亜希菜との幸せな日々が続いていた。
彼女はどう思っているか分からないが、僕は幸せだった。
亜希菜が僕の夢の世界に遊びにくるようになってもうじき3ヶ月になる。
彼女はほぼ毎日、僕の夢の世界に遊びに来てくれた。
毎回、別れ際に次はいつ呼んで欲しいか彼女から言うのだが、大抵は『明日もよろしくね』と言ってくれた。
現実世界だと恋人同士でもここまで頻繁に会うことはできないと思われ、僕たちはとても濃密な時間を過ごしていた。
たまに僕が本当に寝入ってしまって呼び出せない時があり、その時は翌日学校で『昨日は寝ちゃったの?』と軽く責められた。
意外だったが、彼女にとって夢の世界は本当に楽しいらしい。
学校で人前では夢の話は一切せず、これまで同様のあまり接点のない関係だった。
しかし彼女からの提案でSNSで友達登録し、それで連絡を取り合うことにした。
僕にとってはすごく嬉しい申し出で、友達には絶対にばれないようにしなければと思っていた。
が、いざ登録してみると男子も含めクラスメイトの半数近くが友達登録されていて、別に隠す必要もなかった。
僕は少しがっかりした。
彼女はファンタジーやSF的な世界が好きで、主にそれらをテーマにした島々を好んで訪れていた。
意外にもマンガやアニメが好きらしいことは、これまでの会話で分かっていた。
自分でも島を創ってみたいと言っており、その内教えてあげるつもりだ。
今ではすっかり打ち解け、もう銃口を向けられることもなくなった。
二人だけで過ごす世界は、僕になくてはならない物になっていた。
彼女の容姿はもちろん、その仕草や物事に対する考え方は僕を虜にした。
すごく冷静に物事を捉え分析したりできるのだが、可愛い物や綺麗な物、不思議な物には素直な女の子らしい反応を示した。
そのギャップが彼女をとても魅力的に見せていた。
僕は真剣に彼女を愛していた。
愛が深まる分だけ、自分が最初に彼女にしてしまった仕打ちが許せず、深く後悔した。
彼女とは今では友達の様に普通に会話できる関係になっていた。
それでも僕への応対はあくまでも友達としての物だと思うが、最近は勘違いしてしまいそうな出来事も多い。
僕は空を飛ぶときあまりスピードを出さない。
何かあると危険だからだが、彼女は早く行こうと急かす様に僕の手を取り、引っ張ってくれた。
そのまま手を繋いで、クジラまで飛び続けた。僕は嬉しくて死にそうだった。
また、綺麗なオーロラをみて感動した彼女が僕に寄り添ってくれ、まるで恋人同士になったかの様な錯覚に陥った事もあった。
普通ならそのままキスしても良いくらいの雰囲気だったが何事もなく終わった。
その後もまるで恋人にでもなったかのように、手をつないだり寄り添ったりしてくれる事が多くなっていた。
しかし僕はこれらを僕の勘違いだと否定した。
僕が彼女にした仕打ちを考えると、彼女が僕を許す事はあり得なかった。
今の状況が奇跡のようだ。
僕が彼女の恋愛の対象にはなる事はないだろう。
孝典への嫉妬があったとはいえ、僕は彼女にとってレイプ犯だ。口では言えないような酷い行為を彼女にしていた。
今以上を望んではならない。
彼女を夢の世界でひたすら楽しませることが、彼女への償いになればいいと考えていた。
ただ、最近とても気になっている事がある。
それは彼女の服装だ。
最初の頃は僕を警戒してか、全身を包み込む様なパンツスタイルが多かった。
夢の世界で遊ぶ回数が増えるにつれ、自分の気に入った可愛げのある服が多くなり、服装もホットパンツなど露出度の高い物が多くなっていた。
目の保養にはなるが、やり場に困った。
それがだんだんエスカレートしている様に思われる。
特に最近は無防備で露出度の高い、きわどい姿で現れることが多くなった。
ウサギ達に褒めてもらう為でも有るのだろうが、ドキドキしてしまう。
その日は襟もとの開いたシャツに、丈の短いヒラヒラするスカートだった。
とても可愛かったがそそりすぎる。
僕にとっては甘すぎる毒だ。
僕は彼女に言った。
「その服だと僕は君の後ろを飛べないよ」
「残念ね、下着じゃなくてペチパンよ。見られても大丈夫!それよりこの服かわいいでしょ?」
彼女はアカンベの仕草をしながら言った。
無茶苦茶かわいすぎる。
いや、でもそう言う問題じゃないんだけどな…。
僕は彼女の後ろを飛ばない様にしながらその日を過ごした。
それでも時折見える彼女のお尻のラインや短いスカートからスラリと伸びる足が気になって仕方がなかった。
またあのお尻に触れたら…。
彼女の感触を思い出し、いけない考えが頭をもたげる。
僕はハッとした。
これは彼女が僕を試しているのだ。
あえて露出度の高い服を着て、僕がどう反応するかを見ている。
彼女は賢い。
僕が本当に改心したのか、見計らっているのだ。
彼女の誘惑に負けた時、僕は撃たれ、二度と会えなくなるだろう。
僕は決して誘惑に負けず、彼女の試練に打ち勝つことを心に誓った。
彼女との時間を失いたくなかった。
今日も彼女は僕を試す。
彼女の強い要望で恐竜ハントをすることになったのだが、彼女の姿が過激だった。
アニメで見たコスチュームだと言って、ほぼ裸の様な露出度の高い鎧に剣と盾を背負っていた。
確かにアニメの世界では意味なく露出した鎧はあるが、この夢の世界でわざわざそれを着る必要はなかった。
胸なんか乳房が丸見えで乳首だけ隠してるような有様だ。
下の方もギリギリのラインまでローライズされていて股の間に薄布が掛かっていてものすごく卑猥だ。
彼女のスタイルが良いだけにとても艶めかしい。
「前に見てたアニメのヒロインの服装なの…。コスプレってやつよ。だって現実世界じゃ着れないでしょ?」
さすがに正視できない。
彼女自身、言い訳じみた説明をしながら顔を赤らめていた。
恥ずかしがっている様にしか見えないが、何を考えているのだろうか?
