※この作品はR-18です。

特務エスパー司書シリーズ   作:駒由李

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学パロとかもあるけど大体図書館で文豪たちがわちゃわちゃしてる。


ワンライSSまとめ

【学パロ】帝國学園文化祭の一背景【夏目+正岡】

文アル学パロです。夏目先生と文芸部兼野球部3年の正岡さん。薄ら死ネタ。

 

 

 

 

 

 月に叢雲 花に風

  幸せ夫婦に 女の影

 

「零点です」

「夏目先生。ただの急ぎの飾りなんですからそんな手厳しい」

 適当な藁半紙に筆ペンを走らせていた。他の文芸部員がそれぞれ即興で作った作品を立て板に貼っている。3年生の自身も例に漏れない。夏目の姿に気付いたが挨拶する暇もなく同人誌を置き「募金箱」を置いていた。これは「文芸部の存続のためにできれば入れていってください」というものだ。もっとも今の正岡の作品を見たあとだと財布の紐はきつく固めてしまう夏目だったが。頭を振りながらふと見下ろす。彼の姿は制服ではなく野球部のユニフォームだ。既に引退してしまったはずだが……その視線に気付いたらしい正岡は屈託なく笑う。

「野球部の方でも下級生から手伝ってくれといわれまして。なんとか抜け出してきたところなんですよ」

「人気者はつらいですね」

「からかわないでください。どうせ零点ですよ」

「集中したときの君の作品は素晴らしいじゃないですか」

 それは世辞でもなんでもない。「血で血を洗う」といわれるこの学園において盛んに活動するこの生徒の名は知られている。教師の自身ですら学ぶこともあるのだ。しかし――何の拍子か。噎せこんだ彼の心配をすれば彼は「疲れてるだけですよ」と笑っていった。

「最近この通りどたばたしてますから。これが過ぎれば元通りになりますよ。そのときはいつかみたいにキャッチボールでも付き合ってください」

「いやです」

「運動不足は寿命に関わりますよ。ましてや先生は甘いものばかり食べて……」

 

 月に叢雲 花に風

  若い胸に 白い影

 

 

了

 

 

死んだ初恋への贈り物【藤村+花袋】

ちょっと季節の早すぎる話しですが。史実をうっすら意識してるようなしてないような。司書が描写で出てきてます

 

 

 

 

 

 図書館の庭園。足元に初恋が死んでいた。そうつぶやいたのを聞き咎めたのは藤村だ。

「ほら。見て。花袋。司書が見つけてくれた本に載ってるよ」

「花言葉か。そういやこんな文化も入って来てたな。それで『初恋が死んでる』なんていってたのか。司書も詩人だな」

 自然主義の2名がその分厚い事典をお互いに持ちながらしゃがむのは低木の前。既に花を散らしはじめていたツツジの前だ。色はツツジとしてメジャーな桃色ではない。燃えるような赤は芝生の緑をじわじわと浸蝕しまるで流血沙汰だ。そんな物騒なことを暢気に考える2人の背筋にはじわじわと水の粒が浮かぶ。この体にも汗腺はあるらしく梅雨の終わりを示すツツジの散り際が暑気を呼んでいるようだった。そういえば司書は園芸も趣味だといっていた。さすがに植木には手を出していないもののヒマワリは植えてみているらしい。この図書館の裏庭に通じる道にはひまわりがそのうち咲き誇る。藤村は隣の友人の頭を尻目に地面と低木にまだしがみつく赤い花を眺めた。そして再び司書が「濡らさないでくださいね」と厳命した事典を見る。

 歴史で見ればごく最近の文化。日本に入ってきたのは明治の頃だ。花言葉なるものは日本でも自分たちが死んでいるうちに展開していたようだ。ツツジの花言葉のひとつは初恋だという。自分たちのそんなものはいつのことだっただろうか。確実に文学の糧となったはずなのに。そんなことを思ってふと藤村は笑う。それを見咎めた花袋に藤村は答えた。しゃがんだまま地面の赤い花びらを踏みにじり。

 異性への扱いはもっとまともにならねば。それだけは誓える。

「笑えてね。こうして踏みにじられる恋はこの世にどれだけあるんだろう。ましてや初恋は。こうして生まれ変わったんだ。少しぐらいはあのヒマワリみたいにせめてきれいに咲かせて捧げることも考えないといけないんじゃないかな」

 花袋は途惑った顔をしている。それでよかった。彼はそういう気性なのだ。自分のような陰鬱の気性を理解できない人間でいいのだ。藤村は友人を誇らしく思った。

 

了

 

