はっ!? 寝てしまったみたいで、目の前にはすげぇ怒ってる妹様がいます。
『なんで?』
「すみません……」
「怒っても無駄だから、早く行こ」
急かされるがまま、猫耳を着けて、青いヘアゴムは……あえてつけない。
「どう? ポニーテールじゃないお姉ちゃん良くない?」
「別に」
「………………」
沈黙と共に部屋を抜け、玄関に向かう。
「今何時?」
「えーと、12時だよきっと。どうしたの?」
「お姉ちゃんには関係ない」
「そ、そっか。ごめんね」
赤のスニーカーを履き終え、妹を待つとドアを開く。
冷たい風が吹き荒れていて、寒さが加速するね。
「少し前は、一つのポケットに互いの手を入れてたんだけど……」
「なんですか?」
「あたしは……したいかなって」
「興味無いです」
ポケットに目もくれず、視線も合わせずに、歩道を歩く。
会話は無い状態だ。一向に道だけ進む。
横断歩道に差し掛かった時。あの時と同じようにキスをする。
「スズメ!」
「何?」
「チューしよ!」
人目をきにせず、妹の唇を奪うと、時間が止まるような感覚に襲われた。
「…………」
口に動きがない。
動いていたと思ったら、あたしが押しのけられた時だった。
「お姉ちゃんやめてよ!」
『本当は望んでるんだよね? 知って』
無言で右手が放たれ、ビンタが左頬にめり込む。
「――る……?」
視線が反動で右に大きくブレる。
無駄にデカイ沈黙が流れた事は言うまでもない。
私は、生まれて初めて、姉の頬を叩いた。
何も言えず、俯くことしか出来ない。
右手をそっとポケットに戻して、顔色を伺うしか。
『そん、な』
姉から、彼女から出てきた言葉はまるで、怯えているように震わせていた。
「あっその」
彼女は目に涙を浮かべ、唇に歯形がつくくらい噛み締める。
『もう……いい』
突き放す様に言われた言葉は深く刺さり、振り向きもせず横断歩道を渡り出す、彼女は。
「待って……?」
当然聴こえることも無く、彼女が渡り終えると同時に信号は血のような赤に変色した。
これじゃあ、クリスマス前と変わらない。
帰る? 追いかける? 正解は両方。
――私は、またこんなダメになってしまったんですか?
ヒリヒリする頬を擦りながら、神社に向けて足を進める。
自然と早くなり、家に帰って泣きたい気分なんだ。
この程度で抜け出すなんて、情けないな。
よりを戻すって考えたのはあたしじゃんか……。
黒い歩道を歩き、新年を祝うように揺れる並木を横目に一筋の涙が零れ出す。
悔し涙ってこれの事なんだね。
ぶわっと湧き上がる感情を抑え、それを浄化する為の様に流れた涙。
カッコイイよね、あたしなんかより。
気がついたら神社の目の前に居た。
前に来た所だけど、ここで餅投げなんだよね……やる気?
あるわけないでしょう? 妹にやらせてあげます。無理矢理。
来た理由(わけ)はもう一つある、入口の側にこのピンク色のお守りを捨てる事。
自分への見せしめとして。
早速鳥居の足元に近寄り、お守りをキツく握り締める。
『こん、なの……』
「お姉ちゃんは、ツンデレ系嫌い?」
ようやく、間に合ったみたいだ。神社の鳥居で変な事してるから急いで声掛けてみたんだけど。
ほっと一息、私の口から息が漏れる。
『遅いから』
「遅くないもん! お姉ちゃんの為に急いだもん!」
口から滑るように、言葉が流れ出る。
思ってる事を言えるのは、気持ち良い。
「本当に、いつもの妹なの……?」
「最初戻るくらいなら死んだ方がマシって思ってたけどね」
まだ疑われてるのかな? お姉ちゃんの感情は汲み取る様にわかる。
いや、苦笑いが象徴してるよ。
「でも、お姉ちゃんと仲良く出来ないなら死んだ方がマシって思えてきた」
姉は唸り、手を組む。手からグシャグシャになったお揃いのお守りがちらつく。
「ツンデレな妹だなんて、お姉ちゃんレアだよ〜」
歩み寄り、岩のように何も言わない姉に腕で抱き寄せ、頬を頬で触れる。
「ほっぺ冷たいね、お口も……寂しい?」
姉は、小さく頷く。
「私の番だね〜。可愛い妹、」
唇に吸い付き、食感を味わうと舌を絡ませ、クチュクチュと唾液を入れ替えていく。
『参上しました』