飽きが来ない! あたしは見惚れながらずっとしてます!
『んぅ……ん〜』
時計を見ると、時間になったらしい。
16時を指しております。
でも、小指を引き抜かないと……あれ?
「離してくださ、」
抜こうとしたら、唇の力が強くなる。
そして、歯で抑えられてしまい、吸い戻される。
これもう起こさないと抜けない。
「もう時間だよ、起きないと! 映画見れない!」
揺さぶりながら起こす。
「お姉ちゃん、おひゃよ……うぇ?」
あたしの腕を抑え、小指を舐めながら、驚くスズメ。
「表情と言葉と行動が矛盾してる」
「もうやめた方がいい?」
「……うん」
続けて欲しいけど! もう出ないと!
「分かった」
舌の感触が離れると、スズメが手を放した。
「ありがとね、のぼせてないのが凄いよ」
「そうかな」
温泉に入ったような右手の小指を見つめながら、ジャグジーから出ると、左手で手を繋ぎながら歩き出す。
「うーん、至福だったなぁ……温水で寝るのもいいかも」
「毎日だったら疲れるよ? それにあたしが見張らないといけないし」
「はっ、そうだった」
更衣室で鍵を開け、水着を脱ぐとタオルを妹に渡す。
「早く出ないと間に合わなくなる」
「そうなの……」
悔しそうにスズメは口をすぼめる。
「なんで!?」
「髪拭いて欲しかったなー」
タオルを取って欲しそうに出すと、上目遣いで訴えてくる。
「……ほら、タオル貸して」
そんな妹様に抵抗は出来ません! あたしのタオルは肩に掛け、受け取ると頭に被せます。
「よっしゃ」
「ぐぬぬ……後ろ向きな」
凄い扱われてる感あるけど……可愛いから許します。
タオルから、ワシャワシャと水を拭いていく。
「さすが、お姉ちゃん!」
髪を触ってみて、良い感じだったのでもうやめておこう。
「十分でしょ、後は自分でやってね」
「分かったよ……」
「落ち込まないでぇ」
肩に掛けたタオルで、あたし自身の髪を拭き始めた、妹を横目でチラチラ見ながら。
別に堪能しているわけじゃないけど、体を拭き、水着をパックに入れて、服を着て……と準備を整えていた。
「お姉ちゃん遅い〜」
「もう少しだよ」
再びポニーテールを結って、リュックの中身を確認すると背負う。
「もう行こっか」
「うん、手を繋いで」
仲良く更衣室を後にすると、店員が笑顔で見ていたけど、気にせずタオルを2枚返しておきますね。
自動ドアを抜けて、外の冷たい空気を胸いっぱいに取り込む。
「あー寒い」
「歩けば温くなると思うよ」
本当かな? イマイチ信じれないけど。
右を歩いて、映画館に向かう事にした。
「空が赤いねー、四時くらいだけども……」
「出る頃には夜だ! お姉ちゃんに密着しないと寒いかも」
「ぎゅーってしてあげるよ」
いつもより、ベタベタくっついてくれる妹に感謝しないとね。あと、楽しまないと!
周りは本当にカップルだらけで、クリスマスって感じ。
私は、何をお姉ちゃんにプレゼントしたらいいんだろ?
一緒に歩きながら、何も言えずに……。
『スズメ〜、何が欲しい?』
欲しい物はもう決まってる。
「お姉ちゃん」
「本当に? もう拒否権ないよ?」
「うん!」
「断言されると困っちゃう」
気持ちには、素直にならないと……ダメって気づいたから。
前を見てみると、映画館が見えてきた。
機材が描かれた看板、赤と白のイルミネーション、英文字でラブロマンスとか描かれてるし。
「ここ?」
「だよ」
時間は16時40?辺りを指してる。
「もうあんまり時間ないし、早くいこ」
寒いのか、お姉ちゃんの口数は少ない。
手を引っ張られながら、入るとカウンターに向かう。
入り口からすぐにカウンターが左右にあって、奥に上映するシアターがあるのかな?
青い床は、体の寒さを加速させた気がする。
「ご来店ありがとうございます」
「えーと……ショートボブと長髪と愛っていうのを」
よく見たら、店員の後ろにポップコーンとかジュース機材がある。
「これがチケットになります。お飲み物や、ポップコーンはいかがですか?」
「どうする、スズメ?」
「なんでもいいよ」
カウンターに埋め込まれた一覧を見つつ、お姉ちゃんは唸ると答えた。
「ポップコーンのLとソーダM2つ」
「かしこまりました、合計……」
会計を済ますと、店員はポップコーンを機械から取り出し、水色の液体を大きめの紙コップに入れていく。
「ポップコーンと、ソーダMになります。あちらから入場下さい」
紙のボールにポップコーンがたんまりと入っていた。
ソーダはもちろん蓋付き。
「スズメは、ソーダ1つ持ってね?」
「おっす」
「なんか機嫌いいね」
お姉ちゃんからジュースを受け取ると、店員に言われた通り通路を通っていく。
「ポップコーンと一緒に貰ったチケット、スズメも持っといてね」
「はーい」
チケットをポケットにしまうと、目的のショートボブと長髪と愛と上に書かれたドアに着いた。
「おおー、なんかワクワクするね」
そう言いながら、お姉ちゃんが開くともう少しで上映するらしく、早めに座る事に。
でも、人が居ない。後ろにも前にも。
「やっぱり、前が良かった?」
「ううん、真ん中の位置でいいよ」
私とお姉ちゃんの間にポップコーンを置いて、ジュースを立て掛ける。
『上映が始まります、迷惑にならないようマナーモード及び機内モードの設定を……盗撮もはんざ』