今はスズメと二人暮らしだから、必ず起きないといけない訳なんだけど、普通に起きれてホッと一息。
外に出るから、見た目と暖かさを併せ持った服を選ばないといけないんだよね。
12月25日の日曜日、カレンダーに近づくとあたしは赤いペンで、『楽しくなりそうなクリスマス』と書き込んでおく。
青のジーンズと灰色で胸に緑の文字が刻まれたパーカー、更に上から黒のジャケットを羽織る事にしよう。
『男みたいな服装だけど、あたしは良いかな』
ジーンズとパーカーを着た時だった、充電器と接続された白のスマホが音楽を鳴らしながら振動し、全力であたしに通話を知らせる。
ベットに座り込み、通話ボタンをタップしながら耳に当てがう。
「朝霧ですけど」
見た感じ、白緑(はくふち)っていうレストランだったけども。
「キャンセルが入りましたので……」
どうやら、ドタキャンが幸いしてあたしの元に回ったらしい。
「ありがとうございます」
早速切ると、ジャケットを羽織り、ポケットにしまう。
あたしが食べられる事は無くなり、そのまま帰らなくて良くなったという事実に感謝。
「お姉ちゃん入るよー」
ノックも無く入ってくるスズメに驚くが、心を鬼にして注意する事にした。今後の為だからね、仕方ない。
「ダメだよ、ノックくらいはしないと……」
「ごめんなさい、お姉ちゃんなら良いかなって」
「それ、どういう意味」
スズメは慌てて苦し紛れの言い訳をしてきた。
『お姉ちゃんだもん……』
「よくわからない」
「好きだもん! 好きだから良いみたいな」
「もう良い訳ですらないよ! それと、水着用意しといてね。プール行くから」
白いミニスカートを揺らしながら、昨日と同じ髪型でスズメは部屋を出る。
あたしって、水着これしか無いんだよね……。
白い生地に黒の横線が引かれた水着というかビキニ。
パンツも胸も同じカラーだから統一感が出ている、くらいしかない。
ビキニをパックに詰めると、紐で繋がった軽いリュックに放り込む。
「さて、もう行けるかな」
あたしはいつものように青いヘアゴムで髪を束ね、光を反射する銀色のポニーテールを結い、時間を確認する。
「12時……そんなもんなのか」
朝から行かない主義は健在だった。
リュックを背負い、部屋を出て、洗面台に向かう。
そして、顔を冷たい水で洗い、歯を磨く。
「…………」
響くのはあたしが歯を磨く音とスズメが歩き回る音だけだね。
歯ブラシを洗って、元の場所に戻すと水を手で掬い、口に運ぶ。
「お姉ちゃん、今磨いてたの……」
声のする方向を向くと、首を傾げながら薄い青とさくらんぼみたいな赤いギンガムチェックの毛布みたいな上着を着たスズメが。
下は最初と変わらず白のミニスカだけど、ヘアピン付けてないし、肩に白のカバン下げてる。
「まぁまぁ」
2〜3回ゆすぐとハンカチで口を拭き、スズメにニカッと歯を見せる。
『どう? 磨きたてだよ? キスするなら今だぞ?』
「どうしようかな……」
手に顎を乗せ、スズメはうーんと、悩み始める。
「まって冗談だから、ね?」
「本気で悩んでた」
あたしの冗談次第では即座に行動してきそうで怖い。
「さて、水着もあるね? 靴を履いて出発だ」
『おー!』
元気な返事を頂くと、玄関で靴を履き始める。
スズメは赤い紐靴、あたしは黒のローファーにした。
玄関のドアを開けようとすると、スズメに服の裾を引っ張られ、後ろに一歩引いてしまう。
「どうしたの?」
上目遣いでスズメは申し訳なさそうに青いヘアピンを出してきた。
「久々にお姉ちゃんに付けてもらいたいな」
「困った子だ、特別だよ?」
髪をかき分け、ヘアピンであたしは髪を留めてあげる。
「ありがとう!」
ニコニコしてる妹は神ってますね。
「それじゃあ、行こう」
今度こそ、玄関のドアを開くと、寒い風が私達を歓迎してきた。