▼文豪の数もメチャクチャ増えたから全員の寮分けはできてませんがとりあえず決まってるところだと
オクタ:菊池(寮長)川端、横光
ラビュル:北原(寮長)犀星(副寮長)、萩原
ディアソ:志賀(寮長)、芥川
イグニ:武者
サバナ:吉川、直木、佐藤(ポムからの転寮)
スカラビア:中里
ポムフィオーレ:永井(寮長)谷崎(副寮長)
今後増える
pixivより転載
俺としては、ごく普通に学園生活を営んでいただけだ。
ちょっと努力して虎の巻を作り、それを契約事項に沿って売り、契約を履行できなかった生徒にちょっとイソギンチャクを頭に生やして奴隷にしただけだ。学園長は「これだからオクタヴィネルは油断ならないんですよ!」とぽこぽこ怒っていたが知ったことか。俺は自分の気の赴くままに黄金の契約書を増やしていた。貯金感覚だ。
そうこうしていているうちに学園長との取引も成立し、店を持った。俺が本好きなため、「ライブラリーラウンジ」と名付けた。本好きでない生徒の方が少ないのだが……閑話休題、そんな俺の店のタイトルの願い通りのためか、紳士の社交場を謳うここには本を持ち込んで食事の片手間に本を読んでいく生徒が多い。読書の片手間に静かな食事が楽しめる、と言うことで人気を博していた。俺の商売は上々だ。2年生になって寮長にもなりおおせたし、順風満帆だと思っていた。
――ラウンジを閉めようとしたその日、背後から声がかかるまでは。
「菊池」
「はい?」
呼び捨てにされるのはいつものことだったので警戒もせずに振り返る。見れば、恐ろしく顔貌の整った背の高い男が立っている。頭にはヤギのような角が生えていた。そしてなにより、この制服の腕章は――
確かめる前に、足ドンされた。高々と掲げられた足が、俺の顔の真横を踏みつける。身体、柔らかいんですね。そんなボケをかませる空気ではなかった。俺はそれでも、なんとか商人根性を出して尋ねた。
「どうされましたか、志賀直哉先輩。ディアソムニア寮の寮長にして茨の谷次期妖精王。何かお困りのことでも」
「そのことなんだがな。菊池寛寮長」
慇懃に俺の肩書きまで呼ぶ志賀は、案外ごく真面目な顔で告げた。
「お前、妖精族との契約に興味はないか」
それは誘いに見せかけての強制だった。
とりあえずVIPルームに通す。ドアマンは川端、俺の控えには横光。いつもの布陣だ。監督生が時折バイトをしに来て「こちら」の仕事も手伝ってくれるが素人の彼には気の毒なのであまり深いことをやらせていない。
革張りのソファに腰かける仕草は確かに王侯貴族のそれで、自分は王族とも相手どれるようになったのだなと感慨深くなる。なったところで、とりあえずと仕事モードをオンにする。
「それで? どういったご相談内容でしょう」
「闇の鏡を通さずに転寮させたい」
「……転寮『したい』ではなく『させたい』ですか?」
「そう、俺の親友がイグニハイドにいる。ちなみに茨の谷の出身だが、人間だ」
それを聞いて、話の流れが察せられた。なるほど、お気に入りの人間をできるだけ傍近くに置いておきたいらしい。志賀は歯軋りする。
「闇の鏡め……俺があんなに睨んだのに、忖度の欠片もしなかった。イグニハイドと宣言しやがった。俺は当時から寮長だったが見ているしかできなくて……あいつも存外嬉しそうにしていたのが……」
「それこそ魂の資質が勤勉だったんじゃないですか」
俺は段々面倒になって来たが、一応相談に乗ることを請け負った以上話は最後まで聞くことにする。志賀は唸る。
「だが勤勉は高尚にもつながるだろう……鏡が忖度しなかったのが憎い……」
「それで転寮させたい、ですか。やはり転寮には闇の鏡を通さないと」
「そこは『どんな願いも叶える菊池寛』だろ!?」
テーブルを叩いて志賀が言う。半ば怒鳴っていた。自分が取り乱したことに気付いたようで息を整えた志賀に、俺は尋ねる。
「それで? 仮にその願いを叶えるとして、あなたはなにを――」
「この角はどうだ」
「へ?」
あっさりと、彼は言った。志賀は、自らの頭から伸びている角を示す。彼が自ら指先で叩くと、硬い音が返って来る。
「仮にも次期妖精王の角だ。相当な魔法薬の素材に――」
「いけません、それはあまりにも対価に対して過多です」
俺はできるだけ気息を整えながら、彼を見つめた。見目麗しい次期妖精王。そんな彼の1部を構成する美しい角。
場合によってはポムフィオーレに行っていたかもしれないと思う俺。美が損なわれることは、許せない。志賀直哉と言う次期妖精王の美しさは、その気高き精神性と角が高らかに彩っていた。
だから、俺は言う。
「もっと適した取引材料を持ってきてから言ってください。ユニーク魔法なら、いつでも受けて立ちますので」
そう言い切った俺に、志賀はしばし目を瞬いていた。そして、途端に破顔する。
「あっはっは! 面白い奴だなお前は」
「はぁ……?」
「実に面白い。いや、人魚でもないのにオクタヴィネルに入ったと聞いたと噂を聞いたが……なるほど、こういう男だったか、お前は」
そう言って、志賀はソファから立ち上がり――
俺にキスしていった。
「菊池さんに何を!」
横光が声を上げる。それにドアマンの川端が雪崩れ込んできたが、そのときには志賀はひらりと立ち去っていた。
「また逢おうな。――武者たち以外に興味が出る人間が現れるとは思ってなかった。今度デートしようぜ」
そう言って、姿くらましをしてしまった。キラキラとした粉を残して。
俺はと言うと、横光に「今すぐ消毒しますね!」と濡れティッシュを魔法で引き寄せていたが、頭が混乱して中々戻らなかった。
――男好き、女好きの人生。それでもなかなか実らなかった今まで。
実は顔が完璧なまでに好みの男にいきなりキスされて、自慢の頭は混乱を極めているのだった。
実は志賀の方も、俺が入学したときから目を付けていたらしいというのを聞くのは正式にお付き合いをはじめてのことだった。
End.