狂気よ。さらば【芥川+中也】

芥川先生と中也先生が朝方にお話ししてます。史実ネタ及び前世での死亡描写っぽいの有

 

 

 

 

 

 あの赤くておもしろい子はよりにもよって水死を選んだらしい。愛人との心中。図書館の裏手に広がる自然の中。さして深くもない川縁にて足をつける。下駄は転がし足袋は脱いだ。それぐらいの分別はある。ただまだ寒いから焼けるように冷たいけれど。うっかり煙草の火を肌に落としてしまったときとどれぐらい痛いだろう。そんなことを考えながら煙を肺に満たす。夜になっても吐き出す空気が白くなくなった季節。珍しく早く起きてしまった朝方。空を見上げる。東方浄瑠璃が薄赤く染まりつつある。その恩恵に与るように紙巻きに火を点けた。肺に煙を満たす。裏方の山へと向かう煙。まだ夜のとばりを残す空には星がしがみついていた。なんともみっともない。さっさと立ち去ってしまえと思ったのは八つ当たりか。芥川はやけのように川を渡る。どうもこうも胸のもやもやが溜まって仕方がない。そもそもが本のあるスペースは禁煙だと司書が断固として譲らないことにあるかも知れない。親友の菊池が良くも悪くも変わらないことにあるかも知れない。自身が変われなかった地獄を想っているからかも知れない。某かに理由を求めている精神状態こそがいけないのだともわかっていた。だから禊ぎの真似事などしてみる。真似事だから足だけで上は俗物そのまま煙を吐く。未練たらしく夜空に貼り付く星を見ないように。

「おい。星が見えねぇだろ」

 飛び上がる。まさかあの未練たらしい女のような者たちにアンコールの声がかかるとは。見れば川を歩いてしばらくした図書館の裏手。文豪の中で見た顔が幾人か酒瓶を抱いて潰れている。その中で一際小柄で一際目つきの悪いソフト帽子の少年……もとい青年が酒瓶片手に座り込んでいた。煙草を口から外して数歩進む。するとさらに不機嫌そうに酔っ払いは地面を叩いた。寝込んでいる男に手が掠ったが気にする様子もない。

「お前でかいんだよ! 座れ。ここ座れってんだよ」

「あんまりお酒って気分じゃないんだけどな。起きたばかりだし」

「俺は今まで飲んでたんだよ」

「よっぴいて飲んでたのか。元気だね」

 手に持っていた煙草を口に吸えば嫌そうな顔をしてソフト帽――よく見てようやく中也だと思い出した――の青年はぼやく。

「好きで飲んでる訳じゃねぇよ」

「だよねぇ。楽になるから飲んでるだけだ」

 さて。今の自身は果たして楽なのだろうか。凝視してくる横合いの視線を受け止めながら空を見上げる。やはり自身にはへばりつく有象無象に見えた。

 生前は何を頑張っていたのだろう。真面目に。ひたすら真面目に生きて。唯一自分ができた好きなことも義務感に駆られた。そのために飲んだ「楽になるためのもの」にあの空にへばりつくものたちは丁度丸くて小さくてよく似ている。今の自分は丁度その人生の終盤に似ている。人生に疲れ果て幻を友としていた頃。東方から正気が刺してくる。それを後方から受け止めながら想う。

 狂気に落ちて解放された人間がそのままの形で再び生を受けたとき。その人間は今度はどうやって生きればいいのだろう。へばりつく星空は美しく見えず毎朝やって来る正気が自身を狂気から頼みもしないのに掬い上げる。

「……あんた。そういや名前なんつったっけ」

「芥川だよ。君はたしか中原くんだったね。あの赤くておもしろい子がこわがってた」

「モモノハナ野郎今日シメる」

「そのためには君たちは酒を抜かないとね。朝日を浴びようか」

 立ち上がる。足元の酔っぱらいたちは差し込んできた朝焼けを浴びてうめき声を出していた。よく見れば啄木や牧水といった者達だ。文豪内酒豪面子といったところか。こんなところにいるところをみるとどこからか酒を掻っ払ってきてこっそり酒を飲んでいたのだろう。司書が知ったら怒髪天を衝くに違いない……そう思いながら地面に煙草の先を潰して携帯灰皿に入れると(司書に押しつけられたものだ)なにかを差し出された。ハンカチだ。山羊の刺繍がかわいらしい。目を瞬けば中也はいう。

