1話>>プロローグ
12月24日土曜日。クリスマスイヴですか、あたしには関係ないです。
それを確信したのは、部屋の壁にぶら下がっているカレンダーに目が入ったからだ。
妹が暇なら、一緒に何処か行こうかな。
そんな事を考えながら、あたしは布団から離れ、青いヘアゴムを掴むと、髪を束ねて銀色のポニーテールに仕上げる。
白いジャージを着て、胸を張っても私の胸は頼りない。
カレンダーをよく見ても、何か描かれて……るわけじゃなかった。
自由(フリー)であると共に、ボッチなのかも。
最近、妹が構ってくれないからなぁ。
勉強机に目もくれず、あたしはカーテンから光が差し込む部屋を抜ける。
扉を開けた所で……おっと、妹ちゃんに遭遇してしまった。
『どっどうした? 我が妹よ』
緊張か、口調が可笑しくなり、あたしは口を手で塞ぐ。
面白そうに微笑む姿は姉として誇りに思うくらい可愛いね。
「お姉ちゃん……所でね?」
スルーされたのは優しさなのかな。
「どうしたの? スズメ?」
妹の名前は朝霧(あさぎり)スズメ、何故か前髪を青いヘアピンで留めている。
「……なんでもないや」
スズメは振り返ると、背中まで伸びている銀色の髪が遅れて揺れる。
「あたしはあるんだよねー」
見逃さなかったあたしは、手を掴む。
「なに? 別にお姉ちゃんなんかに興味無いよ」
「酷い! さりげなく酷いこと言われた……もし暇だったら、明日あたしと遊びにいかない?」
「特に予定は無いなぁ、恥ずかしいけど!」
でもこれって、イエスなのかな? ノー?
「あたしも予定無くてね……で、どうなの!?」
『良いよ! でも、映画館は行きたいし、レストランとか行きたいなー! それくらいだから後はお姉ちゃんに任せよう!』
スズメは胸を張る、ヒートネックを押し出すと言わんばかりに出ているのは羨ましいよ……本当に。
「返事いいね〜。欲しいプレゼントを聞こうか、妹様よ!」
スズメはすぐにあたしの肩に手を置くと『お姉ちゃん』と言った。
「えー、それどういう意味ー?」
「お姉ちゃんが欲しいの!」
あたし、朝霧カラスはもう死んでも良いかも。嬉しいんですけど。
「はいはい。いつか、ね?」
スズメの手を払い、緩む唇に人差し指を当て、ウィンクしておこう。
「はぐらかし禁止! 逆にお姉ちゃんは何が欲しいの?」
「おおー、気が効くね。別にスズメのなら、なんでも良いから気遣いだけにしておきまーす」
「えぇ〜じゃあ……その日まで楽しみにしといてね?」
困ったような顔をするスズメに笑顔で答えながら、あたしは妹を横切る。
冬だからこそ、あたしは温水プールという選択肢を取ることにした。
映画は妹様に聞いておく、レストランは三件入れといて、キャンセル待ちを狙うことに。
……キャンセル来なかったら絶望的だね。ホテル行って『あたしを食べて?』って言うしかないよ。
そんなこんなで、クリスマスは妹様とデートする日になった。