※この作品はR-18です。

朝霧姉妹の百合物語   作:タクティス・ハルバード=レミィ

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3話 あえて猫耳

 はっ!? 寝てしまったみたいで、目の前にはすげぇ怒ってる妹様がいます。

 

『なんで?』

 

「すみません……」

 

「怒っても無駄だから、早く行こ」

 

 急かされるがまま、猫耳を着けて、青いヘアゴムは……あえてつけない。

 

「どう? ポニーテールじゃないお姉ちゃん良くない?」

 

「別に」

 

「………………」

 

 沈黙と共に部屋を抜け、玄関に向かう。

 

「今何時?」

 

「えーと、12時だよきっと。どうしたの?」

 

「お姉ちゃんには関係ない」

 

「そ、そっか。ごめんね」

 

 赤のスニーカーを履き終え、妹を待つとドアを開く。

 

 冷たい風が吹き荒れていて、寒さが加速するね。

 

「少し前は、一つのポケットに互いの手を入れてたんだけど……」

 

「なんですか?」

 

「あたしは……したいかなって」

 

「興味無いです」

 

 ポケットに目もくれず、視線も合わせずに、歩道を歩く。

 

 会話は無い状態だ。一向に道だけ進む。

 

 横断歩道に差し掛かった時。あの時と同じようにキスをする。

 

「スズメ!」

 

「何?」

 

「チューしよ!」

 

 人目をきにせず、妹の唇を奪うと、時間が止まるような感覚に襲われた。

 

「…………」

 

 口に動きがない。

 

 動いていたと思ったら、あたしが押しのけられた時だった。

 

「お姉ちゃんやめてよ!」

 

『本当は望んでるんだよね? 知って』

 

 無言で右手が放たれ、ビンタが左頬にめり込む。

 

「――る……?」

 

 視線が反動で右に大きくブレる。

 

 無駄にデカイ沈黙が流れた事は言うまでもない。

 

 

 

 

 

 私は、生まれて初めて、姉の頬を叩いた。

 

 何も言えず、俯くことしか出来ない。

 

 右手をそっとポケットに戻して、顔色を伺うしか。

 

『そん、な』

 

 姉から、彼女から出てきた言葉はまるで、怯えているように震わせていた。

 

「あっその」

 

 彼女は目に涙を浮かべ、唇に歯形がつくくらい噛み締める。

 

『もう……いい』

 

 突き放す様に言われた言葉は深く刺さり、振り向きもせず横断歩道を渡り出す、彼女は。

 

「待って……?」

 

 当然聴こえることも無く、彼女が渡り終えると同時に信号は血のような赤に変色した。

 

 これじゃあ、クリスマス前と変わらない。

 

 帰る? 追いかける? 正解は両方。

 

 

――私は、またこんなダメになってしまったんですか?

 

 

 

 

 

 ヒリヒリする頬を擦りながら、神社に向けて足を進める。

 

 自然と早くなり、家に帰って泣きたい気分なんだ。

 

 この程度で抜け出すなんて、情けないな。

 

 よりを戻すって考えたのはあたしじゃんか……。

 

 黒い歩道を歩き、新年を祝うように揺れる並木を横目に一筋の涙が零れ出す。

 

 悔し涙ってこれの事なんだね。

 

 ぶわっと湧き上がる感情を抑え、それを浄化する為の様に流れた涙。

 

 カッコイイよね、あたしなんかより。

 

 気がついたら神社の目の前に居た。

 

 前に来た所だけど、ここで餅投げなんだよね……やる気?

 

 あるわけないでしょう? 妹にやらせてあげます。無理矢理。

 

 来た理由(わけ)はもう一つある、入口の側にこのピンク色のお守りを捨てる事。

 

 自分への見せしめとして。

 

 早速鳥居の足元に近寄り、お守りをキツく握り締める。

 

『こん、なの……』

 

「お姉ちゃんは、ツンデレ系嫌い?」

 

 

 

 

 ようやく、間に合ったみたいだ。神社の鳥居で変な事してるから急いで声掛けてみたんだけど。

 

 ほっと一息、私の口から息が漏れる。

 

『遅いから』

 

「遅くないもん! お姉ちゃんの為に急いだもん!」

 

 口から滑るように、言葉が流れ出る。

 

 思ってる事を言えるのは、気持ち良い。

 

「本当に、いつもの妹なの……?」

 

「最初戻るくらいなら死んだ方がマシって思ってたけどね」

 

 まだ疑われてるのかな? お姉ちゃんの感情は汲み取る様にわかる。

 

 いや、苦笑いが象徴してるよ。

 

「でも、お姉ちゃんと仲良く出来ないなら死んだ方がマシって思えてきた」

 

 姉は唸り、手を組む。手からグシャグシャになったお揃いのお守りがちらつく。

 

「ツンデレな妹だなんて、お姉ちゃんレアだよ〜」

 

 歩み寄り、岩のように何も言わない姉に腕で抱き寄せ、頬を頬で触れる。

 

「ほっぺ冷たいね、お口も……寂しい?」

 

 姉は、小さく頷く。

 

「私の番だね〜。可愛い妹、」

 

 唇に吸い付き、食感を味わうと舌を絡ませ、クチュクチュと唾液を入れ替えていく。

 

『参上しました』

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