僕が欲情して彼女に襲いかかった時、僕は撃たれて殺されるのだろうか?
彼女の並ならぬ執念を感じた。
とにかくハントに出かける事にした。
恐竜ハントはこの世界にある恐竜だけが住む島で行う。
僕が想像した恐竜と言うよりは、火やカミナリを吐く怪獣の様な物もいて、そこに住む生き物はどれも凶暴で人を見ると襲いかかってくる。
こちらは強力な武器を用意して、それらを蹴散らす。
島の奥に進むほど、強力な恐竜が住んでいて難易度が上がっていく。
死んだ恐竜はそのまま消え、一定時間後にまた現れる、言わばゲームの様な設定の世界だが危険度は高い。
僕自身、その島を創りはしたがそこで遊んだ回数は少ない。
創った後に気付いたのだが、難易度を高くし過ぎたのだ。
油断して死んでしまったら元も子もない。
ただ彼女はこの島を気に入ったみたいで、たまにハントを楽しんでいた。
最近分かってきたが、彼女は日常にはないスリルを求めて夢の世界に遊びに来ているようだ。
ハントの際には事前の設定をしっかり行う。
兵士のつもりで銃で闘う時もあれば、魔法使いの設定で、様々な魔法を駆使し倒すこともある。
武器の威力をどれくらいにするかが微妙で、あまり強くし過ぎると単なる虐殺になるし、弱すぎると倒し切れずに身の危険を伴う。
強い武器でなぎ倒すのは爽快感はあるが、面白みは少ない。
その設定のバランス次第で楽しみ方は異なる。
この島では、最初に設定した能力以外は使えなくなる様にしてあって、途中で変えることは出来ない設定だった。
いわゆる縛りプレイだ。
そうしないとゲームにならず、スリルもなにもあったもんじゃないからだ。
僕はこの島の様なアトラクション性の高い世界では、能力を制限する設定をよく行っていた。
この様な縛りプレイで特に難易度が高いのが、剣や弓でなどで闘う近接戦だ。
危険な為、装備する武器はかなり強化して挑む。剣は恐竜を一刀両断する事ができ、弓は当たれば電撃で全身を麻痺させる。また、自分自身にも身のこなしを高める様な魔法を設定しておく。
接近戦は身体を駆使し、動き回って攻撃を避けながら闘う為、危険性が高い分、敵を倒した時の達成感も高い。
ただし、緊急時の為に空を飛ぶ能力だけは常に使える様にしてあった。
やられそうになった時は空を飛んで逃げるか、しっかり空気バリアを張っておけば、吹き飛びはするが怪我はしないだろう。
ただし油断は禁物だ。
亜希菜は最近接近戦にはまり、剣や弓でハントしていた。
武器の威力はあまり上げず、その分身体の動きを加速させ恐竜の周りを飛び回りながら倒すスタイルだった。
僕はハラハラしながらその様子を見ていたが、ヒットアンドアウェイを繰り返し、危険を見極めながら闘っていて、彼女なりに恐竜との攻防を楽しんでいる様だった。
僕はよほどの危険な状況にならない限りは手出しをせず、見守ることにした。
僕らは恐竜を倒しながら島の奥へと進んでいた。
今日はコスプレで用意した新しい剣と弓もあり、テンポよく狩りを進めていた。
彼女はステップを踏みながら、的確に急所を狙い瞬く間に恐竜を倒していった。
僕は悶々としながら、彼女がいつに無く勇猛に恐竜を狩る姿を見ていた。
いや、怒りを叩きつけている様にも見える。
一体どうしたんだろう?
それでも彼女の闘う姿は、コスプレ衣装も相まって勇ましく美しかった。
神話にでてくる女神、ワルキューレはこんな風に闘ったんだろうなと想像した。
彼女が弓を撃つたびに大きな乳房がゆれ、薄絹のマントから見え隠れする、鎧の食い込んだお尻が震えた。
ダメだ、
僕は顔を背け、なるべく彼女を視界にいれない様にした。
おかしな気持ちになってしまいそうだ。
そんな時に事件は起こった。