ、レイカさん、いけない…。
最初にヤツに剣を突き立てるべきだった…。
「おい、こんなことしてただで済むと思ってるのかレイカ?
まだ、教育が足りてねえようだな…」
レイカの顔が引き攣り、剣を構える手がさらにガタガタと大きく震えだした。
リョウは厳しい表情でレイカを見据える。
「お前、こいつにそこまで惚れ込んでたのか? こいつとヤって若いチンポに酔っちまったか?」
レイカは震える声で言う。
「あなたと違って彼は私をちゃんと抱いてくれたわ。私を人として扱ってくれた。あなたと彼はまったく違う! ぜんぜん違う! 同じ…、同じメイカーのはずなのに…」
そう言いながら彼女はリョウに切りかかる。
だが、両者にはあまりにも力に差がありすぎた。
リョウはレイカの最初の一突きをあっけなく躱したあと、その手首をつかみ短剣を奪ってしまうと、彼女を蹴り飛ばす。
レイカは悲鳴を上げながら僕の方に飛ばされ、横たわっている僕にぶつかった。
長い髪が僕の上に広がる。
彼女が手をついて体を起こしたその時、トスンという音と共にその胸から短剣の切っ先が突き出た。
一緒に吹き出た血が僕に降りかかる。
「あっ……」
彼女から声が漏れる。
僕は目を見開き叫んだ。
「レイカさんっ!!!」
彼女はのけぞりながらゆっくりと崩れ落ちていった。
背後からリョウの姿が現れ、短剣を投げたポーズのまま言う。
「てめえはやっぱり 油断ならねぇ。いつの間にレイカを
僕は力の限り叫ぶ。
「あんたはっ! あんたは…、どうしてそこまで冷酷になれるっ!」
涙があふれ出てくる。
最後の方の声はかすれていた。
「うるせえっ! てめえは自分の事を心配してろっ! まっ、どっちにしてもじきに死ぬがな」
リョウはそう言って僕に向かって近づいて来る。
僕は自分の無力さを思い知った。
レイカを救うと、あれだけかっこつけて彼女に言っておきながら、結局、助けられてばかりで何もできずにこのザマだ。
しかも僕のせいで彼女を死なせてしまった。
心底、自分の無力さが嫌になった。
もう死んでしまいたかった。
すべてを投げ捨てようとしていたそのとき、レイカのうめき声が聞こえた。
彼女は何とか身を起こすと、僕にすり寄ってくる。
胸から突き出ている剣先がとてつもなく痛々しい。
『圭太くん…、守れなくてごめんね。君は…、生き延びて…』
そう言うと彼女に渡した雷撃の指輪を僕に押し当てた。
微笑みながら言う。
『がまんしてね…』
その瞬間、凄まじい電撃が僕らを襲い、痛みと衝撃が全身に走った。
それに耐えきれず叫び声を上げる。
意識を失う直前、リョウの怒声が聞こえた。
「レイカ、てめぇ! 逃がしやがったな!」
僕は意識を失い、夢の世界から離脱した。