スズメの水着姿は久々だなー。
水色をベースで縦に黄色い線ですか、可愛らしい。
『可愛いから許す!』
意識はしてないけど、無性に抱きつきたくなったので抱きつこう!
「ちょ、お姉ちゃん」
「抵抗すらしない妹様にハグ出来るとは、幸せだなー」
首元とか香水の匂いがするね。
「抵抗しよう、かな」
「なにそれ辛い」
そして、本当にスズメから引き剥がされてしまった。
「ショックだ……親離れ?」
「んなわけないよ、どんだけバカ親なの」
あたしは気にせずプールが見える入り口を指差す。
「それじゃあ、温水醍醐味のジャグジー行こうよ」
「話がヒュンヒュンしてる」
よくわかってないスズメの手を引っ張り、噂の室内プールに足を踏み入れた。
「人居る……」
カップル同士が仲良く水を掛け合っていたり、1人でクロールしていたり。チラホラ映る。
「あたしが居るから良いでしょ?」
目前のプールをスルーして、右側にひっそりと佇む円形のプールに向かう。
左側には、軽食を売っているようだ。
『良かったね、人が居ないから触り放題!』
「それなんか、おかしい気がする!」
「まあまあ、何もしないから」
「突然キスしてきそう」
酷い偏見だけど、気にせず円形のプールに足を踏み入れる。
「ほら、来なさい……お姉ちゃんからの命令です」
「唐突に行使される権限酷いよ」
足からじんわりと伝わる熱い水は、確実にあたしの温度を上げていた。
「このジェット噴射って当たり続けると痒くなるんだよね」
スズメが入った事を確認すると、一緒に座る。もちろん隣だ!
「今思ったんだけど、これ狭くないの?」
向かい合って座ると膝が当たるレベルの狭さ、そしてジャグジーには『2人用』と描かれていた。
スズメが狭いと唸るのもわかる気がする。
「狭いなら、くっつく?」
「……遠慮」
「じゃあ、あたしは腕だけ回しておくね。それだけでも変わるでしょ」
妹様の背中に手を回す。安心感を得てもらいたいってだけで、下心なんて無いよ!
『お姉ちゃんさ、好きな人出来そうなんだよねぇ』
本当に出来そう、でも、なんていうか。
「え、誰?」
「なにその落ち込んだ感じ」
好きな人、それは言わずもがな。妹様だ。
「秘密だけどね」
「ずるい、お姉ちゃんずるい……」
「そのうち分かる、ところで映画はどれ見たいの?」
映画次第では、今すぐ出ないといけない。念には念を、暗記しておいた。
「ホラーが……」
記憶によると、ホラーはない。
「ホラーは本日無いよ」
「じゃあラブコメ」
ラブコメは……あった。
「あるね、面白いか分からないけど、それにしよっか」
「覚えてるお姉ちゃん凄い」
「時間はやんわりしか覚えてないの」
暑いのもあって、ジャグジーから出る事にした。
『小腹空いたんだけど、何か食べない?』
「食べたいなー」
「財布取ってくるから、待っててね」
まだ浸かっているスズメが笑顔で答えるのを横目で見て更衣室に向かう。
床に敷かれたタオルで足踏みをし、ロッカーを解錠する。
リュックから財布を取り出したけど、スマホで映画の時間を確認しておこう。
『17時からのラブコメで「ショートボブと長髪と愛」っていう胡散臭いのしかない』
スマホだけロッカーに戻して鍵を掛け、財布を落とさないように妹様のところへ向かう。
軽い食べ物ってフライドポテトくらいしか思い浮かばないけど、焼きそばとかあるのかな?
ゆったりとしているスズメに声をかける事にした、耳元で。
『あたしと、ご飯食べ……よ?』
囁くように、最大限の声で頑張ってみる。
「そっそうですね」
振り向いて、スズメは一息つくとジャグジーから出てきた。
「何食べる? 経済的余裕ないけど」
「そんな事言われたら、好きなの頼めないよ」
「経済的余裕、超あります!」
「もう遅い」
余裕はある、あるんですよ。
「まぁ行こ行こ」
腕を組み、催促すると歩き出す。
「お姉ちゃん、馴れ馴れしいね」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど、キスもそうだし、手とか腕組みとか……変だよ」
不思議そうに見つめられる、確かにそうかも。
嫌(いや)だったら家に帰ると思うから、嫌われてないと信じたい。
『妹には馴れ馴れしくするもん! 着いたし、食べ物の話したいな』
円形のテーブルが5〜6隙間を空けるように並べられ、椅子が配置されている。
店員は、向こうみたいだ。
「開き直られた……じゃあフライドポテトで」
好みって似るんだね。