なんなの、この寒さ……。
『お姉ちゃんにくっつこっと』
あたしの心に息を通すような冷たい風は痛い。
「え? くっつくの?」
「寒いもん」
断るのもアレだったので、もちろんイエス!
笑顔を見せて、スズメの右手をジャケットのポケットに潜り込ませる。
「あったかいよ〜」
「それで寒いって言われたらショックだわ」
ドアを閉めて、鍵を掛けると、そのまま歩道に出た。
夏ならアスファルトが蜃気楼を巻き起こすレベルで暑いのに、冬だから逆に滑りそう。
でも、クリスマスだから周りは男と女のカップルが多い。
『多いねー、でもあたし達もカップルだもん……って強がりかな?』
「えっ」
「なにその、『張り合っても勝てない』って顔は」
歩きながら空いていた右手で、スズメの頬に触れる。
「ほらほら〜」
「やめてよお姉ちゃん……」
「なんで? 楽しくない?」
「恥ずかしい、な」
触れていた頬を良く見てみると、燃えるように真っ赤だった。
こういうのは無性に続けたくなるね。
「かわいいなー、さすが我が妹。ご褒美をやろう」
横断歩道で足を止め、スズメの頬に再び右手でつまむ。
「ふっふっふ」
「顔がちか……あ」
あたしが顔を近づけると、割と抵抗がなく、唇と唇が触れ合うだけのキスを交わす。
「拒否されなくて驚いたね」
「…………」
「凄い柔らかくて、いい唇だったよ。って怒ってる?」
スズメの顔が赤くなっていた、頬ではなく。
もちろん、横断歩道の周りには少しだけ人が居た気がするけど、気にしないや。
「もう一回して欲しいの?」
右手でスズメの顎を上げてみる。
「…………」
首を大きく横に振るだけで、口を開かない。
「信号青になったよ。渡ろ?」
スズメの右手を左手でポケットに入れたまんま、一緒に歩き出す。
『……お姉ちゃんの唇も柔らかかった』
「喋ってくれたけど、第一声がそれって不思議な気持ちだ」
どうやら、思考停止していたみたいで、顔の赤みは頰にだけになった。
「暑いから、手を出してもいいかな?」
ポケットから手が引いていく、嫌われちゃったのかな。
「寒くなったら言って」
横断歩道を渡り、人を避けながら歩いて行くと……着いた。
『到着! 楽しみだね』
自然とスズメと手を繋ぎ、「離さないよ」と言わんばかりに指と指で絡める。
「嫌だぁ……」
「拒否権ないね」
看板にデカい浮輪が描かれてるからそんな関連だと思う。
手を引っ張り、自動ドアを通り抜ける。
「お姉ちゃんだけ行ってきたらいいのに……」
『ダメ、妹様の水着姿見たい、ゼッタイ』
「こんなに動機が不純なダメゼッタイ初めてだ」
もちろん、店内は普通にあぁプール入るんだなと自覚する。
左側には水着、右側にはタオル、ゴーグル。正面は受付さんだ。こころなしかサンタみたいな服を。
「2名なんですけど、タオルはレンタルで」
「はい……はい、待ってて下さいね」
店員はタオルを取りに行ったのか、足早に姿を消す。
「この、良い胸しやがって……」
あたしは悪徳大名の様にニタニタと笑いながら、スズメの突き出た胸に触れる。
「ふっ」
「無駄に勝ち誇られた」
姉よりデカイのか、あたしが小さ過ぎるだけなのか。
少なくとも、寄せて谷間が出来たらいいなレベル。
羨ましく思っていると、店員が帰ってくる。
「お待たせしました〜」
料金を支払い、軽く会釈すると店員に指差された方向に向かう。
「人居るのかなー」
「私は泳がないから、人が居ても気にしないよ?」
「気が合うね、あったかい温水でゆったりが良(よ)い」
『お姉ちゃんおっさんぽい』
更衣室に入ると、着替えている人は少し居たけど、胸デカい人だなぁ。
「運良くロッカーは隣だね」
「お姉ちゃんと隣か……」
19という数字の鍵を19と書かれたロッカーに、差し込む。
良い音を立てながら、鍵は外れる。
開いてリュックを放り込むと、服を脱いでいく。
「お姉ちゃん本当に胸ないね〜AA?」
「A……だし。なんでそんなにあるの!」
「触らせてあげようか? お姉ちゃんだけの特権だよ」
「ウザい、こんなにウザキャラとは」
あたしは、もちろん断ってビキニを着ていく。白と黒だから、地味かもしれない。
そして、つけてから胸に手を当てると少ししかない件について。
『こんなになかったっけ……お姉ちゃんはショック受けたので妹様の胸に飛び込みたいですね』
「動機が不純」