2:反省してない太宰
お題は「リライト」(閉鎖されたようです)より。pixivより転載
眼鏡をかける
文字書きという仕事上、視力を悪くしやすい。ゆえに前生に眼鏡を掛けていた文豪は多い。佐藤もそのひとりだ。
「はー……懐かしいですね」
「いっとくがこれはサングラスだぞ。色がついてないだけで」
恍惚とした表情で眺めてくる弟子に対し、苦笑しながらもまんざらでもなさそうな表情を見せる佐藤。そんな彼らを尻目に、森と花袋が彼らとは違うサングラスを手にしていた。暑い季節。司書が眼鏡屋から持ってきたサングラスの並ぶ回転塔を物色していた。中でも目を引いたのは色のついていないサングラスだ――かけてみると、ただの眼鏡に見える。花袋はかけてみながらしみじみとする。
「懐かしいですね、眼鏡。今は視力が良くなっちゃいましたが」
「そういえば君も眼鏡をかけていたか」
「今は裸眼の生活にも慣れちゃいましたけど、転生したての頃はつい眼鏡を探しちゃいましたね」
「あーあるある」
遠くからサングラスをかけた佐藤が同意する。眼鏡あるあるらしい。それをかけてみせる花袋を見ると、森は自分の顎に手を添えた。
「ふむ。今こうして見ると新鮮だな。似合う」
「有り難う御座います」
「今夜それをかけたまま……」
「いうと思った! しませんよ!!」
「どうしてもか」
「……しませんから!」
「すいません、そういプレイはせめてお金払ってからにしてください」
司書が乾いた笑みでいった。
心中する
太宰が頬を膨らませて医務室に来たのは、暑気が盛りはじめた昼頃のことだ。左頬を赤くした太宰に、喧嘩でもしたのかと問うと太宰はいった。
「心中を持ちかけたんですよ、佐藤先生に」
「は」
「そしたら佐藤先生にぶん殴られた。俺の精いっぱいの愛情表現だったんだけどな」
それが数時間前のこと。
「ああ。それで佐藤があんなに怒ってたんですか。司書が怯えてましたよ」
潜書にはカロリーを消費する。有碍書に潜書してきた花袋が食堂で食事を摂るのを、森は医学書片手に眺めていた。
「生まれ変わったっていってた口で心中を持ちかけるんだから、そりゃ佐藤も怒るし殴るでしょうね」
「生前の癖が出るんだろうな。何度入水を図っていたんだ、彼は」
「3回? 2回かも。最期も入水だし」
白飯を口に運んで咀嚼する。森はお冷やを飲んで、何気ない様子で言った。
「君は俺と心中するなら何で死にたい」
花袋はしばらく黙っていた。返事をしたのは飯を食い終わってからだ。
「そうですね。江戸の心中ものみたいに同時に死にたいですね。先生の槍がいいかな」
「……同時に死ぬのは難しくないか。俺の武器だと」
「だから、オレを殺してからあなたも死んでください」
いってのけた花袋はは優しい笑みをしていた。
了