※この作品はR-18です。

特務エスパー司書シリーズ   作:駒由李

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1P:「跪く」(https://novel.syosetu.org/107656/51.html)の続き
2P:主に子ども組が使います
3P:元ネタがわかんないけどよく使われるシチュ 
お題は「リライト」(閉鎖されたようです)より。pixivより転載


【文アル腐】服の裾を引っ張る【鴎花】

服の裾を引っ張る(「跪く」の続き)

 

 粥を食べ終えた。一旦盆を机に片付けた花袋は、水差しからグラスに水を注ぐ。水差しの中では、レモンの薄切りが浮いていた。

「それじゃ、薬を飲んだら寝ましょうね」

「……看護婦のようだな」

「今は男女双方看護師っていうらしいですね。はい薬」

 森の掌に薬を出す。グラスを受け取った森は大人しく薬を飲んだ。それを満足そうに見届けると、花袋は立ち去ろうとする。皿を片付けなければならなかった。

「それじゃオレは行きますね」

「――」

「……なんでしょう」

 首だけ振り返り小首を傾げる。グラスを片手、もう片方の手で、森は花袋の上着の裾を掴んでいた。森は慌てて手を放す。

「すまない。無意識だった」

 そういってもう1度グラスを呷る。しかし花袋は、その姿に無性にこみ上げるものがあった。努めて優しく笑う。

「そうですね。これを片付けたらまた戻ってきます」

 森は黙って肯いた。

 

 

 

ブランコに乗る

 

 森が見たとき、花袋は木に登っていた。肩には何やら縄と木の板を担いでいる。

「花袋先生ー大丈夫ー?」

「おう。もう少し待ってろ」

「……何をしているんだ」

「あっ森先生」

 木の下には宮沢と新美がいた。顔を輝かせて、花袋が一際太い枝に縄を縛るのを見ていた。森が尋ねたところで2本目の縄が縛られた。宮沢が言う。

「ブランコを作ってもらってるんだよ!」

「ブランコ……花袋くんが一から作ったのか」

「木の板に縄を通したのは司書さんだよ」

「また器用なことを」

 司書がホームセンターで木の板と縄を購入している姿が想像できた。秋声同様裁縫もこなす男だがとにかく器用らしい。器用貧乏という言葉が頭に浮かんだ。その間に花袋は木の板の底面を落とす。

「ほら。できたぞ」

「わーい! 僕1番乗り」

「あっずるい賢ちゃん」

 飛びかかる子どもたちに、枝の上で跨った花袋は笑いながら幹にしがみつく。森が歩み寄ると幹から滑り降りた花袋は、ブランコに乗る宮沢の背を押してやる。

「ほら」

「きゃー」

「僕も、僕も次押して!」

「はいはい順番なー」

 子どもたちと戯れる。そんな花袋を森は眩しく見詰めた。

 だから夜。庭でひとりブランコを漕ぐ花袋を見たときは、日中の様子との落差に驚いたものだ。

「花袋くん。君もブランコに乗りたかったのかね」

「……まぁ、そんなもんです」

 振り返った花袋は、疲れた笑みを見せた。その理由を森は知っている。昼間、有碍書に潜書した際に、彼は他の仲間を引き摺って帰ってきた。自身も耗弱していたにも関わらずだ。詳しい状況は聞いていない。ただ、筆頭だった花袋は落ち込んでいた。

 こういうときに無理に聞き出すことはしない。言いたければ彼からいう。言わないときは彼が心の中で葛藤することを選んだのだ。ブランコのように、漕ぎすぎれば悩みがあふれ出す。そうでないときは彼は心のバランスを保つ。それが花袋の誇りだった。

(彼の誇りを傷付けたくない)

「……背を押してやろう」

「はは。頼みます」

 だから森は彼の傍にいてやるだけだ。彼が立ち直ることを知っているから。

 夜空の下、手製のブランコが静かに漕がれた。

 

 

 

 

浜辺で追いかけっこ

 

 人気のない砂浜の夕暮れ。男女が追いかけっこをする――元ネタはわからない。要は恋人同士の定番シチュエーションのように扱われている。この本にはそんなべたべたな場面があったらしい。潜書した有碍書で海が広がったのは驚いた。あるいは暑いこの季節、菊池なら喜んだかも知れない。

 問題は、浸蝕者が戦うことを避けて逃げに徹していることだった。

「待てやゴルァァァァア!!」

「花袋くん、走りながら弓は射られるか」

「それより宮沢! アンタ銃打てるか!?」

「当たるかなぁ!?」

 浸蝕者を討伐せねば浄化はできない――花袋が弓を片手に走る。森と太宰は得物を投げる訳にいかずひたすら追いかけた。唯一の銃使いは走りながら銃を両手で構えた。撃った。当たった。ただし体の端に。

「足! 足を狙って!」

「走りながらなんだから難しい注文をつけないでよね!」

「数打ちゃ当たる、頑張れ宮沢!」

 矢を番えることも諦めた花袋が、弓を左手に檄を飛ばす。森は走りながらふと景色を見る。この本の作者は情景描写に卓抜していたらしい。誠に染み入る夕映えだ。その中を花袋を戯れに追いかけるのではなく、武器を携えて走っている――勿体ない。森は胸中で呟いた。

 

 

了

 

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