「足。汚れてる。足袋とかは向こうにあるんだろ。足洗ってそれで拭いてから戻れよ。菊池だったっけ。そういう奴に心配とかされたくないんだろ」

「……これはどうも」

「洗って返せよ。もらい物だ」

 思わぬ親切を受けてひとまず懐にしまう。酔っ払いをたたき起こしはじめたので面倒に巻き込まれないうちにさっさと元来た道を歩き出した。もう川を歩く気にはなれない。あの冷たさはないだろうし既に正気にかえってしまった。

 またこの狂気の身から更なる狂気に陥るのだろう。それを繰り返すこの図書館は地獄に違いない。されど同じ地獄を味わう者がいるのはまた感慨深いと筆を執る気を起こさせた。どうやら自分は自作の主人公のようにどこまでも文筆家のようだった。あの星空はすっかり消え果て朝焼けが空を覆っている。

 

 

狂気よ。さらば

 

 

了

 

あの頃きみは女泣かせだった【啄木+多喜二】

啄木と多喜二がだべってるだけ。史実の奥さんとの話や前生の死に際の話など。この間テレビでやってたらしいぼっくり先生の史実ネタ絡んでます。

 

 

 

 

 

 ポテトチップスの袋を開いた多喜二が不意にいう。

「アンタの結婚生活ってどんなだった」

「急になんだ」

 ポテトチップスやポッキー。板チョコ。それにカップ麺。電気ポットという便利な代物を持ち込んで以来この隠れ場所は秘密基地と化している。図書館を建築した際の設計ミスだろうか。あるいは忘れ去られたのか。コンセントがあるこの空間は居心地の良さではナンバーワンだ。そんな中でフードを被ったままポテチを貪りだした多喜二はいつもの無表情のまま続ける。啄木はといえばカップラーメンにお湯を注いだところだった。端末のタイマー機能を呼び出している。果たしてカップ麺を食べるまでに済む話だろうか。

「この間。テレビでアンタが女と間違えて男に恋文を送っていた話が放送されていて司書が言い出したんだ」

「おいこの間から皆が俺様を生温い目で見てるのはそういうことか。そんなの聞いてないぞ」

「アンタってその時点で結婚してたよな。その上であえて聞きたいらしいんだが『結婚生活ってどんなものなんですか』って司書が」

「その上で聞くのか~~あいつは~~明らかに人生相談じゃないよな。明らかに研究目的だよな」

 ポテチを間断なく頬張る多喜二は肯く。聞けば司書は大学時代は日本近代文学を専攻していたらしい。成る程特務司書として熱意があるわけだ。今でも館長の研究の手伝いに積極的だ。隙あらば取材をしてくる姿勢は嫌いではないがその話を聞いた上で結婚生活について問うてくるとはいい度胸をしている。多喜二はといえば嘆息するばかりだ。

「俺らにも聞いてたよ。ただまともにあの場で答えられたのは森先生ぐらいだったな」

「テレビ観てたの森先生もかよ~~これからバイトなんだけど~~」

「実際俺らはさして長く一緒にいてやれなかったでしょう。家内とは」

「……まぁなぁ」

 タイマーを見下ろし思い出す。臨終の床にはすくなくとも妻がいた気がする。他にも誰かがいた気がするがまだそれは思い出せない。このところはなんとはなしにそれが牧水だったのではないかと疑っている。彼は何もいわないのだ。

 そして泣いていた。こんな不出来な夫に彼女は泣いていた。それが自身には今ひとつ理解できない。

 ジャンクフードのように女を貪り食って妻から隠れた先は秘密基地というにはきらびやかな場所。女の気配がすればジャンキーのように食らいついて。大切なものを大事にできない性分はあの頃からだ。そんなことを聞いてくる多喜二も似たようなものだろう。自身は天井を仰いだ。

「長くいても幸せにはしてやれなかったと思うんだけどな」

「せめて幸せにしてくれる男でも捜してやれればよかったんですけどね。後悔しかないですよ」

「未練だよな」

 アラームが鳴る直前で止める。2分半。丁度良い塩梅だ。カップ麺を開き割り箸を割り中身をかき混ぜる。今日は取り立てが激しいからまともに食堂で食事を摂る暇もない。舌を刺激する化学調味料を感じながら行儀作法なく麺を啜っていると多喜二はポテチの袋を閉じた。中身を開けたようだ。

「なんにせよ俺たち文士ってそんなのばっかりですね」

「あの頃結婚は当たり前だったからな。せめて今みたいに結婚は自力でするような形だったら俺様も女を余計に泣かせないで済んだんだろうな。おっこれうめーぞ」

「ジャンクフードにうまいまずいってありますか」

 いいながら板チョコレートに手をつける。多喜二は啄木を目の前の啄木を見遣る。ジャンクフードを貪る啄木は年相応のただの少年だった。先程妻について語ったさみしそうな声音とは全く別人だった。

