2:お粥は志賀先生と一緒に作ったんだと思います
3:某地獄漫画パロ
お題は「リライト」(閉鎖されたようです)より。pixivより転載
ほっぺたを抓る
花袋の手が、森の頬に伸びた。
「先生。起きてますか」
「……君も容赦がないな。痛いから放してくれ」
形の良い爪が視界の端に見える。森の頬肉を指で摘み上げた。朝、吸血鬼が棺桶に潜り込む時刻に彼らは起きていた。早起きではない。徹夜だ。
ある新たな有碍書に入った。一見すれば他の有碍書と変わらないように見えた――変化は会派が揃って戻ったとき。全員が眠気を覚えた。何事かと問えば、窓に見える景色は夕暮れのよう――ただしそれは東側の窓だった。そこで司書がやってきた。
「あなた方、浦島太郎になっちゃってますよ」
昼の3時過ぎに潜書した彼らが戻ってきたのは実に12時間以上あとのことだった。
「館長と相談したんですが、結局待つしか手だてがなくて……無事に戻ってきてくれてよかった。今日は休んでくださいね」
同じ会派のうち、萩原と横光が真っ直ぐに寝室へと去っていった。森と花袋はひとまず食事を摂ることにしたのだが(作り置きが置いてあった)食事を摂っている最中も、森は船を漕いでいた。花袋は心配そうに眉を顰める。
「頼みますから味噌汁に顔を突っ込まないでくださいね」
「気を付ける。……君は存外平気そうだな」
「眠いですよ。それ以上に腹が減ってて」
それを聴いて、森は密かにこれが転生年齢の違いかと嘆息する。平たくいえば花袋は若かった。10代の学生でも通じるから、ひょっとすればまだ成長期だろう。そうなると、自分は18才以下の青少年に手を出していることになるのか。急に過ぎった不安を余所に、花袋はもりもりと飯を食らう。
その頬に飯粒がついていた。
「花袋くん。頬に飯がついている」
「え。どっちですか」
「こっち――ああ、俺が取る」
いって花袋の右頬についた飯粒を取った。
そのまま反対側の手で頬を抓ったのは「なんとなく」だ。
「いててっ何するんですか」
「……君の眠気覚ましかな」
「いりませんよ! あっさっきの仕返しですか!?」
手を引っ込めた森はそれには答えず、手についた飯粒を口にして食事に戻った。眠くて仕方がない。2階の自室まで歩くのは面倒だから、1階の花袋の部屋で一緒に眠らせてもらおうと勝手に画策した。
跪く
彼は医者だったから、これは当然の帰結だった。
「38度5分。風邪ですね」
「だろうな」
「先生。薬を飲む前にお粥を食べましょう」
起きてこない森の様子を見に行ったのは花袋。そして現在、館内で流行中の風邪をばっちりもらい、寝込んでいる森を発見したのも彼だった――花袋は台所で作ってきた粥を盆に乗せて持ってきた。起き上がって膝に盆を載せる森は司書にいった。
「すまない。俺の風邪が治るまでは医務室は石川くんに頼むと伝えておいてくれ」
「啄木さんが薬の横流しをしないようチェックをしておきますよ。安心して養生しててください。花袋先生。何かあったら教えてくださいね」
「おう」
言って司書は森の部屋から辞した。あとに残されたのは熱い粥を食べる森と、見守る花袋だ。ふと森が見ると、花袋は座っているようだった。ただし床に。よく見ると跪いている。ベッドの横に縋るような姿で寄りかかっていた花袋に、森は熱で回らない舌でいう。
「花袋くん。椅子があるぞ」
「大丈夫です」
「しかし、そこだと体勢が辛いだろう」
「先生が早く良くなりますように、と祈るにはこの姿勢が丁度良いので」
どうやら本当に祈っていたようだ、風邪は本人の体力次第だ――しかし花袋の言葉が自分を見守るための方便だというのはわかったし、何よりそういう花袋の気持ちが嬉しかった。なので森は「そうか。ところで祈るついでに君にお粥を食べさせて欲しいんだが」と頼んでみた。
罵声の浴びせ合い(鬼/徹パロ)
「馬鹿」
「カバ」
「馬鹿はどっちですか」
「カバというのは訂正しよう。カバに失礼だった」
「他人の台詞でしょう、それは。換骨奪胎といえば聞こえはいいですが要はパクりでしょう」
「うん。文豪・田山花袋の言葉とは思えないな」
「何でもそういう風にいえばいいってもんじゃないですよ。……えーと朴念仁!」
「あ」
「あっ」
「んがついたな。君の負けだ」
司書は談話室の2人の会話を黙って聞いていたが、その結末に堪らず突っ込んだ。
「何をしてらしたんですか、お2人とも」
「しりあげあしとり」
「ろくなもんとってねぇ」
「暇なんだよーオレらの出番は」
「今回は横光先生と菊池先生と三好先生がメインですから」
了