日記を書き終えると、姉が私を呼ぶ。
『あ、ダメだこれ。開けれないよー』
まさかのドアだった。開けてあげると、鍋を両手に持ったお姉ちゃんがコタツの上に置く……前に、
「ちょっとこれ敷いてくれる?」
目で言われた所を見ると、ポケットに白いハンカチ…?的なのが。
それを引き抜き、コタツに敷くと姉はその上に鍋を乗せた。
「あー重かったし、暑かった」
額(ひたい)の汗を拭いながら言う姉はカッコイイ。
「さて、スズメもキッチンへ!」
「寒いからやだもん!」
「もう〜ま、いいや。取ってくるね」
取りに行ってくれる間、私は餅が投げ込まれ、白菜とコンニャク、豆腐が苦しそうに顔を出す鍋を見つめていた。
醤油色なスープは美味しそうだ! センスのいいお姉ちゃんに痺れるよー!
「とってきたよ。ようやくだね」
お皿を並べていく、1人一つとお箸で2人分。
向かい合って……んなわけもなく、私は本棚、姉はベット側に座る。
斜めの角度だから、いつでも、あーんってしてもらえるんだぞ!
「お姉ちゃんに甘えてきてもいいんだ、よ?」
「じゃあ甘えない」
「え……」
「別に、甘えるとか私の勝手だもん! だからコンニャク口移しして」
『何処の嫌がらせしてくる妹だ』でも、口角が緩むお姉ちゃんの内心は知ってるよ?
一口サイズのコンニャクを姉は口に入れると熱そうに舌で転がす。
「ほい、スズメ」
お姉ちゃんはキスをしてくると、コンニャクが口に押し込まれ、生温いのが伝わる。おまけにネチョってしてるよ。
「ありがと」
「スズメが風邪引いてもしてあげるから」
そんな言葉は、私の気持ちを大きく高ぶらせていた。
「お鍋を妹と食べれて良かったなぁ……」
感傷に浸っている姉を横目に、アツアツの豆腐、白菜を取っては口に運ぶ。
「おいし」
シャキシャキと音がしない萎(しな)びた白菜、煮崩れこそ起きてないけど味が染みてない豆腐。
なんだろ、凄く美味しいと感じる。
素直になれなかったら、どうなってたのかなー。
――醤油の風味が広がる白菜好き。
私は計画してないけど、姉の部屋にこっそり忍び込む事にした。
邪(よこしま)な考えなんてない! 寒いから一緒に寝たいだけ!
でも、素直になれないからこっそり。
なんとか部屋に入ったんだけど、お姉ちゃん起きてた件。
『あれ、スズメどうしたの』
電気は消えてたけど、スマホ弄ってたよお!
そして、私の目の前にたって顔色を伺ってる。
「お姉ちゃんとかどうでもいいんだけどさ……」
「さりげなく酷いこと言うよね」
お姉ちゃんを通り抜け、ベットに我が物顔で転がる。
「一緒に……寝ませんか?」
「突然の敬語嫌いじゃないよ」
スマホを投げ捨てると、私の側に来た。
「どんな体制で寝て欲しいの?」
「なるべく、くっついて」
姉は目の前に横になると、私の方を向く。
ちょうど向かい合ってる。
「これならいいでしょ?」
下になってる右脇に姉の左手が通り抜け、腰の部分にふくらはぎが触れ、抱き寄せられる。
「やったぁ……ゼロ距離嬉しい」
姉にガチガチに抱きしめられ、唇まで触れているのに嬉しくない妹は居ない!
「温かい。寝れそうだ」
それを阻止するように、唇を動かし邪魔をする。
「もう、くすぐったいじゃん。口やめてよー」
「む……お姉ちゃんおやすみ」
「起きてから構ってあげるから、拗ねないで。おやすみ」
――この状態に興奮を覚えた私は、息が荒くなり、寝れなかった。