※この作品はR-18です。

特務エスパー司書シリーズ   作:駒由李

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前提鴎♀モブ 森先生が養父の義親子パラレル 「桜」(https://novel.syosetu.org/107656/21.html)と同設定
あらすじ:母と2人暮らしだった花袋。彼は高校生のある日実母を交通事故で亡くす。葬儀の場で出逢ったのははじめて会う母の再婚相手の森だった。彼は天涯孤独となった花袋を養子として引き取る
1:既に出来上がっている2人
2:まだ付き合ってないけど多分両片想いっぽい2人が電話してる
3:テスト前。理系科目が苦手な花袋
お題は「リライト」(閉鎖されたようです)より。pixivより転載


【文アル腐現代パラレル】後ろから抱きしめる 他【鴎花】

後ろから抱きしめる

 

 料理をしている後ろ姿はいいものだ――そういう風聞に違わず花袋の背中もそそられた。なのでつい後ろから抱きしめたら即座に肘鉄砲を喰らった。

「なにするんですか!」

 おたまを握る養子の花袋は鋭い肘を埋めた養父を見下ろしている。腹を抱え噎せながらも森はいう。

「今日の夕食はなんだろうと思ってな」

「抱きしめる必要はありましたか」

「もっともだ」

 更に噎せて肯く。ただ自分がこの被保護者の少年を無性に抱きしめたくなっただけの話だ。悪い大人の衝動に過ぎない。もっとも――体勢を立て直した森は、花袋の耳を見て思う。

「そうだな。抱きしめるのは夕食を作ってくれたあとにしよう」

「……お好きにどうぞ」

(悪い大人の好きなようにさせてしまっているな)

 頭を撫でるだけに留めてひとまず台所を離れた。赤く染まった耳朶さえも仕事帰りの癒しだった。

 

 

 

 

電話越しの二人

 

 メールやLINEで済むといえばそれまでのことだ。しかし殊に森に対しては電話を使いたいという気持ちが強いのは「今時の若者」にしては珍しいと自分でも思う。ひと言でいえば森の声が聞きたいからに他ならない。果たして森の方はどうなのかは知らないけれども。

「もしもし。こんばんは森先生」

『ああ。花袋くんか。夕食はきちんと食べたか』

「先生も弁当はちゃんと食べましたか」

『唐揚げ弁当だろう。しっかりもらったよ』

 勤務医の森は本日は夜勤だ。学生の花袋はマンションで留守番である。その間の他愛ない2人のやり取りだ。風呂上がりの花袋は手拭いを首に引っ掛けたまま笑う。

「それはよかった。次は鮭とかにしますね」

『楽しみにしている』

「先生んちに来てから食材が豊富になって作りがいがありますよ」

 元はといえば花袋が森の元に身を寄せたのは彼の母が森と再婚するはずだったからだ。それが不慮の事故死。シングルマザーとして彼女が育てていた花袋はそこではじめて森と対面し「これも何かの縁」として彼に引き取られることになったのだ。現在は母子家庭だった頃と変わらず花袋が家事を務めており森は思わぬ恩恵に与っている。

『それはよかった。……君のお母さんも料理上手な息子を持てて嬉しかっただろうな』

「そうだったら嬉しいんですけどね。お袋も忙しかったから――あ。先生。お忙しいところすみません」

『ああ大丈夫。だが君は明日も学校があるから早く寝ないといけないな』

 一応は義理の父子という関係になってからも態度を畏まってしまう。生前の母の影響で森を「先生」と呼んでしまっていることから起因しているかも知れなかった――森を前にすると嫌いではない距離感なのだけれども。森の言葉に見えないのに肯いていると彼は言った。

『今日も最後に君の声が聞けて良かった。お休み』

「……お休みなさい。先生」

 ――血が沸騰するようだ。電話越しに与えられた吸熱に花袋はスマートフォンを放り出したくなった。

 

 

 

勉強を教えてもらう

 

 こんな俗説がある。曰くその分野が苦手だった者の方が教えるのがうまい。逆に得意な者は下手である。なぜなら「なぜわからないかわからないから」だと。

「将に先生はそういうタイプだと思うんです!」

「俺の数学の教え方がわからないのはわかった。10分休憩」

「はーい」

 喜色満面ならぬ喜色半面ぐらいというところか。リビングのテーブル。シャープペンシルを持った手を振り上げる花袋を仕方なそうに見下ろす。森としては将にその俗説通り「どうしてこんな問題もわからないんだ」という気持ちを見透かされて心中複雑だった。花袋は頭の使いどころを間違っている。

 もうすぐ期末テスト。中間テストのときはまだ母を亡くしたばかりで大目に見られていた花袋だったが彼も森も回復した。生前、森は花袋の母から息子は特別に頭が悪いとは聞いていなかった――ただ特別に勉強ができるという訳でもなかったらしい。漢文や英語などの文系科目は得意だが数学はまるで駄目という為体。どれだけ駄目かといえば高2にして方程式が怪しいというぐらいである。生物はまだ赤点を回避しているが化学は地を這っていた。森は頭を振る。

「英語と漢文ができるのは感心だが化学はまずいだろう。俺もあまり得意じゃないぞ。友人に教われないか」

「化学は最低元素記号を覚えたら進級していいっていわれてるんで……やっぱり敵は数学なんです」

「それはつまり元素記号も覚えていないということか……?」

 森は義理の息子に新たな疑惑を抱いたが花袋は台所に立ってコーヒーを淹れていた。ドリップコーヒーを淹れる手つきは慣れたものでかぐわしい香りが漂ってくる。これこそ自分が教えるものなどなにもないのだが。教科書を片手に歩み寄れば花袋がコーヒーを差し出してくる。砂糖とミルクたっぷりだ。花袋自身は砂糖1杯とミルクを少し入れたコーヒーを飲んで苦笑する。

「そういうわけで先生。もう少しだけ噛み砕いてお願いできますか。小学生に説明するぐらいの気持ちで!」

「小学生の方がまだ……」

「先生?!」

「冗談だ。善処しよう」

 カップを置いた。そろそろ休憩時間も終わりだった。

 

 

 

了

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