※この作品はR-18です。

特務エスパー司書シリーズ   作:駒由李

40 / 78
1:YesショタNoタッチ
2:蛙は館長に取ってもらいました
3:花袋の涙 
お題は「リライト」(閉鎖されたようです)より。pixivより転載



【文アル腐】幼児化【鴎花】

幼児化

 

 司書は腕組みをした。

「こんな現象の需要なんて、江戸川先生くらいじゃないですか」

「誰がショタコンですか」

「お前ら。冗談は今度にしろ。森先生――その……大丈夫じゃないですよね」

「君にしては珍しく歯切れが悪いな」

 重々しい口調のまま、声はあどけない。年の頃は7才にも達していないだろう子どもだ。白い膝が眩しい。白い詰め襟に短パンと白衣の子どもが森の若返った姿だった。司書はいう。

「前に有魂書に直接干渉されて記憶喪失になったでしょう。今回はその名残に浸蝕者の影響が出て、今の転生年齢が書き換えられたんですね」

「嬉しくない名残雪ですねぇ」

「それで、どれぐらいで治るんだ」

 森の高い声音による重い声に司書は答えた。

「数時間ください。――その間は花袋先生。頼みますね」

「へ。……わかった」

 そして司書と今日の助手の江戸川は立ち去った。花袋は医務室に幼い森と2人きり。はたと森を見る。幼くなった森は新美や宮沢よりも更に子どもだ。しかし「書き換え」が起こったといってもそれに合わせて服の丈が子どもらしいもの――特に短パン――に作為を感じてならなかった。その上、稚くなってなお大人の麗質が見えているのはどういう訳か。

「花袋くん」

「はいなんでしょう!」

「……今の俺がそんなに珍しいかね」

 妙に早口で返事をしてしまった。森が苦笑するのを見て更に脈が速くなる。幼い顔でそんな表情をされると背徳感が募る。椅子に座る花袋の方へ森が迫ってきた。いつもならここまで大胆だったろうか。膝に乗ってきた森は、冷や汗を掻く花袋に囁いた。

「花袋くん」

「……はい」

「今しかできないことをしたくないかね」

「…………小さくなってもあなたからセクハラするんですね。したらまずいです。いろいろ」

 さて。花袋が誘惑から耐えきれたかはまた別の話だ。

 

 

 

 

 

膝枕をする

 

 ことの経緯を説明せねばならない。

「こらー! 2人ともー!!」

「きゃーっ」

 そのとき新美と宮沢は、司書に追いかけられていた。理由は司書の頭にくっついた蛙を見て職員は察した。察したので鬼ごっこをする彼らから身を避けたのだった。避けなければ彼らにぶつかって怪我をしてしまう。

 つまりその悲劇は事態を察し得なかったことによるものだった。森は歩きながら、医務室に入れる薬についての吟味をしていた。

「森先生!?」

 頭から転んだのは新美たちとぶつかった直後だ。何の受け身も取らずに倒れたのを花袋が声を上げて駆けつけた。ものの見事に失神している。頭に蛙を乗せたままの司書が駆けつけると花袋は倒れた森の横で慌てた。

「ううう動かさない方がいいよな」

「あー、こういうときの知識はそれこそ森先生自身が……ちょっと館長に聞いてきます。呼んでくるので森先生はそのまま安置しててください」

 いって司書は消えた。慌ただしく動く周囲。その中で花袋は、ふと思いついた様子で正座をした。

 ――そして森が目を覚ましたとき。彼は花袋に膝枕をされていた。……皆の目の前で。森は痛む頭を自覚しながら頭上の花袋を見上げる。

「……花袋くん。これは一体どういう状況だ」

「先生が頭から転んで失神したので、動かすわけにいかなかったからとりあえずオレが膝枕しました」

「100点満点の要約を有難う。俺が聞きたかったのはそういうことではなかった」

「じゃあどういうことです」

 顔を覗き込まれ返答に窮する。痛む後頭部。見上げる天井。そして膝枕。喜べばいいのか悪いのかわからなかった。

 

 

 

 

なかせる

 

 滂沱の涙とはこのことか。隣に座る花袋にそっと箱ティッシュを差し出した。花袋はそれを受け取りながらも涙声で睨んでくる。

「先生、卑怯です」

「卑怯で結構。これなら確実だろうとふんだんだ。まさか泣くほどとは思わなかったが」

「泣きますよ、泣かせにかかってますし!」

 洟をかむ花袋と森の前ではいつかのようにTVがある。そこではDVDが再生されていた。テーブルに置かれたDVDのケースには――犬の画。

「警察犬ものの映画なんて感動するに決まってるでしょう! それにこれはドキュメンタリーだからオレらの求めるものとはジャンルが違いますよ! 永井だって文学はフィクションっていってたじゃないですか!」

「『感動する映画を見せたら勝ち』という勝負だったろう。ドキュメンタリーは『記録文学』だから文学には変わりない」

 果たして彼らがどういう勝負をしていたかは定かではない。ゴミ箱にちり紙を放る花袋は、悔しそうにしながらも画面に見入っていた。そんな彼の横顔を眺めて森は思う。プライドの高い彼は素直で正直ではあるものの、泣いたところは見せたことがなかった。実のところ花袋の涙に森が1番驚いていた。こちらのドキュメントの方が驚く――花袋の泣き顔を目に焼き付けながら、映画が終わったら失われた水分を補うために茶を淹れようと決めた。

 

 

了

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