1:司書啄、秋鏡、にいぼく やりすぎ注意
2:はるだざ、藤子規※ここの森先生は風呂嫌いが緩和しています
3:にいぼく。深読みセクハラ
お題は「リライト」(閉鎖されたようです)より。pixivより転載
長いキス(司書啄、秋鏡、にいぼく)
その日、司書は米神にガーゼを貼って出てきた。顔には不機嫌な表情を貼り付けて。
「キスが長いって啄木さんに殴られたんです」
「聞くんじゃなかったよ」
「仲良いね!」
居合わせた秋声と新美が理由を尋ねたところろくなものではなかった。彼のあとから医務室を出てきた森の前で司書は話し続ける。
「秋声先生がいえっていったんじゃないですか。それに俺だってあんな容赦なく殴られるとは思いませんでしたよ」
「米神って辺りに殺意を感じるな……どれだけしつこかったんだよ君は」
「次は鼻を殴られないように気を付けてね」
「新美先生、無邪気に恐ろしいことをいわんでください。……皆さんはお相手に怒られたりとかしないんですか。森先生も」
なにについてとは司書はいわない。司書の米神がその議題を訴えていた。いつの間にか巻き込まれていた森と共に一同は考える。
「……鏡花は接吻するときは大人しいからなぁ。最中はまた煩いんだけど」
「こら隣に子どもがいますよ」
「こんな議題をふっといて今更だろ」
「うーんとねぇ。若山さんとのキスは楽しいよ。お酒の味がしてくらくらする」
新美の言葉に秋声と司書の脳裏に過ぎったのは「禁酒」という言葉だった。しかし牧水にはあまりに縁遠い言葉だとも思った。そして自然と4人目に目が行った。森はしばらく黙ったのちに呟いた。
「……頭や顔を撫でながらしていると5分ぐらいは経つか」
「あー。想像つきます」
「あなた方はそうでしょうね」
「花袋先生は幸せそうだねー」
途端に一同から感想を並べ立てられる。森は解せない顔だった。
遠出をする(はるだざ、藤子規)
最後はクジだったという。
「まじで?! 温泉旅行?!」
「近場ですけどね。人気の観光地だから1泊2日でも楽しめると思いますよ」
花袋に渡したチケットは首都近郊の温泉宿のものだ。司書は周りの他の文豪たちのブーイングを宥める。
「しょうがないでしょう。そう全員に旅行をさせてあげられる訳じゃないですし。政府からも試行としてもぎ取れた予算が今回1泊2日2人分だったんですから。ひとまずひとりを決めるのにクジを使わざるを得なかったんですよ」
「でも俺らだって温泉に行きたかったー! ねぇ佐藤先生。お背中を流しましたよ」
文句を垂れる太宰は師匠に顔を向ける。しかし佐藤はふと司書に尋ねた。
「司書。その旅館は個人風呂はあるのか」
「さすがにないみたいです」
「なら別に今回はよかったんじゃないか」
「ちょっとナニする気だったんだよはるおー!」
「……つーか2人なんだな」
騒ぐ太宰。襟を掴まれ首を締め上げられる佐藤。それを羨ましそうに見ている谷崎。彼らを尻目に花袋はチケットを改めた。1枚かと思ったそれはよく見ると2枚。司書はいった。
「そうですよ花袋先生。2人です。誰か連れて行く人を選んでくださいね」
チケットを渡された花袋はふと悩む。
常日頃から温泉に行きたいと呟くときは藤村の名を引き合いにしていた。しかし。顔を上げた先に目が合ったのは2人いた。藤村と森だ。
しかし藤村は途端、隣にいた正岡の手を取った。正岡は目を瞬いていた。
「正岡さん。いつか旅行の順番が来たら2人で行ってくれるよね」
「お? おう」
そして手を握ったまま花袋の方を見る。
「そういうわけで花袋。僕は行かないよ。別の人と行ってね」
「……らしいです。ふられました。森先生」
「そうか。なら俺を誘ってくれるか」
喉の奥で笑う森はさも愉快そうだ。手を差し出す彼の手を握り替えした。
ふと森は尋ねた。
「そういえばこの温泉宿はどういう選考基準で旅行先に選ばれたのかね」
「作家的な興味を惹きそうなところを……昔、アメリカ人のストーカーによる殺人事件が起きて女子高生探偵が解決したというところで」
「江戸川向きじゃねーか!」
「ワタクシ向きでしょう!」
花袋と江戸川が同時に叫んだ。
肩車をする(にいぼく)
消防法に反しない程度だ。それでもこの図書館は広く、そして天井が高い。その分、本棚が相応に高かった。偏に膨大な量の文献を収める為の高さだ。ゆえに宙に浮くことのできる司書以外は踏み台や梯子を頻繁に使うしこれらはひとつではない。しかし数は限られているのでできるだけこれらを使わずに本を取るのが文豪たちの暗黙に奨励されていた。次のように。
「若山くん。もう少し右。右にお願い」
「おっとこっちか」
「そっちは左だよ。こっち」
「いでで」
「やっぱり踏み台を使った方が早くねぇか」
台無しの台詞を吐いたのは彼らを見ていた花袋だ。新美が若山に肩車をさせ、彼の頭を叩きながら左右を移動して目的の本を取るのを目撃していた。知らぬうちに仲良くなったものだがそれより若山は踏み台にされていることに疑問を抱かないのかが気になるところだ。若山は平然としている。しゃがんで新美を下ろした。
「別に気にしてねーよこんぐらい。安いもんだ」
「ああそう」
「それより花袋先生はどうしたの」
「オレも本を取りに来たんだけどな」
新美に尋ねられる。花袋は顎に手を添えて見上げた。端末の検索結果ではこの棚の上方に目当ての本があるはずだ。踏み台は見える位置にはなかった。そこで若山に目を向けると彼は慌てて首を振った。
「おいおい。俺が肩車をできるのはこいつサイズが限度だよ。それ以上は腰をいわしちまう」
「わかってるよ。……とはいってもオレを肩車できるような体格か膂力のある奴ってウチの図書館に……」
「あ。森先生も本を読みに来たんですか」
新美が振り向いていう。見ると白衣に白軍服の男が立っていた。
「ああ。君たちもか。……なんだね2人とも」
該当者がいた。2人の目が森の肩に止まった。
「……満足かね」
「もうちょっと左に移動してくれれば」
さすが元軍人というべきだろう。花袋を肩車しても特に姿勢に揺るぎはなかった。ただ眉間の皺が深くなっただけである。一方、花袋はどこ吹く風。先程の新美のように森を指図する。
しかし、ふと思いついたように森の手が花袋の太股から足の付け根の方に手が寄った。そして思い切り左に移動した。
「ちょっと先生、行きすぎです」
「……」
「あっちょっと今度は右に行きすぎ……ずれすぎですよ先生」
「どこになにが欲しいと。花袋くん」
「だからそのまままっすぐに奥まで――ちょっと先生っ」
「若山くん。何で僕の耳を塞ぐの」
「うーん。何でだろうな。俺の心の耳が詰まってるのかもな」
言いながらそっと目も塞いだ。森の手つきが昼間に相応しくない動きをしていた。
了