 館内の電気使用量からこの秘密基地の場所が割り出される数時間前のことだ。

 

 

了

 

 

違和感【佐藤+谷崎】

谷崎がモブ♀と同衾した描写有

 

 

 

 

 

 朝帰りだけでも呆れた。だが更に呆れたのは谷崎の帯に目を向けたときだった。佐藤は早朝。偶々顔を合わせた腐れ縁の友人に溜息を吐く。彼は丁度くしゃみをしていたところだった。ちり紙を求める彼に箱入りのそれを差し出す。

「お前……司書に許可を取ったならいいけどな。女の細帯じゃその着流しはしっかりしまらないから体が冷えるんだろ。まだ春も浅いぞ」

「違います。これはこの体になってから罹った花粉症です。へっくしょん」

 いいながら衣を揺らしてくしゃみをする。しかし事実。谷崎の帯は常のものと異なった。あれは女物の細帯だ。一瞬本物と見紛うたのは常から女物のような出で立ちでいるからだ。椅子に座る谷崎はちり紙で鼻をかみながら「今夜も宿に行ってこないといけませんね」と呟く。やはり間違えたらしい。つまらないところで意地を張る男だ。佐藤は向かいの椅子に座った。

 この図書館がある街にも所謂「宿場」はある。むしろその宿は図書館に勤務する文豪のためにあるといっていい。その本性が本物の人間か文豪と同じ別のなにかかは知る由はない。一夜の衝動を埋めるためにはそんなことは些細だ。潔癖且つ義理堅い佐藤と異なり色事に盛んな谷崎はそれを利用する文豪のひとりだ。そもそも右足に纏う鈴。左足ならば意味は異なるが右足に嵌めているそれは今の時代でいう「アンクレット」にあたるそれは恋人を募集する証らしい。雌ネコばかりを飼っていた谷崎らしいとそれを聞いたときは佐藤は呆れながらも感心したものだ。どうやら女物の細帯はサイズが合わず気になるらしい。腰をもぞもぞといじる谷崎はいう。

「それに今は衣替えの季節でしょう。覚えていませんか。男と女が衣を取り替えて同衾する風習。あれを少々思い出しまして戯れに取り替えてもらったのですよ」

「……いつの話かもう思い出せんが。まぁ確かにあるな」

 腕まくりをする。春は浅いものの冬に比べればこの筋肉質の体に長袖は暑い。司書にいって違う服を着る許可をもらっている文豪もいるほどだ。ただ谷崎の言い訳した「花粉症」らしき症状を呈している文豪は体を冷やさないようにそのままでいるものも多いが。衣替えという言葉にはそれなりに意味は多いのだ。現代の辞書によれば衣服を着かえること。季節の変化に応じて衣服を着かえること。外観やおもむきを変えること――加えて谷崎のいう「同衾する男女が衣服を取り替える」こと。江戸時代の遊郭などでは客が女物の着物を羽織ることは粋だとすらされた。そういう意味では谷崎は粋の真骨頂だろう。とても真似する気は起きないが。佐藤が手近の屑篭を取り上げると谷崎の方へ押しやる。彼は承知した様子でそれに丸めたちり紙を放った。赤い帯を巻き付けた彼は落ち着かないらしい。鼻を擦ると決意した様子で立ち上がった。

「仕方ありません。ちょっと店に戻ってきます」

「……司書にはいっとくよ」

「すいませんね。なんせあれが誂えたようにぴったりなので」

 実際誂えたようなものだろう。歩いていく谷崎の背中を見送りながら佐藤は肘を突く。

 気が付けば今の自分たちはこの姿をしていた。司書によれば「イメェジ」によるものだと聞く。負傷しても気が付けば元の服に戻っている。谷崎にとっては違和感を飲み込んだようなものだろう。谷崎が出て行ったあとで立ち上がりながらふと彼は思った。

 花粉症というものはいつ頃からいわれたものだろうか。あれは自分の体の中に花粉という異物が入り込んで起きる現象だという。要は体全体で違和感を発露している。それを思えば帯を取りに戻った谷崎のくしゃみはそれを発露しているようだった。考えてみれば文豪たちの服装はそれぞれの特徴を表しているようだ。自分の衣服を改めながら佐藤は思う。

(今の服でない服を着てくしゃみが出るのなら俺たちはこの衣服の姿すべて含めて今の自分たちなのだろうか)

 何となく面白くない気持ちになりながら佐藤は司書室の扉を叩いたのだった。

 

違和感

 

 

了




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